17.国際平和貢献・外交・安全保障

2016年8月 2日 (火)

外交部会長を振り返って

 昨年10月末に、秋葉賢也衆議院議員の後を受けて自民党外交部会長に着任し、10か月ほどが経ちました。まだまだ道半ばの想いもありますが、内閣改造および党人事の声も聞こえています。ここで党外交部会長としてさまざまな問題に関する所感を記しておきます(なお、橋本がくWebサイトにも外交部会長としての活動をまとめています。こちらもあわせてご覧ください)。

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◆自民党外交部会長の立ち位置

 そもそも「部会長」という役職は世間的にはいささか馴染が薄いので、簡単におさらいしておきます。自民党において、政策は政務調査会にて検討されます。責任者は政務調査会長であり、現在稲田朋美衆議院議員が務めています。しかし、政策分野は多岐にわたるため、12の中央省庁に対応するように13の部会が設置され(農林水産省に対応する部会のみ農林部会と水産部会に分かれているので、部会の方が一つ多い)ています。外交部会は、外務省に関する自民党の政策取りまとめ役であり、その責任者が外交部会長となります。役所と密に連絡を取りながら、自民党内の要望を役所に伝え橋渡しをすることで、政府の政策判断に党側のコントロールを利かせ、もって民主的な統制をかけるということが職務となります。

 ただ他の行政分野と異なり、外交交渉は政府の専権事項ですので、往々にして交渉結果を後で聞かされた上で党内の抑え役に回るということも多かった気もします。また、北朝鮮の核実験やミサイル発射、各地でのテロ多発など緊急事態への対応も多い役であり、これは外交部会長に特殊なことではないかと思います。

 ただ安倍・岸田外交は、平和安全法制の成立などを行っているために妙なレッテルが張られがちですが、昨年末の日韓外相合意やオバマ大統領広島訪問など、各国首脳との信頼関係をもとにバランスがあるかつ歴史的な合意等を実現しますし、一方で中国の南シナ海での行動への非難など、全く譲らずに筋を通し続ける側面もありました。そういう意味では外交の妙を堪能できる政権であり、傍から見ていて頼もしいものでした。個人的には、横からどんどん口を挟み政府をコントロールするというよりも、党側の意見をしっかりと伝える機会を都度作りながら、政権の選択肢をできるだけ残すよう党側からサポートするような立ち位置を選んだことが多かったように思います。

◆TPPについて

 今年2月、環太平洋パートナーシップ(TPP)に各国が署名しました。昨年10月アトランタでの大筋合意以降に外交部会長に着任したので、交渉そのものには全くタッチしていませんが、それでも自民党内手続きにおける条約の承認は外交部会長の責任になります(関連法案は農水部会他さまざまな部会にわたります)。主に農産物や工業製品の関税水準とその影響や対策等に議論が集中していますが、TPP全体の中では関税に関することは一部にすぎません。あれこれ役所から説明を聞くのですがあまりにも頭に入らないので、電話帳二冊半程度の日本語テキストを全部眺めてみることにしました(しかしあまりにもナナメ読みなので「読んだ」とは言えません…)。

 眺めてみて感じましたが、これまでにカバーされていない分野も含むきわめて幅広い分野にわたる合意を多国間でまとめたという点で極めて野心的な協定だということです。この合意により加盟国間ではさまざまな予見可能性が高まり、経済的な交流がより一層盛んになることが期待できますし、また国際政治的にも意味のある結びつきにもなり得るものでしょう。一方でそれだけに、内容面では極めて慎重に合意形成され、各国の事情が相当汲まれているために、事前に言われていたよりはかなり常識的な内容になっているとも思いました。これを取りまとめられた甘利明・前担当相をはじめ関係者の甚大なるご努力には、心からの敬意を払います。

 吉川貴盛・党TPP対策委員長らの腕力もあり、おかげさまで党内手続きはスムーズに進みましたが、衆議院の特別委員会においていささか言い掛かり的な野党の抵抗に遭い、承認が先送りになってしまったのは心残りなことです。おまけに肝心のアメリカもいったいどうなることやら…。

 なお、部会長は、提出法案は読んでくるのが当たり前、とその昔先輩議員から教えていただいた覚えがありますので、それを実践しただけではあります。またそうでなければ、政調審議会、総務会といった党の意思決定機関の厳しい審査を乗り切ることは困難です。今後の部会長に就任される皆さまにもお伝えしておきたいと思います。ただしこんなにブ厚い条約・法案にめぐり合わせることもそう滅多にありませんが(涙)。

◆日韓外相会談合意について

 昨年は日韓国交正常化50年の節目の年でしたが、当初は慰安婦問題に関して非難をされ続け、また中国の対日戦勝式典に朴槿恵大統領が出席するなど、両国間の空気は厳しいものでした。もとを正せば李明博大統領の竹島上陸あたりから関係が悪化しており、慰安婦問題に関しても交渉は続けていましたが見通しはできない状況が続いており、11月に安倍総理と朴槿恵大統領の会談が行われできるだけ早期の妥結を目指して協議を加速すべく合意されましたが年内にまとまるとはなかなか予想できない状況でした。

 しかし年末に岸田外相が電撃的に訪韓するという報道があり「それぞれ三項目の合意を記者発表しました」という連絡を外務省からもらいました。内容は外務省のページに譲りますが、とにもかくにも非難の応酬がやむであろうことは歓迎すべきことです。もっとも10億円の拠出や在ソウル日本大使館前の慰安婦像など一筋縄ではいかない問題も残っています。また韓国国内でもさまざまな反応があったことも考慮しなければなりません。ただいずれにしても不毛なやりとりを繰り返して失うコストは相当なものであり、お互い100%の納得はできなくても、痛み分けでも、関係を好転させるための重要な合意だったと考えます。おそらくは安倍総理のリーダーシップによる決断が奏功したものと思われます。

 年明けすぐに外交部会を開催し、さまざまな方のご意見をいただき一文字一文字吟味するような慎重な調整の上、自民党としての決議[日韓外相会談における慰安婦問題に係る合意に関する決議]をまとめました。その頃を思い出すと正直言って針の穴を通すような決議だったと今でも冷や汗が出る思いがしますが、おかげさまでご了承をいただくことができました。現時点でもまだ合意の実行プロセスは途上ですが、自民党の決議を党・政府とも順守しつつ前進させていただくことを切に願いますし、両国政府もともに合意を順守して問題を解決していくように願っています。

 偶然か必然かわかりませんが、合意直後に北朝鮮の核実験があり、日本と韓国が迅速に連携して国連での活動等対処できたことからしても、将来に向けてこの合意の意味は決して小さくないものだと考えます。

◆北朝鮮による拉致・核実験・ミサイル問題について

 日韓外相会談合意の興奮冷めやらぬ今年1月6日、北朝鮮が核実験を行いました。またその後弾道ミサイルの発射をはじめ、さまざまなミサイル発射等を繰り返しています。また拉致問題については一昨年のストックホルム合意がありますが、残念ながら全く実行されずに今に至っています。こうした累次にわたる国際社会への挑戦行為や背信的な行為に対し、自民党としても決議[ 北朝鮮による弾道ミサイル発射に対する緊急党声明 ]を行い意思表明をおこなっていますが、現時点では外交的な対策しか日本には打つ手がなく、自民党拉致対策本部の提言を踏まえ、国連決議を受けた制裁強化は行いました。なお歯がゆく忸怩たる思いの中ですが、これを積み重ねていくばかりです。焦ったら相手の思うツボです。

