03.医療・介護

2024年6月17日 (月)

創薬力強化に向けた決議・骨太の方針2024に向けた緊急提言

さる5月21日、橋本がくが座長をしている自民党社会保障制度調査会創薬力の強化育成に関するPTは、科学技術イノベーション調査会医療小委員会と合同で会議を開き、合同で「創薬力強化に向けた決議」を行い、またPT単独で「骨太の方針024に向けた緊急提言」を行いました。この決議と緊急提言は、直ちにそれぞれ政府に提出され、実現に向けて努めていただいていますが、改めてこのブログにおいて、その内容を記しておきます。ご参考にしてください。

 なお創薬力の強化育成に関するPTも、設立より3年以上が経過し累次にわたる提言等を重ねた結果、それなりに政府を動かし成果を挙げ始めています。いずれその経緯や成果等をブログにまとめたいと思っています。少々お待ちください。


[PDF]創薬力強化に向けた決議
[PDF]骨太の方針2024に向けた緊急提言

令和6年5月21日
創薬力強化に向けた決議
自由民主党政務調査会
社保調査会創薬PT・科技イノベ調査会医療小委

 昨年5月、党社会保障制度調査会「創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム」の提言において、医薬品産業を基幹産業に位置づけ、司令塔を設置して創薬力強化に向けた国家戦略を策定する方針を打ち出した。その提言に基づき、首相官邸主導で「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」(以下、「創薬構想会議」という。)が設置され、本日、中間とりまとめに向けた状況報告と概要の説明がなされたが、基本的には党の提言に沿っていると評価したい。

 他方、その推進やとりまとめに当たっては、以下の点に特に留意すべきであることを、改めて当合同PTの総意として強く申し入れる。

  1. 医薬品産業を国家戦略上の「基幹産業」として位置付け、政府全体として統合的・整合的な戦略を策定し、その執行・推進を担保すること。
  2. 創薬構想会議の中間とりまとめを受けた施策の推進においては、日本医療研究開発機構(AMED)がある中で、「新しい組織」に拘泥することなく、AMED事業などの施策を最大限に活用・連携すること。また、第2期AMED中長期目標期間が終了しつつある中で、関係の施策の検証・総括を行いつつ、今までの事業の改革・改善と新たな取組を組み合わせながら効率的な事業運営を目指すこと。
  3. その際、既に内閣府に健康・医療政策の推進を司る健康医療戦略事務局が定常的な組織として設置されていることを十分に認識し、前述の党提言でも指摘したように、シーズ創出から産業化まで一気通貫で政策推進できるよう、同事務局は関係省との連携にあっては中心的な役割を果たすこと。政策推進の段階に応じて、所要の機能・体制の見直し・強化を行うこと。
  4. 併せて、日本医療研究開発機構(AMED)においても、本来のミッションである「医療分野の研究開発、環境整備の中核的な役割を担い、基礎から実用化までの一貫した医療研究開発とその成果の実用化を図る」機能を十分に果たすことに加え、本構想会議の実現に大きく寄与すべく、来年度からの第3期の中長期目標期間を契機に所要の機能・体制強化を行うこと

 右、決議するものである。なお、党としても、本構想会議を受けた政府の対応状況については、定期的に報告を求めるものである。


骨太の方針2024に向けた緊急提言
令和6年5月21日
自由民主党政務調査会
社会保障制度調査会
創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム

 経済財政運営と改革の基本方針2024(いわゆる「骨太の方針2024」)の策定にあたり、革新的な医薬品創出のためのイノベーション推進の観点や、ドラッグロス・ラグ解消、医薬品供給の安定化、社会における物価や人件費の状況などを踏まえ、薬価制度等に関して下記の通り提言する。政府においては、本提言を十分に踏まえた対応を求める。

  1. 薬価の中間年改定については、近年乖離率が縮小傾向にある実態や、中間年改定そのものの廃止を求める要望が強いこと等を念頭に、その在り方について見直すこと。

  2. 費用対効果評価の拡大等、医療においても経済性を考慮することは重要であるが、国民皆保険が目指すものが「国民皆が貧富の差なく適切な医療が受けられること」であることを再確認した上で、丁寧かつ慎重に議論を行うこと。

  3. 再生医療等さまざまなモダリティ、血液製剤、外用製剤、輸液製剤、後発医薬品等さまざまな業態があることを踏まえ、それぞれの課題に応じたきめ細かな対応を検討すること。

  4. 後発医薬品の安定供給の実現については、この問題に関する厚生労働省検討会の報告書を踏まえ、支援や法的枠組みの必要性も含めて検討を加速し、早急に実行すべきこと。

    (以上)

続きを読む "創薬力強化に向けた決議・骨太の方針2024に向けた緊急提言"

| | コメント (0)

2024年6月 7日 (金)

介護・障害福祉分野の人材の確保及び定着を促進するとともにサービス提供体制を整備するための介護・障害福祉従事者の処遇改善に関する件

 6月5日、衆議院厚生労働委員会において、「介護・障害福祉分野の人材の確保および定着を促進するとともにサービス提供体制を整備するための介護・障害福祉従事者の処遇改善に関する件」が議題とされ、全会一致で委員会の決議とすることに決しました。これは、もともと野党から議員立法として介護・障害福祉分野従事者の処遇改善等について議員立法が提出されていたことを受け、与野党ともに受け入れられるアクションとして与党筆頭理事として提案したもので、中島克仁・野党筆頭理事はじめに全会派の議員各位にご賛同いただき、議決することになったものです。当日、提出者を代表して橋本がくが趣旨説明を務めさせていただくことになり、誠に光栄なことでした。

 政府においては、全会派で議決した本決議の趣旨をしっかりと受け止め、対応したいただくことを期待します。また、ご協力いただいた新谷正義委員長、中島克仁野党筆頭理事はじめ理事・委員のみなさまに篤く感謝申し上げます。

240605yomiage1
(写真:趣旨説明の様子)


介護・障害福祉分野の人材の確保及び定着を促進するとともにサービス提供体制を整備するための介護・障害福祉従事者の処遇改善に関する件

政府は、高齢者等並びに障害者及び障害児が安心して暮らすことが出来る社会を実現するためにこれらの者に対する介護又は障害福祉に関するサービスに従事する者(以下「介護・障害福祉従事者」という。)が重要な職責を担っていること、介護・障害福祉従事者の給与水準が他産業の給与水準と比較して低い状況にあること、我が国における賃金や物価が上昇傾向にあること等に鑑み、これらのサービスを担う優れた人材の確保及び定着をより一層促すとともにサービス提供体制を整備するため、令和六年度に行われた介護報酬及び障害福祉サービス等報酬の改定の影響について、訪問介護を始めとする介護事業者等の意見も聴きながら速やかにかつ十分に検証を行い、介護・障害福祉従事者の賃金を始めとする処遇の改善に資するための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるべきである。

右決議する。

続きを読む "介護・障害福祉分野の人材の確保及び定着を促進するとともにサービス提供体制を整備するための介護・障害福祉従事者の処遇改善に関する件"

| | コメント (0)

2024年6月 5日 (水)

こどもまんなか保健医療PT「骨太2024および令和7年度予算編成に向けた提言」

 この6月4日、橋本がくが座長を務める自民党こどもまんなか保健医療の実現に関するプロジェクトチームにおいて「骨太の方針2024および令和7年度予算編成に向けた提言」を取りまとめ、政府に提言を行いました。この提言は、過去の2回PTにおける政府からの現状報告、日本産婦人科医会および日本小児科医会からのヒアリング、それらを踏まえた議員間の議論等を踏まえて作成したものです。ここにその内容を記します。

 なおこの提言の内容、特に出産(正常分娩)の保険適用については、新たな枠組みの検討も含めた検討を求めている部分については補足として「出産(正常分娩)の保険適用を巡る備忘録」に記しましたので、そちらも併せてご覧ください。

[PDF]骨太の方針2024および令和7年度予算編成に向けた提言


骨太の方針2024および令和7年度予算編成に向けた提言
令和6年6月4日
自由民主党政務調査会
社会保障制度調査会
こどもまんなか保健医療の実現に関するプロジェクトチーム

 昨年末、政府においては「こども未来戦略」および「こども大綱」を閣議決定した。その中で、出産費用(正常分娩)の保険適用の導入検討を含む出産等の経済的負担の軽減や、妊娠期からの切れ目のない支援の拡充、1か月児及び5歳児への健康診査ならびに新生児マススクリーニングの対象疾患拡充等の項目が示され、法律や予算に基づく事業として実施に移されつつあることは、本プロジェクトチーム(PT)が目指す「親と子の出産と育ちを一気通貫してサポートし、より安心できるものとする」という観点から、高く評価できるものである。 しかし本PTにおけるヒアリングや意見交換を通じ、なお懸念や要拡充点について議論があった。これを踏まえ、下記の通り提言を行うこととする。政府においてもこれを重く受け止め、実現に向け努められたい。

  1. 出産(正常分娩)の保険適用に関して、「出産等の経済的負担の軽減」が議論の出発点であることを十分に踏まえ、いつでも、どこに住んでいても安全かつ妊婦がアクセスできる周産期医療提供体制の確保、多様なニーズへの対応、他の医療行為や管理との関係などさまざまな論点があることも鑑み、サービスの利用者である妊娠・出産を望む方や妊産婦、サービス提供者である医療者を含む多様な関係者の意見を広く集め、現行の療養の給付のみに囚われることなく新たな政策体系の検討も含め、あらゆる政策手段の選択肢およびその組み合わせを考慮し、丁寧に検討を行うこと。
  2. 妊婦健診、周産期からのスムーズな乳幼児健診・医療、そして思春期・学校保健への接続および内容の充実を目指し、助産師等による伴走型相談支援等の推進、ペリネイタルビジットの普及や産後ケア事業への小児科の参画の推進、母子地域包括ケア病棟の実現、乳幼児健診の機会増加と実施率向上、新生児マススクリーニング対象疾患の拡充等に向けた調査研究等に取り組むとともに、そのための都道府県による広域的なサービスの調整など役割の明確化を含めた実施体制の確保等に取り組むこと。また、医療的ケア児等支援が必要な乳幼児の健診受診支援や予防のためのこどもの死亡検証(CDR)の実現、予防接種を含めた母子保健・学校保健の情報について一貫させたデジタル化等の検討を加速すること。
(以上)

続きを読む "こどもまんなか保健医療PT「骨太2024および令和7年度予算編成に向けた提言」"

| | コメント (0)

出産(正常分娩)の保険適用を巡る備忘録

 昨年末に閣議決定された「こども未来戦略」および「こども大綱」には、いずれも「出産費用(正常分娩)の保険適用」の文字があります。先日私が座長を務めている自民党社会保障制度調査会こどもまんなか保健医療の実現に関するPTにおいて議論したところ、この件について懸念や心配を含むさまざまなご意見をいただきました。それを踏まえPTでは今般骨太の方針2024および令和7年度予算平成に向けた提言を取りまとめ政府に示したところですが、あらためてこのブログに経緯や目指すところ等を記し、余計な誤解についてはこれを防ぎ、スムーズに政策目的が実現するべく、残しておきます。

1. 出産を巡る現状

 まずは出産等を巡る公的医療保険の現状についておさらいします。一般的に、病気やケガの治療のため病院等でマイナンバーカードか保険証を提示して医師の診察を受け、手術や投薬等の治療を受ければ、それぞれの人が加入している公的医療保険の適用となり、多くの人が3割の負担となります。これはすなわち、7割分が健康保険の現物給付を受けているということです。この、診察や治療に関する公的医療保険の現物給付を、健康保険法等の法律では「療養の給付」と呼びます。

