23.雑感

2023年8月21日 (月)

週刊新潮より海外派遣に関し取材依頼があり回答しました

 『週刊新潮』誌から、今年7月のフィンランド、スウェーデン派遣に関して取材依頼のファックスがあり、回答をいたしました。当該派遣に関しては、既にに私のブログでも「フィンランド・スウェーデン視察記」をアップしておりますが、メディアからのお問い合わせですので対応することとし、下記の通りに回答いたしましたので、公表いたします。

 8月23日発売号の誌面に掲載する記事に関し、8月20日の日曜日にファックスを送信され、翌日午後5時までに回答を求めるという日程感については、回答に要する負荷に配慮がなく、また回答が記事にどの程度役立てられるのか疑問を感じ得る日程設定という印象は免れません。実際、この回答の準備のために私は21日の日程を急遽一部変更して対応に充てました。そうしたこともご賢察の上、この回答が編集部において適切に取り扱われ、意義のある記事に資するものとなることを心から期待しています。


【取材のお願い】(「取材のお願い」画像)

衆議院議員 橋本 岳 様
取材のお願い
2023年8月20日(日曜日)

拝啓

 時下益々、ご清祥のこととお慶び申し上げます。新潮社『週刊新潮』編集部の(記者名)と申します。小誌では、国会議員が海外視察に際して在外公館から便宜を供与されている件に関する記事を8月23日発売号にて掲載すべく取材を進めております。つきましては下記質問がございます。

  1. 弊誌の取材では、衆議院の海外派遣にて7月9日~14日にフィンランド、スウェーデンに行かれたと伺っております。その目的はフィンランド及びスウェーデンにおける地域活性化、こども政策、デジタル社会形成の事情等に関する調査と伺っております。現地においての具体的な日程を、ご教示ください。
  2. 国会議員は海外視察に際して、在外公館から便宜供与を受けることがあると伺っております。具体的には、ホテルの予約、訪問先のアポイントメントの取り付け、現地の事情説明、空港送迎、訪問先への動向・案内、車の手配、通訳などです。今回の視察に際して、具体的にどのような便宜供与を受けられたのか、ご教示ください。
  3. フィンランド、スウェーデンにおいて観光名所に行かれたか、ご教示ください。その際に、在外公館から便宜供与を受けられたのか、ご教示ください。
  4. 在外公館の便宜供与はどのようなものであるべきか、ご見解をお聞かせください。
  5. 国会議員と地方議員や民間人では外務省から受けられる便宜供与の内容が異なります。この点についてご見解をお聞かせください。
  6. 当該外遊は公金(税金)で賄われているものと理解しておりますが、この理解に相違はございませんでしょうか。

 質問は以上です。お忙しいところ誠に恐縮ではございますが、締め切りの関係上、明日8月21日(月曜日)午後5時までにご回答いただきたく存じます。以上、何卒よろしくお願い申し上げます。

敬具
((株)新潮社「週刊新潮」編集部住所、記者氏名、連絡先)


【橋本からの回答】(回答画像)

令和5年8月21日
(株)新潮社「週刊新潮」編集部 (記者名)様
衆議院議員  橋本 岳

拝啓

 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。2023年8月20日付「取材のお願い」におけるご下問につきまして、下記の通り回答申し上げますので、ご査収ください。

 なお当方は、貴誌の発売日および締切について一切関知する立場にはございません。ご下問への回答を充実させるためにも、今後はよりお早めに、また事務所営業日にご依頼いただけますと幸甚です。

 どうぞよろしくお願い申し上げます。

敬具
問1,3関係)

 今年7月に衆議院の派遣によりフィンランド、スウェーデンに参りました。その日程や内容等につきましては、現在衆議院が報告書を公表する準備をしておりますので、そちらをお待ちください。なお個人的な記録として「フィンランド・スウェーデン視察記」(http://ga9.cocolog-nifty.com/blog/2023/07/post-a3c1f3.html)をブログにて既に公表しております。そちらもご参照願います。

問2,3,4,5関係)

 今回の派遣にあたり、衆議院の依頼により外務省をはじめとする関係政府機関にご協力いただいているものと存じます。詳細は衆議院事務局国際部総務課にお尋ねください。なお一般的に、外務省の便宜供与については、公共性・公益性を有する用務で海外渡航する者に対して行われるものと承知しています。

問6関係)

 今回の派遣に関する旅費等は、衆議院の予算から支弁されているものと承知しています。

以上

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2023年8月10日 (木)

マイナンバーおよびマイナンバーカードなどを巡る私家版Q&A

 マイナンバー及びマイナンバーカード、またその健康保険証としての利用を巡り、トラブルが報道されご心配をおかけしています。ただ様々なトラブルが同時に報告されており、またマイナンバーの仕組みや社会保障そのものの仕組みが複雑だったりするため、必ずしも的確に理解されているとは限らないとも思われます。また、政府において理解をもとめるために丁寧に説明することが大事ではありますが、政府任せにしておいてよいとも思いません。

 そこで、私なりにマイナンバー等に関する認識をQ&Aに取りまとめてみました。私家版として公表しますので、ご理解の一助となればと思いますし、また誤りがあればご指摘いただければ幸いです。なお文責は橋本がく個人にあり、政府や所属組織の見解を表すものではありません。また、私なりに確認をしながら記し誤り等があれば随時修正はいたしますが、仮に何か損害が生じても責任は取れないことは申し添えます。


Q.マイナンバーカードはどう扱えば良いの?
A. 鍵束やクレジットカードみたいなものとして扱うといいです。
(解説)  マイナンバーカードは、例えばコンビニで住民票が取得できたりしますし、健康保険証の代わりにもなって、便利なものです。一方で、券面にマイナンバーが記載されていて、みだりに他人に見せるなとも言われます。どう扱えば良いか、迷う方もおられるでしょう。

 個人的には、鍵束やクレジットカードみたいなものとして扱っていただければいいと思っています。大事にするために箪笥にしまったり神棚に祀ったりしていても、あまり役に立ちません。持ち歩かないと意味がありません。

 一方で、家の鍵やクレジットカードと同様に、見ず知らずの人にホイホイ見せたり渡したりするものでもありません。そうした行動が悪用につながる恐れがあるのは、マイナンバーカードもクレジットカードも家の鍵も同様です。

 とはいえ、クレジットカードであれば、基本的にはお店の人に渡さないと決済できません(最近は渡さないで決済できる場合も増えましたが)。家の鍵であれば、普通他人には鍵を渡すことはありませんが、家族や彼女ないし彼氏には、むしろ進んで合鍵を作って渡すものだったりもします。マイナンバーカードについても、行政機関や医療機関の窓口の端末やコンビニの端末などにかざすことで住民票や戸籍謄本の取得ができるサービスが受けられたり、健康保険証として使えたりします。普通に財布かカードケースにでも入れて持ち歩いて、利用してください。


Q. マイナンバーカードを落としたりなくしたりしたら、困りませんか?
A. 保険証を落としたりなくしたりした程度には困ります。なるべく落とさないようにしましょう。
(解説)  まず、マイナンバーカードは、落として他人の手に渡ったからといって、それだけでただちに何か悪用されることは、ありません。マイナンバーカードおよび券面記載のマイナンバーは、利用するためには暗証番号の入力や顔写真の確認など本人確認が必要となります。とはいえ、クレジットカード同様、カードと暗証番号は別々に管理するようにはしてください。また他人の顔写真のお面をつけて医療機関の保険資格確認システムの顔認証をクリアする実験をした方がいたようですが、まあ普通そんなことすると受付の方や周囲の方、診察する医師に怪しまれ単なる変な人として扱われかねませんので、実行はやめておいた方が無難だと思います。

 また、クレジットカードのように、マイナンバー総合フリーダイヤル(0120-95-0178)に電話すれば機能を停止させることができます。365日24時間受付していますので、紛失したらご連絡ください。

 その上でなおカードが見つからなければ、保険証やクレジットカード同様、再発行の手続きとなります。その間不便になりますので、できるだけ紛失しない方が良いでしょう。


Q.マイナンバーカードを医療保険証として使うことのメリットは何ですか?
A. 一般の方にとっては、財布がスッキリします。ただしそれ以外にも各方面にメリットがあります。
(解説)  マイナンバーカードは、使用開始の手続きをすると、医療機関を受診する際に医療保険証として使用できます。二枚持ち歩くカードが一枚で済み、財布がスッキリします。もしかして今後、マイナンバーカードの機能をスマートフォンに搭載させることができるようになる時が来れば、その時は一層快適になるでしょう。Android 端末では、保険証機能ではない別の機能について一部始まっていますので、個人的には今後に期待しています。

 また、医療機関側がオンライン資格確認システムというシステムを運用することでこの機能が実現していますが、このシステムと連動することにより、スムーズに医師等が患者の過去の投薬情報や受診情報等を確認することができるようになります。医療機関を受診される際に、問診票等で既往歴や現在飲んでいる薬等を確認されますが、このシステムにより医師側が過去の情報を参照できるため重複投薬や飲み合わせの確認をより確実にできるようになりますし、問診がよりスムーズに行えるようになります。患者側にとっても、新しい医療機器を受診するたびに既往歴等を毎回イチから書かなくてはいけないのは煩わしいものですので、問診の改善には繋がるものと思います。また災害等緊急時、本人が意識不明で問診や同意取得が困難な際にも、医師が既往歴等を参照できます。このことが万一の際にはとても重要になるかもしれません。

 転職や引越しにあたり、健康保険の移動に伴い脱退と加入の手続きが必要になります。マイナンバーカードを保険証として利用可能にしておけば、手続きそのものが必要なことに変わりはありませんが、同じカードをそのまま用いるため、新しい保険証が郵送されるのを待つ必要はなくなります。

なお、医療機関で受付をしている方の事務的な手間が、マイナンバーカードでの保険資格確認の場合すごく楽になると伺ったことがあります。医療機関によるのかもしれませんが、そうしたこともメリットと言えるでしょう。

 またこれも効果として具体的に計測し難い面がありますが、保険証の不正利用(なりすまし等)がし難くなるのも、保険者にとってはメリットといえます。保険証には顔写真がありませんので、仮に違う人の保険証を使用して受診しても、初診の場合は医療機関には事実上確認の術がありません。また、保険者にとってのメリットとして、毎年保険証を被保険者に郵送するコストが省けるということも挙げられるでしょう。たかが郵便代とか封筒代とかですが、国民皆保険ですから総合すればチリも積もれば山となります。


Q.では、医療保険証をマイナンバーカード化するデメリットは?
A. コピーは難しくなるでしょうね。
(解説)  例えばこどもの遠足の際、万一の備えとして保険証のコピーを持たせることがあります。もちろん本人のマイナンバーカードを持たせればよいのですが、親としてはやはり落としたりなくしたりしないか不安でしょう。同様に、特別養護老人ホームのようなご高齢の方の入所施設などで、保険証を施設が預かり管理する場合がありますが、マイナンバーカードを預かるのは不安ということもあるかも知れません(あまりここはセンシティブに考えすぎなくてもよいのではないかとも思いますが)。

 そういう場合のために、基本的には申請により資格確認証という、今の保険証と同じ内容の紙をもらうことができます。その紙を窓口に示せば、医療機関の窓口の方の作業は多分増えますが、同じ医療を受けることはできます。こどもの遠足にも、資格確認証そのものかそのコピーかどちらでも持たせれば、出先で受診が必要になった際に困らずに済みます。

 先日岸田首相が記者会見を行い、この資格確認証について、マイナンバーカードを持っていない方、マイナンバーカードを健康保険証として利用する手続きをしていない方について、資格確認証を発行すると表明されました。おそらくは申請の手間を省いて自動的に発行されるという意味でしょうから、手続きしない人は当面今のままの形式が維持されることになります。

 一方で私もそうですが、すでにマイナンバーカードを保険証として利用している方に新たに保険証を送ってもらう必要はありませんし、その分かかるコストは別に使っていただければ良いですので、そのような形で良いのではないかと思います。

 あと、ないものねだりをするならば、国や自治体が行政施策として行っている医療費自己負担分の補助制度(こども、難病、障害など)についても、保険証とは別に紙の証明書が必要だったりします。また、各医療機関の予約カードとかもあったりして、正直にいえばそちらの方が財布を物理的に圧迫する原因になります。個人的にはそれらもマイナンバーカードやスマホのアプリにして統一してもらえると、医療アクセスが極めて便利になるんじゃないかなと思うのですが…。


Q. 健康保険証をマイナンバーカードにすると紐付け誤りが心配とかいわれるけど、大丈夫?
A.間違いは減らす必要がありますが、健康保険証をマイナンバーカードにすることと紐付け誤りは関係ないです。
(解説)  健康保険の資格情報をマイナンバーに紐付けるにあたり、誤った紐付けをしてしまったトラブルが報道されています。誤りはもちろんあるべきことではなく、政府において確認が行われており、8月8日に河野デジタル大臣から中間報告が公表されました

 転職や引越しに伴って、加入していた健康保険を脱退し、新たな健康保険に加入する手続きが必要になることがあります。その際の申請書類にマイナンバーの記載が求められますが、不記載の方の場合には加入する保険者の事務担当者が申請者のマイナンバーを確認して補足する作業が必要となります。この際に、同姓同名で生年月日まで同じ人がいた場合に、違う人のマイナンバーを登録してしまっていたということがトラブルの原因です。

 したがって、再発を防ぐためには、保険者の事務担当者が上記の作業をする際には住所など他の情報も確認することを徹底するとともに、そもそも申請書に申請者のマイナンバーを正しく記入していただけば、上記の作業が不用になります。ですので、このような申請書類にマイナンバーの記載を求められた際には、マイナンバーカードや住民票に記載されているマイナンバーを記入していただくと、トラブルを避けることに繋がるでしょう。マイナンバーカードを取得したくない方は、住民票の写しを一枚手元に準備しておくと、書類へのマイナンバー記入の際に便利です。もちろん、私はマイナンバーカードの取得をお勧めしますが。

 なおこのトラブルは、上記の原因によるものなので、マイナンバーカードを健康保険証にすることとは全く関係ありません。紙の保険証を使っていても、マイナンバーカード保険証として使っていても、いずれも発生する可能性があります。したがってこのトラブルを解決するあるいは予防する目的でマイナンバーカードを返却しても、マイナンバーカードについて保険証としての登録をせず紙の保険証を使い続けても、意味はありません。同様に、政策的に保険証の廃止を延期しても、全く意味はありません。

 むしろ、マイナンバーを書類に記入していただくことこそが、ミス防止のために大事なのです。


Q.トラブルが続いてるけど、そもそもマイナンバーって必要なの?
A.すでに行政機関内部で使われて定着しています。
(解説)  マイナンバーは、法律に基づき日本のすべての住民に一意に付された12桁の番号です。各行政機関がそれぞれに管理している情報について、個人を統一的に特定することを目的としています。マイナンバーが制度化されたことにより、行政手続きにおいて住民票の提出(による個人の特定)が相当削減され、そのためにかかる手間が減りました。

 社会保障分野においては、マイナンバー導入以前には、行政機関における個人の特定は氏名、生年月日、住所等に頼っていました。しかし漢字表記や住所表記の揺らぎなどもあり十分ではありませんでした。年金分野においてその他の要因もあり結果として各個人の年金保険料支払い記録が統合できず、宙に浮いてしまった記録は5,000万件に及び、正しい年金支給ができなくなってしまう年金記録問題が平成9(2007)年に発覚し、大問題となりました。マイナンバーはその対策として、税・社会保障一体改革の一環として導入が合意されたものです。