 国連決議に基づくものや独自のものを含めて制裁を課し、かつ実効性あるものとするよう周辺国にも働きかけ、圧力をかけることにより彼らの行動変容を迫ることが当面の方策であり、地道に続けていかなければなりません。

◆沖縄での女性殺人死体遺棄事件と日米地位協定

 5月に発生した沖縄における女性殺人死体遺棄事件では、在日米軍の軍属が容疑者として沖縄県警に逮捕されました。またその後も米軍人による飲酒運転事故による逮捕等が相次ぎました。沖縄県民の方々から怒りや憤りなどの声が噴出することは当然です。日本の外交の観点からするともちろん日米安保体制は重要なのですが、だからこそ米軍関係者の犯罪等に関する沖縄を始めとする立地地域の皆さまのお気持ちはとても重視しなければなりません。

 事件を受け、5月31日に自民党沖縄県連から、自民党三役に対して再発防止や地位協定の抜本改定等の内容を含む申し入れを受け、私も同席しました。谷垣幹事長より、政務調査会でこの件は取り組むようにというご指示をいただき、稲田政調会長のもと担当することとなりました。まず国会終了翌日の6月2~3日に沖縄に出張し、ご遺体の発見現場において献花・黙祷を行った上、名護市および那覇市で地元の方や国の出先機関の方にヒアリングを行い、現状の把握に努めました。その上で関係者の調整を行い、6月16日の外交・国防合同部会の開催後に、稲田政調会長から1)在日アメリカ大使館を訪問して自民党本部としても直接アメリカとの対話の機会をもち、今後も定期化を目指すこと、2)日米地位協定のあるべき姿を検討するために、外交部会国防部会合同で勉強会を行うこと、3)日米で協議が進められていた軍属の在り方の件については引き続き両部会でフォローアップを行うこと、の三点を発表し、翌6月17日には稲田朋美政調会長、大塚拓国防部会長、田中和徳自民党国際局長とともにアメリカ大使館を訪問、ケネディ大使と面談して直接沖縄の方々の怒りの声を伝えました。参院選期間中6月28日~29日にも沖縄を訪問し、選挙の応援や激励をしつつ、糸満市から名護市までの自民党各地域支部を訪問させていただき様々なお話を伺いました。

 そして参院選終了後、改めて7月24日~25日に稲田朋美政務調査会長、大塚拓国防部会長と同行して沖縄を訪問し、自民党沖縄県連の先生方と懇談会を行い、翌日には普天間飛行場の視察、佐喜眞淳宜野湾市長やエレンライク在沖縄アメリカ総領事との会談等を行いました。また再びご遺体発見現場を訪れ、稲田政調会長らとともに献花・黙祷をささげました。なお懇談会の際沖縄県連の皆さまから、党本部において沖縄問題に関する常設機関を設置してほしいというご要望を頂き、稲田政調会長が持ち帰っています。新しい体制の下で具合化の方向で検討されるべきでしょう。

 そもそも地位協定は、別段日本とアメリカのみに存在する協定ではなく、ある国の軍が他国に駐留する場合に一般的に結ばれるものです。したがってさまざまな地域や歴史的経緯等を勘案しなければ単純な比較はできません。もちろん現在自衛隊が海賊対処のためにジブチに駐留するためにも、地位協定は結ばれています。また日米地位協定は、締結以降改定が行われたことはありませんが、一方で運用改善等が積み重ねられていることも事実です。そうした中で「米軍関係者による犯罪をいかにして無くすか」という視点、あるいは在日米軍と基地立地地域の方々との共存関係をより改善するといった視点に立って、まさに何ができるのか不断に検討し実行し続ける必要があります。

 ある先輩代議士いわく「日米地位協定改定は憲法改正くらい難しい」とのこと。ただ自民党はその憲法改正を綱領に掲げ続けて今に至っているわけですし、アメリカも大統領選の結果次第では日米関係全体の見直しを迫られる可能性もないわけではないでしょう。そうしたことを念頭に置きながら、地道に沖縄やアメリカとの関係の維持構築や研究等の取り組みを継続しつつ、機を図ることが大事であろうと考えます。

 振り返ってみると、父・龍太郎が総理時代、当時のモンデール駐日米大使と普天間飛行場の返還で合意してから、20年が経過してしまいました。その他の沖縄負担軽減策等は順次実行されていますし、現在も北部訓練場の約4,000haにわたる地域の返還に向けたヘリパットの移設工事や、普天間飛行場移転先としての辺野古への移設をめぐる政府と沖縄県の和解合意に基づく直接協議と司法との両面での取り組みなどが現在進められています。

返還合意の翌朝の父の「ドヤ顔」は今でも脳裏に焼き付いています。その心は沖縄の方々にかかっている負担をできるだけ取り除きたいという一事に尽きていたと思います。残念ながら道半ばですが、今回党本部でスタートさせた取り組みは後進に引き継ぎを行いたいと考えますし、自分も今後どのような立場にあっても、沖縄のことには関心を持ち続けたいと思っています。

◆日中関係について

 尖閣諸島国有化等をきっかけに、日中関係はやや冷却した状態が続いていましたが、昨年11月のAPECや日中韓サミット等を契機とした首脳間の会談は持たれています。一方で北朝鮮核実験後、岸田外相の電話会談に王毅外交部長がなかなか応じなかったなど、ぎくしゃくした面もあることも事実です。

 中国はAIIBの設立や「一帯一路」構想の推進など、対外的に積極的に進出し支援を行う姿勢を強めています。地域の発展に寄与するものであれば文句をいう筋合いはありませんが、かねて南シナ海において独自の考えに基づく領海の主張を行っていたところ、その中にある岩礁を埋め立てて軍事基地とする工事を次々と完成させているなど、軍事面でも拡張的であることは看過しがたいものがあります。もちろん我が国との間でも尖閣諸島に対して独自の主張を行い、また航空自衛隊による対中機スクランブルが年々増加し、軍艦による尖閣諸島の接続海域への進入等行動を徐々にエスカレートさせていることも決して無視できるものではありません。

 そうした中で、フィリピンが提起した訴えに対し、国際海洋法条約に基づく仲裁裁判所が、中国の主張が相当覆される内容の判断を7月に行いました。中国は判断が出る前からこれを無視する構えでいましたが、実際にはそのことで、むしろ中国が国際法を軽んずる姿勢であるようにかえって印象づけられてしまった感があります。中国外交にも焦りが見受けられるように思いました。

 もちろん中国とは隣国として友好を深めることが望ましいことは言うまでもないことであり、引き続き微力を尽くしたいと考えています。同時に、国際社会の中でその存在感にふさわしい、周囲の尊敬を自然と勝ち取ることのできる振る舞いを、中国には期待したいものと考えます。

◆ISIL等によるテロの多発

 昨年11月13日にパリにおいて同時多発テロ事件があり、死者130名、負傷者300名以上の被害が出ました。その前日には、ベイルート(レバノン)にて43人が死亡、負傷者200人以上のテロが起こっています。今年3月にはフリュッセル(ベルギー)にて空港と駅でやはり爆発テロがあり、死者35名、負傷者約200名がでました。そして7月1日にはダッカ(バングラディシュ)にて武装グループが飲食店を襲撃し、28人が死亡、58名が負傷したとされています。7月14日はニース(フランス)において84人が死亡し202人が負傷する事件がありました。他にも複数の事件があります。これまでにも日本人の犠牲者は累次にわたり出ていますが、ダッカの事件では国際協力機構関係者7名が犠牲となってしまいました。こうして数え挙げているだけでも、辛い思いのする項目です。