 一方出産は、病気やケガではないため、療養の給付の対象とならず、診療所や病院等で分娩してかかった費用は全額自己負担となります。ただし医学上の必要により帝王切開になった場合等は病気ないしその疑い扱いとなり、これは既に療養の給付の対象となっています。現時点で療養の給付の対象ではないのは正常分娩の場合のみであり、なので上記閣議決定文書等の施策の対象は「出産(正常分娩)」という表現となるのです。

 ただし加入者が出産した時には、出産育児一時金が、それぞれが加入する公的医療保険から給付されます。出産育児一時金は昨年(令和5年)4月に42万円から50万円に引き上げられました。実はこれも健康保険法等に規定された公的医療保険の給付です。したがって、既に出産は正常分娩も含めて公的医療保険の給付対象です。実際のところ、例えば健康保険法第一条では、「この法律は、(…中略…)疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする」と記してあり、「出産」も明記されています。

 この点は「出産(正常分娩)の保険適用」という言葉に引きずられて生まれる誤解が多いところで、しばしば「出産は、ケガや病気ではないから、公的医療保険の給付の対象として考えるのは違和感がある」という類の議論を行う方がおられます。しかし、違和感があろうがなかろうが、既に出産は公的医療保険の給付対象とされていますので、この発言は無意味です。厳密に言えば、公的医療保険における正常分娩の現在の取り扱いは、「保険給付の対象ではあるが、療養の給付ではなく、出産育児一時金として給付が行われる」ということなのです。

 一方このことは医療機関側からみると、正常分娩は、診療報酬という形で政府によって価格が決められている保険診療ではなく自由診療ということになりますので、医療機関が価格を自由に設定できます。また、保険診療ではないため、保険医が診療を行う必要もありません。このことにより、他の保険診療にはない二つの特徴が生じます。

 ひとつは、医療機関により、正常分娩にかかる費用がバラバラであることです。これは、それぞれの医療機関の体制、提供された医療やサービスの内容、お産の経過、コスト(賃料や人件費)等がまちまちであることに主に起因しており、結果として私的病院(50.6万円)・公的病院(46.3万円)・診療所等(47.9万円)の間(数字はすべて令和2年度における平均値。出典は厚生労働省)や、都道府県の間(最大値は東京都(56.5万円)、最小値は鳥取県(35.7万円)、数字は令和3年度における平均値。出典は厚生労働省保健局p.28 )などと差がつく結果となっています。したがって、出産育児一時金で出産の費用を支払ってお釣りが出る人も、足りなくて自己負担が生じる人もいます。また少子化の進展により出生数の減少が続いていることもあり、価格の平均値も毎年上がり続けており、かつ分娩可能な施設は減少し続けています。したがって、このままの制度を続けていると、仮に出産育児一時金を価格上昇に合わせて増額し続けても、どんどん身近な施設が減少し、分娩のハードルは上がっていくのではないかと思われます。

 なお出産育児一時金の50万円への引上げに伴い、厚生労働省はその費用の内訳を調査して「見える化」し、出産時に自分に合った医療機関等を選択することができるように情報提供することとされました。その成果として先日公開されたWebサイトが「あなたにあった出産施設を探せるサイト『出産なび』へようこそ」です。ぜひ出産を控える多くの方にご活用いただけるとよいと思います。また、経緯等については厚生労働省の広報誌「厚生労働」の記事「お産の施設、どう選ぶ? 分娩施設の情報提供Webサイト誕生! 『出産費用の見える化』が始まります」に詳しいです。

 正常分娩が保険診療ではないことによるもうひとつの特徴は、もともと分娩は人類の発生以来自然に行われてきた生理的なものであるため、そもそも必ずしも医療の対象ではなかったことから、法律的には保険医療機関でなくても助産所でも自宅でも、極端な話どこでも行うことができるものであるし、医師の診断も必要ありません(もちろん実際には安全性等は考慮されるべきですが、可能か不可能かという話です)。とにかく出産しさえすれば、出産育児一時金の給付の対象となります。この点も療養の給付として行われる一般の診療とは大きく異なる点です。

2. 自民党および政府において出産(正常分娩)の保険適用が進展した経緯

 もともと出産の保険適用は、国会では時折取り上げられるテーマではありました。野党の議員の方が国会で質問するのを何回か聞いた記憶はありますが、毎回の政府の答弁は「様々な課題があるため、慎重な検討を要する」(≒やる気ない)というものだったと思います。自由民主党においても長くそのような方針でした。この方針が変わった経緯について記します。

 大きなきっかけは、自見はなこ・山田太郎両参議院議員を共同事務局として令和3年に設立された「Children Firstの子ども行政のあり方勉強会」でした。この勉強会は、こども庁の創設を目指して自民党若手有志で設立されたものです。同年2月には、インターネットを利用した無記名自記式の調査紙調査として、「子ども行政への要望・必要だと思うことアンケート」を行い、3月に分析結果を公表しました 。回答人数は17,458名、意見数は48,052件の大規模なものです。

 その中で、事務局の分類によれば、妊娠・出産にかかる費用負担に関する意見が約300件、妊娠期の充実した医療と産後ケアに関する意見が約3,000件あったとされており、これらの点に、一定のニーズや課題があることが明らかになりました。先述の通り、都道府県間でも正常分娩の費用負担に差があります。ただ、実際には出産を控える年代の女性は、最も費用が高価な東京都はじめ都市部に集中して住んでいる現実があり、里帰り出産も多少はあるとも思われますが、年間の分娩のうち相当な割合が、出産育児一時金では全く足りず、何十万円もの自己負担をして出産を余儀なくされているものと想像しなければなりません。アンケートの意見を読んでいても、そうした悲鳴のようなご意見が多数見受けられました。この状況が続く限り、出産一時金を多少引き上げたところで焼け石に水ではないかと思いました。

 この勉強会の提言を踏まえ、自民党「こども・若者」輝く未来創造本部および政府において検討が進み、令和4年6月にはこども基本法およびこども家庭庁設置法が成立、令和5年4月のこども家庭庁の設置につながります。この間の政府の検討により、出産育児一時金の50万円への引上げも決定しました。

 令和5年正月には岸田文雄総理が「異次元の少子化対策」の実施を打ち出し、さらなるこども施策の検討が政府において検討されることとなりました。その中で、自民党「こども・若者」輝く未来創造本部では、ヒアリングや議員間の議論を踏まえ、令和5年3月27日に「『次元の異なる少子化対策』への挑戦に向けて(論点整理)」を公表。その中で、「出産費用の保険適用および自己負担分の支援の具体的検討」と記され、自民党として、出産費用の保険適用という方向が打ち出されました。そしてこの提言を受けて同年3月31日に小倉將信こども政策担当大臣が取りまとめた「こども・子育て政策の強化について(試案)~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」において、「出産費用(正常分娩)の保険適用の導入を含め出産に関する支援等の在り方について検討を行う」という文言が記載されました。おそらく、この文書が、政府において初めて「出産費用(正常分娩)の保険適用」という文言が書かれた例となるものと思います。この試案をベースに検討され6月13日に閣議決定された「『こども未来戦略方針』~次元の異なる少子化対策の実現のための『こども未来戦略』の策定に向けて~」、12月22日に閣議決定された「『こども未来戦略』~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」等において、政府の方針として決定づけられてきました。

 このように、国民や若手有志議員の声が自民党を動かし、政府を動かしたのが「出産費用(正常分娩)の保険適用」だと、考えています。

3. 出産(正常分娩)の保険適用の議論の適切な着地点を目指して

 令和4年4月から不妊治療の保険適用を行った際には、一般不妊治療や生殖補助医療について、有効性・安全性が確認された治療を療養の給付に含めることで実現されました。そのため、出産(正常分娩)の保険適用についても、出産(正常分娩)を療養の給付に含めることで実現されることが、まずは想定されます。しかしこの方法は、さまざまな懸念が関係者から示されています。

 まず大きな心配は、現在は価格が医療機関ごとに自由に設定できますが、他の診療同様に診療報酬が全国一律に設定されることが想定されることにあります。その場合、現に地域による価格差があったり、体制によるコスト差があったり、分娩そのものも要する時間や処置がマチマチだったりすることをどのように考えるかが問われます。これをバッサリと包括的に全国一律かつ不十分な価格設定にされたりすると、経営が困難になり分娩取扱いを止める医療機関が多発するのではないかという心配に当然つながります。世界に対しても安全性を誇れる日本の周産期医療提供体制が維持できなくなれば、困るの妊産婦とこどもたちです。

 正常分娩は自由診療だったため食事も自費負担ですが、別段病気でもないのですから病院食を食べる必要はなく、お祝い事ですから素敵なお食事を提供するサービスも行われたりしていました。厳密に療養の給付にあてはめると、病院食を提供しないと全額自費負担になってしまうということになります。まあこのようなアメニティについては、差額ベッド代等と同様に選定療養に含め、支払いは自費とするが保険診療との併用を認めるということも考えられます。では新生児の聴覚検査等のサービスや、無痛分娩(といっても完全に痛みがなくなる訳ではないので麻酔分娩と呼ぶべきだという意見がPTでありました)を給付の対象と考えるかどうかといった、分娩に伴う様々なサービスをどこに当てはめるかは、専門的な議論が必要な問題だろうと思われます。なお個人的には、無痛分娩も保険給付に含めた方がよいと思いますが、その場合には麻酔科医師の配置等が必要になりますのでそれに応じた報酬設定ないしは加算を考える必要があります。

 またそのままだと原則3割の一部負担金が生じるため必ずしも負担軽減にならない、場合によっては負担が増えてしまうかもしれないという問題もあります。もともと療養の給付における一部負担金は、基本的には医療サービスは現物給付するものの、本人にも疾病やケガを防ぐよう意識づけをしてもらうという意味で一部負担を求めるという趣旨のものです。しかし妊娠・出産はメデタイことであり、政策的にも後押しすべきことです。そのため本人に一部負担金を求める理由がありません。

 もうひとつ大きな問題は、助産師による助産所または自宅等でのお産をどう取り扱うかです。現在の健康保険の診療・調剤は、保険医療機関または保険薬局により、被保険者の確認を受けて給付を受ける必要があります。また健康保険の診療・調剤を行うのは、保健医(医師・歯科医師)または保険薬剤師でなければなりません。しかし助産所も助産師もいずれも上記に含まれておらず、そのままでは、助産師のみの助産所では療養の給付としての分娩を行うことは事実上できないということになります。しかし、保険適用のために現に分娩の選択肢として在るものの幅を狭めてしまうのは、本末転倒のそしりを逃れません。

 まだ他にもあるかもしれませんが、ざっと思いつくだけでも以上の懸念や心配があることに対し、ご関係の方々が安心するような着地点をこれから検討する必要があります。その中で出てきたのが、PT提言で記した、「療養の給付のみに囚われることなく新たな政策体系の検討を含め」という文言です。要は、療養の給付ではない新たな現物給付の類型を創設してしまえば、少なくとも一部負担金の考え方や助産所での分娩など上記の中のいくつかの問題は解決しやすくなるのではないかという発想です。もちろんそれだけで全てが解決するわけではなく、医療とアメニティの切り分けや適切な報酬設定の在り方、地域差に基づく地域別の報酬設定の是非など、さらに実情の把握を重ねそれに基づく多様な議論が必要な課題も、多々あるものとも思います。