Q. マイナンバーは個人情報の漏洩に繋がるのでは?
A. マイナンバーがあってもなくても情報漏洩は起こり得ます。いずれにせよ適切な管理が大切なのです。
(解説)  現在、税、健康保険、年金、福祉など様々な公的場面について、それぞれの機関や部署ごとに必要な方々の情報が別々に管理されています。まずはそれら個々の機関が情報セキュリティを高め、ネット等からの攻撃やミスによる情報漏洩を防げるようにならなければなりません。例えば平成27(2015)年に日本年金機構が何者かから不正アクセスを受け100万人以上の情報が漏洩した事件がありました。この事件は日本年金機構のインターネットから内部LANに直接不正アクセスがあったものであり、マイナンバーやマイナンバーカードは一切関係ありません。

 一方で、例えば組織横通しで自分の情報を集めたい時には、情報が分散管理されている場合には、手間暇かけて情報を探して集めてくる必要があります。マイナンバーが存在しない時にそれをやろうとして苦労したのが、平成9(1997)年から開始された年金記録情報の基礎年金番号への統合作業であり、9年後の平成18(2016)年にまだ統合されていない記録が5000万件に上ることが発覚し年金記録問題となったのは先に記した通りです。

 こうした反省を踏まえ、本人の情報を集める場合により正しく迅速に検索できるようにする目的で整備されたのがマイナンバーなのです。情報量としては、「住所・氏名・生年月日」とマイナンバーはほぼ等価ですので、各種行政届出書類に氏名住所等を記すのと同じようにマイナンバーを取り扱っていただいて差し支えありません。ただ、安全性をより高めるために、むやみに他人に見せてはならないことと決められています。また、マイナンバーの仕組みでは、マイナンバーそのものではなく機関別符号に変換して各行政機関の本人の情報にアクセスする仕組みとなっており、暗号化やアクセス制限などの仕組みとあいまって、安全性を確保しています。

 以降、少し詳し目にマイナンバーの情報アクセスおよびセキュリティの仕組みを記します。各行政機関が保有するデータベースを貸し金庫、個人情報を札束のような資産に例えると、わかりやすいかもしれません。ある人が、A銀行、B銀行、C銀行に貸金庫を借りて、自分の所有する現金を分散して管理しているとします。

 この場合に、貸金庫の鍵をそれぞれ3本持っていても良いのですが、鍵束がジャラついて持ち歩きに不便ですし、どの鍵がどの銀行のものか覚えておく必要があります。鍵ごとに別々の暗証番号がついていたりすると、あっという間に混乱します。もちろん、鍵に「A銀行」と書いたラベルを貼っておいても良いのですが、それを落としてしまった時には拾った人がA銀行の資産を持って行ってしまいます。

 管理の煩雑さを減らすため3つの銀行の貸金庫を、すべて1本の鍵で開けられるようにすることも考えられます。ただしその場合、その1本を紛失して誰かに拾われてしまったら、3つの貸金庫ともすべて開けられてしまうリスクも増えます。

 そこで、マスターキーを1本用意して、あと「総合受付」を用意してそこにも3つの貸金庫を置き、その中に3つの銀行の貸金庫の鍵を分けて入れて預けておくことにしました。「総合受付」には係の人を置き、免許証などで本人であることを示ないと、マスターキーを各銀行の貸金庫の鍵に交換してくれない仕組み付きです。そうすることで、本人が持つ鍵は1本で済み、しかしその1本を誰か別の人が悪用しようとしても、「総合受付」では相手にしてもらえないし、各銀行の貸金庫も開けられない仕組みができます。また仮にA銀行の鍵を落として誰かに拾われても、B銀行およびC銀行の貸金庫の安全性には影響せず被害を限局化できます。ここでいうマスターキーの役割を果たすのが、マイナンバーなのです。そうすることで、マイナンバーを利用することで各行政機関が保有する個人情報を一意に管理できるようになるとともに、マイナンバーそのもので各行政機関が管理する個人情報に直接にアクセスしない仕組みになっているのです。

 ただし、実際には各行政機関は、法律に基づいて、それぞれの目的のために別の行政機関の個人情報を参照します。上記の例え話でいうならば、「総合受付」は、本人のみならず、特定の行政機関からマイナンバーでの照会を受けると、別の行政機関の貸金庫の鍵を利用してその人の個人情報を取得し、参照元に返す仕組みになっています。税や社会保障、災害対策等に関してその人の情報を参照し合うためにマイナンバーがあるので、むしろそういう利用のされ方の方が通常業務かも知れません。情報を参照できる機関やその目的は、法律によって限定的に定められています。

 また、銀行の貸金庫に資産を預ける場合では、銀行は貸金庫の中身を覗いたり盗んだりはしませんが、当然ながら各行政機関は自らの業務のために保有する個人情報を自らの業務のために利用します。

 こうした中で、マイナンバーのシステムにおいて情報漏洩のリスクは、当然ながら上記の例え話における「総合受付」が確実にアクセス管理を行うことに依存する要素が高いため、ここは特に厳重に守る必要がありますし、実際にそのようになっています。一方で、結局各行政機関の内部ミスやネットからの不正侵入により情報漏洩されることの方が実際に多々発生しており、そちらの対策が急務です。この場合、マイナンバーの仕組みは情報漏洩には関係ありません。

 貸金庫の例え話で言えば、鍵をいくら厳重に管理しても、銀行強盗かルパン三世、或いは内部者などに銀行から物理的に貸金庫ごと盗まれるリスクがありますが、それは貸金庫の鍵の管理の問題ではないのと同じです。

 したがって、個人的には、マイナンバーによる情報アクセスが個人情報漏洩リスクを上げるということは理論的には言えるとは思いますが相当厳格な仕組みになっており、マイナンバーに関係しない情報漏洩リスクの方が依然高いのではないかと思います。


Q. ではマイナンバーカードやマイナポータルって何なの?
A. 貸金庫の例え話でいうところの「総合窓口」における本人確認の手段と、総合窓口の透明性確保用のwebサイトです。
(解説)  先ほどのマイナンバーの仕組みについての解説で、銀行の貸金庫や「総合窓口」という話を記しました。実際には情報ネットワークを通じてこうした作業が行われます。当然、本人が自分に関する情報を参照することもできるのですが、その際に、マイナンバーの本人であることを、ネットワークを通じて証明する必要がありますが、これを行う仕組み(公的個人認証サービス)がマイナンバーカードに組み込まれているのです。これは、従来の行政では実印および印鑑証明が担っていた機能です。

 ですので、マイナンバーカードそのものに様々な個人情報が格納されているのではなく、あくまでも印鑑同様のものと考えていただいて差し支えありません。ただし実印と印鑑証明をセットで他人の手に渡すと悪用の恐れがあるのと同様に、マイナンバーカードとパスワードが一緒に他人の手に渡ってしまうと悪用される恐れがあります。その場合は速やかに利用を停止してください。

 また、先ほどの例え話において「総合窓口」が重要な役割を果たしていることがご理解頂けると思うのですが、本人が自分の情報がどのように管理されたりアクセスされたりしているのか透明にしておくことが、システムへの信頼の基礎となります。そのために用意されたものがマイナポータルであり、同名のスマホアプリやwebサイト(https://myna.go.jp )などの形で実装されています。スマホアプリであれば、マイナンバーカードをスマホで読み取ることにより、マイナポータルにアクセスして自分でマイナンバーにより参照できる情報を参照したり、どの行政機関がマイナンバーを用いて自分の情報を参照したりしたかを見ることができるのです。マイナンバーの仕組みにおける自己情報コントロール権の実装という表現も可能でしょう。

 なおマイナンバーカードの発行には上記のような本人認証の機能を持つため、発行の際には窓口での写真の確認など手間がかかります。なので、ついでに券面に住所氏名顔写真を記載することで、物理的な本人確認手段としても活用できるようになっています。


Q. マイナンバーを銀行口座と紐づけると、預金額が政府に筒抜けになるってホント?
A. なりません。振込みに必要な情報を登録するだけです。
(解説)  マイナンバーを銀行口座と紐づけるというのは、具体的には、個人の銀行口座の銀行名・支店名、種別(普通か当座か)、口座番号、口座名義の各情報を登録してもらい、行政機関がマイナンバーを通じて参照できるようにすることです。これらの情報により、行政機関からその口座への送金が可能となりますが、銀行口座の残高照会や引き落としは銀行による本人確認その他の手続が必要であり、不可能です。できたら銀行の信用問題です。

 ネット通販などを利用して、請求書によって銀行振り込みをする手続きをされる場合に、相手の預金残高が見えたりすることはないと思いますし、振り込みができるからといって引き落としができるわけではありません。行政も公金給付の際に、同様に振り込み手続きを銀行に対して行っているだけです。

 この仕組みは、コロナ禍において政府から給付金を国民に支給する際に、銀行口座の確認等に手間取り批判を受けたことを反省し、事前に銀行口座を政府に登録しておいてもらおうというものです。この手続きを行っておけば、今後、政府から給付金を受け取る際には、改めて銀行口座等を登録したりする手間を省いてスムーズに受給することができます。

 例えば年金受給者が、銀行振り込みで年金を受け取ることができるために銀行口座を日本年金機構に登録するのと同様に、政府にも事前に登録しておいてくださいということです。ですので、先の通常国会においては、日本年金機構が保有する口座情報を政府に移管できる法改正を行い、登録手続きを省く対応を行いました。


Q.あれこれ書いているけど、政府のマイナンバーカード普及への対応は適切だと思っているの?強引ではない?
A. トラブルそのものは問題ですが、健康保険証の廃止含め普及策が問題だとは特には思いません。ただ、感想はいくつかあります。
(解説)  マイナンバーやその関連システムに限らず、そもそもイノベーションの普及はそんなに簡単なことではありません。例えば携帯情報端末一つとってみても、ポケベルからPHS、携帯電話、そしてスマホと進化していますが、そのたびごとに「使いにくい」「わかりにくい」「自分には必要ない」という声があったことをご記憶の方は少なくないのではないかと思います。また実際に初期トラブルもシステム導入にはつきものですし、存在が社会問題扱いされることもあります。過去を辿れば、鉄道敷設の際にわざわざ町から離して駅を作った実例とか、カメラを向けられると魂を吸われるといった噂とか、後から考えると一体何だったのかと思うような言説や行動が飛び交うこともそう珍しいことではなく、初めての、よくわからないものに対する人々の不安というものは、仮に後から考えれば不合理なものであっても、一定あるものとして考えなければなりません。そういう意味で、マイナンバーやマイナンバーカード等に対しても、さまざまな評価やトラブルがあることは別段驚くようなことでも、おかしいことでもありません。ごく一般的なイノベーション普及のプロセスだなあと感じています。一方で、年金記録問題を再び起こすことも避けなければなりませんし、このデジタル化の時代において後戻りしても仕方ありませんので、一旦導入したマイナンバーをやめるという選択肢は、少なくとも私の中では考えられません。

 国の税金を使ってマイナポイントを付与してマイナンバーカードの普及を図ったことについても、無駄遣い等の批判はあります。ただイノベーションの普及という観点では、その昔Yahoo!BBという企業がADSLモデムを駅前で無料配布していたことがブロードバンド普及のひとつのきっかけになったこととか、さまざまなキャッシュレスサービスがポイント付与などを行って普及を図っていることとかを思い出すと、そんなに珍しいことでもありません。またマイナポイント付与も、結果として国民への金銭価値の給付なわけですから、他の給付施策への態度とあわせて考える必要があるでしょう。

 健康保険証のマイナンバーカード化については、必要なことだと思いますし立ち止まる必要はあるとは思いませんが、ただカード普及の手段としては挑戦的な選択だったかもしれないという感想は持ちます。「イノベーション普及学」という有名な本がありますが、この中で、新たなイノベーションを早期に採用するイノベーターやアーリーアダプターと呼ばれる方々は比較的年齢が若いということが記されています。一方で、健康保険証のヘビーユーザーは高齢者の方が多く、もちろん人にはよりますが、必ずしも新しい技術やその成果の採用に熱心ではない方が、他の年齢階層に比べて多い可能性があります。マイナンバーカードも、スマホで読み込むことで便利に活用したり、マイナポータルアプリを使って手続きをしたりすることが可能になるところ、そもそもスマホの普及や使いこなしもなかなか困難な方も少なくありません。また、オンライン資格確認のために端末の導入を急がされた医療機関側についても、特に診療所は高齢な医師による経営も少なくなく、ここに時限的なシステム導入をさせたことは、結果論ですが、すべての人にとってストレスが大きかったかもしれないとも思います。普及学という観点からすると、教育や子育て関係など比較的若い方を対象とした施策でマイナンバーカードを活かして利便性を高めることも、今後は考えられるべきかもしれません。

 なおしばしば、「政府はもっと説明を尽くして国民に理解を求める努力をすべき」といった言説を見かけます。もちろん政府はそうあるべきです。また、政府による個人情報収集を警戒視する見方もあります。これも、政府はそういう目があることを意識して、透明化に努める必要があることは言を俟ちません。ただ一方で、普及学という観点では、アップル社のiPhoneが、指紋認証や顔認証のために生体情報という個人情報ズバリそのものを全世界から収集しまくっているにも関わらず、おそらく大多数のiPhoneユーザーが別段アップル社のセキュリティ対策や情報管理などにロクに関心がなく、説明も見ずに購入し使用しているであろうということにも、注意を払う必要があるとは考えます。

報道等でマイナンバーカードを巡って何かコメントをされるみなさまにおいても、説明や理解促進といった当然のことのみならず、上記を踏まえ、どうやったらよりスムーズに普及させられるかという観点でもご示唆をいただけると、私も政府ももっと勉強になってありがたいことだと思いますし、社会に裨益するところ大とは考えるところです。

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2023年7月17日 (月)

フィンランド・スウェーデン視察記

 令和5年7月9日晩に羽田空港を出発し、14日夕方に成田空港に帰着する日程で、フィンランドおよびスウェーデンに現地事情等視察のため衆議院から派遣されました。後日衆議院が報告書を作成しますが、とても勉強になりましたので、私個人の視点からもその主な内容にいて記します。なお、私個人のメモや記憶に頼って記しておりますので、誤りがあるかもしれないことも含めて文責は橋本がく個人にあります。公式な報告は衆議院の報告書をお待ちください。

●概要

 今回の視察団は、衆議院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会の委員長および理事5名および関係省庁職員3名、衆議院の調査員1名の計9名より構成され、委員長として私が団長を務めました。委員会の所管範囲に従って地域活性化・こども政策・デジタル関係の視察ということになりますが、かねてより、妊娠期から育児期まで一貫して相談支援を受けられるというフィンランドのネウボラを見学したいという私の希望も容れていただき、視察先はフィンランドおよび隣国のスウェーデンとなりました。

 主な日程は、7月9日晩に羽田空港を出発し、翌10日早朝にフィンランドのヘルシンキに到着。午前中はカラサタマ地区のスマートシティプロジェクトを見学し、午後はODDI(ヘルシンキ中央図書館)を見学。夜は在フィンランド邦人の方々と意見交換しながら会食。翌11日はヘルシンキ市の隣のエスポー市のアアルト大学キャンパス内でベンチャーインキュベーション等のエスポー市の取組を伺い、お昼にはヘルシンキ市に戻ってヘルシンキ市若者協議会の方々と会食しながらヒアリング。午後はカンピ地区ファミリーセンター(ネウボラ)および児童養護活動NPOであるSOSこども村の事務所を訪れてそれぞれの活動についてヒアリングと見学をしました。