 実は今年、ラマダン月のテロを勧奨する声明をISILが発していたことを踏まえ、外務省は全世界向けにテロに関する情報提供を行い警告していました。しかし残念ながら日本人犠牲者の発生を阻止するに至りませんでした。ここは改善の余地があると考えるべきでしょう。外務大臣の下で経済協力関係者の安全確保のための検討会が行われていますが、その結果を待つところです。

 ISILそのものはイラクやシラクといった地域では徐々に劣勢となっていますし、だからこそ中東・欧州・アジア・アメリカ等でのテロに走っている面もあります。難民の発生などさまざまな問題を引き起こしており、日本は世界各国と協力してテロ組織の根絶に然るべき役割を果たすべきです。であるからこそ在外邦人の安全確保にも、さらに力を入れる必要がある局面であろうと考えます。

 なおダッカ事件の際、外務省は政府専用機をいち早く飛ばし、ご遺体を羽田空港で迎えるにあたり萩生田官房副長官、岸田外相が献花を行うなど極めて丁重な出迎えを行いました。このことは、日の丸を背負って海外の発展協力のために活動していた方々の非業の死にあたり、故人の霊を弔い、ご家族を慰め、そして後進を勇気づける適切な対応でした。生放送を見ましたが、正直涙が零れました。このような事件があっても、世界の平和発展のための日本人の海外外協力への情熱は、より一層深まることを願ってやみません。

◆国際連帯税について

 毎年晩秋になると、税制改正の議論が自民党本部で行われます。外交部会では唯一の税制改正要望が「国際連帯税の創設」でした。ただ残念ながら、これまで外務省として本気で検討や調整を行ってきていないままに要望だけ行っていた経緯があり、主張はしましたが力及ばず(というか当然の帰結として)、昨年も実現は見送られました。

 その反省に立ち、今年度の税制改正要望での実現を目指し、外務省が主体的に検討や調整に動くよう指示をしています。議論が前に進んでいることを願っています。

◆外交力強化・外交勉強会

 自民党には高村副総裁を議長とする外交再生戦略会議という組織があり、外交部会長はその会議の事務局長を兼務することとなります。秋の予算編成前の時期、および春の概算要求前の時期にそれぞれ決議をまとめ、政府への申し入れを行いました。これまで縷々述べてきたように外交案件はそれこそ世界中にたくさんありますが、外務省の人員は限られています。また在外公館も建物が古くなったりしているものもあります。人員体制はイギリス並みを目指そう!という目標を掲げて徐々に強化されていますが、まだ達成には至っていません。引き続き粘り強く取り組む必要があります。

 また、外交部会には3人の部会長代理と13人の副部会長がおり、非力な部会長を支えていただいていますが、小田原潔筆頭部会長代理にお願いして地域ごとに戦後史を振り返る勉強会を開催してもらいました。日々に発生する出来事に振り回されるのみならず、きちんと歴史を学び長期的な視点を持つことは大事なことです。改めて勉強になりました。

◆できなかったこと

 部会長としてさまざまな案件を取り扱ってきましたが、残念ながら手が回らなかったこともあります。一つは、衆議院外務委員会理事を務めましたが、質疑に立つ機会がなかったことです。ただ、関係各位のご努力とご協力により、衆議院外務委員会では提出法案・条約をすべて通過させ、充実した議論を持つことができたことは与党理事の一人としてはよかったと思っています。なお衆院TPP特別委員会でも、マニアックな質問を行うべく準備をしていましたが、これも審議が中断したことにより日の目を見ませんでした。いささか残念です。

 またもう一つは、前職の厚生労働大臣政務官の時に、日本年金機構の情報流出事案に遭遇した苦い経験を活かし、サイバーセキュリティに関し外交面で何かできないかという志を持っていましたが、具体的に動かすことができませんでした。いまやサイバーセキュリティが、アメリカ大統領と中国主席の会談の議題になる時代です。外交面でもう少し主体的に動けないかと思っていたのですが…。まあ、隴を得て蜀を望んではいけないのかもしれませんね。

◆改めて外交部会長としての活動を振り返って

 今年はG7伊勢志摩サミットが開催され、また8月末には第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)がケニアで開催される予定です。また国連安保理の非常任理事国にもなりました。安倍総理はオバマ大統領の広島訪問を実現させ、ロシアとの長年の懸案をも解決すべく、努力を重ねておられます。こうした時期に外交部会長を務めさせていただいたことは、大変勉強になるものでした。

 一方世界に目を転じると、なんとなくこれまで「常識」と思いこんでいたことが覆される事態がたびたび発生しています。そもそも2014年のロシアにおけるクリミア併合と、国際社会が未だにそれを阻止できていないでいることは、第二次世界大戦後の世界の秩序維持の枠組みのほころびを露わにしました。見方によっては同様のことが静かに南シナ海で起こっているとも言えます。そして東シナ海で今後起こらないとは、残念ながら誰にも保証できないでしょう。同様にやはり第二次世界大戦後、秩序維持のための先駆的な知恵だと思われていたEUから、メインプレーヤーであったイギリスが脱退を決めるいわゆるBrexitも、「世界はいずれ統合に向かう」という理想主義的な見方が、いささか楽観的に過ぎたものであったことを再認識させられました。犯罪テロ集団であるISILは決して許されるべき存在ではありませんが、現に実力を有して一定地域を支配していることも、遠い世界のこととして片づけるわけにはいきません。アメリカ大統領選挙においても、かなり凄まじい主張の多いトランプ氏が共和党候補になると予想した人は、昨年時点でどれくらいいたでしょうか?しかしそれが現実です。日米安保体制も場合によっては議論のテーブルに乗り得るわけです。

 戦後70年が経過し、平和秩序維持のためのさまざまな理念やメカニズムを支えていた人々が世代交代し、当初の在り方から変わってきていること、そして変わらざるを得ないことを、私たちは必然のこととして正面から受け止めなければならないのでしょう。歴史から先人の意志を学び、未来に向けて新たな平和秩序維持の仕組みを構想し、現在を改革する取り組みが絶えず求められているのです。残念ながら国連改革一つとってみても遅々として進みませんが、投げ出すわけにもいきません。

 そうしたことを感じながら、自民党外交部会長という役目をいただいて、日々目の前の課題に対してもがき続けてきました。わずかなことしかできませんでしたが、学ばせていただいたことは、今後の政治生活の糧にしたいと考えています。

 自民党政調事務局の田村さん、橘さん、田中さんには、緊急の案件やらなかなか片付かない懸案やらが日々発生する中で、円滑に物事が進むように絶大なるサポートを頂きました。心から感謝申し上げます。また今回、外務省には多くの優秀な官僚の方が日々世界各地で日本を代表して頑張っておられることを認識することができました。深く敬意と感謝を申し上げます。中でも小野啓一・前官房総務課長にはカウンターパートナーとして日々あれこれ相談させていただき大変助かりました。ありがとうございました。先日北米局参事官に転出されましたが、日米地位協定の件を担当されることになりましたが、しっかり取り組んでいただけるものと期待しています(追記:そんなことを書いていたら、稲田朋美政調会長が防衛大臣に起用されるという報道に接しました。沖縄を巡る事柄はずっとご相談しながら取り組んでいましたので、まさに担当閣僚として経験を生かしていただきたいと切に願います)。またその他にも多くの方々、あるいは各国の大使館の方々ともお話しすることができました。こうした経験は僕にとって貴重な財産です。深く感謝を申し上げます。