 また、いずれにせよ、分娩一回あたりの出来高払いが基本となるでしょうから、分娩数の減少に伴う産科医療機関の収入減は、おそらく当面歯止めがかかりません。これに伴う産科医療機関等の経営悪化や分娩取扱いの休止等を防ぐためには、別途外来や病床維持のための補助等も検討する必要があるのではないかと、個人的には考えます。また新生児の聴覚検査等について出生時に一律に行うべきものがあれば、これも別途補助等を検討すべきでしょう。これらはおそらく保険ではなく、公費を財源とするべきものでしょう。この辺りの気持ちを、PT提言における「あらゆる政策手段の選択肢およびその組み合わせを考慮し」という一節に込めているつもりです。

  5月15日に厚生労働省は社会保障審議会利用保険部会を開催し、妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会を設置する方針を明らかにしました。医療関係者、医療保険者等、自治体関係者、妊産婦の声を伝える者、学識経験者等を構成員とし、出産に関する支援等の更なる強化策(医療保険制度における支援の在り方、周産期医療提供体制の在り方)や、妊娠期・産前産後に関する支援の更なる強化策等について議論されるとのことです(資料)。多くの関係者の知恵を結集し、ここに記したような課題を上手に解決する制度が構築されることを期待しています。

4. こどもまんなか保健医療とは

 さて、妊娠から出産、そして子育ては、親子にとっては一連のものですが、行く先がバラバラでありそのたびごとに探さないといけないというハードルがあるのではないかと、個人的にずっと考えていました。例えば妊娠したらまずは自治体に妊娠届を提出します。すると自治体は伴走型相談支援を行います。一方で、妊婦健診は産婦人科の診療所・病院や助産所に通います。場合によっては、分娩はまた別の大きな病院でということになるかもしれません。分娩が済んだら、産後ケアや乳幼児の健診、乳児家庭全戸訪問等の自治体による支援があります。しかし回数等は自治体により異なります。こどもの予防接種や病気等では、小児科の診療所や病院にかかることになります。学校に通うようになっても、場合によっては受診やさまざまな支援が必要になることは少なくありません。以上のプロセスにおいて、二人目以降のこどもであれば親も多少慣れているかもしれませんが、初産であれば親が自分で調べてあちこちに行かなければなりません。また二人目以降の場合は、その間に兄/姉をどこかに預ける必要があるかも知れず、一時的な預け先を探す必要があるかもしれません。

 そこで今回の出産(正常分娩)の保険適用の検討は折角の機会なので、周産期のみならず、妊娠から出産、乳幼児子育て期から就学期(学校保健を含む)、思春期まで、親と子のより健康な育ちを一気通貫して多機関が連携してサポートできるような、いわば「妊娠・出産・子育て版地域包括ケアシステム」のようなモデルを構築し、それを都市部や地方部それぞれに提供体制のビジョンを描くことで、どこに住んでいても安心して妊娠・出産・子育てができる国・自治体・医療機関等を通じた支援体制の構築するような議論を、先の検討会にしていただくことを期待しています。これは昨年四月に施行された成育基本法の理念の実現そのものです。

 そういう意味で、本PTは単に出産(正常分娩)の保険適用だけでなく、その前後も含め親子の立場に立った議論を行うために「こどもまんなか保健医療の実現」を掲げています。今後も引き続き、より安心して妊娠・出産・子育てができる社会を目指し、党内の議論を前進させます。

続きを読む "出産(正常分娩)の保険適用を巡る備忘録"

| | コメント (0)

2023年5月30日 (火)

創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム提言

 5月16日に、橋本がくが座長を務める自民党社会保障制度調査会創薬力の強化育成に関するPTの会議にて、今年度の骨太の方針や概算要求等を念頭においた提言について一任をいただきました。その後、会議での発言等を踏まえて修文を行った上で、本日の自民党政務調査会審議会においてご了承をいただき、党政調としても決定いただきました。提言内容について、下記の通りですのでご覧いただければ幸いです。なお今週中に首相官邸を訪ね、提出する予定です。

●(PDF版)創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム 提言


創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム 提言

令和5年5月16日
自由民主党政務調査会
社会保障制度調査会
創薬力の強化育成に関するPT

1.はじめに

  • 医薬品産業は日本の中核産業であり、また、国民の生命の維持に直結する生命関連産業であることから、本PTにおいてはこれまで、「医薬品産業エコシステムと医薬安全保障の確立」(令和3年5月13日)、「医薬品産業を通じた世界のヘルスケア分野の牽引に向けた提言」(令和4年9月9日)及び「薬価制度の抜本改革に関する提言」(令和4年11月28日)を取りまとめ、政府に取組を求めてきた。
  • 今般、こうした提言を踏まえつつ、厚生労働省において「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」が行われていることも受けて、創薬力の強化や医薬品の安定供給といった課題への対応について、政府に以下の取組を求める。

2.現状と課題

日本起源の医薬品の減少、世界市場に占めるシェアの減少、輸入超過
  • 医薬品産業は今後の経済成長の中核となる重要な産業であるとともに、国民の生命の維持に直結する生命関連産業でもある一方で、日本起源の医薬品が減少し、国内市場の縮小・世界市場に占めるシェアが減少するなど、わが国の医薬品産業の国際競争力・体力は低下している。
  • 具体的には、世界売上上位100品目のうち、日本起源医薬品は12品目(2003年)から9品目(2020年)に減少し、日本起源医薬品の世界市場シェア(売上高)は12.1%(2000年)から9.8%(2016年)に低下しているほか、医療用医薬品市場の構成比についても、アメリカに次いで2位(10.8%、2010年)であったものが、近年では中国にその地位を譲っている(6.8%、2020年)。
  • こうした状況の背景には、世界市場における売上トップがベンチャー企業起源のバイオ医薬品に占められている等、創薬の主体やモダリティが変化した一方で、わが国は依然として大手製薬企業由来の創薬が主流となっているほか、バイオ医薬品の分野においても遅れを取っているなど、世界的な創薬の潮流に立ち後れていることが挙げられる。
希少疾病、小児分野等を中心としたドラッグロスの発生
  • 医療用医薬品の世界売上上位300品目(2019年時点)の日米欧上市順位を見てみると、日本においては約7割の医薬品の上市順位が3番目となっているほか、約18%の医薬品が未上市となっている。
  • 欧米では承認されている一方で、国内では未承認の医薬品は143品目(2023年3月時点)、このうち開発に着手すらされていない医薬品は86品目(未承認薬のうち60.1%)となっており、ドラッグラグに留まらず、革新的な新薬が国内市場に上市されないドラッグロスの問題が顕在化している。
  • また、86品目の内訳としては、オーファンドラッグが47%(40品目)、小児用医薬品が37%(32品目)となっており、市場規模が小さく開発インセンティブが働きづらい分野においてドラッグラグ・ドラッグロスが顕著となっている結果、治療の選択肢が狭まり、小児や希少疾病患者に、生死にも関わるような不利益が生じている。
後発医薬品の供給不安及び流通取引上の課題
  • 後発医薬品は医療用医薬品の使用量の約半数を占め、国民生活に浸透した、必要不可欠な医薬品となっている一方で、2021年以降、複数の後発医薬品企業における製造・品質管理の不備に対する行政処分を契機として、後発医薬品の全品目の約3割が出荷停止又は限定出荷となっているほか、その影響は一部の先発医薬品にも及んでいる。
  • こうした安定供給問題の背景としては、企業におけるコンプライアンスやガバナンス上の課題に加えて、
    ・共同開発の導入等により参入障壁が低下したことで多くの企業が市場に参入し、価格競争が激化したこと、
    ・総価取引が多く行われる中で、後発品の薬価は調整弁として大きく下落する構造にあること、
    ・収益確保のため、比較的利益の得やすい特許切れ直後の品目に再び多くの企業が参入するという負のスパイラル構造により、多品目少量生産という非効率的な生産構造ができあがったこと
    等の産業構造上の課題が挙げられる。
  • 購買力を背景に過大な価格競争が行われることにより「過剰な薬価差」が生じ、その結果、乖離率が大きくなることで薬価が下がりやすい構造となっている。
医薬品サプライチェーンの強靭化・医薬品安全保障
  • 今般、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による需要の増加や、ウクライナ問題を契機とした原材料費の高騰により、その原薬・原材料の多くを特定の国に依存している後発医薬品をはじめとして、医薬品の供給リスクが顕在化している。
  • こうした感染症や地政学上のリスクに加え、災害等の様々な供給リスクに対応するため、サプライチェーンの強靱化など、医薬品の安定供給のための体制確保が求められる。
「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」の両立
  • 令和3年度から中間年改定が実施され、2年に1度であった薬価改定が毎年実施されているが、乖離率は2年に1度の改定を行っていた期間と大きく変わらないことから、結果として薬価が倍のスピードで下落する状況となっており、社会保障費の財源捻出を薬価改定に求める構造は限界を迎えている。
  • 今後とも高額な医薬品が上市されることを踏まえつつ、医療保険制度の持続可能性の観点から財源確保の在り方について検討することが不可欠な状況。

3.わが国の医薬品産業が目指す姿

(1) 日本でシーズを見つけ育てる能力(創薬力)を強化することで国際競争力を高め、医薬品産業を日本経済により貢献できる基幹産業とする。

  • 政府において医薬品産業を基幹産業と位置づけ、創薬力強化に向けた国家戦略の下、政府一丸となって創薬に挑戦する企業が支援を受けられる環境であること。
  • 政府に医薬品産業に係る司令塔が設置され、アカデミアの専門的見地に裏付けられた組織によるガバナンスの下で創薬力強化が推進されていること。
  • 治験環境やデータ基盤等の創薬基盤が整備され、アカデミア、ベンチャー企業、大手製薬企業が連携する創薬エコシステムの下で、絶え間なくイノベーションが生み出されていること。
  • 研究開発型企業が、新薬の売上で研究開発費を回収し、特許切れを見据えて速やかに次の新薬の研究開発に移るというビジネスモデルを採ることで高い創薬力を持つ産業構造となっていること。

(2) 公的医療保険制度を守りつつ、国民が適切な負担でより多くの医薬品を安心して使用できるような環境を整備する。

  • 国外オリジンの新薬について、日本においてもアメリカ等と同時に承認申請がなされ、新しい技術によって製造された新薬に国民が円滑にアクセスできること。
  • 小児・希少疾病等について、患者が国内未承認薬の使用を希望する場合に、大きな負担なく当該希望が叶えられること。
  • こうした患者の医薬品へのアクセス確保のためにも、製薬企業にとって予見可能性のある薬価制度が構築され、日本の医薬品市場が安定的で成長する市場となっていること。
  • 国民の生活に必須である後発医薬品については、多品目少量生産という非効率的な生産構造が解消され、品質が確保されるとともに、安定的に供給されていることが重要であり、品質の確保や安定供給が可能な企業が適切に評価される市場となっていること。
  • 医薬品製造・流通について、適切な流通取引が確保されているとともに、地政学上のリスクなどに対応できる強靱なサプライチェーンが構築され、供給不安時に関係者が迅速に供給情報を共有できる体制が整備されていること。

4.具体的施策の方向性(R3.5.13 『医薬品産業エコシステムと医薬安全保障の確立』を前提に)