 12日早朝からスウェーデンのストックホルムに移動し、午前中はストックホルム市オステルマルム地区オフィスを訪問してストックホルム市における児童養護についてヒアリング。お昼に在スウェーデン邦人の方々と会食して意見交換を行った後、スウェーデンの技術革新庁を訪問してMaasの実証実験を行うプロジェクトであるDrive Swedenについてヒアリングを行いました。能家正樹・駐スウェーデン日本大使にお招きをいただき、大使公邸にてスウェーデン事情などを伺いながら夕食をご一緒しました。

 翌13日早朝にストックホルムを出発し、ドイツのフランクフルトで便を乗り換えて、翌14日夕方に成田空港に帰着する日程でした。なお予定と予定の間が空いてしまった時間を利用して、それぞれの街を散歩したりもしています。

 所管範囲の広さのため内容が多岐にわたりますので、「地域活性化・デジタル」「こども」「その他」の分野にわけて、感じたことなどを記します。

●地域活性化・デジタル

<カラサタマ地区スマートシティ見学>

 ヘルシンキ市のカラサタマ地区は、かつて工業地帯として栄えていましたが、2013年にスマートシティとして再開発されることとなりました。海沿いで石炭火力発電所(SDG対応のためこの4月に停止された由)がすぐ横にあるのは工業地帯の名残を感じさせますが、駅に隣接した商業施設、16階くらいの高層ビル4棟、公園、7~8階建ての住宅団地などが配置された地域です。住宅団地は、地震がなく冬になると短時間の日照時間を有効に取り入れるため窓が大きく、また外観もレンガ調で統一されています。しかし同じビルが並ぶことを避けるためにわざと複数のデベロッパーに参加させた結果建物の色やデザインは適度にバラバラであり、また公園や道路などの空間も広く植栽も豊かであるため、無機質さを感じさせない、ヨーロッパらしい落ち着く街並みとなっていました。住民の多様性を確保するため、賃貸住宅と持ち家住宅が混在し、学生や社会的支援対象者なども居住しています。

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(写真:いずれもカラタサマ地区の街並み)

 ガイドさんに引率していただき、スマートキー(カード)によって管理されるダストシュート、カーシェア、各診療科や検査が設けられた健康センター、食品ロス対策の店舗などを見学しました。スマートシティとしての再開発にあたっては、デジタルによる効率化により「一日にもう一時間(One more hour a day)」を住民に提供することをコンセプトとしているとのことですが、その他にも環境サステナビリティなどさまざまな意識が伺えました。

 住民が利用するダストシュートなどは、非接触のスマートキーにより管理されていますが、そのデータ(例えばゴミが出された時間、量など)は匿名化された上で市がオープンデータとして集計して公開され、改善その他の活動に生かしているとのこと。また建物の共有スペースや空いている駐車場などは、アプリで街の外の人にも時間貸しされ、有効活用されているそうです。

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(写真:ダストシュート。ちょうど住民の方が使用しておられました)

 ヘルスケアセンターは、日本的に記せば市立診療所ですが、複数科の外来や検査も行えることに加えて福祉窓口もあり各種手当の申請手続きもその場で行えます。窓口は多言語対応の端末化されており非接触のカード(Kela card)を使って保険資格の確認や診察の受付ができます。医師は診察にあたり過去の診療履歴等を参照できるとのことで、このあたりは、日本がマイナンバーカードによるオンライン資格確認および医療DXで実現しようとしていることが既に先行して実現されているようです。端末操作が困難な方向けに有人窓口もありますが、見た限りでは多くの方が普通に端末で受付をしていました。

<OODI(ヘルシンキ中央図書館)見学>

 OODI(ヘルシンキ中央図書館)は、3階建てで曲線や傾斜が多用されたデザイン、ガラスや木などが組み合わされた外装の巨大な施設です。図書館という名称の通り3階には分類された書籍が並べられていますが、1階はホールやカフェ、2階は誰でも使用可能な機材や空間(コンピュータやプリンタだけでなく、楽器や3Dプリンタ、ミシン、音楽スタジオ、キッチンスタジオ、ゲーム機(スイッチとかプレステとか)スペース、打ち合わせスペースや作業空間など)を有する市民メディアセンターと呼ぶべき施設です。個人的には、私の母校である慶大SFCにあるメディアセンターの巨大版といった趣でした。閲覧スペースにもカフェがありくつろぎながら読書することができることに加え、こどもの遊びスペースもあり親子連れでも普通に楽しめます。

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(写真:OODIの外観。遠景と近景)

 3階の床は一部ゆるやかに傾斜して坂になっており、頂上からは3階全体を見回すことができます。誰でも必ず一度は登頂を目指したくなるのではないかと思います。もちろん私も登頂しました。また2階には階段状の、リラックスした姿勢で過ごせるスペースがあり、若い方々を中心にめいめい本を読んだりノートPCで何か作業をしたりしていました。私がこどもの頃、地元の市立図書館で床に寝転がって本を読んでいて家族に注意されたことを思い出して、自由な姿勢で過ごせるのはかなり羨ましく感じました。

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(写真:OODIの3階、最も標高が高い地点からの眺め)

 またOODIは、広場を挟んでフィンランド国会議事堂と対面するように建設されており、3階のベランダからは国会議事堂を眺めることができます。これは、市民が図書館で勉強して国政を監視するという機能を意識した配置だそうです。ちなみに日本の国会図書館は国会議事堂の横に建設されており、国会議員の活動を補佐することを役割のひとつとして掲げています。いずれも健全な民主主義のために図書館があるという理想は共通していますが、国会に対する見方の違いが表れているようにも感じました。なお、通訳して頂いた方から、日本から視察に来た地方議員の方が「市民が勉強されたら困るなあ」と発言されたのを耳にしてモヤモヤした気持ちになったと伺いました。私もモヤモヤした気持ちになりました。

 なおOODIについてはこちらの記事でも紹介されていますので、ご参考にしてください。

■『“世界一の公共図書館”は、なぜフィンランドから選ばれたのか? その理由を探るためヘルシンキを訪れた。』(中島良平)

<エスポー市エンターエスポー社ヒアリング>

 エスポー市は、ヘルシンキ市に隣接する人口30万人でフィンランド国内第2の都市です。サスティナブル(持続可能な)都市として欧州1位と評価されており、ベンチャー起業も盛んであることが有名です。エスポー市の100%子会社であるエンターエスポー社の清水さんから、エスポー市の取組についてお話を伺いました。

 エスポー市には携帯電話機器等で知られるノキアの本社やアアルト大学のキャンパス存在し、ノキアがスマホ開発で乗り遅れてしまったために技術者を解雇しなければならなくなった際に、起業を積極的に支援したこともあってベンチャー起業が盛んになったきっかけがあったようです。また市長も「City as a Service」というコンセプトを掲げ、トップダウンを排した市民やコミュニティを重視した取り組みをしています。

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(写真:エスポー市についてのプレゼンテーション)

 デジタルに関する取り組みとして、市民データのAIによる分析を行い児童虐待予防や移民の動態予測に活用した例や、都市開発プロジェクトにおいて5G街灯(データのやり取りができる街灯)を設置した例、”My Data Experience in Espoo”として自分のデータがどのように利用されているか可視化する取組の例などが紹介されました。

 エスポー市のコミュニティを支える要素として、「トラスト(信頼)社会」というキーワードで清水さんは表現されていました。福祉や平等精神の価値観や、政府の透明性やそれに基づく信頼感(あるフィンランド人の方は”We are happy tax payer.”と発言されたとのこと。日本もそうおっしゃってもらえる政府を目指さなければなりません)、がんばらなくてもやり直せる社会であること、メディアリテラシーの高さとそれを支える質の高い学校教育、Well-Beingや労働者の権利、休息の重要性に意識が高いこと、市行政は草の根の支え役になっていること、などを感じておられるとのこと。またフィンランドは人口が少なく(面積的には日本と同程度だが、人口は北海道と同程度)市場規模が小さく、また外国からの移民もそもそも多いため、スタートアップ企業は国内で一定の成果を挙げてからGo Globalするのではなく、最初からBorn Globalであるという言葉が印象的でした。起業前後のコーチングやコンサルティング等の支援も充実しています。

 なおフィンランドにおいても首都圏の人口増加に対して、その他の地方部の人口減少は問題になっているとのことで、そこは日本と同様の悩みはあるようでした。また行政データのタテ割りの問題については、今の市長がそこを排する取組をしたとのこと。また”happy tax payer”という意識の原因としては、図書館や学校教育(成人の学び直しなども無料)の充実やネウボラなど公共サービスが充実していることが肌で感じられること、また予算使途のプレゼンテーションが上手であること、などが挙げられました。

<Drive Swedenプロジェクトヒアリング>

 Drive Swedenは、スウェーデンの技術開発庁(VINNOVA)、エネルギー庁等の官庁、VOLVOやSCANIA等の自動車メーカー、大学等の研究機関地方自治体等が協力して交通分野の革新を目指す研究の枠組みです。自動車産業における四つのトレンド”CASE”- Connected, Automated, Shared, Electricに対応するべく多くの具体的な研究プロジェクトが行われています。ビジョンとして、スマホアプリでカーシェア、鉄道、電動キックボードなどを組み合わせた移動がスムーズに実現できる、いわゆるMaaS(Mobirity as a Service)の実現を掲げています。

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(写真:Drive Swedenプレゼンテーション)

 ただ、実現にはなかなか苦労しているようで、鉄道事業者の顧客囲い込みに直面をしているとか、カーシェアの場合の車への課税をどのようにするかとか、第三者による鉄道切符販売は持続可能性かといった課題があり、また特に地方部ではMaaSの実現に困難を感じているという率直なお話がありました。一方で不動産のデベロッパーがこの分野に注目していることなど新しい動きもあるとのことでした。

●こども政策

<カンピファミリーセンター見学>

 フィンランドの子育て支援の施策としてネウボラは有名です。ネウボラとは、フィンランド語で「アドバイスの場所」という意味で、妊娠期から就学前にかけての妊婦・こども家族を対象として、かかりつけ保健師を中心として切れ目のない支援を行う制度および地域拠点のことです。運営主体は市町村、利用は無料であり、100%近い定着率やワンストップによる支援、産前産後を通じた同じ保健師による支援の連続性などが特徴とされています。

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(写真:カンピファミリーセンターでのプレゼンテーション)

 10年前から、ヘルシンキ市ではその他の機能も複合化したファミリーセンターとして再編されつつあるそうで、訪問したカンピファミリーセンターはヘルシンキ市のカンピ地区を担当するセンターでした。親への支援、家庭リソースの強化、心理師やソーシャルワーカーなど専門家による支援、アウトリーチなどを行っています。出産は産科医療機関で行いますが、妊婦やこどもの健診もファミリーセンターで行います。なお通常、妊婦の健診は10回、産後は0歳時10回、その後就学までの間に6回行われるそうです(日本では妊婦健診は14回が無料ですが、乳幼児・児童の健診は地方交付税措置は4回分、法定されているのは2回しかなく、地方自治体によって回数・内容とも幅があります。ここは改善したいところです)。

 さまざまな機能をひとつの施設に集めたことにより、妊婦のいる世帯が今後どのようなサービスが関わるのか見通しを持つことができるようになったとのこと。絶えずQRコードなどからアクセスできる利用者アンケートをとっており、満足度は100%と回答されるがもっとその理由を深堀したいとのこと。また相談や支援のリモート化やデータベースの活用による家庭および職員双方の負担軽減を図っているというお話もありました。

 保健師さんによる概要説明の後質疑応答になりました。日本においては、様々な背景により母親がこどもを自宅等で生み落として殺してしまうことは後を絶ちません。日本の児童虐待の統計では、0歳0か月0日で亡くなる子が最も多いのです。またその対策として内密出産の取り組みも行われています。そうした背景のもと日本側から、望まない妊娠についてどのように取り組んでいるのか、そもそも相談に来ないまたは来られない親をどうやってキャッチしているか?という質問がありました。ネウボラの保健師さんいわく、望まない妊娠についての相談ももちろんネウボラで受けていること、そもそもフィンランド人にとってネウボラへの連絡のハードルが低く、相談に来ないことは考えにくいこと、もちろん相談ハードルを下げる努力は行っており、たとえば最初の相談時には背景がわからないためいきなり「おめでとう」とは言わないことなどを心がけている、といったお話がありました。日本では行政の相談窓口というのは「しきいが高い」というイメージがどうしても拭えませんが、なかなかギャップを感じる回答でした。

 施設内の見学もさせてもらいましたが、妊婦の健診室に、きょうだいを連れて来れるようにこども用の机と椅子もあったのが印象的でした。おそらく日本では、第二子以降の妊婦健診ではこどもの預け場所を探すところから始まるのではないかと思うのですが…。そのあたりから意識と設備の変革が必要です。

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(写真:ファミリーセンター内の健診室。こども用の机椅子に注目)

<SOS子どもの村ヒアリング>

 SOS子どもの村は、児童養護の活動や施設運営を行うNPO団体です。日本でもSOS子どもの村JAPANとして活動が行われています。今回はヘルシンキ市のオフィスを訪ねて、フィンランドにおける児童養護の活動などについてお話を伺いました。

 SOS子どもの村の仕事は、虐待など何か困難な事情が発生してからの仕事と、そうした事態の発生を予防するための仕事の両方を行っています。まず困難発生後に関しては、フィンランドの20地域で、行政から委託を受けその決定内容に従って児童を支援または養護する取り組みを行っています。支援の内容も幅があり、サポートファミリー(ボランティアの一般家庭)にこどもが週末など定期的に遊びに行くことで親がリフレッシュするような支援、ペアのソーシャルワーカーや専門家が定期的に家庭訪問をして話し相手やアドバイス、行政手続きの支援などを行う訪問支援、家族ごとファミリーリハビリセンターに一定期間移って職員とともに生活させ、生活リズムを整えるを行う支援、さらになお困難な場合はこどもを親から分離して里親や児童養護施設に引き取るもの支援などがあります。こどもを引き取る場合は里親が第一の選択肢としますが、こどもが障害など困難を抱えている場合は施設の場合もあります。里親が3/4、施設が1/4程度とのことで、日本とは概ね逆です(とはいえ日本は、以前は里親は1/10とかだったので、改善は進んでいます)。

 日本における児童相談所の対応と同様にも思いますが、家族ごとリハビリセンターに入所する支援は、私が知らないだけかもしれませんが、あまり耳にしたことがありませんでした。児童福祉法第38条に基づく母子生活支援施設という類型はありますが、「配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子及びその者の監護すべき児童」が対象とされており、日本では困難を抱えていても父親がいる家庭は入所支援の対象になりません。ここは大きな違いがあるものと思われ、興味深かったです。リハビリにより生活リズムが戻り、結構良い効果があるそうです。数か月で退所することになりますが、その後も訪問支援等でフォローするとのことです。

 事前の予防対策としては、フィンランド全国で4,500名の未成年の子がいる家庭とやり取りをしています。92%の利用者が「話を聞いてくれた」と回答し、32%が「自信がついた」と回答しているとのこと。まずこういう形で数字が出せる調査をしていることから参考になります。また経済的格差を生まないために、企業からスポンサーを募り、こどもに習い事をさせる取り組みなども行っているとのことでした。