地元の倉敷・早島の皆さまには、あんまり地元と関係のない役職だったのですが、快く部会長としての活動をお許しいただきました。おかげさまで心置きなくお役目に全力を尽くすことができました。心から御礼申し上げます。引き続きましてご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。


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2016年1月26日 (火)

日韓外相会談における慰安婦問題に係る合意に関する決議

 本日、自民党の外交部会、外交・経済連携本部、日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会の合同会議 において、「日韓外相会談における慰安婦問題に係る合意に関する決議」を報告させていただきました。この決議は、文中にも触れてある通り、1月6日の合同会議において多くの出席議員からのご意見等があったことを踏まえ、稲田朋美・政務調査会長、衛藤征士郎・外交・経済連携本部長、および外交部会長である橋本に内容・時期に関しご一任を頂いていたものです。中曽根弘文・日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会委員長も含め四者で協議の上合意した内容について決議とし、本日合同会議での報告を行いました。今後党内での報告手続きを経た上で、首相官邸および外務省に申し入れを行う予定です。

 既に報道が出ていますが、どうしても一部のみに留まりますので、ここにテキスト全文を掲載します。

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日韓外相会談における慰安婦問題に係る合意に関する決議

平成28年1月26日
自由民主党
外交部会
外交・経済連携本部
日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会

 平成27年12月28日の日韓外相会談後に両国外相が発表した日本と韓国の合意事項について、平成28年1月6日、自由民主党外交部会・外交・経済連携本部・日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会合同会議において、政府の報告を求め議論を行った。

 合同会議では、両国間で懸案となっていた慰安婦問題について、最終的かつ不可逆的に解決するという安倍首相および朴大統領の政治的決断は極めて重要であり、日本と韓国を含む北東アジアの現下の情勢を勘案し評価すべきであるという意見が出された。

 一方で、慰安婦問題に関する誤った認識が定着しかねないこと、旧民間人徴用工をめぐる問題等日韓請求権協定において解決済みとされている課題への影響、被災地等の一部地域からの水産物の輸入を韓国が停止していることについて懸念する意見等もあった。

 こうした議論を踏まえ、わが党としては、今般の日韓両国の合意を強く支持し、今後の日本政府の対応を最大限支えつつ、わが国の名誉と信頼を回復するための検討を引き続き進めることを表明するとともに、政府に対し下記の点について的確に対策を講じられることを要望する。

1.今回の合意を着実に実施することで、慰安婦問題を最終的かつ不可逆的に解決し、未来志向の日韓新時代を切り拓くとともに、日韓両国が北東アジア地域の平和と繁栄のため、積極的に協力して共に役割を果たすこと。

2.国際社会の中で発表された今回の合意について、双方による合意の着実な履行が肝要であり、日本政府が合意した内容について、責任をもって誠実かつ着実に実施すること。また韓国政府が合意した内容について、同様に実施されるよう継続的なフォローアップを続けること。


3.在韓国日本大使館前の慰安婦像は、わが国在外公館の安寧と威厳を傷つけるものであり、外交関係に関するウィーン条約上問題があるものである。早期に撤去されるよう、韓国側への働きかけをさらに強化すること。

4.日本が予算を拠出し、日韓両国政府が協力して実施する「元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒しのための事業」が、真にその目的に沿ったものとなるよう、韓国政府と真摯に協議を行うこと。また事業の実施にあたっては、日本国民に対する説明責任を果たすこと。

5.慰安婦問題に関し、平成26年8月5日、朝日新聞は「日本が韓国において慰安婦を強制連行した」等とする記事の取り消しと謝罪を行った。しかし、これらの記事に依拠したと思われる認識が、米国の一部教科書の記述等、世界中に流布されている。
 引き続き、客観的事実に基づく認識が各国で形成されるよう、官民連携した対外発信を一層強化し、事実と異なる場合に訂正を求める等必要な対応を行うこと。また、韓国国民の対日認識改善に資するよう、青少年交流を一層促進すること。

6.慰安婦問題を含め、日韓間の財産権・請求権の問題は昭和40年の日韓請求権・経済協力協定で最終的に解決済みというわが国の立場に変化がないことを確認し、旧民間徴用工問題等の他の問題についても、引き続き主張を続けること。

7.被災地等の一部地域から水産物の輸入を規制している問題等、その他の両国間の課題についても、引き続き韓国と粘り強く協議を行うこと。

8.「女性が輝く社会」の実現に向け、紛争下における女性の権利侵害の防止・権利保護の分野を含め、女性の能力強化、権利の保護・促進の分野で国際的に指導的役割を果たすこと。

9.韓国以外の国・地域については、個別の状況を踏まえつつ、引き続き誠実に対応を行うこと。

以上

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2015年12月28日 (月)

日韓両外相共同記者発表

 2015年12月28日に、岸田外務大臣・尹(ユン)外交部長官の会談後に行われた共同記者発表の内容を掲載します。解釈や意味する内容等については、通常国会開会後すみやかに自民党外交部会を開き、政府から聴取したいと考えています。

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日韓両外相共同記者発表

1.岸田外務大臣

日韓間の慰安婦問題については、これまで、両国局長協議等において、集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき、日本政府として、以下を申し述べる。

①慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。
 安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。

②日本政府は、これまでも本問題に真摯に取り組んできたところ、その経験に立って、今般、日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。

③日本政府は上記を表明するとともに、上記②の措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表により、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。
 あわせて、日本政府は、韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題において互いに非難・批判することは控える。

2.尹(ユン)外交部長官

 韓日間の日本軍慰安婦被害者問題については、これまで、両国局長協議等において、集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき、韓国政府として、以下を申し述べる。

①韓国政府は、日本政府の表明と今回の発表に至るまでの取組を評価し、日本政府が上記1.②で表明した措置が着実に実施されるとの前提で、今回の発表により、日本政府と共に、この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は、日本政府の実施する措置に協力する。

②韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する。

③韓国政府は、今般日本政府の表明した措置が着実に実施されるとの前提で、日本政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難・批判することは控える。

(了)

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2015年12月17日 (木)

外務省の平成27年度補正予算について

 12月16日(水)、自民党外交部会・外交・経済連携本部合同会議が自民党本部で開催されました。その席上、平成27年度補正予算が議論されました。外務省の補正予算は人道・テロ対策・社会安定化支援(難民問題を含む)、自然災害や広域感染症等の地球規模課題への対応支援、テロ・情報セキュリティ対策等の追加財政需要、及びTPPに関する国内対策のため、概ね2,000億円規模となっています。今週中には閣議決定され、来年の通常国会冒頭において審議される見通しです。

 この中で、日中植林・植樹国際連帯事業について、これまでの外交部会等で様々な議論がありました。1999年に小渕総理の提案により始まった事業ですが、その頃と異なり中国は既に日本以上の経済大国であり、海洋問題や歴史認識等で対中感情が良くない中で、今更そのような支援を追加する必要はないというご意見もありました。一方でそのような現状があるとはいえ、日中間の関係が冷え込んでいた時でもほぼ唯一継続されてきた基金事業であり、民間交流の基礎となる事業を打ち切ってしまうべきではないというご意見もありました。