⑴について

医薬品に係る国家戦略の確立と実行体制の整備
  • 製薬企業が国際展開を見据えつつ、新規モダリティの分野における研究開発に投資し、イノベーションの創出に挑戦できるよう、日本における創薬力の持続的な発展を目的とする国家戦略を策定し、政府一丸となって支援を行うべき。
  • その際、内閣の重要施策の企画立案・総合調整に当たる内閣官房が司令塔機能を担うべきである。また、健康・医療に関する先端的研究開発及び新産業創出の推進を司る内閣府健康・医療戦略事務局は、シーズが産業化されるまでの流れを一気通貫で、専門的知見を十分に活用して支援すべく、各省庁との連携における中心的役割を果たすため、その所掌事務や権能、組織体制等について、法改正を視野に検討すべき。
  • 政府の中に創薬に係る研究開発や、産業化を見据えた企業戦略等についての専門的知識を有する多様なアカデミア人材で構成される委員会を組織し、国は国家戦略の策定・実行・ガバナンスに当たって連携すべき。
  • 当該ガバナンスの下で、次のモダリティとしてどの分野に注力するのか等、投資の優先順位付けを行い、優先順位に沿って産業化までの支援を行うとともに、新規モダリティに対応するため、バイオ医薬品の製造支援・人材育成を進めるべき。
創薬エコシステムの育成支援
  • 国内外のベンチャー企業、アカデミア、ベンチャーキャピタルなどとの協業(オープンイノベーション)が起こりやすいエコシステムを構築し、シーズの開発から製品化まで一気通貫の支援を強化するべき。
  • また、エコシステムの構築に向けて、オープンイノベーションを促進するコミュニティの形成や創薬ベンチャーの企業拠点を形成する取組への支援を行うべき。
  • また、ベンチャー企業等が、アカデミアの創薬シーズを開発し、実用化するためには多額の資金が必要であり、現在の取組を進めつつ、AMED・SCARDAの在り方について検討するとともに、欧米のリスクマネーを呼び込むことを含め、日本にリスクマネーが入る仕組みを検討すべき。
治験環境の改善
  • 治験実施拠点の機能強化を図るとともに、国際共同治験の実施体制を強化し、アジアにおける医薬品・医療機器等の規制調和を推進すべき。
  • 国際共同治験における日本人データの必要性を整理すべき。その際、日本人での安全性を確保しつつ海外データの評価を含めて迅速な国際共同治験への参加や薬事承認が可能となるよう、承認手続きの合理化やPMDAの審査体制の強化を行うべき。
  • 疾患別レジストリや来院に依存しない治験の活用を含むリアルワールドデータの薬事における利活用を推進すべき。
  • 日本における治験の活性化に向けて、治験情報を適切に患者に届ける等の対応を推進すべく、関係者間での協力・連携を強化すべき。
医療情報の利活用推進
  • 出口を見据えた戦略的な全ゲノム解析等の情報基盤の拡充とその利活用による創薬等を推進するため、事業実施組織の発足に向けた体制整備とバイオバンク間の連携強化等を進めるべき。
  • 研究や治験データの解析等への医療情報の二次利活用を促進し、わが国の創薬力等を高めるため、国際的な動向や関係者のニーズを把握しつつ、同意取得の在り方を含めた仕組みとインフラの構築を進めるべき。
長期収載品の種別等に応じた対応
  • 長期収載品については後発品への置き換えを推進し、新薬の特許切れを見据えて速やかに次の新薬の研究開発に移るというビジネスモデルへの転換を促すべき。その際、種別や様々な使用実態に応じた対応についても検討すべき。
⑵について

日本市場の魅力向上に資する薬価制度の構築
  • 日本の薬価制度は予見可能性が低く、イノベーションの評価が不十分であること、薬価収載時の価格が欧米と比較して低いことがドラッグラグ・ドラッグロスに繋がっているとの指摘があることを踏まえ、以下の対策を講ずるべき。
  • 再生医療等製品等など、現行の薬価制度においては、比較薬がないような革新的新薬について、既存の制度の枠にとらわれない新たな枠組みによる評価方法の可能性を検討すべき。
  • 市場拡大再算定について、薬理作用類似薬が増加する中で、いわゆる「共連れ」制度により予見可能性が低下しているとの指摘を踏まえ、制度の見直しについて検討すること。
  • 新薬創出等加算について、創薬の主流となっているベンチャー企業がしっかりと加算を受けられるように見直すなど、特許期間中の革新的新薬が価格を維持できるような制度とすること。
  • 企業の投資判断に影響を与えるような薬価制度改革が頻回に行われていることや、薬価制度自体が複雑化していることを踏まえて、投資回収の予見可能性の低下に配慮すべき。
小児・希少疾病等に係る保険外の医薬品利用に対する支援等
  • 未承認薬の解消のため、成人と同時に小児医薬品の開発を促すような薬事制度における新たな方策の導入や、希少疾病用医薬品の指定の早期化・拡大、未承認薬・適応外薬検討会議の体制強化による評価の加速化等を図るとともに、未承認の段階での患者アクセスを向上させる仕組みとして、例えば、米国における患者個人を対象とした拡大治験(Single Patient Expanded Access)の仕組みなど海外の制度も参考に、患者の費用負担にも配慮しつつ、検討を進めるべき。
  • 小児がんについては、AMED事業で採択された臨床研究が患者申出療養制度等の下で実施されていることにより、速やかに未承認薬を用いた治療が行われるとともに、患者の費用負担が軽減されているが、こうした仕組みの他の小児・希少疾病等への展開を進めるべき。
後発医薬品等の安定供給に向けた市場環境の適正化等
  • 品質の担保された医薬品を安定的に供給することができる企業をより評価する仕組みを導入することで、こうした企業で構成される産業構造への転換を図るべき。
  • まずは少量多品目構造を解消すべきであり、そのための薬価の在り方を検討するとともに、品目統合に併せて安定供給に資する製造ラインの増強等の取組を行う企業への支援を行うべき。
  • 血液製剤や輸液など製造工程の特殊性があるものや、外用剤、眼科用剤など製剤的特性を有するもの、漢方製剤など、事情により後発医薬品が上市されない又は後発医薬品への置き換えが進まない医薬品については、後発医薬品と同様に安定供給の確保に向けた取組を進めるべき。
  • バイオシミラーについては、認知度の低さ等により置換えが進んでいないが、政府目標の下、国内製造の促進等の安定供給確保を進めつつ、その使用を促進すべき。
  • 医療上の必要性が高い医薬品については、薬価を下支えする現行制度の運用改善を検討するとともに、中長期的に、採算性を維持するための制度について検討を進めるべき。
  • 都道府県における薬事監視の体制を強化するとともに、薬事監視の情報共有を国と都道府県間で速やかに行うなどの連携体制の整備を行うことで、企業に対するガバナンスを強化するべき。
サプライチェーンの強靱化
  • 医薬品安全保障の観点から、種々の供給リスクに対応するため、原薬・原材料から製剤化までのサプライチェーンを把握・分析した上で、明らかとなったリスクに応じて、政府と企業が連携して原薬の国産化や備蓄、マルチソース化などの取組を講ずるべきであり、企業への取組を促すとともに政府として、諸外国と協力・連携することも含めてそうした取組への支援について検討すべき。
  • 医薬品の供給不安発生時においては、関係者間で状況が共有されないことで不安が助長され、買い込み等による物資の偏在が発生することを踏まえ、流通関係者が医薬品の出荷状況、流通状況等を迅速かつ正確に把握・共有できる仕組みを構築すべき。
適切な流通取引の確保
  • 総価取引の是正など、適切な流通取引の確保のため、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の実効性確保に取り組むべき。
  • 「過剰な薬価差」についてその実態を把握し、医療現場や医薬品卸売業者等の意見を聞きつつ、是正に向けた検討を進めるべき。
持続可能な薬価制度
  • 社会保障費の自然増抑制を薬価改定に財源を求めていくことは、もはや限界を迎えている。さらに、日本の医薬品市場の魅力を増大させるための財源確保策について、政府全体として速やかに検討を行うべき。
  • 「薬価制度の抜本改革に関する提言」(令和4年11月28日)の内容が必ずしも全て実行に移されていないことを認識し、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」において、改定の対象が「価格乖離の大きな品目」とされていることの趣旨を踏まえ、薬価制度や今後の中間年改定の在り方について検討を行うべき。
(以上)

続きを読む "創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム提言"

| | コメント (0)

2022年12月23日 (金)

全世代型社会保障に関する特命委員会 取りまとめ

 さる12月13日、橋本がくが事務局長を務める自民党全世代型社会保障に関する特命委員会において、それまでの議論のとりまとめを行いました。この「取りまとめ」は、自民党政調審議会にお諮りした上で、12月15日に田村憲久委員長とともに総理官邸において岸田文雄総理に面会し、党からの提言として申し入れを行いました。内容としては、こども・子育て、医療、介護など日本における社会保障制度の課題に対し、特命委員会にて議論を行った結果として当面とるべき施策を整理したものであり、政府による来年以降の社会保障制度にまつわる具体的な法改正等の根拠となるものです。ぜひご覧ください。

221215

 なおこの申し入れを受け、政府では12月16日に全世代型社会保障構築会議の報告書を取りまとめていますので、併せてご参照ください。



全世代型社会保障に関する特命委員会 取りまとめ

令和4年12月13日
自由民主党政務調査会
全世代型社会保障に関する特命委員会

1.検討の経緯

 本「全世代型社会保障に関する特命委員会」は、わが国において少子化・超高齢化が進展し、社会保障給付費が急増する中、未来を見据えて、わが国の社会保障制度を維持するとともに、「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」という従来の形から、「全ての世代が相互に支え合う仕組み」への転換を図るために、抜本的な議論を行い、政府に対して必要な改革を提言するために設けられたものである。

 本年9月、総理を本部長とする全世代型社会保障構築本部において、総理から、全世代型の社会保障制度を構築するための議論を加速化していくため、「子ども・子育て支援の充実」「医療・介護制度の改革」「働き方に中立的な社会保障制度等の構築」といった3つのテーマを中心に、年末に向けて議論を進めるよう指示があった。

 政府においては、この本部の下に設けられた全世代型社会保障構築会議において、これら3つのテーマを中心に議論が進められており、本年の年末までに報告を取りまとめる予定となっている。

 わが党においても、全5回、本特命委員会を開催し、政府から、全世代型社会保障構築会議の議論についてヒアリングを行うとともに、より根本的かつ中長期的な観点から、わが国のあるべき社会保障制度の姿とその実現のために必要となる制度の見直しの方向性について、議論を重ねてきた。

 これまでの議論に基づいて、政府の全世代型社会保障構築会議・同本部で取りまとめられる報告への反映を含め、政府が今後取り組むべき内容について整理した。


2.全世代型社会保障に関する基本的な考え方

 超高齢化とかつてない少子化が進む中で、全ての世代がお互いに支え合い、安心できる「全世代型社会保障」を実現するため、これまでわが党は政府と一体となって取り組んできた。

 わが国の後期高齢者の人口は、2025年までに全ての団塊の世代が後期高齢者となることから、現在、急増する時期にある。超高齢化に対応するため、来年通常国会に提出が予定されている医療・介護関連法案は、当面の対応として必要とは言えるものの、これだけでは、「全世代型社会保障」が実現されるとは言い難い。

 目下、最大の課題は人口の減少であり、少子化である。少子化対策は、これからの社会保障政策の「一丁目一番地」として取り組むべきものである。今、我々に求められているのは、少子化対策の抜本的な強化に思い切って舵を切り、具体的な政策体系を提示するとともに、そのための安定的な財源を確保することである。あわせて、当面は不可避と考えられる人口減少社会に対応した施策を講じていくことも必要である。特に、進展する高齢化に加え医療の高度化について医療保険としてどのように受け止めるかが大きな課題となっている。医療・介護を含む各制度を持続可能なものにして、世界に冠たる国民皆保険制度をはじめとした社会保障制度を次の世代に引き継いでいくことが、わが党の責務である。