<ストックホルム市オステルマルム事務所>

 スウェーデンのストックホルム市のオステルマルム地区の事務所を訪ね、児童養護に関するご担当の方々から児童養護の仕組みなどによってヒアリングを行いました。基本的な仕組みや制度は日本の児童相談所や上記のフィンランドの仕組みと同様のように思われました。フィンランドで伺ったように、親子一緒に入所する施設もあるようです。

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(写真:オステルマルム事務所のプレゼンテーション)

 ストックホルム市におけるヒアリングで興味深かったのは、里親やファミリーホーム(家族的な小規模施設)の支援者の教育や養成を行うにあたり、家庭の安定性などとともに、犯罪歴の確認もされるというお話でした。当然日本においても、本人の申し出ベースで確認はされるものと思いますが、仮に嘘をつかれたら児童相談所では確認のしようがありません。スウェーデンでは法律に基づき市役所が警察に照会をして回答を得ることになっているとのことでした。日本では保育士や教員などに関するDBS(性犯罪歴がないことを証明する仕組み)の実現に向けて現在こども家庭庁で会議が行われていますが、職業選択の自由やプライバシー権にも関わるという議論もあります。そこをアッサリとクリアしてしまっているのは、注目に値するものと思われました。また個別ケースの措置については、最終的には市議会の委員会が決定する手続きがあるとのことで、議会が最終責任を負うこととなっているのも日本とは異なる点です(エスポー市では、市長は市議会が任命するシティマネージャー制というお話も伺ったので、地方自治制度そのものが異なっているのかもしれません)。

<ヘルシンキ市若者評議会メンバー面談>

 7月11日のお昼に、ヘルシンキ市の若者評議会(衆議院の資料ではYouth Councilを青年評議会と訳していますが、対象年齢から私には若者とした方がしっくりくるので、ここでは「若者」とします)のアイシャ・マフムード議長、ネラ・サルミン第一副議長、ローザ・クマール・サーリネン第二副議長と会食しながら面談しました。若者評議会は、フィンランドの法律に基づき自治体ごとに設置されている組織で、13歳から17歳までの者から選挙で選ばれた30名(ヘルシンキ市の場合)で構成されています。よって当然ながら議長、副議長といっても高校生や中学生なのですが、3名とも堂々と受け応えをされていました。任期は2年で、マフムード議長とサルミン副議長は当選2回、サーリネン副議長は当選1回とのこと。私たち視察団同様に法律に基づく選挙で選ばれた方々であることに敬意を表し、公式の行事同様、冒頭に委員長である私からご挨拶と趣旨説明、メンバー紹介を行い、意見交換をスタートさせました。

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(写真:若者評議会の皆さま(向かって左手)との面談)

 若者評議会は、月に1回全体ミーティングを行い、また分野別に委員会があり必要に応じて会っているとのこと。ヘルシンキ市の市長および分野ごとの4名の副市長には、自分たちの権利として年2回面会するとともに、少グループで話して市長や市議会に対して要望活動を行っているとのことでした。内容としては、例えば学校でのいじめに関して、コロナやウクライナ侵攻に関する影響を減らす取り組みを求めること、ヘルシンキ市内の都心部と周辺部で、学校間で科目の有無などの差がある不平等について改善を求めること、通学路の安全確保について改善を求めることなどがこれまであったそうです。「実際に改善されましたか?」と尋ねたら即座に「It depends on politicians!」と返されました。実際、親身になって要望を聞いてくれる議員もいるが、意見が異なることもあるとのこと。最近、市行政の打ち合わせに同席をする要望をしていたことに対し、許可が出たそうです。

 なぜ立候補しようと考えたかを尋ねたところ、それぞれ「学校間の不平等が目についたが何も改善されないのでどうにかしたかった」「1期目は環境問題に関心があった。2期目はコロナ禍におけるレイシズム(人種差別主義)に衝撃を受けたから」「1期目は学校保健の充実を求めていた。具体的には、学校の心理師(日本でいうところのスクールカウンセラーか)が少なくアポを入れても会うのに2ヶ月かかるのを改善させたかったから。2期目は、学校間の格差があり若いうちからプレッシャーを感じることに改善したかったから」とのこと。将来政治家を目指したいかという質問に対しては、過去にそういう進路を選んだ人はいるとのことで、「ひとつの選択肢だが、現政権は中道右派に傾いているところはよく注視していきたい」とのお返事。なおフィンランドでは学校教育で政党やその政策について学ぶそうです。ただし若者評議会としては、政党色はないとのこと。むしろ評議会での活動を通して、行政や政治家の意思決定の重要さを切実に感じるようになったとのこと。

 評議会の中での意見集約などについては、会議に加えてSNSでオープンに意見を求めることも活用しています。また、会議の日当や交通費が市から支給される他、選挙の際にはチラシ代とキャンディー代も市から支給されるとのこと。キャンディーを何に使うのか(まあおそらくチラシと一緒に配るのでしょうが)、選挙制度や選挙運動についてももうちょっと突っ込んで聞いてみたかったのですが、時間がなく確認できませんでした。

 また現在日本のこども家庭庁では、対面やネットなどを通じてこどもや若者の意見を募集する取組をしているが、その紹介をして感想や改善点を求めたところ「国が何かやるのは時間がかかるので、地方自治体でやった方がよいのではないか」「オンラインは増えたが交流は減ってしまったので、対面がよいのではないか」「対面して議論することで友情が育まれる面もある」といった指摘がありました。

 ただやはり同世代の中ではこの活動にあまり関心がない人も、またメンバーの中でもフェイドアウトする人もいるということでした。

 食事しながら、また通訳を挟んでの会話だったこともあり、予定時間をオーバーしてしまうほどの充実した面談となりましたが、視察団一同、自分たちのこども世代である3名の若者が、それぞれにとてもしっかりしていることに舌を巻きました。とはいえ帰り際に視察団のメンバーが地元の飴を配ったら、3名ともとても嬉しそうな顔をして、やっと中学生・高校生らしい顔を見ることができました。こちらがフォーマルに対応したので、緊張しておられたのかもしれませんね。

 日本においても、昨年こども基本法が成立し、施策決定にあたりこどもの意見も聞くことが定められましたが、その具体策は定まっていません。個人的には、若者評議会のような取り組みも十分に意義があるものと感じました。むしろ彼らにチェックされたり打ち合わせに同席されたりする分、より大人の政治家が緊張感を持って仕事に臨むようになるかもしれません。

●その他の印象や感想

 北欧のスカンジナビア半島に位置するフィンランドおよびスウェーデンは、7月でも気温が30度を越さず、湿度も低く、かつ日照時間もとても長く(朝3時くらいに日が昇り、23時くらいに日没する)、街中の緑も綺麗でとても快適な季節でした。ただしそれは夏の間の話で、冬になるとマイナス18℃くらいになりますし、かつ日照時間は逆にごく短くなります。夏休み期間であることもあり、あまり長くない快適な気候の時期を楽しむように、自転車に乗ったり釣りを楽しんだりする方々を多数見かけました。ちなみにフィンランドは魚釣りのルアー発祥の地であり、自由時間にスポーツ用品店に行ってラパラのCD-7というルアーを個人的に記念のため購入してきました(当然輸入されて日本の釣具店でも売っているのですが…)。一方で、街中各地で道路工事などが行われていました。というのも冬になると積雪や日照時間の短さのため工事できなくなるからです。なかなか切実な事情です。

 道路には自転車レーンが設けられており、自転車や電動キックボードが多数行き来していました。政策的に自動車を減らす取り組みがされているようです。ただし電動キックボードはスマホアプリを利用して自由にかつ便利に乗れるようになっていますが、夜の酔っ払い運転による事故も多発しており、曜日や時間により速度や利用そのものの規制が検討されているようです。またそこかしこに電動キックボードが乗り捨ててあったりするので、あまり景観上も良くないかもしれません。

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(写真:街角の電動キックボード群)

 またフィンランドはサウナ発祥の地としても有名です。街中にある観覧車にはサウナゴンドラがあり、熱さを堪能しながら景観を楽しめるようになっているそうです。これはちょっと驚きました。

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(写真:遠くに見える観覧車のゴンドラのうち、茶色のものがサウナになっているとのこと)

 少し話は変わりますが、前記した通りフィンランドでもスウェーデンでも、社会保障番号およびカードで税や医療保険から銀行口座まで紐づけられ、さまざまなサービスが受けられるようになっています。ただ、例えばフィンランドでは国民に番号が振られたのは第二次大戦後のことで、そこから徐々にデジタル化・ネットワーク化されてきた歴史があり、定着度合いが日本の比ではないことは致し方ないのかもしれません。

 スウェーデンでは、社会保障番号の一部は生年月日そのままであり、実質的に個人に振られる番号は数ケタです。最近移民が増え、誕生日が良くわからない人はとりあえず1月1日扱いになるため、たまたま誕生日が1月1日の方が番号を申請したら1月2日生まれの番号が振られ、カードを見せると1月2日生まれと必ず認識されてしまう事態が発生したそうで、桁数を増やす議論も行われているようです。また日本からスウェーデンに赴任した方が、附番を申請して行われるまで6か月くらいかかった上、社会保障番号があまりにも便利なため、その間は買い物も住宅を借りるのもままならなかったとおっしゃっていました。附番に時間がかかるのは、移民の増加に附番事務が追い付いていないことが原因のようです。附番を待っている間は生活が困窮しても支援サービスも受けられませんから、その結果移民がギャング化して抗争がおこり、そこに市民が巻き込まれる事件も起こっていると伺いました。日本でも、マイナンバー関連のトラブルが報道されており、多くが紐づけや発行事務における人為的なミスが原因とされています。トラブルの質は全く異なるものの、デジタル化によって事務効率化を期待するあまり、人手による事務処理の手間をすべて軽視してもならないのであろうとも思います。

 ロシアのウクライナ侵攻による影響も深刻です。日本もそうですが、物価やエネルギー価格の上昇、さらには円安の影響もあり邦人の方も大変そうでした。フィンランドやスウェーデンでは再生エネルギーの利用も進んでいますが原子力発電所も稼働しており、原子力発電所を排したドイツにスウェーデンは電力を供給しているため、スウェーデン国内の電気代も上昇しているとのお話もありました。ロシアと1,300km以上の国境を接するフィンランドでは徴兵制(ただしボランティア活動で代替可能。最短6か月)があり、会食した邦人の方のご子息が現在兵役に就かれているとか、街中のビルの地下室や地下鉄等、シェルターになる施設の整備は進んでいるが、そこで食べる食糧3日分は各自で準備する必要があるといったお話も伺いました。

 駐スウェーデン日本大使の能家正樹大使は、数年前に私が自民党外交部会長を務めていた際に外務省領事局長を務めておられ、いろいろお世話になりました。その後異動して駐エジプト大使を経て現職に就かれておりますが、久しぶりにお目にかかることができて個人的には嬉しかったです。スウェーデンではザリガニを食べるそうで、夕食会のメニューにもザリガニの味噌汁仕立てがありました。普通に美味しかったです。少し体調を崩されたりしてご苦労もあったようですが、その際にスウェーデンにて医療機関を受診するための手続きやアポ入れにかかる時間が長く大変だったようで、日本の医療アクセスの良さを痛感されたそうです。

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(写真:能家正樹駐スウェーデン大使と。すっかり学者風の風貌になっておられました)

●最後に

 冒頭に記したように、今回の出張は衆議院による派遣でした。私たちに貴重な機会をいただいた衆議院議院運営委員会や、各党の国会対策委員会の皆さまに深く感謝申し上げます。もちろん、倉敷市・早島町の皆さまに国会に送っていただいているおかげですので、地元の皆さまにも篤く感謝申し上げます。衆議院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会の理事・委員各位、また各省庁から同行いただいた各氏にもそれぞれ御礼申し上げます。特に衆議院調査局の坂本峰利調査員はじめ調査局の皆さま、現地で受け入れていただいた在フィンランド日本大使館、在スウェーデン日本大使館、在フランクフルト日本総領事館の皆さまには、短い準備期間になってしまったにもかかわらず充実した内容のご準備をいただきました。篤く感謝申し上げます。

 学んだことは今後の議員活動に必ず生かして参ります。誠にありがとうございました。

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2023年6月27日 (火)

第211回国会を振り返って

●はじめに

 令和5年1月23日に召集された第211回通常国会は、150日間の会期通りに6月21日に閉会されました。この国会では終盤に「すわ解散か」というタイミングもありましたが、終わってみればまあ概ね順調だったと言えるものとなりました。令和5年度予算は年度内に成立した上、法案としては、防衛財源確保法や送還忌諱問題等に対応するための入管法改正案、コロナ禍の反省を踏まえて感染症危機管理統括庁を創設する新型インフルエンザ等特措法改正案、日本版CDCを創設する国立健康危機管理機構法案、不同意性交罪の新設や性交同意年齢の引き上げなどを柱とした刑法改正案等の重要法案が審議され、成立しました。議員立法でもゲノム医療推進法や戦没者遺骨収集推進法の延長、認知症基本法などが成立しています。最終盤に内閣不信任案も提出されましたが、賛成は立憲民主党と共産党のみで、与党は当然ながら他の野党も反対に回る中、粛々と否決されました。

 橋本がくは、この国会から新設された衆議院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会の委員長に指名されその職務に努めました。また自民党においては「こども・若者」輝く未来創造本部事務総長、社会保障制度調査会事務局長、地方行政調査会事務局長、創薬力の強化育成に関するPT座長、こどもまんなか保健医療の実現に関するPT座長、死因究明推進に関するPT座長等の役目をお預かりし、それぞれに取り組みました。ここで、今国会における活動について振り返りを記します。なお毎年の振り返りは下記の通りです。振り返りシリーズもだんだん積み重なってきました。

<振り返りシリーズバックナンバー>
厚生労働大臣政務官退任にあたり(2015.10.8)
外交部会長を振り返って(2016.8.2)
厚生労働副大臣退任にあたり(2017.8.7)
厚生労働部会長を振り返って(2018.10.3)
この一年を振り返って(2019.9.7)
厚生労働副大臣退任にあたり(二年ぶり二回目)(2020.9.15)
第204回通常国会期間を振り返って(2021.6.16)
第208回国会閉会にあたり(2022.6.16)

 なお昨年秋以降年末までは、「令和四年末のご挨拶」に記していますので、そちらもご参照ください。

●衆議院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長として

 昨年秋の臨時国会において、衆議院地方創生に関する特別委員長を務めていましたが、この通常国会を控えた政党間協議において衆議院の特別委員会の再編成が合意され、科学技術に関する特別委員会および地方創生に関する特別委員会が廃止され、地方創生特別委員会が所管していた範囲にデジタル庁関係分野・こども家庭庁関係分野を加えた地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会が新設されることとなりました。そして通常国会招集日の1月23日の衆議院本会議において委員会の設置が議決された後、初回の委員会において互選により初代の委員長に就任しました。岸田内閣において地方創生はデジタル田園都市国家構想と改められた上、2021年に設置されたデジタル庁に関する施策、そして今年4月に設置されたこども家庭庁に関する施策を取り扱うこととなり、外交・安全保障以外の岸田内閣におけるホットイシューを集めたような委員会となりました。委員会の名称がいささか長いのが玉に瑕ですが、「地こデジ特委」という5歳児のNHKキャラクターを連想させるかわいい略称が永田町・霞が関周辺の人口に膾炙しつつあり、それはそれで良かったのかなと思っています。