 結論として、今回の補正予算で約90億円の計上をさせていただくこととしました。ただし、これまでは単に中国での植樹に対し日本側が出資した資金を基に苗木購入等の支援を行うだけでしたが、より共同事業の性格を持たせることや、具体的な青少年交流等に繋がるものとすること等、中国と協議して事業の見直しを発展的に行うべきこととしました。なお単純に援助を行うものではないため、ODAにはあたりません。また予算計上は認めるものの、執行にあたっては改めて部会に諮るよう、外務省に要望しました。

 国民の皆さまから頂いた税を使って行う事業ですから、ご理解を頂ける事業であるべきです。一方で、中国に日本と立場を異にする行動があるからといって、これまでの外交は失敗だった、新たな拠出は必要ないと言い切ってしまうのも、外交の選択肢を自ら狭めることに繋がり、適切ではない場合もあると個人的には考えます。効果とバランスを考え、多くの方々のご意見を伺いながら取り組んで参ります。

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2015年12月 1日 (火)

党税調における外交部会長発言

 11月30日における自民党税制調査会において、橋本が外交部会長として発言した内容をご紹介します。なお、その後他の方々から賛成・反対のご意見があった結果、「長期検討」という扱いにしていただきました。ご関係の方々や、納税者の皆さまにご納得いただけるように進めなければなりません。外務省にはそのように指示しました。

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 いわゆる国際連帯税について、先日の部会長ヒアリングにおいて、国土交通部会長から三点の理由を挙げて反対といわれました。まずその三点について申し上げます。

 一点目は、「受益者と負担者の関係が不明確」ということでした。これは全くおかしな議論です。今回は、政府開発援助、すなわちODAの財源として要望していますが、そもそもODAの直接の受益者は途上国の国民であり、それを先進国が負担して行うから意味があるものです。直接的な負担者と受益者が違うのは当然のことです。

 ODAは、直接的な負担と受益の関係で考えるものではありません。我が国が途上国の開発を支援し、その国の社会が安定したり、豊かになったりすることが、まわりまわって我が国の利益にも繋がるという発想によるものです。結果として国際的な人・もの・金の移動も促進されるという効果も持つでしょう。その点に着目して、国際的なやりとりに広く薄くODAの財源を求めようとするのがこの税の発想であるということを、どうかご理解頂きたいと思います。

 二点目は、「航空券への課税はインバウンドに悪影響をもたらし観光立国に反する」という点でした。まず事実から申し上げれば、2006年7月からフランスで、2007年9月に韓国で航空券連帯税が導入されましたが、両国ともその前後で観光客数や観光収入は、むしろ増加しています。仮に国際線の航空券に課税をするとしても、旅客の行動にほぼ影響を与えない広く薄い形での金額設定で課税を行い、効果をあげることは十分可能であると考えます。

 三点目は、「導入している国は少数で、世界的な潮流になっていない」という点でした。確かに、アメリカやイギリス、ドイツ等は国際連帯税を導入していません。しかしこれらの国々は日本を上回るODA供与実績をあげています。日本もそこまでODA財源が豊富であれば、そもそも新税など検討する必要はありません。

 残念ながら近年ODA予算は減額されています。来年度概算要求において増額要求をしておりますが、円安による目減り分も含めて極めて厳しい感触が財務当局から伝わっています。さる25日には高村副総裁を議長とする自民党外交再生戦略会議は「外交力の一層の強化を求める決議」を行い、総理に申し入れを行いました。また同日、武見敬三先生が委員長を務められる自民党国際保健医療戦略特命委員会も「国際保健に係る対策の推進に関する決議」を行って頂きました。そうした中で、財務当局を頼るばかりではなく、自分たちでも独自の財源確保の努力をしなければならないという想いから、今回の要望が上がっているのです。

 AIIBを擁する中国が我々のライバルなのです。そして我が国は、来年、先進主要7か国のサミットの議長を務めるのです。世界のリーダーとしての誇りを持って、いかに外交上の重要な武器であるODAを充実させるかという観点で真摯に検討すべきものです。

 以前は、世界においてODA拠出額第一位を我が国が占めておりました。今は第五位であります。本当にこのままでよいのでしょうか?むしろ我が国が先進国としてODAを通じて世界に貢献しているという事実を、もっと広く国民の皆さまに共有するべきです。それこそが安倍総理が行っている「地球儀を俯瞰する外交」への国民的理解に繋がり、民間も含めた日本の外交力の強化に繋がるのです。

 途上国も含めた、他の国がやっているとかやってないとか横並びのような議論をされるような意識の低さは誠に残念であります。むしろ我が国はこんな取り組みまでしているのだ、と他国に積極的に発信できるような制度を整えることが大事であると考えます。

 ただ、正直、これまで外務省の動きは極めて鈍かったと言わざるを得ません。その責任は政治にもあるでしょう。外務省には、法律に基づき主体的かつ前向きに検討や調整をしっかりと行わせる必要があります。そういう意味で、今回の税制改正では「お断りする」となっていますが「検討する」として頂きたく、ご要望申し上げます。

 どうぞお聞き届け頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。

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2015年10月23日 (金)

外交部会長への就任にあたり

 このたび橋本がくは自由民主党政務調査会の外交部会長を拝命しました。

 部会長とは自民党の政務調査会に概ね省庁ごとに13設けられている会の責任者であり、外交部会長はその名の通り外交政策全般を所掌します。

 これまで総務部会長代理、厚生労働大臣政務官という役職をお預かりしており、外交というイメージは薄いかもしれません。しかし平成17年から衆議院テロ対策・イラク人道支援特別委員会に所属し、第二次安倍政権時にはその後を継いだ衆議院海賊・テロ特別委員会の理事を務めました。世界の平和維持や人道支援のために日本が海外において貢献してきた活動に関し、国会において見守ってきたというささやかな自負はあります。

 現在、安倍政権は積極的平和主義を唱え、安倍総理自ら各国を訪問しアベノミクスや安全保障面での理解や協力を得るいわゆる「地球儀を俯瞰する外交」を強力に展開しています。

 日米安保を基軸とした東アジア地域の安定の維持、TPPや各国とのEPA/FTAなどの経済連携、そして「人間の安全保障」と呼ばれる世界の貧困対策、感染症対策、災害救援など多方面にわたる国際協力など、世界の中で日本の果たすべき役割は極めて大きいものがあります。

 また近隣の国々との領土や歴史認識をめぐる諸課題にも、十分留意をしなければなりません。

 日本国憲法前文に以下の一節があります。憲法そのものにはいろいろ議論はありますが、この一節については日本の外交かくあらねばならぬという理想を示しており尊重すべきものと個人的には考えています。

 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

 もちろん現実はなかなか理想通りにはいきません。

 日本年金機構に対するサイバー攻撃事案では、目に見えない分野では平和どころか実際に熾烈な攻撃を受けている現実に改めて直面しました。ユネスコ記憶遺産の問題など私たちの想いが世界に通じていない面もあると認識せざるを得ない状況もあります。それぞれ適切な対応が必要です。

 しかしなお「世界の平和に貢献する日本外交こそ日本の国益に資する」という理想の旗は掲げ続けながら、職務に臨みたいと考えています。引き続きご指導ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

Johnkey

<写真:5月に訪問したニュージーランドにて、ジョン・キー首相と>

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2015年10月12日 (月)

平和安全法制について

 さる9月19日に成立した平和安全法制について、なおさまざまなご議論があります。賛成した与党の一員として、今後も私なりに思うところを引き続き申し上げなければならないと考えています。むしろ、10月9日の内閣改造に伴い厚生労働大臣政務官の職を解かれ政府の中の人ではなくなりましたので、一衆議院議員として思うところを述べることができるようになりました。ご議論の多い点二点に絞って、思うところを記します。ご参考にしていただければ幸いです。