 そのために、本特命委員会としても議論を続け、来年度の骨太方針に向けて、更なる改革の具体化に取り組んでいかなければならない。


3.各分野の具体的提言

(1)少子化対策

 コロナ禍の中で、婚姻件数が2年間で約10万組減少している。また、令和3年の出生数は81.2万人まで急減し、将来人口推計の推計値よりも7年程度少子化が前倒しで加速している。今後も高齢者の増加が続く中で、医療や介護をはじめわが国の社会保障制度を維持・発展させる観点からも、現役世代の減少は大きな課題である。こうした中で、少子化問題は、諸外国において国家戦略上の最重要課題として認識されており、わが国においても、少子化の克服を最優先の国家的課題として位置づけ、取り組みを進めなければならない。

 少子化の背景には、経済的な不安定さ、男女の仕事と子育ての両立の難しさ、子育て中の孤立感や負担感など、結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っている。第二次安倍政権以降、わが党としては、消費税率引上げなどの財源を活用して、待機児童の解消や、幼児教育・保育の無償化、高等教育の負担軽減、不妊治療の保険適用など、様々な取り組みを行ってきたが、少子化のトレンドを反転させるまでには至っていない。

 現下の出生数急減などの危機的状況を踏まえれば、抜本的・総合的な少子化対策を改めて構築し、強力に推進していく必要がある。その中で、特に、現行制度で支援が比較的手薄な0~2歳児への支援に速やかに着手すべきである。
そのため、まずは、令和4年度第二次補正予算で措置した経済的支援と伴走型相談支援の一体的実施について、あらゆる方策により、今後の安定的な財源を確保しつつ、継続的かつ着実に実施していくべきである。これにより、来年4月に発足するこども家庭庁の下、全ての妊産婦や子育て世帯に対して、寄り添いながら相談に応じることのできる体制を全ての地域で構築しながら、特に低年齢児を育てる世帯への経済的な支援の充実を図るべきである。また、出産育児一時金については、大幅な増額及び見える化が必要であり、それにより、子育て世帯が真にメリットを感じることができるようにすべきである。

 更に、仕事と子育ての両立支援も少子化対策にとって喫緊の課題である。労働力人口が減少するわが国においては、仕事か子育てかのどちらかしか選択できない状況に陥ることのないよう、制度面においても対応が必要である。このため、希望する方が時短勤務を選択しやすくするための給付の創設や、雇用のセーフティネットや育児休業給付の対象外となっている短時間労働者への支援、その他の育児休業給付の対象外となっている者への育児期間中の給付の創設などの施策を早急に具体化させるべきである。

 こうした支援策の具体化により、大幅に子育て支援施策を充実させることとあわせて、国民各層の理解を得ながら、安定財源について、社会全体での費用負担の在り方を含め幅広く検討を進めなければならない。安定的な財源の確保にあたっては、企業を含め社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で、広く負担していく新たな枠組みについても検討すべきである。

 主に0~2歳児に焦点を当てた切れ目のない包括的支援を早期に構築した後に、児童手当の拡充などについて恒久的な財源とあわせて検討を行うべきである。

 また、希望する全ての若者が安心して結婚・出産・子育てという選択に踏み出すためには、経済的支援だけでなく、個々人が将来の展望を持てる安定した雇用を確保することが不可欠である。こうした観点から、まずは、継続的な賃上げ、可処分所得の増加、消費の向上という好循環の実現が重要であり、更に、少子化や婚姻数の減少の根本的要因ともいえる正規・非正規の格差の是正をはじめ、雇用の在り方の見直しに取り組んでいくべきである。あわせて、医療的ケア児を含む障害児に対する支援に積極的に取り組むべきである。

(2)医療

 わが国の世界に冠たる国民皆保険を今後も堅持していくべきである。その中で、医療費の増加に伴い、これまでも国民全体で負担すべき費用が年々上昇している。高齢者にも保険料を通じてご負担を頂いてきたところであるが、同時に現役世代が支払う高齢者を支えるための支援金もそれ以上に上昇してきた。さらに、団塊の世代が後期高齢者となることから、今後3年間、わが国の後期高齢者の人口の急増が見込まれている。これに伴い、医療保険においては、急増する高齢者の医療費を支えられるよう、中間層にも配慮しつつ、高齢者か現役世代かを問わず、負担能力に応じて、全ての世代で支えあう仕組みの構築が急務である。

 こうした観点から、出産育児一時金の増額とともに、それを医療保険の加入者全体で支え合う仕組みの導入に取り組む必要がある。
また、制度導入以降、現役世代の負担が大きく増加している後期高齢者医療制度への支援金の仕組みを、後期高齢者の保険料と現役世代1人当たりの支援金の伸び率が同じになるよう見直し、現役世代の保険料負担上昇を抑制する。併せて、後期高齢者の保険料負担を見直し、賦課限度額や所得に係る保険料率の引き上げを行うべきである。

 健康保険組合については、保険料率に幅がある状況である。被用者保険者間の格差是正の観点から、健康保険組合間の保険料負担を公平にするため、現在、加入者数に応じた調整を一律に実施している前期高齢者の医療費負担について、加入者数に応じた調整に加え、報酬水準に応じた調整の導入に取り組む必要がある。ただし、報酬調整の導入は、あくまでも部分的なものとし、その範囲については、1/3程度に止めるべきである。今回の報酬調整の導入により、協会けんぽは一時的に負担増となっているが、構造的には負担減につながるものと考えられる。
高齢者医療制度の見直しに伴い、後期高齢者の保険料については、激変緩和の観点から配慮が必要と考えられる。具体的には、


  • 出産育児一時金を全世代で支え合う仕組みについては、令和6年度、7年度においては、出産育児一時金総額の半分について、支え合う仕組みとし、令和8年度から全額を対象とする。
  • 後期高齢者の賦課限度額の引上げ(対象者1%程度)にあたっては、令和6年度に73万円、令和7年度に80万円と段階的に引き上げる。
  • 後期高齢者の所得割の引上げにあたっては、収入上位約3割となる年収211万円までの方々について、令和6年度は制度改革の影響による引上げが生じないように、経過措置を実施すべきである。

 また、後期高齢者の保険料負担割合の見直しと前期高齢者納付金の報酬調整の導入にあたっては、報酬水準の低い健康保険組合は負担軽減となるが、さらに、公費負担減を、企業が賃上げ努力を行った企業のことにより納付金が増加する健康保険組合や高齢者医療の支援負担が重い健康保険組合などへの支援に充てて、現役世代、特に健康保険組合が全体として負担軽減となるような見直しとすべきである。あわせて、保険者機能が発揮される取り組みも検討するとともに、医療費適正化や健康寿命延伸に向けて取り組むべきである。

 今後、更なる高齢者の増加と生産年齢人口の急減が見込まれる中で、地域によって大きく異なる人口構造の変化に対応し、地域包括ケアの中で、地域のそれぞれの医療機関が地域の実情に応じ、その機能に応じたや専門性に応じて連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮することで、国民が必要とする医療を受けることができるよう、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う必要がある。その際、かかりつけ医機能を有する医療機関を選択することはあくまでも患者の選択であり、義務ではないこと、さらに、わが国医療のフリーアクセスを守り、必要なときに迅速には必要な医療を受けられる原則は変わらないことを前提とすべきである。また、まずは高齢化に医療現場のエビデンスを踏まえて対応することを主眼に置くが、こどもや中高年について、かかりつけ医機能の向上に向けて医師の能力をより高めていくことも引き続き議論が必要である。

 なお、新型コロナ感染症が拡大した当初における医療機関の発熱患者への対応をもって、かかりつけ医機能の制度整備が必要とする趣旨の指摘が政府作成資料で見受けられるが、感染症有事においては今般成立した改正感染症法に基づき予め都道府県との間で協定を締結した医療機関がその内容に沿って対応することとなっており、平時におけるかかりつけ医の問題は全く別の問題であることを政府においては認識すべきである。

 これらの他こうした議論を反映して、全世代型社会保障構築会議の議論をまとめ、それらに基づいて、引き続き法案提出に向けて取り組んでいくべきである。

(3)介護

 介護保険制度は、過去20年あまりで費用が約4倍に拡大している。今後、2025年には団塊の世代が全員75歳以上となり、更に要介護者が約半数を占める85歳以上人口の急増も見込まれる。こうした中で、令和6年度からの次期計画期間においても、持続可能な運営が実現するように、来年の骨太方針2023に向けて議論を進めるべきである。

 また、更なる高齢化に合わせて、サービス提供体制の充実も求められる。高齢者ができる限り住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、地域包括ケアシステムの深化・推進を図ることが必要であり、とりわけ、中重度の要介護者になっても住み慣れた地域で単身・独居や高齢者のみの世帯の増加、介護ニーズが急増する都市部の状況等を踏まえ、それぞれの地域社会の実情にあわせた柔軟なサービスの提供が求められる。その中で、中重度の要介護者を含め在宅でも必要な介護サービスを利用しながら生活し続けられるようにすることが重要であり、複合的な在宅サービス等の普及や医療・介護の連携の推進を一層図るべきである。

 今後さらに増加する認知症の方やその家族を含めた包括的な支援を図るため、相談支援や関係者との連絡調整を担う地域包括支援センターの体制整備が必要である。

 さらに、今後、生産年齢人口の急減が見込まれる中で、将来にわたって安定的な介護サービスの提供体制を確保するため、介護現場の生産性の向上を推進するとともに、介護職員の働く環境改善に総合的に取り組むべきである。

(4)その他

 その他の課題についても、全世代型社会保障構築会議の議論と並行して、本特命委員会においても議論を進めていく。


4.おわりに

 新型コロナの中でも、高齢化は一段と進み、少子化は更に危機的状況となっている。これは国家にとっての「静かな有事」であり、国の安全保障と並んで政権として最優先で取り組むべき課題である。本特命委員会は、引き続き、この長年の課題に答えを出し、将来に希望と安心を与えるべく、議論の先頭に立っていく。

(以上)

| | コメント (0)

2022年11月30日 (水)

薬価制度の抜本改革に関する提言・所見

 このたび橋本がくが座長を務める自民党社会保障制度調査会のPT「創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム」において、ヒアリングおよび議論を行い、「薬価制度の抜本改革に関する提言」およびその別紙として「薬価制度の抜本改革に関する所見」をとりまとめました。単に政策提言を行うのみならず、所見としてその背景となる日本の医薬品供給の危機的な状況を整理しました。この状況は、誰もが保険料を支払い、患者となり医療を受ける立場になる得る以上、できるだけ多くの皆さまに知っていただきたく、ぜひお目通しいただければ幸いです。


令和4年11月28日
薬価制度の抜本改革に関する提言
自由民主党政務調査会
社会保障制度調査会
創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム

 現在、厚生労働省において「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」が行われている。本PTとしてもこの検討会をフォローアップするため、10月20日に厚生労働省から説明を聴取し、また11月14日には6団体からヒアリングを行い、議員間の討議を行った。その結果、以下の認識を共有するに至った(詳細は別紙「薬価規格の抜本改革に関する所見」参照)。

  • 毎年改定等を含む「薬価制度の抜本改革」は、国民負担増加幅の軽減には寄与したものの、日本における新薬上市の遅れや不申請(ドラッグラグ・ドラッグロス)、研究開発投資の減少、後発医薬品の出荷調整などの問題の要因となっており、国民の不利益が発生していること。
  • メーカーや医薬品卸業各社は、本年2月のロシアのウクライナ侵攻に端を発するエネルギーや原材料等の価格上昇や円安傾向にも見舞われており、毎年薬価改定などと相俟って原価比率の上昇や経営危機など深刻な状況にあること。
  • 後発医薬品等の低価格維持のための特定国への原料依存など、今後改善すべき点があること。