 今国会では、政府提出法案4本(「国家戦略特区法等改正案」、「マイナンバー法等改正案」、「デジタル規制改革推進一括法案」、「地方分権一括法案(第13次)」 )、委員長提案法案2本(「子育て関連給付金差押禁止法案」、「低所得者世帯給付金差押禁止法案」)の審議および採決を行い、また通常の一般質疑に加え、政府の「こども・子育て政策の強化について(試案)」公表を受けたこども政策に関する小倉將信こども政策大臣に対する質疑の開催(4月11日)、マイナンバー制度やマイナンバーカードに関する諸問題の発生を受けた、河野太郎デジタル大臣および加藤勝信厚生労働大臣に対する衆議院厚生労働委員会との連合審査会の開催(6月2日)など、時期に応じた充実した審議を行いました。常任委員会並みの審議を特別委員会が行ったということで、今般の特別委員会改革は成功と評してよいものと思います。

 一昨年秋より務めた衆議院厚生労働委員長、昨年の臨時国会における衆議院地方創生に関する特別委員長、そして今国会の地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長と、連続ほぼ丸二年にわたり委員長を務めましたが、ここまでとてもありがたいことに与野党の合意による委員会建てに終始し、委員長職権による委員会の開会や採決を未だに一度も経験せずにいることは、僥倖と言わざるを得ません。地方創生特別委員会の折よりご協力をいただいた坂本哲志・与党筆頭理事及び坂本祐之輔・野党筆頭理事をはじめとする理事・オブザーバーの皆さま、真摯に質疑を重ねてくださった委員の皆さま、対応いただいた岡田直樹地方創生担当相・河野太郎デジタル相・小倉將信こども相はじめとする政府の皆さま、そして運営のサポートをいただいた北村英隆さんをはじめとする委員部の皆さまや調査室の皆さま、二年間にわたり委員長車を担当していただいた和田憲明さんに、篤く御礼申し上げます。

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(写真:衆議院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会理事会メンバー。理事会開会前にお許しをいただいて撮影しました)

 委員長は衆議院の役員を構成する重要な職務であり、これを二年近くも務めることができたことは議員として誠に名誉であり、とてもありがたいことだと思っておりますが、一方で、質疑に立てない(厳密にはできないわけではないのですが、委員長としての公平性を保つため基本的には避けるべきこととされている)ため、いささかフラストレーションが溜まる面もないわけではありません。そろそろ委員席に戻らせていただいてもいいかなという気もします。なお常任委員会は衆議院厚生労働委員会に所属し、こちらは委員席から議論を拝聴していました。

 なお、政府はマイナンバー制度およびマイナンバーカード、マイナポータル等を通じて政府DXを進めていますが、さまざまなミス等が多数発覚しており物議をかもしています。もちろん誤りは無い方がよいのですから、デジタル庁に設置されたマイナンバー情報総点検本部においてしっかり確認をして再発防止策を講ずるべきです。ただ、だからといって例えばマイナンバー廃止しろとか中止しろとか紙の保険証でいいじゃないかというのも如何なものかとも感じます。ミスの原因をひとつひとつ確認すると、紙の保険証時代でも発生していたミスもありますし、書類にマイナンバーを記載してもらえなかったことにより手作業による紐づけ事務が発生してその誤りによるミスもありますし、純粋にプログラムのロジックのミスもあります。こうしたことを一つ一つ確認の上、着実に解決することが大切です。本件に関しては、与野党国対間の合意により7月に当委員会にて閉会中審査を行う見通しとなりました。引き続き委員長としての務めを誠実に果たしたいと考えます。

●異次元のこども政策を自民党側からみると

 今年年頭の岸田首相による記者会見で、異次元の少子化対策を行うことが表明されました。出生率が上がらないことに加え、出生数の減少も加速しており、これに2020年代中に歯止めをかけるのがラストチャンスと言われています。そのため政府においては小倉將信少子化担当相のもとで検討を行った上で3月末に「こども・子育て政策の強化について(試案) ~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」を公表し、これをもとに総理の下にこども未来戦略会議が設置され、6月13日に「『こども未来戦略方針』案~次元が異なる少子化対策の実現のための「こども未来戦略」の策定に向けて~」が公表されました。

 これらの検討の過程において、自民党「こども・若者」輝く未来創造本部で議論を重ね、3月27日に「『次元の異なる少子化対策』への挑戦に向けて(論点整理)」をとりまとめ、29日に小倉將信こども相に提出をしました。政府内の検討に加え、自民党の提言も踏まえて、政府の少子化対策は具体化されたわけです。私はこの本部の事務総長として、茂木敏充本部長・木原稔座長を支え、議論の進行や論点整理のとりまとめを行いました。また、こども・子育て政策をテーマとするNHKの「日曜討論」に自民党代表で出演させていただき、各党代表の方々と議論しました。これは私にとっては党の代表として地上波テレビに出演する初めての体験であり、とても勉強になりました。申し上げるべきことは言えたと思いましたが、愛想良くした方がいいかと思っていたら、視聴していた長女から「他の方の話を聞くときにニコニコしていると、あまり印象良くない」という指摘があり、今後は傾聴態度にも注意したいと思っています。難しいものです…。

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(写真:NHK「日曜討論」開始前の一コマ。隣は公明党の中野洋昌衆議院議員。撮影は国民民主党の伊藤たかえ参議院議員)

 今回の方針においては具体的な施策として、児童手当の所得制限の撤廃および高校卒業までの延長、出産・子育て応援交付金の制度化検討、出産育児一時金の増額実施と出産費用の保険適用の検討、地方自治体の負担軽減のためのこども医療費助成の国民健康保険の減額調整措置の廃止、高等教育費の負担軽減、「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設、男性育休取得率の引上げに向けた育児休業給付率の引き上げ、育児休業期間中の社会保険料の免除措置や周囲の社員への応援手当等に使える中小企業への助成強化、国民年金の1号被保険者の育児期間に係る保険料免除措置の創設の検討、こども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革などが挙げられています。

 個人的には、これまでの少子化対策では、やはりどうしても「基本的には結婚・育児は親が手間とお金を負担するもの」という前提のもと、所得が高くない世帯や共働き世帯で子育てをするのは大変だから、そういう人を対象にした制度を強化するという発想があったように感じています。だから児童手当に所得制限があったし、保育園は専業主婦(または主夫)の世帯では基本的に利用できませんでした。また自治体がこどもの医療費の無償化をすると補助金を減額してきたのです。しかし社会情勢は、例えば私が小学生や中学生だった1980年代や90年代と今では大きく変化しています。そもそも高齢化が進み医療介護の負担が国民負担率として現在の生産年齢人口にはかかっているため手取りはなかなか増えないし、ほぼ大学全入時代となった中で約8割が私立大学に進学することとなるため各世帯にかかる教育費負担は重くのしかかります。仮に専業主婦(または主夫)が家庭にいたとしても、昔なら同居の祖父母や近所の人に子どもを預けて買い物その他の用事をすることは珍しくなかった(ちなみに、私も幼稚園に通う前には、母が外出する際は隣のお家に預けられていた経験があります)ですが、今は隣の家に子どもを預けるなどということはなかなか困難でしょう。

 今回の「こども未来戦略方針」ではそうした変化を直視し、すべてのこどもと子育て世帯がユニバーサルに支援を受けられるようにしようという発想から立脚していることが、いわば「異次元」なのだと考えます。もちろん、早々とそうした観点に立って問題提起していた方々からすると「いまさら」とか「遅すぎる」といった批判があることは理解をしますが、とはいえ経済界や自民党内でも所得制限撤廃に納得していないような声もないわけではないことを知る身としては、岸田政権がこども家庭庁の設置やこども基本法の制定といった最近のこども政策の歩みを着実に踏襲し、そうした声を押し切って前に進めていることは、立派なことだと感じています。

 一方で、こども政策にしても社会保障政策にしても、基本的には政府の歳出はすなわち支援が必要な国民への給付であることを等閑視し、見かけ上の国民負担増を単純に避けるような記述があることは、個人的には残念な思いもあります。社会保障分野の歳出削減は、サービスの削減か自己負担増でしかありません。新たな施策を実現するために正直に国民に負担を広く求めることを避けるあまり、結果として病気やケガの患者さんや介護保険の受給者に少子化対策の負担を求めることになり得る危うい構造は、仮に私の想定が正しいのであれば、如何なものかとも思うところもあります。

 また、金銭的な支援のみならず、妊娠・出産から乳幼児期の子育て支援の充実に関する施策も含まれていますが、出産の保険適用は産婦人科医療機関の経営についての懸念の声がありますし、乳幼児健診は自治体間の差があります。また厚生労働省・こども家庭庁の複数の局にまたがるものとなり、しかし各家庭にとってはこれらをストレスなく一気通貫してサービスを受給できる必要があります。そうした問題意識から、田村憲久社会保障制度調査会長に相談の上、同調査会に「こどもまんなか保健医療の実現に関するPT」を設置していただくこととし、私が座長に就任しました。産婦人科医会および小児科医会にヒアリングの上、6月14日に「『こども未来戦略方針』の具体化に関する提言」をとりまとめ、政府に提出しました。引き続き、そうした観点からも、よりこどもがすくすく育つ「こどもまんなか社会」を目指して取り組みます。

●社会保障制度調査会と創薬力の強化育成に関するPT

 また党においては、社会保障制度調査会および全世代型社会保障に関する特命委員会(ともに田村憲久元厚労相が会長・委員長)の事務局長、および創薬力の強化育成に関するPT座長を務めました。全世代型社会保障に関する特命委員会では、昨年12月15日に取りまとめを行っており、今年はこの提言に則って法改正が行われました。また社会保障制度調査会では、今年年末に控える診療報酬・介護報酬・障害サービス報酬のトリプル改定を念頭に、昨今の物価やエネルギー価格の高騰、賃上げ方針による人件費の上昇等を適切に各報酬等に反映させるべく、関係団体の要望を受け、政府に対して申し入れを行いました。

 創薬力の強化育成に関するPTでは、ドラックロス(日本に新薬の承認申請がされないこと)やジェネリック医薬品の供給混乱等の現状を受け、これに対して精力的に検討を行い、政府に対して医薬品開発から上市・流通までを一貫して見渡して適切な対応を行う司令塔機能を設置することや、薬価制度の見直しなどを柱とする提言を岸田首相に提出しました。今後政府において、司令塔機能の実現に向け具体的な検討が行われるものと考えています。

 なおこの分野については、政府の「こども未来戦略方針」において、こども政策充実の財源に関する文脈で「全世代社会保障を構築するとの観点から歳出削減の取り組みを徹底する」と記載されています。こども政策の財源は重要ですし、全世代型社会保障の構築も必要ですから、記された内容に異存はありません。ただ同時に、先ほども記した通り、社会保障分野においては歳出削減すなわち給付減または自己負担増なので、具体的にどのような歳出削減を行うか、どのように国民の納得が得られるものとするか、十分な注目が必要だと考えています。個人的には、NHKの番組で発言しましたが、全世代型社会保障の趣旨は、これまでの社会保障がどうしても高齢者重視となっていたことを改め、世代を問わず(もちろん高齢者も含めて)支援が必要な方に対し、できるだけ幅広い方の負担により給付を届けるようにバランスを改めることが趣旨のはずであり、給付の充実を考慮せずに単純に国民負担増のみを問題視するような目先の声に迷わされることなく、きちんと議論を重ねていくことが重要だと考えます。

●その他さまざま

 自民党地方行政調査会(佐藤信秋会長)事務局長も務めています。今年は、政府の地方制度調査会の議論をフォローする形で活動しました。政府の調査会は昨年末に、地方議会に多様な人材が参画できるために、議会の位置づけの明確化等を含む提言を政府に提出しました。今国会では、党内での議論も踏まえ、その内容を含む地方自治法改正案が提出され、成立しました。なお「こども未来戦略方針」こども政策の予算規模に関して3兆円半ばとされていますが、これは公費ベースと説明されています。社会保障の歳出削減等は国費ベースで考えられるためその半分ぐらいという説明がされることがありますが、一方で残り半分は地方財源であるため、地方交付税交付金の追加的な手当についても考える必要があります。たまたまではありますが、こども政策についても、社会保障制度について、地方行政制度についても、党内組織の事務局長を務めていて全部に関わる立場であり、すべてを予算案としてまとめあげる必要があるため、本当に今年の年末の予算編成は頭が痛い問題となるものと思われます。

 6月に、口唇口蓋裂議員連盟の初会合を開きました。もともと細野豪志衆議院議員が長年にわたり取り組んでいた問題ですが、児童福祉法における育成医療の制度と治療の実際とが嚙み合っていないことについてその解決策を検討するために、自民党・公明党の枠組みで立ち上げたものであり、ご推薦をいただいて議連の会長を務めることとなりました。当事者の方々のお話をしっかり伺い、解決策を考えていきたいと考えています。

 今国会では、性的指向・ジェンダーアイデンティティの理解増進に関する法律が成立しました。この法律そのものに関しては、既にこのブログに思うところは何件も書いていますし、一方でほとんど今国会では関与していませんので特に追記することもありません。ただこれを巡るさまざまな方々の言動に関し、「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいていることを忘れてはいけない」という最近の某アイドルアニメにも引用されたセリフ(元はニーチェ「善悪の彼岸」の言葉)が思い出され、自らへの戒めとしてずっと頭の中を巡っていることは記しておきます。

●倉敷市・早島町に関して

 昨年12月に改正公職選挙法が施行され、岡山県の衆議院小選挙区の定数が1減となり、選挙区の区割りが変更になりました。私は引き続き自民党の新岡山第4選挙区支部長に選任されました。岡山県第4選挙区は、これまでの地域に加えて真備町・船穂町が含まれることとなり、シンプルに倉敷市および早島町が選挙区ということとなりました。4月に県議会議員選挙があったため、その終了を待ってから、真備町や船穂町での街頭演説や挨拶まわりなどを始めています。お見かけくださったら、お気軽にお声がけいただければ幸いです。

 特に真備町は平成30年豪雨災害における水害被災からもうすぐ5年を迎えるところ、7月には仮設住宅入居者がいなくなる見通しであることが発表され、また高梁川・小田川合流点の付替え工事も今年度中の完成を目指して急ピッチで進められています。ただ生活の再興はなお続ける必要があることに加え、5月には歩行者・自転車用として使われていた川辺橋の橋脚が傾き通行不能となる災害にも見舞われてしまいました。この件については、国土交通省などを後押しして、早期に自転車・歩行者がより安全に通行できる状態を目指すべく支援します。

 4月22日・23日には、倉敷アイビースクエアにてG7倉敷労働雇用大臣会合が開催され、その成果として「人への投資 G7倉敷労働雇用大臣宣言」が公表されました。誘致の段階から伊東香織倉敷市長らとともに厚生労働省などに働きかけておりましたので、無事に開催できてほっとしています。G7各国の方々に倉敷をPRする良い機会となりました。

 また水島港の整備促進、国道2号線の渋滞緩和、六間川・倉敷川の改修、早島駅の整備など、国が関与すべきインフラ整備についても、引き続き強力に進め、皆さまの暮らしと雇用を守ります。