◆平和安全法制の必要性について

 今回の法制にて改正した点は多岐にわたりますが、最大の論点は自衛隊法における防衛出動の要件として「存立危機事態」を追加した点と思われますので、そこに話を絞ります。この追加により、従来から存在する「日本への直接的な武力攻撃またはその明白な危険が切迫している」際に加え、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」においても自衛隊の防衛出動が可能となり、必要な武力を行使することができるようになりました。この点が、従来は「個別的自衛権しか行使しない」としていた政府見解を転換し「集団的自衛権の行使にあたる場合がある」とすることに基づく部分です。

 さて、ここで日本の現況を眺めてみると、今の日本は、日本の国土および国民だけを守っていれば平和と言えるわけではありません。産業もエネルギーも食糧も、海外との輸出入に頼るところ大であり、日本に暮らす人々が今の生活と安全を続けようとすれば、世界が平和でなければならないということは多くの方が認めるところでしょう。同時に、近隣に邦人の拉致やミサイル発射等の不穏な動きをする国や、近隣国と領土紛争を抱える島を勝手に埋め立てて基地をつくってしまう国を抱えながらも、日米安保条約の下で米軍と自衛隊で日本の周囲の防衛を行っていることも、一つの現実です。

 例えばミサイル防衛を例にとりましょう。日本海の先のどこかの国が日本領土に対しミサイルを発射する構えを示しているとします。日米安全保障条約に基づき、米軍のイージス艦と自衛隊のイージス艦が連携しつつ分担してミサイル防衛にあたることは考えられます。もちろん、その周囲に双方の艦艇や航空機が展開して護衛にあたることになるでしょう。そうした状況下で、仮に第三国の艦艇または航空機が自衛隊の艦艇を魚雷やミサイル等で攻撃してきた場合、米軍艦艇等は日米安保条約等に基づき、彼らが持っている集団的自衛権を行使して、第三国の艦艇等に反撃をすることができます。しかし、これまでの自衛隊法では、同様の状況下で米軍の艦艇等に対して第三国の艦艇等が攻撃をしてきた場合、自衛隊の艦艇等は反撃をすることができたでしょうか。米軍艦艇への攻撃を、「我が国に対する外部からの武力攻撃が発生」または「我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険が切迫」と見做すことは困難です。だとすれば、共同して日本の防衛の任にあたっている米軍艦艇が攻撃されても見捨て、或いは指をくわえて眺めなければならないことになります。これは国家間の信義上許されることではないと考えます。幸いなことに過去このような緊迫した状況に至ることはありませんでした。しかし今後もあり得ないと言いきることもできないと考えます。

 なお、いま現に発生していない事態だからあり得ない、必要はないというご意見もありますが、発生した事態に応じて法制度考えるのを「泥棒を見て縄をなう」すなわちドロナワと表現するのであって、安全保障は今発生しないことまでを想定するものでなければ間に合わないことを、改めて申し添えます。

 このように、一国の防衛を複数の国で協力して行うような事態に備えて、「自国と密接な関係にある他国への武力攻撃」云々という事態も想定しておく必要があると考えます。ですから、法整備を行うに至ったものです。もちろん、こうした不備の指摘は以前からありました。ミサイル防衛も今に始まった話ではありません。今回行った理由は、政権が安定した議席をお預かりしているタイミングでなければ政治的に実現することができなかったから、という現実的な理由だと僕は思います。第一次安倍政権以降、ねじれ国会や政権交代が続いたため、このような法改正は不可能でした。

 なお、PKO法における駆け付け警護や、在外邦人等の保護措置など、これまでの法制では穴が開いていた部分について今回法制化されました。このこともとても大事で必要な改正だと考えますが、本稿では割愛します。

◆平和安全法制の合憲性について

 そもそも日本国憲法9条は、以下の通りの規定です。

1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 そして1946年6月26日衆議院本会議において、この憲法草案に関する質疑において吉田茂総理は、

 次に自衞權に付ての御尋ねであります、戰爭抛棄に關する本案の規定は、直接には自衞權を否定はして居りませぬが、第九條第二項に於て一切の軍備と國の交戰權を認めない結果、自衞權の發動としての戰爭も、又交戰權も抛棄したものであります、從來近年の戰爭は多く自衞權の名に於て戰はれたのであります、滿洲事變然り、大東亜戰爭亦然りであります、

 云々と答弁しています。要するに、自衛権の発動としての戦争も、憲法草案提案時の政府は否定しているのです。あえて記しますが、ここでは集団的とか個別的とかは何も言っていません。吉田総理は、その区別を問わず満州事変も大東亜戦争も自衛権に基づいて戦われたと明言しており、集団的自衛権が特に危険なのだなどとは発言していないことにもご留意ください。

 しかし自衛隊の創設にあたり、専守防衛の名の下に個別的自衛権なら行使できるとか、湾岸戦争後の掃海部隊派遣やPKO法制定の際に自衛隊の海外派遣をできるようにするとか、個々のケースは割愛しますが政府の憲法解釈は変遷を重ねて今に至っているのです。個別的自衛権は合憲だが集団的自衛権は違憲という見解も、ある一時のものに過ぎません。しばしば「憲法9条が戦後70年の日本の平和を守った」という表現が見られます。そういう見方をするのであれば、このような経緯も考慮すれば同時に「憲法9条の政府解釈を時宜にかなうように都度変更して戦後70年の日本の平和を守った」と表現することも差支えないのだと僕は思っています。

 そのような観点に立った場合、今回、上記の必要に応じ、昨年の閣議決定および今回の平和安全法制により憲法解釈の変更を行ったことが、過去に類を見ないほどの変更とは思いませんし、政府による閣議決定と国会の議決を経ているわけで、これ以上の手続きはありません。もちろん、今後最高裁で違憲判決が出た場合は、政府は速やかにそれに従うことになりますが。

 振り返ってみれば、憲法制定時と現在と、70年も経ていれば全く世界情勢は変化しています。大戦が終わり連合国(=United Nations、すなわち国連)が世界の秩序を守ることが期待されていた時代から、米ソの冷戦期を経て、そのバランスの崩れからテロやイスラム国のようなものが国家の脅威となる時代になりました。国連は機能していないとは言いませんが、必ずしも理想通りにも機能してもいません。核も拡散し、ミサイル等の兵器も長足の進歩を遂げました。人海戦術の時代はとうに過ぎ去っています(だから徴兵制などナンセンスです)。自衛隊も、PKO活動やイラク人道復興支援、テロ特措法に基づく補給・輸送支援、ソマリア沖海賊対策など、平和維持活動に従事して高い評価を得るに至っています。そうした経験を踏まえ、今回の憲法解釈の変更と法改正があるのです。

 なお前文等を含め、日本国憲法は、1946年当時の時代背景を色濃く残していると僕は感じます。これを時代に合わせて改正するのが本来の筋だという議論には僕は賛成します。しかしながら憲法改正は過去一度も発議可能な状況になったことがない程度にハードルが高く、また憲法9条を書き換えようとした場合、両院の2/3のみならず国民の過半数の賛同を得られる改正案は、現実的予見可能な時間の中で実現できる状況にあるとは思いません。そのため憲法解釈の変更を積み上げて今日に至っているし、今回もその手法を取らざるを得なかったものと思います。