 その他、イノベーション促進の観点から薬価制度などを根幹から見直すべきという意見もあった。

 そこで下記の通り、政府に対して提言を行うこととする。政府においてはこの提言を重く受け止め、速やかに実施することを求める。

  • 政府において、毎年薬価改定や新薬創出加算の見直しなど「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」の各項目が現状に与えた影響ついて速やかに検証を行い、その結果により見直すこと。その際には、本PTの提言「医薬品産業エコシステムと医療安全保障の確立~医薬品産業ビジョンへの提言~」および「医薬品産業を通じた世界のヘルスケア分野の牽引に向けた提言」を踏まえること。
  • 令和5年度薬価改定においては、以下を実現すべく全力で努めること。
    • .エネルギー・原材料価格などの高騰により採算が悪化した品目の対応のため、薬価引き上げまたは引き下げ幅の緩和など必要な対応を行うこと
    • 「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」の表現に立ち戻り、真に「価格乖離の大きな品目」、すなわち平均乖離率を一定以上上回る乖離率の品目に絞ること
    • 調整幅については、その役割を踏まえ、2%を継続させること
    • 特許期間中の品目や需給調整中の品目は、乖離幅による薬価改定の対象としないこと
以上

(別紙)
令和4年11月28日
薬価制度の抜本改革に関する所見
自由民主党政務調査会
社会保障制度調査会
創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム

●薬価制度の抜本改革

  • 2016 (平成28)年12月、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」が4大臣の合意により決定された。内容としては、市場拡大対応の迅速化、毎年薬価調査・毎年薬価改定、新薬創出等加算の抜本的見直し等が含まれる。これは「『国民皆保険の持続性』と『イノベーションの推進』を両立し、『国民負担の軽減』と『医療の質の向上』を実現する観点から、薬価制度の抜本改革に向け、PDCAを重視しつつ」取り組むとされたものである。
  • まさにPDCAの観点から、この機会にチェックし必要であれば見直す必要がある。
0
(出所:中央社会保険医療協議会薬価専門分科会(第188回)資料)

●円安や物価高騰の影響について

  • 今年に入り、円安や海外情勢の影響により、原薬、原材料、包装材料、燃油等の価格が高騰し、調達コスト等が上昇している。メーカーのみならず、卸売業においても打撃となっている。これは薬価制度抜本改革時に全く想定されていなかった事態である。
1
(出所:日本製薬団体連合会資料)
  • 医薬品の製造は薬機法およびGMP省令に則る必要があるため、機動的な製造過程の効率化は困難である。公定価格であるため価格転嫁も、安定供給が必要であるため製造量の調整も不可能である。現行制度下ではコスト増はメーカーや卸が負担する以外に回避の途がない。
2
(出所:日本製薬団体連合会資料)
  • なお円安の影響により海外における臨床試験費用も高騰し、研究開発費も上昇している。 

●毎年薬価改定の影響

  • 現在の薬価改定は、メーカー・卸および医療機関・薬局の間で市場競争を行う結果生じた薬価差について定期的に調査を行い、実勢価格に基づいて乖離幅を割り引く形で改定することが基本。この仕組みは、高齢化の進展や絶えずイノベーションが求められる結果として薬剤費総額が上昇しやすい傾向があることと、一方で公的保険制度の維持のために適切な価格設定が求められることの間で、バランスを保つために機能している。
  • 具体的には、保険医療に関する医薬品取引の特性として、そもそも患者の生命維持やQOL向上維持のためメーカーや卸には安定供給が求められることや、未妥結取引や総価交渉などの医薬品に特徴的な取引慣行が流通改善の取組にも関わらず未解消であること、医療機関や薬局等にとって薬価差が収益源となっておりその確保が継続的に必要であることなどにより、構造的に取引価格は下落する仕組みとなっている。
3
(出所:(一社)日本医薬品卸売業連合会)
  • その結果、2018年から毎年の改定となって以降、改定頻度は上がったにも関わらず乖離率は毎年一定して生じており、そのため薬価の年平均下落率はそれ以前(2011年~2016年:-2.4%)と比較して加速(2017年~2022年:-5.0%)している。
  • 上記の物価高騰や円安の影響は、医療機関・薬局等からのさらなる値下げ圧力の強化にも結び付くものと考えられる。一方で、薬価改定において医薬品の製造コスト増について考慮する仕組みは存在しない。
4
(出所:米国研究製薬工業協会資料)

●日本の医薬品市場規模の現状

  • 日本における薬剤費は、過去10年間を見ると概ね8兆円~9兆円台を推移している。
5
(出所:日本製薬団体連合会資料)
  • これは薬価改定や後発品への置換等の薬剤費削減策の結果である。薬価関連抑制額(国費ベース)は5年間累計で5,941億円に上る。この総額が、国民負担軽減の実績である。
6
(出所:日本製薬団体連合会資料)
  • 薬剤費を対名目GDP比で見た場合、2010年(平成22年)比で推移を見た資料では「薬剤費総額は、経済成長を上回って推移している」と結論づけている(名目GDP年平均伸び率+1.2%、薬剤費総額年平均伸び率+1.9%)。一方、2011年(平成23年)比で推移を見た資料ではほぼ同様の伸び(名目GDP年平均伸び率+1.4%、薬剤費総額年平均伸び率+1.6%)となっている。基準の置き方によって印象が変わることに留意が必要である。
7gnp2010
8gnp2011
(上図出所:財政制度審議会財政制度分科会(令和4年11月7日)資料、下図出所:中央社会保険医療協議会薬価専門部会(第188回)(令和4年10月5日)資料。いずれも赤実線が薬剤費総額の推移、緑実線が国民総生産の推移を示す。2010年度基準では差が開いているように見えるが、2011年度基準ではほぼ重なっているように見える)
  • そもそも、2018年以降の毎年薬価改定の影響を読み取ることはまだデータに限りがあるため、依然困難である。2010年基準にせよ2011年基準にせよ、2018年のはるか前の時点を基準とする医薬品市場の推移やその対GDP比を参照して毎年薬価改定の在り方について議論することは、いずれも不適切である。

●世界市場と日本市場のギャップとその影響

  • 世界においては、医薬品市場は2016年~2021年で年平均成長率は+5.1%と拡大しているが、同時期の日本の年平均成長率は-0.5%と微減となっている。
9

(出所:日本製薬工業協会 資料)
  • 国内製薬企業8社計の連結売上は、2017年~2021年の間で約40%の増加となっているが、同期内の国内売り上げは-5%と減少しており、世界と日本の成長率の差は-45%となっている。2022年上期においてもその傾向は変わらない。国内製薬企業の業績により、日本における医薬品市場の状況を判断するのは、不適切である。
238
  • また将来については、主要国では年数%の成長が続くものと予測されていることに対し、日本はマイナス成長が予測されている。
10
(出所:米国研究製薬工業協会)
  • 世界において医薬品市場が成長を続ける中で、さまざまな制度改正の継続や日本市場のマイナス成長が予測されている影響は、ドラッグラグ・ドラッグロスとして新規医薬品の供給面に現れている。国内未承認薬の品目数と対欧米割合では2016年に117品目・56%であったものが、2020年には176品目・72%と拡大している。

11
(出所:日本製薬工業協会)
  • ヨーロッパの製薬企業においては、全ての企業で上市延期や遅延の議論が増加したと回答しており、実際に日本市場への上市延期ないし遅延があると回答した企業は10社中6社に上る。
12
(出所:欧州製薬団体連合会資料)
  • 欧米の製薬企業団体からは、日本市場の成長の阻害要因および世界における日本市場の優先度の低下は、薬価制度(引き下げ)・市場環境によるものと指摘されている。
13
(出所:米国研究製薬工業協会)
14
(出所:欧州製薬団体連合会)
  • 日本における医薬品への投資への影響も指摘されている。2009年~2015年の間では、日本の研究開発投資は22% (年平均3.4%)増加したが、2015年~2020年では-9%(年平均-1.9%)と減少した。同じ期間で世界では16%増加、33%増加と加速していることと比較し歴然とした差がある。
15
(出所:米国研究製薬工業協会)

●後発医薬品について

  • 後発医薬品は、新薬との置き換えにより医療費を適正化するものとして使用促進のための施策が実施されてきた。現在では数量シェアでは50.3%を占めるに至りつつ、金額シェアでは16.8%に留まっており、その医療費適正効果額は年間推計で19,242億円とされている。
16
(出所:日本ジェネリック製薬協会資料)
  • 一方で、品質確保の問題等が発覚しメーカーが処分される事態が相次ぎ、その影響により供給が不安定となり多くの品目で需給調整が行われる状況となっている。その対応のため、後発品メーカーは原薬のマルチソース化や製造設備の更新・新設、人材確保等に取り組んでいる。
20

(出典:厚生労働省)
  • その結果、原価率は上昇している。現時点で製造原価率が80%を超える品目(販売管理費・卸への費用・消費税等を含めると赤字になる)が30%を占めており、経営を圧迫している上、さらに原材料価格、エネルギー価格の高騰に直面している。
17
(出所:日本ジェネリック製薬協会)

●医薬品卸について

  • 医薬品卸は、生命関連性、高品質・多種多様性、需要周期の不規則性など取扱商品としての医薬品の特徴を背景とし、他商品の卸売業と異なる流通ニーズに対応している。
  • その中で、近年の後発医薬品の需給調整が継続的に業務負荷となっていることに加え、コロナワクチン等の配送やガソリン代・電気料金の急騰等が業務上の負荷としてのしかかっている。さらに毎年改定による売り上げ切り下げの加速もあり、2020(令和2)年度は営業利益は株式上場会社(6社)の営業利益は前年比-70.7%、それ以外の会社(11社)の営業利益は前年比-97.6%と危機的な状態となっている。
18
(出所:(一社)日本医薬品卸売業連合会)
  • なお、毎年薬価改定のため価格交渉の頻度が増えた上、後発医薬品の数千品目に上る需給調整のため、現場担当者の業務負荷は過大となり、疲弊していることに留意が必要である。将来が見えないとして退職する社員も少なくない。
  • 流通改善の取組みは進められているが、流通改善ガイドラインが目指すゴールに到達するまでには、未だ道半ばの状況である。また医療機関・薬局が交渉業務負荷軽減等のため価格交渉の代行業者に委託するケースが急増しており、ガイドラインの留意事項に沿わない手法での交渉が見られるとの指摘もある。
  • このような状況下において、これまで薬剤流通の安定機能を担い、全ての流通当事者に必要不可欠なものとなっている調整幅の引き下げを行うことは、医薬品の継続的な安定供給に重大な支障をきたす恐れがある。
19

(出所:日本医薬品卸売業連合会資料)

●医薬品のサプライチェーンについて

  • 後発医薬品に使用する原薬の2/3は海外からの輸入に依存し、その1/4は特定の国からの輸入である。また、抗生物質の出発物質や重要中間体は100%同じ国に依存しており、実際に手術延期などの支障が発生したこともあった。経済安全保障の観点から見直しが急務である。
21

22
(出典:厚生労働省)

●まとめ

  • 日本の医薬品市場は対GNP比では横ばいまたは微増傾向であるが、世界の医薬品市場と比較すると成長率は際立って低い。これは薬価制度の抜本改革の結果であり、政府の財政ひいては国民負担には国費ベースで5年間の累計約6,000億円の貢献をしたものの、新薬のドラッグラグ・ドラッグロスや研究開発投資の日本回避の動きとして悪影響が生じている。また国内的にも特に後発医薬品メーカーや医薬品卸売業の経営状況は深刻化しており、かつ後発品の供給等に慢性的に支障が発生している状況を脱せていない。
  • 国民が安心して世界水準の保険医療を受けるためには、新規医薬品の速やかな国内市場への導入やその他の医薬品の安定供給は欠かすことはできない。しかし現行の薬価制度の下で、革新的な医薬品へのアクセスは主要先進国に後れをとっており、また必要な医薬品の原料調達・製造・物流など幅広い面で安定的な供給が危機的な状況を迎え、その中で関係者の懸命の努力はあるものの、実際に多くの患者の不利益まで生じている。
  • 薬価制度の抜本改革は、国民皆保険の持続性向上や国民負担増加幅の軽減には貢献したものの、イノベーションは阻害され、新薬へのアクセス悪化や供給不安、現場の疲弊や経営悪化など、さまざまな面で国民に不利益を被らせ、保険医療への信頼を失わせる結果につながっていると考えざるを得ない。こうした状況を踏まえた検証と見直しが求められる。
以上