●まとめ

 私ごとですが、妻はなこと4人のこども達も、それぞれ元気で仕事や学校などに励んでくれているのは、本当にありがたいことです。次女は音大に進学して声楽を学んでいますし、次男は中学校の吹奏楽部でトランペットを吹いています。ゴールデンウィークには、長男、次男、はなこと4人で尾瀬散策にでかけました。また母久美子も元気で過ごしてくれています。趣味として昨年から始めたシーバス釣りも、日程の隙間を見て、たまに夜中に岸壁に出かけています。まれに釣れると、うれしいものです。

 こうして仕事や家族に恵まれ、元気で過ごすことができているのも、ご縁がありご支援いただく皆さまのおかげであり、心から感謝申し上げます。もうしばらくして梅雨が明けると、夏祭りの季節。コロナ禍が過ぎて、今年はかなりの地域で再開されるものと思われます。多くの皆さまとお目にかかれることを、心から楽しみにしています。

 引き続き、ご指導ご鞭撻を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

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2023年1月23日 (月)

令和5年正月および第211回通常国会召集にあたり

 まず、遅くなりましたが、改めまして新年明けましておめでとうございます。このブログをご覧の皆さま方におかれましては、つつがなく令和5年の正月をお迎えのこととお慶び申し上げます。おかげさまで橋本がくも家族ともども元気に新年を迎えることができました。旧年中のご指導に心から感謝申し上げます。

 そして1月23日、第211回国会が召集されました。通常国会は会期150日となっていますので、会期延長がなければ6月21日までの会期となります。先の臨時国会では衆議院地方創生に関する特別委員長を拝命しておりましたが、今国会からこの特別委員会は「衆議院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会」に発展的に改組され、改めて委員長に選任されました。故鳩山邦夫代議士が初代委員長を務められた衆議院地方創生に関する特別委員長職が私限りで廃止されるというのはいささか申し訳ない想いもありますが、一方で、新たな委員会の初代委員長を仰せつかるというのも議会人としては誠に光栄なことで、また拡大された所管範囲もいずれも日本社会の帰趨を担う重要なテーマであり、心を込めて職務にあたる所存です。特に一昨年来、こども家庭庁の設置やこども基本法の党内議論に関わっていた身としては、衆議院における議論も仕切る役を担うこととなったことも、個人的には誠に嬉しい限りです(なお、特別委員会の略称はどうなるんだろうかと思っていましたが、開会式後に衛視さんに車を呼び出してもらったら「地域こどもデジタル特別委員長のお車」と呼び出していました。初めて口に出したためか若干噛んでおられました)。

 今国会では、防衛力の強化やこども政策の充実およびそれらの財源のあり方や、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけのあり方や、今回の教訓を踏まえた次のパンデミックへの備え、金融政策を含めた円安やエネルギー・食料価格上昇への対策といった課題が議論されることとなるでしょう。特に社会保障の分野においては、現場は新型コロナウイルス感染症と対峙し続けている中で、かかりつけ医機能のあり方や医師の働き方改革の実現、世代内および世代間の負担の見直し、創薬力の強化育成と薬価制度の見直し、そして診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス報酬のトリプル改定といった課題への取り組みが待ったなしです。党の社会保障制度調査会および全世代型社会保障制度に関する特命委員会の事務局長、創薬力の強化育成に関するPT座長として、こうした分野の議論を活発に行い、また様々な方々のお話も伺いながら、党としての意見のとりまとめに尽力します。こども政策については、岸田文雄総理年初の記者会見や国会における施政方針演説においても、これまで以上の気合いを入れて取り組む方針が示されたところであり、これを追い風に党「こども・若者」輝く未来創造本部/実現会議事務総長として、その内容の充実に努めます。

 昨年末に、自民党岡山県第四選挙区支部長に再び選任され、選挙区割り変更後の新第四選挙区にて活動することが決定しました。今回の変更により、新たに旧真備町・旧船穂町が選挙区に追加され、倉敷市および早島町の全体が選挙区となることになりした。これまで旧真備町・旧船穂町を選挙区とされていた加藤勝信代議士や県議会・市議会の先生方にもご相談しながら、地道に地元での活動を進めて参ります。令和5年度には、平成30年豪雨災害における真備町の洪水を受けて行われた小田川・高梁川合流点改修事業等が完成する予定であり、災害に強く安心して生活できる街を目指します。またこの春に倉敷で行われるG7雇用労働大臣会合の支援や、倉敷市・早島町から岡山市の間の国道2号線の改良、水島港の整備推進、早島駅の整備など地域の事業推進にも努めます。

 一昨年末に自見はなこ参議院議員と入籍し、昨年末に挙式することができました。4人のこどもたちもそれぞれ元気にすごしています。年明けには2日間のお休みをいただき、家族6人で仲良くUSJなどに出かけました。昨年2期目の当選を果たさせていただいた自見はなこともどもに力を合わせ、国会に送っていただいた皆さまへの感謝を胸に、議員としての務めを果たしご期待にお応えするべく努力して参りますので、本年においても引き続きご指導ご鞭撻を賜りますよう、心からお願い申し上げます。

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(写真:院内第一理事会室にて、父龍太郎の肖像画の下で)

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2022年12月31日 (土)

令和四年末のご挨拶

 令和四年の年末を迎えました。今年も多くの皆さまのお力とお気持ちにより、平穏に年末を迎えることが出来ました。心から感謝申し上げます。今年もさまざまなことがありました。ここで振り返りを記したいと思います。ただし6月までの前半は「第208回国会閉会にあたり」に記しましたので、それ以降の出来事について述べます。

●参議院通常選挙とその後

 この夏には参議院選挙がありました。6月22日に公示され、7月10日が投票日でした。岡山県選挙区では小野田紀美候補の支援を行い、比例区では自民党の各候補や公明党の谷合正明候補の支援にあたりました。残念ながら当選できなかった候補者もおられましたが、概ねありがたい結果をいただきました。またその中で、自見はなこも二度目の当選をさせていただきました。候補者の夫として、全国比例区の選挙をはじめて手伝いましたが、同じ国政選挙でも、その大変さはまた衆議院小選挙区とは違うものだとつくづく感じました。特に、全国比例区で候補者名を投票していただくのはなかなか難しいものです。仮に衆参ダブル選挙などとなると、有権者の方々の混乱は相当なものとなるでしょう。

 またこの選挙の結果、自民党としては63議席を獲得し、与党としても一定のご支持をいただいたものと受け止めています。一方で選挙戦終盤に安倍晋三元総理が遭難され、その後の政権運営に暗い影を落とすこととなりました。昨年の発足以来岸田文雄政権は高い支持をいただいていましたが、これを契機に国葬の決定や旧統一教会の問題に焦点があたり、秋の臨時国会ではさまざまな苦境に直面することとなりました。たった数発の銃弾の影響の大きさは、誠に驚くべきものでした。功罪さまざまな見方はあるでしょうが、故安倍晋三元総理の存在感がそれだけ大きかったということでしょう。その際にも私なりに追悼の言葉を記しましたが、改めて、心からの追悼の想いを表します。

●地方創生に関する特別委員長として

 第210回臨時国会は10月3日に召集されました。この日の本会議において私は衆議院厚生労働委員長を辞任し、その後の衆議院地方創生に関する特別委員会において、同委員会の委員長に選任されました。初代委員長の鳩山邦夫先生をはじめ、特別委員長は閣僚経験者が就任する例が多く、私にとっては誠にありがたい人事だと思っています。これまで厚生労働分野の職務が多かったですが、地方創生もつまるところ人口減少対策がその本質であり、社会保障政策と同根のものと感じています。とはいえ、臨時国会では一回担当大臣に対する所信質疑を行いましたが、厚生労働委員会とはまた異なる省庁に対する質疑が多く、新鮮な気持ちで委員長を務めました。

 なお一部報道によると来年の通常国会から地方創生に関する特別委員会は所管事項の幅を増やされる検討が行われているようです。現時点では私のもとには確たる情報はありません。議院運営委員会等で議論されているものと思われますが、何らかの決定が行われればそれに従うことになろうと考えています。

●国民皆保険の限界

 自民党においては、「こども・若者」輝く未来創造本部事務総長、社会保障制度調査会事務局長、地方制度調査会事務局長、全世代型社会保障に関する特命委員会事務局長、創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム座長などを務めました。それぞれの会議での提言とは、それぞれ「医薬品産業を通じた世界のヘルスケア分野の牽引に向けた提言」、「薬価制度の抜本改革に関する提言・所見」、「こども関係予算の拡充に関する決議」、「全世代型社会保障に関する特命委員会取りまとめ」などに記していますので、そちらをご覧ください。

 特に今年後半は、日本が誇る「国民皆保険」の限界を感じることが多かったです。例えば先日、小児科のガンを専門とする医師の方の悩みについてのお話を耳にしました。欧米であればそのガンに対する薬が承認・販売されており救えるはずなのに、日本では未承認であり個人輸入も可能ですが大金がかかり家庭の事情で困難なため、子どもの患者さんに余命宣告をしなければならない例があるそうです。以前もドラッグラグという言葉がありましたが、今はドラッグロスと呼ばれています。単に審査に時間がかかるということではなく、そもそも日本では革新的な医薬品であってもどんどん薬価を下げられる仕組みなため、製薬会社が日本における治験や承認申請を後回しにしたり、そもそも行わなかったりという事象が発生しており、それが子どもたちの命の問題にまでなっているということです。日本の社会保障行政の中で、長年にわたり医薬品の価格を下げることで、他の分野の財源に回すことが慣例になっていましたが、2016年に行われた「薬価制度の抜本改革」(という名のさらなる薬価切り下げの加速となる制度改正)と、今年の物価やエネルギー価格上昇等のダブルパンチがあり、患者の命に関わる問題となっているのです(このあたりの詳細は、「薬価制度の抜本改革に関する提言・所見」の所見部分にデータと共に記述しています)。

 他方「かかりつけ医」についての議論も、もちろん医療へのアクセスをより改善することは検討されるべきとは思いますが、その背景にさらなるコスト削減を求めようとする意図が政府の一部に見えています。一見無駄なものについてコスト削減をすべきという議論はもちろん成り立ちますが、これが行き過ぎると、当然に質が下がり、特に緊急事態の対応能力が落ちることになります。そもそも医療とは、多くの人の健康に関する緊急対応を行うものなのであって、日常をちゃんと過ごせば何事もなく上手くいくからそれで大丈夫、という考え方とは相容れません。そのことが露呈したのが今回のコロナ禍であったと私は個人的に考えています。普段からいざという時の備えをしておく余裕がなければ、需要が急拡大した際に限界のある対応しかできないのは当然のことです。にもかかわらず、逆にコロナ禍を奇価としてさらなる効率化を唱える向きがあるのは、本当に筋が悪いことです。「かかりつけ医」についても、正論風を装ってその趣旨で論じられることがあることには、引き続き注意を要します。特に、コストの話をしない議論は疑ってかかる必要があります。

 もちろん、最終的には医療をはじめとする社会保障も、また今年話題になった安全保障も、税や保険料や自己負担で賄われており、それを支える経済力が社会にあってのことです。逆に言えば、経済力の範囲でしか社会保障も安全保障もできないのが現実であり、いずれも今年はその限界に直面していたことが明らかになったわけですが、そこにどのようにメリハリをつける(これはすなわち、どこかを見限るという辛い決定でもあります)のか、或いはご負担をさらにお願いすべきなのか、おそらくその両方がいずれ必要なのだろうと考えています。なお単に経済力の問題だけではなく、長寿化・少子化の影響が医療や介護の提供体制そのものにも及びつつあることも今年は感じる機会がありました。そうしたことも考慮しなければなりません。

 日本は世界に冠たる長寿国で、我が国経済は黙々とその中で医療や介護が必要となった方々を支え続けてきています。これは誇るべきことであり、社会の安定に絶大な寄与があると考えます。しかしその構造も限界に達しつつあるようにも感じられてしまう今日この頃でもあります。まずは少なくともその構造に自覚的になることが来年には求められるものと考えます。

●こども家庭庁の設置準備など

 通常国会にてこども家庭庁設置法案やこども基本法を成立させましたので、秋以降は基本的には政府の方で来年4月のこども家庭庁の設置に向けてその準備を行うフェーズでした。そのため「こども・若者」輝く未来創造本部は、予算編成にあたり決議および政府への要望を行った程度の活動に留まりました。しかし来年は「こども大綱」の策定や、「骨太の方針」におけるこども予算倍増の道筋明確化をはじめ、今後のこども政策の方向を決める大事な年になります。党においても、通常国会の開会にあわせ、有識者ヒアリングなどの勉強からスタートを切りたいと考えています。

 コロナ対策も4年目にさしかかり、政策的には来年は転換点を迎えることでしょう。ただ海外、特に中国の様子は要注意であり、これまでのゼロコロナ政策が奏功していた分、緩み始めた瞬間に、免疫保持者が少ないという点で今後は裏目に出てしまうこととなります。その中で春節の中国における観光シーズンが訪れます。もちろん関連産業にとっては心待ちの商機ですが、日本の医療が観光客で逼迫することも併せて想定しなければなりません。厚生労働省において分類変更の議論はされているようですが、どんな分類になっても病気が無くなるわけではないことには留意が必要です。高山義浩先生による「中国のゼロコロナ撤回と水際対策」をぜひご参照ください。

 令和5年度には、平成30年豪雨災害における真備町の被害の再発防止のための高梁川小田川合流点の付替え工事が完成する見通しです。その対岸になる水江地区などの堤防強化も、水島港の航路浚渫などと合わせ令和4年度補正予算において措置されました。また国道2号線岡山―倉敷間の改良も着実に進捗しています。また早島駅建替えなど整備事業については中川早島町長からもご相談をいただき、連携をとって実現に動いています。こうした地域に重要なインフラ整備についても、国が行うべき事業について今年も着実に推進できるよう努めます。

●私ごとについて

 さて私ごとになりますが、昨年12月に自見はなこと入籍して丸一年が経ちました。おかげさまで、こどもたちとも一緒に、日々仲良く元気に過ごしています。ただコロナ禍のためなかなかイベントもできずにいたのですが、先日東京大神宮において神前式を挙げ、ごく近い方々のみのささやかな披露宴を行いました。幸い元気に過ごしている母久美子にも、また自見家のご両親にも、こうした姿を見せることができて本当によかったと思っています。

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(画像:両家の親とともに。私が手に持っているのは、龍太郎のテレホンカードです)

 こども達もそれぞれ元気にすごしています。次女は目指していた音楽大学への進学が決まりました。親としてはまずは一安心ですが、次男が来年受験なので、次はそちらが順調であることを祈っています。先日長女・長男も含めて皆一緒にお食事しました。それぞれに、元気で過ごしてくれているのは、ありがたいことです。

 今年は個人的には大きな転機がありました。今まで山歩きを趣味としてきたのですが、なかなか休みがなく山に出かける機会が作れない中、8月に東京湾でボートシーバス釣りに連れて行ってもらったことをきっかけに、海釣りにチャレンジしてみようと思い立ちました。釣り道具一式買い求め、秋以降、仕事が済んだ夜中に高梁川河口付近や玉島の岸壁あたりでルアーを投げています。魚はごく稀に釣れる程度(今年の釣果はシーバス3匹でした)ですが、あれこれ考えながらキャストして、ルアーがプリプリ泳いで戻ってくるのを時々楽しんでいます。どこかの海岸か釣具店で私を見かけるかもしれませんが、あまり驚かないでください(汗。

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(写真:魚を釣ってくれたルアー君たち。私の行くポイントや時間帯ではクリアカラーが強い模様)