 今回の法制度が憲法違反だ!と断じる向きもあります。ご意見はご意見として尊重しますが、その方々は、平和安全法制成立以前の自衛隊法等の法制度は、合憲だと思っておられたのでしょうか?何故、今回の法案審議に際して突然違憲と論じられることになったのでしょうか?集団的自衛権の行使はダメだが個別的自衛権の行使はよい、という主張をされるのであれば、個別的自衛権の合憲性と集団的自衛権の違憲性を、政府見解に依らずに(政府は信用できないという前提でしょうから)、どのように論じられるのでしょうか。自衛権を認めた砂川事件最高裁判決には個別とも集団とも書いてありませんし、個別的および集団的自衛権を定めた国連憲章よりも後ですから、否定する根拠にもなりません。個人的には、吉田茂総理の答弁通りに、自衛隊から個別的自衛権から全部違憲なのだというご意見は、現実的かどうかはさておき、それはそれで筋だけは通った議論だと思います。あるいは、先ほど述べた通り、政府の憲法解釈の変更は現実的にありえることとする立場をとれば、今回の法制度だけが違憲という根拠は無くなります。中途半端にこれはよくてあれはダメ、という議論を現実を離れて行うことは、結局のところ水掛け論でしかない印象が僕にはあります。なぜならば、結局のところ憲法9条には上記のこと以外は書いていないのですから。

◆おわりに

 以上、平和安全法制について思うところを二点記しました。ただ、本当に大多数の方が感じているのは、もっと漠然とした「大丈夫なのかなあ…」という不安なのではないかと個人的には思います。これは、最終的にはその時々の内閣およびその長たる内閣総理大臣が、どのように事態を判断するのかという、今後の法制度の運用に係る問題だと思います。どんなに良い包丁でも、使い方によって美味しい料理も作れますし、人を害することもできます。法律も同様です。今後の運用が、本当のポイントなのです。

 その点は、国会や政党の機能にもよることにもなりますし、最終的には、有権者たる国民の皆さまが、本当に信頼できる方を選んで頂けるかどうかにかかっています。民主主義の国なのですから。もちろん選ばれる立場の者は、そうした信託を頂くに足るように常に研鑽を積まねばなりません。

 先の通常国会末、衆議院における内閣不信任案の趣旨説明において、民主党の枝野幸男幹事長は、ヒトラーは選挙によって選ばれたのだ、という趣旨のお話をされました。歴史的事実としてはその通りです。しかし、当時のドイツの有権者と現在の日本の有権者を同列に扱うことは、現在の日本の有権者の皆さまにとても失礼なことだと感じました。歴史は学ばれているものと、僕は強く信じています。

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2014年7月 1日 (火)

安全保障法制の整備に関する閣議決定について

 おそらく今日、安全保障法制についての閣議決定が行われるようなプロセスとなっています。Facebookを見ていてもすでに様々な感想があり読ませていただいています。その中で、いくつか僕からもお伝えしたいことをQ&A式に記しておきます。なお、公開されるのは閣議決定後になりますので、内容面は公開後まずご一読をお願いしたいです。決定後、官邸のWebサイトに掲載されると思いますので。閣議決定に至った背景などもシェアしていただきたいし、自分の考えもご説明しなければならないと思うからです。
なお、橋本の理解によるものであり、文責は私個人にあります。ご参考にしていただければ幸いです。

Q1) 今日、何が決まるのですか?

A1) 「今後、政府がこういう方針で法制度の整備(法律・政省令の新設または改正)を行います」という方針を政府が決めます。主な内容は、PKOの際の駆けつけ警護を可能にする法整備をすることや、我が国の存立に関わる等の条件のもと、他国に対する武力行使に対して日本が必要最小限の実力行使をすることを可能にする法整備をすること、等です。詳細は、閣議決定の文章をご一読ください。閣議決定後、総理官邸のWebサイト等でご覧いただけるようになると思います。A4版6ページの日本語の文章です。

Q2)それで何が変わるのですか?

A2)今後の政府の法整備の方針が変わります。ただし自衛隊や海上保安庁等の行動は、自衛隊法など個別の法律の改正等がなければ変わりません。したがってすぐ何かが実態的に変わるものではありません。

Q3) 今後政府はどうするの?

A3)今回の閣議決定に沿って、個別の法律案を作成し、国会に提出します。あとは国会での議論です。仮に成立し施行されれば、自衛隊などはその法律に従った行動をするようになります。まだ法案化には具体的に様々な議論を経る必要がありますので、秋の臨時国会で全部の法律が出揃うというのは、僕の個人的感覚としては難しいのではないかと思います。

Q4)こんな大事なことを閣議決定で済ますの?

A4)いいえ。今後法律を制定するプロセスがあり、国会審議も当然行われます。そして少なくとも衆議院・参議院の任期が来たり解散があれば選挙も行われます。

Q5)閣議決定で憲法解釈を変えるのは、密室での決定ではないか?

A5)自民党・公明党内の議論、両党の議論を踏まえています。閣議決定案件としては、極めて慎重なプロセスです。なお、閣議決定は与党内の関係議員にお知らせがある程度、または部会で一回議論する程度が通例です。

Q6) 閣議決定で憲法解釈を変えるのは、法的安定性を削ぐのではないか?

A6)そうなりうるという懸念があることは理解します。安定していることは大事ですしそうしなければなりません。しかし、国際情勢の変化に対応することも大事です。またこれまで 解釈を決めていた内閣法制局にどういう正統性があるのかも併せてお考えいただくべきだと思います。

Q7)一内閣の議論で決めてしまうのは拙速ではないか?

A7)少なくとも私が当選した約9年前以降、自民党内では安全保障法制について、石破茂幹事長らを中心に盛んに議論が行われていました。わが党のマニフェストにも常に記載があり、何度もの選挙を経て今日に至っています。決して一朝一夕の議論ではありません。また法律的にも、20年前のPKO法以来の議論と実績の積み重ねを踏まえてのものです。

Q8)閣議決定前に、国会で議論しないのはおかしいのではないか?

A8)決定する前に政府として国会において方針を述べることは当然できません。国会は個人としての感想を言う場ではありませんから。政府に入っていない議員が自分の意見を言うのは自由ですし、既に行われています。なお閣議決定を受け、衆院・参院の予算委員会の閉会中審査が開催されることになると思います。

Q9)憲法9条を解釈で変えるのはおかしいのでは!

A9)まず、閣議決定で憲法改正はできません。下記の9条の文言そのものは変わりません。

  第九条  日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。   2  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 ただ、こちらが戦争を放棄していても、こちらが武力攻撃を受けた際に何ができるのか、できないのかは、憲法に記述がありません。そこは判例や解釈で補ってきました。過去吉田茂総理は「自衛権は持っていない」という趣旨の答弁をしていますが、朝鮮戦争等の状況により、自衛権は自然の権利として持っているという立場に変更したという経緯もあります。憲法解釈は過去一貫していたわけではありません。

Q10)憲法解釈の変更は邪道だ!憲法改正をすべきではないか?

A10)そういうお考えもあり得ますし、そもそも自民党は綱領に「自主憲法制定」を掲げる政党です。なぜこういう議論があるかというと、憲法9条に自衛権についての記載がないことに原因があります。記載がないことについて解釈をしなければならないのです。一方で憲法改正には国会の 2/3以上の発議、国民投票の1/2の承認というハードルの高い手続きがあります。国際情勢の変化に合わせて、条文の範囲内で解釈を見直すことに問題はないと思います。なお、このご主張を頂いた方は、当然憲法の改正そのものはすべきとお考えなんですよね?