続きを読む "薬価制度の抜本改革に関する提言・所見"

| | コメント (0)

2022年5月26日 (木)

「かかりつけ医」の議論をめぐる所感

●はじめに

 ここしばらく「かかりつけ医」についての議論がしばしばみられます。たとえば5月17日に政府の全世代型社会保障構築本部が取りまとめた「議論の中間整理」では、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を含め、機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制等の国民目線での改革を進めるべきである。」と記されました。これを踏まえ、岸田文雄首相も5月25日衆議院本会議においてかかりつけ医について「今後その機能を明確化しつつ、患者と医療者双方にとってその機能が有効に発揮されるための具体的な方策を検討していくこととしており、コロナ禍での課題への対応という観点も含め、速やかにかつ丁寧に制度整備を進めていく」と前向きともとれる答弁を行っています。

 また立憲民主党では、中島克仁議員がかねてよりかかりつけ医の具体化に熱心であり、今国会でも「新型コロナウイルス感染症に係る健康管理等の実施体制の確保に関する法律案」(第208回国会衆法第20号)を提出し、衆議院厚生労働委員会等を中心に議論を行いました。先の総理答弁も、このことを踏まえた重徳和彦議員(立憲民主党)の質問に対するものです。
 
 一方で、公益社団法人日本医師会の中川俊男会長は、これに先立ち4月27日に文書「国民の信頼に応えるかかりつけ医として」を公表しています。この中で、「『かかりつけ医』の努め」や「地域におけるかかりつけ医機能」、「地域の方々に『かかりつけ医』をもっていただくために」等の内容を記しつています。中川会長は公表時の記者会見では、財務省が求めているかかりつけ医の認定制や制度化についての質問に対して、「医療費抑制のために国民の受診の門戸を狭めるということであれば認められない。かかりつけ医機能は地域でさまざまな形で発揮され、患者さんとかかりつけ医の信頼関係を絶対的な基礎として、日本の医療を守ってきた。そうした日本の財産を『制度化』で一刀両断に切り捨てることになってはならない」と応じています。

 こうした議論を眺めていますと、正直な話、「制度」や「機能」などの文学的表現を挟んで議論がかみ合っていないような、あるいは肝心の論点が敢えて語られていないような印象があります。そこで本稿においては、中島議員らが提出した法案に対する検討を足掛かりに、自分の頭の整理を兼ねて、論点の整理を行ってみます。

 なお、本稿はあくまでも橋本がくが記した個人的な覚え書きであり、所属組織・団体等の見解を表すものではありません。また誰の働きかけもなく橋本がくが本人の意志で記したものであり、極力公平かつ中立的に記すよう努力しますが、他方橋本がくは自由民主党所属の衆議院議員であり、選挙においては日本医師会をはじめ多数の団体の支援を受けており、かつ身内にも日本医師会の推薦を受けている者がいることは、明記しておきます。

●「新型コロナウイルス感染症に係る健康管理等の実施体制の確保に関する法律案」についての議論

 立憲民主党は3月29日「新型コロナウイルス感染症に係る健康管理等の実施体制の確保に関する法律案」(通称:コロナかかりつけ医法案)を衆議院に提出しました。筆頭提出者である中島克仁衆議院議員は、議員としての活動を行いつつ現役で診療所の院長も務め診察に携わる医師であり、国会ではこれまでも幾度となくかかりつけ医に関する質疑を行っておられます。質疑内容等からは、党内における法案作成プロセスにおいても主導的立場であたられてものと想像されます。その粘り強い姿勢と努力には、ひとりの同僚議員として敬意を表するものです。

 法案を筆者なりにざっくり要約すると、希望する地域住民が、あらかじめ申し出た医師から選んで、自分の新型コロナウイルス感染症に係る健康管理(相談対応、検査、健康観察、医療の提供、連絡調整などを含む)等を行う医師として登録できる制度を「新型コロナウイルス感染症登録かかりつけ医制度」と定義した上で、政府に対してその制度導入や協力金等の支援を義務付ける、というものです。仮にこの法律が成立し施行されれば、住民としては気心の知れた特定の医師にコロナに関する対応を一任できることに加え、保健所が行っている業務の一部を医師が担当することとなるため、保健所の負荷軽減の効果も期待できるかもしれません。

 しかしこの法案では、いくつか明らかになっていない点があります。

 まずこの法案においては、登録されたかかりつけ医はその住民に対して何の義務も新たには課されません。したがって仮にこの法律が施行されても、登録されたかかりつけ医であってもこれのみでは医師法上の義務が課せられるだけであり、それ以上の法的拘束力はありません。かかりつけ医から、感染対策の不備や患者多数により応需困難などの理由により診察等を断られたりしても、地域住民には何の対抗措置も規定されておらず、現状と実は何も変わることがないのです。

 それでは意味がないので、おそらくは登録されたかかりつけ医と登録した住民の間に、別途なんらかの契約を結ぶことを想定しなければならないのではないかと考えます。いわば、本法が規定するのは、かかりつけ医契約のための地域住民と医師のマッチングを国が行い、その契約を登録する制度と理解するのです。地域住民と医師の間で「24時間必ず応需する」等の契約を別途締結すれば、まさに多くの方のイメージに叶うかかりつけ医を誕生させるということになります。

 さてその際、医師に対して誰が対価を支払うのでしょうか。そもそも「希望する」地域住民と「申し出た」医師のマッチングですから、全ての国民の避けがたいリスクを相互に負担し合うことを目的とする公的保険に馴染むものではありません。そして契約により医師に義務を課せば、その対価はもう片方の当事者である住民が負担するのが自然です。法的には、個人と弁護士が顧問契約を結ぶのと同等なのです。そこになぜ政府が補助金の支出等を含む措置を講ずる義務が必要なのか、法案や説明資料では明らかにされていません。これはあくまでも想像ですが、少なくとも立法過程で公的保険に馴染む考え方ではないことは意識されていたのではないかと思います。だから第三条4項は「協力金、補助金の支給」が例示されているのでしょう。もしかしたら保健所負担軽減等の理屈をつけることは可能かも知れませんね。

 また、そもそもかかりつけ医師が負う義務の内容や、医師ひとりが何人の住民と契約を結ぶことが想定されるかが明らかにされていないため確たる議論ができませんが、弁護士における顧問料を参考にすると、このかかりつけ医を維持するためには月々それなりの費用がかかるのではないかと思われます。おそらくはひとりあたり月額数万円といった金額となり、先に記したように公的保険の範囲外のため全額自己負担となり、現実的に少なからぬ数の国民にとって容易に受け入れられるものではない金額になるものと思われます。

 この契約に基づいてかかりつけ医が地域住民を診察した場合、混合診療にはならないのでしょうか。仮に全額自費になっても新型コロナウイルス感染症に関する医療は現時点では公費負担ですから実質的に差し支えはありませんが、だとすれば一般化はできません。選定療養という考え方も可能かもしれませんが、議論は簡単にはまとまらない気がします。

 なお一般的に、かかりつけ医に関する議論では、医療のフリーアクセスをどう考えるかも議論のテーマとなり得ますが、本法案では「政府は、(…中略…)病院又は診療所の自主的な選択を阻害することのないよう配慮するものとする」とされており、当然に上記かかりつけ医契約においても同様の規定が含まれるものと思われますので、住民側の医療へのフリーアクセスを制限することにはならないものと思われます。

 以上のようなことを考慮し、本案では、説明されている範囲だけでは必ずしも期待された効果は実現されず、むしろ実効性がいささか乏しいのではないかと思料されるため、衆議院本会議場では賛成しませんでした。とはいえ、この法案があったればこそこうした具体的な議論が可能なのであり、自らの理想とするものを具体的に法案の形で取りまとめようと努力された中島克仁議員には、重ねて深く敬意と感謝を表する次第です。

●かかりつけ医の制度化を考える上で

 さてこのように考えてきた時に、改めて冒頭の議論を見返してみると、かかりつけ医をめぐる議論で誰からも意図的に触れられていないのは、

  • その制度により、かかりつけ医とされた医師に何の義務を課すのか
  • その義務を果たす対価はどの程度の価格となり、誰がどうやって負担するのか
  • (それに付随して)公的保険給付との関係はどうなるのか
  • 患者側には他医療機関への受診制限など、何らかの規制はかかるのか

 といった点だと考えられます。敢えて記せば、どの立場の人も「機能」という言葉を遣うことでこうした議論を避けているのではないでしょうか。しかし、これらの点をクリアにしないで漫然とかかりつけ医の制度化が是か非かといった議論をしていても、平行線と感情論以上にはならずとても不毛です。情報提供や登録制度といった言葉で肝心の部分を曖昧にした意見を主張されても、正直判断不能としか言いようがありません。後出しで費用負担の話をされても困るのです。

 仮に、新型コロナウイルス感染症という限定的な状況を想定せず、一般的に地域住民がいつでも特定の医師に相談したり受診したりすることができるような制度を作るとすると、それはすなわちその医師にいつでも相談や診察に対応できるよう待機しておいてもらわねばならず、おのずと対応可能な人数が限られます。またその拘束には当然対価が支払わなければならず、仮に保険で賄われることとしても、出来高払いを基本とする現在の報酬体系と比較して効率的なものとなるか、個人的にはとても疑問です。そもそも病気やケガ、あるいはそれらにまつわる不安や相談は24時間いつでも発生し得るので、それに対応する義務を医師個人に課すことは、労働契約に基づくものではないとはいえ、働き方改革等の観点から如何なものかと考えざるをえません。そして現在の外来診療体制で、本当にかかりつけ医という考え方で国民全員をカバー可能なのかどうかも、考えなければなりません(なお基礎疾患を持っている方や高齢者のみを対象にするという考え方もあり得ますが、こうした方は事実上かかりつけ医機能を果たす医師ないし医療機関を、多くの場合既に持っているはずです。制度化するということは、そうした方ではない、若い方や健康な人もかかりつけ医を持つということでなければ意味がありません)。

 現在の医療提供体制が持続可能なものであるかどうかには十分議論の余地がありますので、どのようなテーマの議論も考慮しなければなりませんが、肝心なポイントをハッキリさせない議論をただのイメージで行っても誰にも良いことはないのではないかと個人的には思います。何らかのメリットを得ようとするのであれば、多くの場合何らかのデメリットが伴います。かかりつけ医に関する提案をされる場合には、そこまでを含めた議論が行われることを期待しますし、その上で制度化の必要性や是非から論じられるべきだと考えます。

●コロナ禍とフリーアクセスについて

 なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大期に、入院困難例や受診困難例が続出してしまったことを踏まえて「フリーアクセスが機能しなかった」という認識を示し、だからかかりつけ医の制度化が必要だ、という論旨の議論も見かけますが、これは誤りです。