 改めて、こうして年末を迎えることができて、私とこれまでご縁をいただいた皆さまのおかげと深く感謝申し上げます。来年はうさぎ年となりますが、ご支援をいただく皆さまへの感謝を胸に刻み、さらに飛躍できるよう努力する所存です。引き続きのご指導ご鞭撻のほどをお願い申し上げますとともに、皆さまにとりまして飛躍発展の年となりますことを心からお祈り申し上げます。

 どうぞ良い年をお迎えください。

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2022年7月14日 (木)

安倍晋三元首相をしのぶ

 令和4年7月8日、安倍晋三元首相が銃撃され、急逝されました。誠に残念で悔しいことです。まずは、心から安倍元首相のご冥福をお祈り申し上げます。正直に記せば、私は自民党議員にしては自民党総裁選挙で「安倍晋三」と投票したことが無いという比較的珍しい立場であり、近しい存在だったとは必ずしも思いませんが、それにも関わらず急逝は自分でも意外なほどショックでしたし、幾度も涙もこぼれました。振り返ってみても様々思い出されることもあります。私が政府に入った厚生労働大臣政務官、二回の厚生労働副大臣は、いずれも安倍政権において務めたものです。安倍元首相といえば「アベノミクス三本の矢」と称される金融緩和・財政支出・規制改革の経済金融政策や、価値観外交やTPP、安全保障法制や特定機密保護法などに代表される外交安全保障面の政策、各国首脳との信頼関係に基づく外交、東京オリンピック・パラリンピックや大阪万博の誘致などが注目されます。もちろんこれらも大きな実績です。同時に、私の眼から見て、厚生労働分野にもさまざまな実績を残されました。私なりに安倍晋三元首相を偲び、この分野に関してご足跡を記してみます。

 ひとつは、人口減少を正面から政策テーマに据えたことです。もちろんそれまでも少子化対策という政策分野はあり施策は取り組まれていました。しかしその甲斐なく、日本の人口が2009年に減少に転じました。ただ、子育て支援の充実という範囲以上に踏み出すことは、当時の政権は行っていなかったと記憶しています。2014年に増田寛也氏の著書『地方消滅』が出版され、これを契機に第二次安倍改造内閣発足後提唱されたのが「地方創生」でした。そこから地方創生担当相が設置され、さまざまな施策が打ち出されることとなります。残念ながら、まだ東京への一極集中に歯止めがかかるには至っていませんが、とはいえ直面している課題について、それまでの姿勢を転換し、危機感をもって直視する姿勢を時の政権が示したことは、重要なことだったと考えます。その後、人口のうち労働力人口の減少という側面を捉えてその対策としての「一億総活躍社会」というキーワードを打ち出すことに繋がります。さらにその後、菅内閣、岸田内閣を通じて「こども家庭庁」が創設されることとなりますが、振り返ればその原点のひとつであったともいえるでしょう。

 「働き方改革」における残業時間規制の実現も、安倍元首相の大きな足跡だと考えます。長年にわたり労働政策審議会において議論されてきたテーマですが、労使の合意が得られず全く前進できませんでした。2015年12月に大手広告代理店の若手社員が自殺したことをきっかけに政策テーマに急浮上し、2016年9月に働き方改革実現会議が発足しました。この会議には、有識者らとともに経団連会長、連合会長がメンバーに加わり、政府側も総理と関係閣僚が並ぶという構成となっており、労働政策審議会の三者構成をそのままに、その上位者が出席する組織体となっていたことがミソです。会議には私も厚生労働副大臣として陪席していましたが、安倍総理が「この会議で労使の合意ができなければ、働き方委改革の法案は提出しません」と迫り、にわかにその場の空気が変わったことをよく覚えています。あとで聞いたところでは、総理の手元の発言メモにはその言葉はなかったそうで、だとすると総理ご自身の言葉で強い決意を示したということなのではないかと思われます。結果、経団連と連合の協議により合意が成立し、歴史的な残業時間規制の実現につながりました。また同時に、同一労働同一賃金や高度プロフェッショナル制度といった改革も実現しています。もともと自民党において労働問題は必ずしも重要なテーマとは思われていない面がありますが、安倍元首相は第一次安倍内閣で「再チャレンジ政策」「労働ビッグバン」を唱えており、この分野にも造詣が深かったものと偲ばれます。

 私が2005年に初当選する前には自民党幹事長を務められ、その後内閣官房長官、内閣総理大臣と出世されていったため、残念ながら、厚生労働分野の先輩として接する機会はありませんでした。若手の頃には自民党社労部会長(今の厚生労働部会長)や衆議院厚生労働委員会理事などを務められており、社会保障や労働の分野に詳しいのは自然のことであったのかもしれません。年金の法案審議のために衆議院厚生労働委員会に総理大臣として出席された際にも、野党議員からのやや意地悪にも思える質問にも的確な答弁を繰り返され、その鮮やかな切り返しは舌を巻くものでした。また難病医療法の成立や、ハンセン病家族国賠訴訟の控訴断念と補償措置の実現にもお力をいただいたことも触れるべきでしょう。社会保障・雇用労働分野に関して、ゆっくりお話しを伺う機会があればよかったのに…と改めて悔いるばかりです。2018年の豪雨災害における真備町の洪水では、いち早く状況把握に来岡され被災現場や避難所を見てくださったことも、誠に心強いことでした。

 私が厚生労働部会長をしていた2017年秋の衆議院総選挙において、自民党の公約として消費税財源を利用した幼児教育保育費の無償化が突如掲げられたため、選挙後の政調全体会議において当時の岸田文雄政務調査会長の眼の前で強く抗議したことがありました。その後しばらく経って、ある懇親会の席で当時の安倍首相からニコニコしながら「橋本部会長が公約に抗議をされたと聞きましたが、次からはちゃんと橋本先生にもよく相談することにします」とイジられたのは良い思い出です。またしばしば「橋本先生の声は本会議場でもよく聴こえるんだよね!」と声をかけていただきました。いつもユーモアを忘れず、気さくにお声をかけていただきました。4月にある懇談の席でご一緒した際、当時話題になっていた核シェアリングについて何故とりあげたのかとお尋ねしたら、まずは問題提起をしたかったという趣旨のお返事を丁寧にいただきました。通常国会終盤の6月に衆議院本会議場を出た廊下にてたまたま並んで歩くことになった際、「橋本先生とはしばらくご無沙汰したね」と話しかけてくださり、「4月の会で核シェアリングについてご質問をして以来ですね」とお応えして、それが安倍元首相と私との最後の会話になりました。7月7日晩に岡山市民会館にお越しになり、力強く小野田紀美候補の応援演説をされ、翌日に奈良県にて遭難されました。その後の経過は報道された通りです。

 10日に増上寺で行われたお通夜に伺い、手を合わせて感謝を申し上げました。あまりの急逝に未だに現実感が湧かないのですが、遺されたものはこれを受け止め、辛くてもなお前に進まなければなりません。安倍晋三元首相の生涯は、浮き沈みも毀誉褒貶もある激動の一生でありました。しかしその足跡は、ここで触れた以外にも多数に上り、やはり日本にとって大きな存在であったことは疑うべくもありません。政治家としては、ビジョンを常に高く掲げつつ、状況に応じた柔軟性とバランスを発揮して結果を出し続けていった強烈な現実家だったように、個人的には思います。もちろん北方領土問題や拉致問題、憲法改正のように残念ながら存命中に結果に結びつかなかったテーマもありますが、挑戦は評価されるべきですし、これは私たちに遺された課題としなければなりません。

 願わくは、安倍晋三元首相の御霊が、とこしえに安らかにあらんことを。

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2022年6月16日 (木)

第208回国会閉会にあたり

●はじめに

 6月15日、第208回国会が閉会しました。この国会は2022(令和4)年1月17日に召集され、国会法に規定される常会(通常国会)の会期150日間を経て、延長されることなく閉会となりました。政府提出法案(閣法)は61本が提出され、全て成立しました。「経済安全保障法」や侮辱罪を厳罰化する「改正刑法」、そして「こども家庭庁設置法」などが含まれます。また、「こども基本法」や「困難な課題を抱える女性支援法」、「AV出演被害防止法」等の議員立法も成立しています。

 報道では「べたなぎ国会」や「野党の結束の乱れ」といった否定的な表現も見受けます。しかし、中の人の一人としては、与野党が必要以上に対立することなく真摯に議論を重ね結論を出した、立法府としての機能を十全に果たした良い国会だったと感じます。このギャップは、「人が犬を噛んでもニュースにならないが、犬が人を噛んだらニュースになる」という報道の宿痾のゆえ、かもしれません。国会議員が協力して立法してもあまり報道されませんが、国会議員が乱闘したりすると大きく取り上げられるのです。しかし国会議員の仕事は立法なのです。そこが評価される世の中になっていただきたいものと、願います。

 橋本がくは、今国会には衆議院厚生労働委員長として臨みました。また自民党では「こども・若者」輝く未来創造本部事務局長、社会保障制度調査会事務局長、創薬力の強化育成に関するPT座長、死因究明推進に関するPT座長といった役を預かり、それぞれの務めを果たすべく取り組みました。ここで簡単にこの国会における活動について振り返りを記します。なお毎年の振り返りは下記の通りです。

<振り返りシリーズバックナンバー>
厚生労働大臣政務官退任にあたり(2015.10.8)
外交部会長を振り返って(2016.8.2)
厚生労働副大臣退任にあたり(2017.8.7)
厚生労働部会長を振り返って(2018.10.3)
この一年を振り返って(2019.9.7)
厚生労働副大臣退任にあたり(二年ぶり二回目)(2020.9.15)
第204回通常国会期間を振り返って(2021.6.16)

 なお、昨年秋以降年末までについてはブログ「令和三年末のごあいさつ」に記していますので、あわせてご参照ください。

●委員長のお仕事

 衆議院厚生労働委員会は、国会法第四十一条2の七により設置された、衆議院の常任委員会の一つです。また厚生労働委員長は、規定上は委員の中から選挙する(国会法第25条)こととなっていますが、慣例により、各会派が候補者を決めた上で本会議において議長が指名する形で選ばれます。また「委員長は、委員会の議事を整理し、秩序を保持する」とされています(同第48条)。

 とはいえ、委員会の開会や質疑時間の配分、採決のタイミングなど具体的な議事運営は、事前に理事会にお諮りをし、与野党の筆頭理事をはじめとする各会派の理事・オブザーバーの方々の合意を得、それに従って運営することが基本となります。今回は、齊藤健・与党筆頭理事と山井和則・野党筆頭理事の協議が円滑円満に進み、おかげさまで理事会もスムーズに運ばれ、委員会も円満に運営することができました。そのため今国会では、参考人質疑や岸田文雄総理に対する質疑、野党提出法案の並行審議を含む充実した審議を行い、結果として閣法3本「雇用保険改正案」、「薬機法改正案」、「児童福祉法改正案」および参法(参議院提出議員立法)2本「困難を抱える女性支援法案」、「障害者情報アクセシビリティ法案」、衆法2本(衆議院提出議員立法)「労働者協同組合法改正法案」、「子育て世帯生活支援特別給付金差押禁止法案」の合計7法案を可決すべきもの(修正を含む)と決することができました。委員長の仕事として、本会議における委員長報告もあるため、本会議場で登壇する機会もいただきました。両筆頭をはじめ、ご協力いただいた理事・オブザーバーの皆さまに深く感謝申し上げます。また手厚くサポートいただいた中川浩史さんはじめ委員部の皆さまにも、心からお礼申し上げます。

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 ちなみに、幸い今国会ではそういう場面はありませんでしたが、どうしても与野党の対立が解けない法案を審議する場合、野党側は審議入りそのものにが反対したり、また「まだ十分な審議が尽くされていない」として質疑終局や採決に反対したりすることがあります。そうした場合まずは両筆頭間で電話や面談などで協議を行います。しかしこれが整わないまま理事会を開くことになると、今度は理事会で各理事・オブザーバーも参加して協議を行うこととなります。状況により、理事会は開いたものの協議が整わず、委員会が開かないということも起こります。また、与党の方針としてそれでもなお委員会を開会し採決すべしという場合には、与野党の合意がないまま、委員長の職権(職務権限)により委員会の開会を決めたり、採決を決定したりする場合もあります。こうした状況では、与野党それぞれの国会対策委員会(略して「国対」と呼ばれます)間でも協議が重ねられており、その状況も見ながら議論が行われます。そうした多層的な協議を経てなお合意に至らない場合にのみ、(一部の)野党の方々が抗議する中で採決を行う、いわゆる「強行採決」と呼ばれる光景が繰り広げられることとなります。またそうした採決を行うことを決定した委員長は、その決定を理由として解任決議案を提出されることもあります。概ね「与野党の合意を得ず、独断で与党寄りの決定をしたことは委員長として公平中立ではなく、解任に値する」という主張がされることとなります。そして多くの場合与党の反対多数で否決されます。

 ただ形式としては、仮にいわゆる「強行採決」という形となったとしても、委員長は法律や規則により委員会の開会の決定などを行う職務権限を持っておりそれを行使したに過ぎないという見方も可能です。したがって多くの場合、採決としては有効とされます。

 こうしてみると、委員長の持っている権限というものは「伝家の宝刀」のようなもので、基本的には与野党の合意を尊重してそれに沿って物事を決定するのが通常であり、自分の意志で権限行使をすると解任の理由になるという存在です。この在り様は、権限を持っているからといって個人の自由で振り回すものではないという教訓を含むものとも思いますし、一方では先に記したように物事を一つ一つ合意形成して積み上げていくために、両筆頭や各理事・オブザーバーの労力が(特に与野党が対立的な局面では)相当消耗されるという面もあり、また委員会の決定に厚生労働省をはじめとする役所の方々も場合によっては振り回され同様に消耗するという結果にも繋がっているように思います。

 現在もなお委員長の職務にあるものとして軽々に私見を記すことは差し控えますが、こうした国会の在り様も、引き続きさまざまな議論が行われてもよいのかも知れません。

●党での活動

 党においては、「こども・若者」輝く未来創造本部事務局長としての活動に最も時間を割きました。「令和三年末のごあいさつ」に記した通り昨年末に党内の議論を経て政府の基本方針は決定しており、「こども家庭庁設置法」等の政府提出法案の自民党内での議論は比較的スムーズでした(ただし、こちらは国会で野田聖子担当大臣がかなりご苦労されました)。一方で、同時提出を目指した「こども基本法案」については、年明けの一回目の会合から厳しいご意見を多数いただくスタートとなりました。幸い、加藤勝信衆議院議員をリーダーとし、木原稔衆議院議員、丹羽秀樹衆議院議員といった同期のメンバー、そして昨年から「Children Firstの子ども行政のあり方勉強会」の議論を企画・リードしていた山田太郎・自見はなこ両参議院議員等々によるチームがそれぞれに機能を発揮していただき、党内議論に加えて公明党とのPTにおける調整や、民間人を含むさまざまな方々との意見調整等を行いました。衆議院法制局とともに原案を作成し議論を反映させてブラッシュアップする役目をしていましたが、対立的な意見の前で頭を抱えながらひとことずつ推敲を繰り返しました。しかしことわざ「窮すれば通ず」を地で行くような局面が何回かあり、最終的に成案を得て国会に提出できて本当に良かったと思います。その後は、委員長職があったため国会答弁等法案審議に関わることはしませんでしたが、その分、塩崎彰久衆議院議員、鈴木英敬衆議院議員、勝目康衆議院議員らの若手、公明党からは國重徹衆議院議員が答弁にあたってくださいました。そうした充実審議の末、多くの野党の方々もご賛同をいただき、「こども基本法」が成立することとなりました。全員のお名前を挙げることはとてもできませんが、お力を頂いた皆さまに、心から感謝申し上げます。