Q11)アメリカの言いなりかあ。この国終わってるよね?

A12) 日本国憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」という文言の意味を僕は常に噛み締めています。お考えください。

Q13) 中国や韓国が反発をするのではないか?

A13)韓国はわかりませんが、5月に訪中した際に中国政府の方とお話した際は、安保法制懇の報告書提出に関し「基本的には国内議論だと認識している。ただし方向性については注視している」という意外に冷静な反応でした。なお憲法9条がない他の国には、集団的自衛権と個別的自衛権を区別して議論するような必要がなく、我が国の事情による特殊な議論だということもご留意いただきたいと思います。

Q14)新宿で焼身自殺があったが、何とも思わないのか?

A14)痛ましいことと感じています。ただ、いかなる理由であっても自殺はすべきではないと思います。他の国のことは言及を控えますが、日本では抗議の手段は自殺以外にもたくさんあります。どうぞ他の手段を選んでいただきたい。

(追記。この方は自殺未遂に留まりご存命との指摘がありました。記述を訂正し、お詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。)

Q15)で、橋本はどう思っているのか?

A15)これまで「内閣法制局の答弁」で思考停止していたことを動かしだすものだと思っています。政治家は「最悪の事態を想定し対策を考えておく」ことは仕事の一つだと思っているので、その観点では、今回安全保障上の新たな選択肢を用意しておくことは必要だったと考えます。僕も初当選以来、イラク人道復興支援やテロ対策の補給支援、海賊対処等に関する衆議院の特別委員会に所属し、政府の活動や自民党のみならず各党の先生方のご議論を受けてそのように思っています。
 もちろん、その選択肢を選ばないようにするために最大の努力をしなければならないことは、政治家としてまったく当然の大前提ですし、そのことは今回の閣議決定があろうがなかろうが考えを変えるものではありません。この選択肢を選ぶことは、政治の敗北だと思います。
 ただ、南シナ海やクリミア半島で、つい最近起こった事態でもあるのです。この対策を思考停止しているわけにはいきません。


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2014年5月16日 (金)

習近平・中国国家主席演説の印象

 日中議連の高村正彦会長のご指名により、5月14日~16日の日程で訪中してきました。目的は中国人民対外友好協会成立60周年記念大会に議連代表として参列するため。議連からは民主党辻元清美、公明党伊佐進一両代議士の超党派三名での行動でしたが、大会には鳩山由紀夫元総理、江田五月元参院議長も参加されました。各国から600名の参加があり、中国側は習近平国家主席始め要人の参加が多く盛大な大会でした。ちなみに連休中に高村副総裁の日中議連一行や野田毅議員率いる自民党AA研一行も訪中していますが、習近平主席との会談は実現していません。よって私たちが最近では初めて習主席とお目にかかった議員といえるかもしれません。30mくらいの距離で演説を聴いただけですが。

 「朋あり遠方より来たる、又楽しからずや」という私たちにも馴染みの論語の一節から始まった習主席の演説は、中国における他国との友好交流の歴史を語り、今後もなお重視する旨を述べた堂々たるものでした。陸のシルクロードや海のシルクロード(明の鄭和の故事を引きながら)を通じた交流の歴史が触れられました。「鄭和はまったく領土拡大を望まなかった」とも付言し中国文化は常に平和を求めていた、とも述べました。対外友好協会の大会の祝辞として相応しい内容というべきでしょう。

 ただいささか気になったのが、一方で近代中国の歴史を「屈辱の歴史」と述べ、今こそ脱却して「中国の夢」を実現しよう!という趣旨の内容があったこと。これは最近の習主席がしばしば述べるスローガン的フレーズだそうですが、わざわざ屈辱に触れることが対外友好を語る場に相応しいかどうか。また「中国が発展するとともに覇権主義になるのではないかと言われることがあるが、多くは誤解であり一部は偏見である」と述べられたことも、昨今の出来事を踏まえるといささか言い訳がましく聞こえてしまったような気もします。大国としての余裕と自制を期待したいものです。

 時あたかも安保法制懇が答申を提出し、夕方には安倍総理が記者会見を開いたのとちょうど同日でしたが、特にそのことには言及はありませんでした。但し戻ったホテルのロビーにてニュースとして報道されているのは確認しました。趙成通・中連部副部長との昼食懇談にてかなりざっくばらんに意見交換しましたが、日本の集団的自衛権行使容認に関する中国側の姿勢としては、基本的には内政問題としつつ、他の問題もあり関心を持つ(或いは警戒する)とのこと。今後議論を深めるにあたり、丁寧に説明することが求められるでしょう。

 対外友好協会の写真展では、日中関係において父・龍太郎を含め過去多くの先達が道を切り拓いて来られたことを改めて実感しました。いま決して日中関係は良好とは言い難いですが、一衣帯水の地理的状況は不変であり、それぞれがいたずらに対立感情を深めることは望ましいことではないと思います。是は是、非は非としつつ顔を見て議論できる大人の関係を持ちたいものです。お互いに。

 なお今回の訪中にあたり、王秀雲・副会長をはじめ中日友好協会の皆さんには大変お世話になりました。前回の訪中時は安倍総理の靖国参拝と重なり日程変更を余儀なくされご苦労をおかけしてしまいましたが、今回は順調に充実した日程をこなすことができました。改めて対外友好協会の60周年をお祝いするとともに、心から感謝申し上げます。

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(写真:大会の様子。ごく小さくですが、演説する習近平主席)


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2013年8月15日 (木)

終戦記念日にあたり

 今日8月15日は終戦記念日。今年は岡山県護国神社にお参りし、終戦の詔書奉戴日本興隆祈願祭に参列いたしました。その来賓としてのご挨拶で申し上げた内容を、おおむね思い出してここに記しておきます。言葉足らずやご批判もあろうとも思いますが、今の気持ちです。

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 本日ここに、多くの皆さまのご参列により終戦の詔書奉戴日本興隆祈願祭が開催されましたこと、ご英霊もさぞおよろこびのことと存じます。誠におつかれさまでした。先ほど終戦の詔書の朗読(いわゆる玉音放送)を皆さまと共に拝聴しましたが、多くの大事な言葉がたくさん含まれています。特に「耐え難きに、耐え」の部分で、ワンテンポ間が空きます。ここに昭和天皇陛下が万感の思いを込められているのではないかと思いながら、拝聴いたしました。そのお気持ちに応えていかなければならないという思いを新たにいたしました。

 ひとつ具体的な話をさせてください。社会保障の分野では「自助・共助・公助」という言葉が言われています。まず自分の身は自分で支える。それが難しいときにはお互いに支えあう、こういう順番で物事を考えようということです。この考えは多くの方が受け入れていると思います。

 しかし、安全保障の分野では、日本国憲法はそのようになっていません。まず他の国に頼ることになっています(前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」の部分を指しています)。制定当時は占領下でしたから、この文言を受け入れざるを得なかったのだろうと思います。しかし終戦から67年を経、状況は変わっています。私は自らの身はまず自らで守るように、我が国の行動規範である憲法を直していかなければならないと考えます。いろいろなお考えはあると思いますが、前に進めてゆくことをお誓いします。

 先の大戦では国を護るために戦地において、あるいは巻き込まれて多くの方が命を落とされました。今日そのご英霊に対し、国を受け継ぎ守ってゆく気持ちをご参列の皆さまとともに新たにする機会をいただけたことに感謝を申し上げ、ご英霊の御霊安らかならんことを祈り、ご挨拶といたします。誠におつかれさまでした。

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