 そもそも日本の医療保険制度におけるフリーアクセスとは、一般的には、保険証さえ持っていれば、平等に患者が自由かつ窓口負担のみで医療機関を受診することができることを指します。一方で、新型コロナウイルス感染症をはじめとする指定感染症等に対する医療は、感染者を保健所が措置として強制力をもって感染症指定病院等に入院させるものであるため、そもそもフリーアクセスではなく、保険医療ですらありません。また外来診療についても、感染拡大を防ぐために発熱外来を特定しています。感染症医療は、その目的のために当然にフリーアクセスの制限を伴うものなのです。

 コロナ禍において入院困難例や受診困難例が生じた理由は、そのキャパシティを超えて感染者が一気に急増して対応が間に合わなくなったためなのであり、医療保険制度ではなく感染症法およびインフルエンザ特措法による感染対策上の課題です。これを新型コロナウイルスの感染力の強さとして諦めるのではなくそこまでも余裕をもってカバーできる対策を打つべきとするのであれば、普段からの抜本的な医療従事者や保健所職員数の拡充が必要とされるものと考えます。量の問題を手段(または気合い)で解決させようとするのは日本人の悪い癖であり、量の問題は量で解決するべきです。

 一般の方ならともかく、職業政治家や職業官僚が感染症医療と一般の保険診療とを同列に並べ、フリーアクセスの限界として制度論に結び付けるのは、制度を理解せず半可通な知識を振り回しているか、または意図して異なるものを同じように並べて議論をすり替えているか、のいずれかです。政府の資料にもこれに類する表現があるのは残念なことです。もしこうした議論を見かけたら、「間違っているよ」と優しく注意してあげてください。そこで逆ギレされたら、おそらく後者の人なのだろうと認識してよいと思いますよ。

続きを読む "「かかりつけ医」の議論をめぐる所感"

| | コメント (0)

2020年12月11日 (金)

薬価改定に関する医療委員会の議論について

 12月10日の医療委員会会合において薬価改定に関する議論を行いましたが、その際、議論の内容をまとめることとなり委員長への一任をいただきました。そこで下記の通りに取りまとめ、11日夕刻に厚生労働省濱谷保険局長に手交しましたので、その内容を以下に記します。

(PDF)薬価改定に関する医療委員会の議論について

201211hamaya



令和2年12月11日

薬価改定に関する医療委員会の議論について

自由民主党政務調査会
社会保障制度調査会医療委員会


 令和2年7月17日閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020」においては、「本年の薬価調査を踏まえて行う2021年度の薬価改定については、骨太方針2018等の内容に新型コロナウイルス感染症による影響も勘案して、十分に検討し、決定する」とされているところ、当委員会においては以下のような議論が行われた。与党における専門組織からの意見として、これらを十分に踏まえて対応にあたられることを要望する。

  • 本年の薬価調査の結果は、新型コロナウイルス感染症の影響により、卸と医療機関・薬局の間の価格交渉が平常通りに行えなかった影響を受けたものであること。
  • 新型コロナウイルス感染症の蔓延状況や社会経済に与える影響の現状は、7月の閣議決定時点で想定していた『新型コロナウイルス感染症による影響』をはるかに上回るものであり、当時の想定通りの対応ではこの趣旨を守ることにはならないこと。
  • メーカー、卸、医療機関、薬局全て新型コロナウイルス感染症による経営への影響は既に大きいものである中、薬価改定は感染症対策の前線およびそのロジスティクスを担うこれらの経営により厳しい影響を与えるものであること。仮にこうした企業等の経営が行き詰った場合、地域医療は即機能不全となるおそれがあり、そうした状況は絶対に招いてはならないこと。
  • そうした情勢を鑑みると、本来は、本年の薬価改定は実施できる状況にはなく、仮に改定を行う場合であってもその対象は極めて限定的に行うべきこと。
以上

| | コメント (0)

2020年2月16日 (日)

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」について(その2)

 前回のブログでクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号について記しました。その後2月10日に、加藤勝信厚生労働大臣より横浜に駐在して本件の現地責任者を務めるよう、自見はな子厚生労働大臣政務官とともに命じられました。その後は、打ち合わせのために一度本省に戻った以外は、大黒ふ頭にいます。百聞は一見に如かずといいますが、やはり公表資料や報道だけではわからない状況が多々ありました。改めて現時点(2月16日夕方)の状況を整理します。数字等は公表資料に基づき記しますが、コメントなどはあくまでも私見を記すものであり、政府ないし厚生労働省の見解ではありません。また新たな事態の発生により、変化し得るものです。ご留意ください。

【検査結果などについて】

 ダイヤモンド・プリンセス号は、乗客2,666名および乗員1,045名、合計3,711名が乗船して2月3日に横浜港に到着、臨船検疫を続けています。発熱や呼吸器症状のある方や高齢者からPCR検査を行っています。16日0時現在で、のべ1,219名のPCR検査結果が判明しており、陽性が355名、陰性が864名です。潜伏期間があるため、いつ感染したかはわかりませんが、これは相当に高い感染率と言わざるを得ません。陽性が判明した方は医療機関に搬送し入院していただいています。なおこの結果は乗員・乗客ともに含みます。また入院した方の中には、重症の方もおられます。

 ひとつの課題は乗員の方々です。アルコール消毒薬を配布し、専門家の方に手指消毒の仕方を指導していただき、マスクや手袋着用をしていただいています。当然、発熱したりPCR検査陽性が判明した場合は、休業したり入院したりしていますが、そのためにサービスに支障が出はじめています。代替可能な業務については、自衛隊にご協力をいただいています。

 また、乗客にはご高齢の方が多いため、もともとの持病(基礎疾患)や、部屋での生活による影響があり、新型コロナウイルスによる感染症ではない症状で救急搬送になる方も日々発生しています。調査によると、乗客の最年長の方は90歳代で、70歳代の方が約1,000人、60歳代の方が約900人を数えており、とても高齢化した町ひとつを預かっている状況に近いです。

 ただ幸いなことに、新規の発熱患者の数は日々減少してきており、各種防疫対策が着実に効果をあげているかもしれません。

【検疫の終了について】

 さて、2月5日から検疫による14日間の健康管理機関が開始しており、2月19日朝にこの期間が終了することとなります。昨15日夕方に加藤厚労相が基本方針を発表しましたので、具体的に検疫の終了までのプロセスについてお報せできるようになりました。

 現在、ダイヤモンド・プリンセス号の乗客の皆さまに、順次PCR検査の検体採取を行っています。おそらく今日明日中には乗客全員の採取が終了するものと見積もっています。この結果が陽性の方や陽性の方の同室者を除く方については、健康確認を行い問題のない方について、更なるPCR検査は行わずに、順次下船していただきます。今の計画では、条件が整った方は19日から下船が開始でき、21日まで順次下船いただけるものと予定しています(PCR検査の検体採取および結果判明までそれぞれに時間と人手を要すること等から、どうしても順次の下船となってしまいます)。この方針については、さきほど(16日夕方)、船内放送で私から日本語で、ジェナロ・アルマ船長から英語で、アナウンスいたしました。

 陽性だった方は、結果判明次第順次医療機関に搬送となります。また、本人が陰性であっても同室の方が陽性であった場合は、感染防止対策がとられた時点から14日間の健康観察期間が始まることになります。この方々は引き続き船内で過ごすのか、別の施設に移っていただくのかは、現在検討中です。なお、報道では相変わらず「新たに70人の感染が確認」といった報道となっています。上記の通り検疫終了に向けて全員のPCR検査を行っているため、その結果が日々更新されていくのでそのような報道となるのは理解しますが、個人的には、現在のPCR検査は、もちろん陽性の方について必要な対応は行いつつ、陰性の方を確認することに意味があると思っています。

 また乗員の方々の多くは、乗客へのサーブや船の運航に従事しており、個室管理をしているとは言い難い状況があります。個室に移り業務を控えていただいてから健康観察期間が開始されることとなりますが、そのためには大多数の乗客が下船する必要があるものと考えます。また、乗員の方々の健康観察期間中の食事提供等については、船会社と政府で協議と検討を行う必要があります。

【直面している課題】

 乗員乗客あわせて3,700名の方々が乗船する客船における新発見のウイルス感染症の発生とその検疫という事態は、対処するにはさまざまな困難に直面することになります。たとえば、規模の大きさ、客船特有年齢構成、乗客乗員の存在、指揮命令系統、そして新発見ウイルスであるための情報量の少なさ、感染力の高さ、検疫特有の不自由さといったことが課題です。

 特に規模感は想像を絶しています。これが一桁小さければ(それでも大きな存在ですが)、乗客・乗員全員を、チャーター便の帰国者のように宿泊施設に移してしまうことも可能です。また、もっと迅速にPCR検査の検体採取を行うことも可能だったでしょう。しかし3,700人が一気に今すぐ宿泊可能な政府施設は陸上にはありませんし、かき集めてもその規模にはなりません。正直に言えば、協力を渋る省庁もあるようなことも耳にしたような気も…。国ですらそうなのですから、民間施設の借り上げも、協力を得るのはさらに困難でしょう(その中でご協力いただいた千葉県のホテルには、心から感謝申し上げます)。移動の交通手段の確保も、感染防護も考えねばならず、なかなか難渋します。PCR検査の検体採取も、そのためにチームを多数組んで取り組んでいただいていますが、朝から晩までフル稼働で約500検体/日の採取にとどまっており、それだけで単純に考えて一週間かかります。

 同時に、ご高齢の方が多く、その中で基礎疾患をお持ちの方も少なくありません。すでにクルーズ旅行を楽しんでいただいたあと、さらに二週間の船内滞在となっていますので、体力的には相当お辛いものと思います。実際に救急搬送も相次いでいます。健康確認などにさまざまな医療チームが活動していますが、とても手が足りているとは言えません。地元の人しかわからない例示ですが、倉敷中央病院は1,400床であれだけの規模の施設やスタッフを抱えているのです。高度医療を担う病院と比較するのは不適切だとも思いますが。また検疫で個室管理中なので、すべて往診せざるを得ず、医療アクセスの条件も良くありません。しかしいずれにしても、乗客の皆さまには、検疫のためとはいえ不自由をおかけしているわけです。ご協力に感謝を申し上げるとともに、私たちとしても引き続きできるだけストレスを軽減し、健康を保ち、仮に病変があれば早急に対応できるように努めます。

 その上で、必要な防護を行っているとはいえ(船内における防護の仕方は厚生労働省webサイトに掲載されています)、感染のリスクとは常に隣り合わせです。一般の災害と異なり、目に見えないことは厄介です。しかしその中で、多くの支援活動が勇気をもって行われていただいていることは本当に感謝の一語しかありません。DMAT(災害派遣医療チーム)、JMAT(日本医師会災害医療チーム)、AMAT(全日本病院医療支援班)、DPAT(災害精神医療チーム)、環境感染学会DICT(災害感染制御チーム)、日本赤十字社、自衛隊などが毎日稼働しています。国土交通省や神奈川県、横浜市の方々もお力をいただいています。もちろん厚生労働省および横浜検疫所も活動しています。

 困難に直面する中にも関わらず、ジェナロ・アルマ船長をはじめダイヤモンド・プリンセス号の乗員の方々が、責任感と乗客へのホスピタリティを維持し続けていることは、本当に頭が下がる思いです。できるだけ早く、乗員の方々の検疫が行える状況を作ることが、次の私たちのミッションだと思っています。今回は新型コロナウイルスによる感染症の発生という不幸な状況で私もこの船に関わることになりましたが、もし将来クルーズ旅行に出る機会があれば、この船長とクルーの皆さんと、この美しい船で楽しめるといいなと個人的には思っています。貯金が必要ですが。

 引き続き、国内の新型コロナウイルス感染症の感染拡大を食い止めつつ、船内の乗員・乗客の方々が安心して下船していただけられるよう、自見大臣政務官および現地厚生労働省スタッフとともに、全力を尽くします。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