 こども家庭庁の設置を含め、最初の言い出しっぺは山田太郎・自見はなこ両参議院議員の「太郎とはなこ」チームであり、周囲を動かしたは行動力は多大なものがあります。またその提案を受け止めご理解をいただき推進して下さった菅義偉・岸田文雄両総理、二階俊博・茂木敏充幹事長、そして初代の「こども・若者」輝く未来創造本部事務総長の福井照・前衆議院議員にも大きなお力をいただきました。また内閣官房をはじめとする役所や衆議院法制局、自民党政調事務局にもそれぞれにご努力いただきました。誰かひとりが欠けたらこの結果にはならなかったようなチームワークでした。

 また、死因究明推進に関するPTや創薬力の強化育成に関するPTは、それぞれに3回ずつ会合を開き政府や有識者からヒアリングを行いました。それぞれに重要な課題を抱えていますので、引き続き議論を続けて参ります。

 倉敷・早島においても、ゴールデンウイーク頃から徐々に新型コロナウイルス感染症への警戒レベルを下げ、観光客を受け入れる状況となり、良かったなと思っています。海外からのインバウンドも再開への方向性にもあります。道路交通では高梁川にかかる橋についてはすっかり渋滞が緩和されましたが、一方で倉敷-岡山間の渋滞の対策が急がれます。既に事業化はされていますが、予算の都合もあり徐々に実現することとなります。粘り強く完成まで努力し、中国地方一番と言われる渋滞の緩和に繋げます。

●所感

 今国会は、新型コロナウイルス感染症第6波の感染拡大が始まったころに開会しました。また、ロシアのウクライナへの侵略が2月24日に開始され、世界を震撼させています。またその影響もあり原油その他の価格が上昇するなど経済的な影響も出てきています。そうした中で開かれた国会であり、あまり対立的な行動も理解されにくい状況がありました。もちろん、経済対策を始めとして各党からさまざまな提案が競われ、法案も提出され議論されました。また内閣不信任案や衆議院議長不信任案も審議されましたが、週刊誌報道に基づく理由づけはいま少し説得力が薄いものとも思われます。

 そうした背景はありますが、上記の件以外にも「AV出演被害防止法」等野党が必要性を主張し、与党側もこれに応えて知恵を絞り、解決のための法律ができるなど、立法機関としての国会は機能していたと個人的には評価しています。

 国会閉会に伴い、参議院通常選挙は6月22日に公示、7月10日に投開票となることが確定しました。まずは政権の安定のために、自民党・公明党の与党一丸の勝利を目指し、全力を尽くします。引き続いてのご指導・ご鞭撻を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。


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2022年1月19日 (水)

第208回通常国会の開会にあたり

 令和4年を迎えました。1月17日には第208回通常国会が召集され、同日開会式および政府四演説が行われました。天皇陛下のご臨席を仰いで行われた開会式に衆議院厚生労働委員長として出席し、改めて職務の重さを認識いたしました。

 岸田文雄内閣が迎えた初めての通常国会であり、与党としてはまずは令和4年度予算の年度内成立が目標となります。もちろん、折からの新型コロナウイルス感染症の6波目の感染拡大に対する対策も緊急かつ重要な課題ですし、またその他にもさまざまな課題に直面しています。その対応に遺漏なきを期するべく全力を尽くします。国会召集前の12日には、与野党の合意にもとづき衆議院厚生労働委員会理事懇談会を開催し、感染拡大に関して厚生労働省から報告を受け、各党から質疑を行いました。また今国会では雇用保険法改正案、薬機法改正案、児童福祉法改正案などが政府から提出され衆議院厚生労働委員会に付託されることが想定されており、委員長としてこれらの審議などを通じて国民の皆さまからの負託に応えてまいります。

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(写真: 開会式後に撮影した衆議院役員(議長、副議長、常任委員長、特別委員長、事務局長)の記念撮影)

 橋本がく個人としては、昨年の衆議院総選挙でも訴えた「こどもまんなか」社会の実現に向けた、こども家庭庁設置法案等およびこども基本法(仮称)案の成立を目指す重要な年となります。自民党「こども・若者」輝く未来創造本部事務局長および与党こども政策に関するPTメンバーとして、この画期的な法案のとりまとめおよび成立に向け、努力します。またこれまで、さまざまな困難を抱えた女性を支援するための法的根拠を売春防止法から独立させ、福祉の観点から事業の根拠となる新法を制定するための活動が行われていました。12日に行われた超党派の勉強会では、今国会での成立を目指すことで各党の出席者が合意しました。橋本がくもその実現を目指し、汗をかく所存です。

関連記事:「性暴力や貧困 女性支援へ新法制定目指す 超党派議員」(NHK政治マガジン)

 なお私事になりますが、「令和3年末のご挨拶」にて記した通り、12月29日に自見はなこ参議院議員と入籍をしました。はなこさんには4人の子どもたちとも養子縁組をしてもらい、6人家族として仲良く新年を迎えました。もともと母親同士の交流があり、母の久美子も、自見庄三郎先生や礼子夫人にも喜んでいただいています。下の写真は昨年に5人でご一緒した際に撮影したものですが、掲げている写真は庄三郎先生所蔵のもので、おそらく四半世紀以上前、「橋本龍太郎総裁を実現する会」における父親同士のツーショットで、自見庄三郎先生は、この会の事務局長を務めていただいていたそうです(なお二人の間にたまたま写っているのは、尾辻秀久先生です)。ご縁の不思議さを感じます。なお現下の状況から、当面は披露宴などは予定しておりませんが、ともどもにご指導・ご鞭撻を賜りますよう、今後とも宜しくお願い申し上げます。

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(写真:自見家と橋本家のご縁を感じます)

 寒さも厳しく、コロナの感染拡大も続きます。不織布マスクの着用や換気の実施、マメな手洗いや手指消毒の実施などにご留意いただき、どうぞ皆さまご自愛くださいませ。

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2021年12月31日 (金)

令和三年末のごあいさつ

 令和三年の年末を迎えました。今年も多くの皆さまのお力とお気持ちを頂き、年末を迎えることができました。心から感謝申し上げます。今年もさまざまなことがありました。前半についてはブログ「第204回通常国会期間を振り返って」に記していますので、夏以降について簡単に振り返りを記します。

●自民党総裁選と衆議院解散総選挙

 衆議院の任期満了を10月に控えるこの夏は、折からのコロナ第5波の感染拡大もあり、緊張感の高い夏でした。菅義偉総理の動向が注目を集め、最終的には菅総理が立候補しない形で自民党総裁選を行うこととなりました。私自身は主に地元倉敷・早島で活動を行いつつ、投票日には岸田文雄候補に投票をしました。このあたりの経緯は「2021年自民党総裁選挙を終えて」に記した通りです。

 そして岸田文雄内閣のもと短期間の臨時国会を経て衆議院解散総選挙が行われました。選挙戦では「こどもまんなか」の政治・行政の実現と、コロナ禍を落ち着いて収束させることを訴えました。おかげさまをもちまして10月31日の投開票日には89,052票の得票をいただき、岡山県第4選挙区において5期目の当選を果たすことができました。重ねて、賜りましたご支援に深く感謝申し上げますとともに、5期目も日本のため、また地元倉敷・早島の皆さまのために全力を尽くして職務にあたることを誓います。

 なお、選挙後に再び自由民主党岡山県第四選挙区支部長に選任されていますが、「1票の格差」是正のための公職選挙法の規定ならびに直近の国勢調査の結果により、岡山県は選挙区が1つ減る見通しとなりました(ご参考:「10増10減」が確定 衆議院小選挙区 国勢調査結果受け(NHK) )。来年(令和4年)6月までに総務省の審議会が区割りを勧告することとなっており、選挙区の将来について現時点で明確に申し上げることはできません。最高裁判決を受け、私自身も賛成して国会で決めた方式ですから、自分に関係してくるからといって今更このことに異を唱えるべきではないと考えています。私自身の今後については、これまでご支援いただいている皆さまのお気持ちを大事にしながら、状況に応じて対応を検討します。

●衆議院厚生労働委員長に就任

 選挙後に召集された特別国会において、衆議院厚生労働委員長に指名され、議長、副議長に次ぐ衆議院の役員である常任委員長の一人としての重責を担うこととなりました。委員長は公正中立に委員会を運営する職務であり、質疑と答弁を聞き、場を仕切る必要があります。このコロナ禍において衆議院厚生労働委員会の役目はますます重大であり、その機能を十分に発揮して国民の皆さまのご信託に応えることができるよう、与野党の理事各位と力を合わせ、来年も努めてまいります。

●自民党における役職

 自民党においては、選挙前に引き続き「こども・若者」輝く未来創造本部ならびに同実現会議の事務局長を仰せつかり、茂木敏充本部長および加藤勝信座長のご指導の下、「こどもまんなか」実現のために汗をかくこととなりました。通常国会時の勉強会や本部からの提言を踏まえ政府において議論が進められていましたが、改めて選挙後に政府の基本方針について党で議論することとなり、その取り回しを務めました。党内でのプロセスを経て12月21日に「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針 ~こどもまんなか社会を目指すこども家庭庁の創設~」の閣議決定にこぎつけることができ、「こどもまんなか」社会の実現に大きな一歩を踏み出すことができました。なお検討過程において組織名称が「こども家庭庁」とされたことが若干波紋を呼びましたが、内容がそれによって変わったわけではありません。むしろ今でもつい口をついて「こども庁の件だけど…」と言ってしまう状況があり、結局略称として「こども庁」と呼ばれることになるような気がします。振り返れば、山田太郎・自見はなこ両参議院議員の勉強会立ち上げから政府の閣議決定まで一年足らずのスピードで漕ぎ着けており、先駆者の努力および菅・岸田両総理のご理解に加え、時代が求める政策であったようにも感じます。もちろん、来年通常国会において法案を審議し成立させるプロセスが待っていますので、引き続き「こどもまんなか」社会の実現にむけて努力します。

 その他政務調査会では、社会保障制度調査会事務局長、沖縄振興調査会幹事長代理、障害児者問題調査会・雇用問題調査会・司法制度調査会・情報通信戦略調査会・少子化対策調査会の副会長、新型コロナウイルス等感染症対策本部・デジタル社会推進本部の副会長を拝命しました。また行政改革推進本部の副本部長もお預かりしています。それぞれにしっかり取り組んで参ります。

 なおこれまで、性的指向・性自認に関する特命委員会の事務局長を、発足以来政府にいるときを除きお預かりしていましたが、このたびは外れることとなりました。先の通常国会において、性的指向・性自認に関する理解増進法案の党内調整ができなかったことに責任を感じていましたので、今後は後任の皆さまに託し一議員として議論に参加したいと考えています。

●出版と叙勲

 令和2年2月に横浜港に入港したダイヤモンド・プリンセス号の対応は、今振り返れば日本で最初、かつおそらく現時点でも最大の新型コロナウイルス感染症クラスターであったとも思われます。その対応にあたった経緯について書籍『新型コロナウイルス感染症と対峙したダイヤモンド・プリンセス号の四週間 -現場責任者による検疫対応の記録-』を秋に出版しました。実際には昨年11月頃から企画を開始していましたので、完成まで約一年かかる仕事となりした。できるだけ多くの皆さまにお目通ししただき、今後の検疫行政および公衆衛生行政の向上に貢献することを願っています。Amazonでご購入いただけます。個人的には、単著を出版するのは念願でしたので、叶えられてよかったです。

 なお同号の対応に際し、イタリア人のジェンナーロ・アルマ船長と協力し、イタリアをはじめとするEU国民の帰国に功労を挙げたことにより、イタリア共和国星勲章コメンダトーレ章叙勲の栄に浴することとなり、12月15日に在京イタリア大使館にて伝達を受けました。船内外でご協力いただいた多くの皆さまの力で成し遂げられたプロジェクトであり、その代表としての受章と受け止めています。ご関係の皆さまに深く感謝申し上げます(ブログ:「イタリア共和国の星勲章コメンダトーレ章の叙勲を受けました」)。

●地元倉敷・早島について

 今年後半は、選挙前ということもあり、倉敷・早島の各地を歩いたりご挨拶に伺ったりいたしました。多くの皆さまに相手をしていただいたり、ご同行をいただいたりしたことに篤く感謝申し上げます。温暖な気候、瀬戸内海や美観地区といった歴史・風土に恵まれ、また桃やぶどう、蓮根やごぼうなどの季節折々の果物野菜が実り、繊維産業から製鉄所や自動車工場までの産業も、大学や医療施設といった機関も整い、さらには中四国の交通の要衝でもある、改めて豊かな地域です。このふるさとをさらに発展させるために、引き続き努力することを改めて決意しました。

 年末には国土交通省岡山国道事務所において第1回倉敷都市圏渋滞対策検討ワーキンググループが開催され、国・県・市の担当者らで現状の課題や対策実施状況について議論されました。できるだけ早く、よりスムーズに移動できるように後押しします。

●コロナ二年目

 今年も引き続きコロナ禍の一年となりました。とはいえ昨年末と比べると状況は格段の進化をしています。PCRをはじめとする検査体制は相当整い、ワクチンの接種が進み、治療薬も開発されました。もちろん第4波、第5波で病床不足を生じてしまった反省はありますが、それを踏まえたさらなる病床や宿泊施設確保も行われています。希望的に考えれば、ワクチン3回目接種が進む春~夏くらいには、経済活動の本格的な再開に軸足を移せるようなシナリオも描けなくはありません。ただ逆に言えば、この年末年始はまだその状況が整っていません。引き続き、マメな手洗いや、人と会話する際のマスク着用や換気などにご留意いただきますようお願いします。

●家庭について

 私事になりますが、年末12月29日に、横倉義武・日本医師会名誉会長にご媒酌の労をおとりいただき、自見はなこさんと入籍しました。もともと数年間の経緯を経て昨年夏ごろには前の妻とは離婚が成立しており、その際に4人の子どもたちは私が扶養することとなっていました。今回、はなこさんには4人の子どもたちの母にもなってもらうこととなり、本当にありがたいことと思っています。多くの皆さまに多々ご心配をおかけしましたが、私の母も先方のご両親もとても喜んでくださっており、子どもたちも応援してくれています。引き続きお互いの職責を果たしつつ、落ち着いた家庭を築いていきたいと願っています。2人とも未熟な身ではありますが、ともどもに変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう、心からお願い申し上げます。なお、新型コロナウイルス感染症の感染状況に鑑み、挙式や披露宴などは当面予定しておりません。皆様への披露の機会がないご無礼をお許しください。

 今年はさまざまな意味で節目を迎える年となりました。来る令和4年は寅年。私も4回目の年男を迎えることとなります。倉敷・早島の皆さまをはじめ、ご支援いただく皆さまへの感謝を胸に刻み、より高みを目指し新たな挑戦にトライする年としたいと考えます。引き続きましてのご指導を賜りますよう、お願い申し上げます。

 皆さまも、どうぞ良いお年をお迎えください。

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(写真:先日、入籍の報告のため二人でお墓参りしました)

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