第204回通常国会期間を振り返って
●はじめに
1月18日に召集された第204回通常国会は、国会法に定められた150日間という会期により6月16日に閉会されました。令和3年は年明けすぐに2回目の緊急事態宣言が発出されており、ほぼ新型コロナウイルス感染症の蔓延やその中でのワクチン接種の取組み、そして東京オリンピック・パラリンピックの準備と並行した国会となりました。当然ながら、与野党間では閉会中審査についての議論も行われており、結論が出ればそれに従いますが、とりあえず一区切りには違いありません。
この中で、橋本がくは、衆議院においては予算委員会理事、厚生労働委員会理事、政治倫理の確立および公職選挙法に関する特別委員会委員を務め、自民党においては「こども・若者」輝く未来創造本部事務局長、社会保障制度調査会医療委員長、創薬力の向上に関するPT座長、難病対策に関するPT座長、厚生労働部会死因究明PT座長、新型コロナウイルス感染症対策本部情報戦略・システムPT座長、性的指向・性自認に関する特命委員会事務局長等を務め、また自民党総務および岡山県支部連合会会長を務めるなど、とても慌ただしく過ごしました。
これまで、おおむね毎年秋の人事の時期に合わせて振り返りブログを書くのが常となっていましたが、今回は国会閉会のタイミングで振り返りを記します。なお、過去の振り返り記事はこちらをご覧ください。振り返りを始めて7年も経ったのかといささか感慨深いものがあります。
<振り返りシリーズバックナンバー>
・厚生労働大臣政務官退任にあたり(2015.10.8)
・外交部会長を振り返って(2016.8.2)
・厚生労働副大臣退任にあたり(2017.8.7)
・厚生労働部会長を振り返って(2018.10.3)
・この一年を振り返って(2019.9.7)
・厚生労働副大臣退任にあたり(二年ぶり二回目)(2020.9.15)
なお、昨年秋以降年末までについてはブログ「令和二年末のご挨拶」 に記していますので、この記事では令和三年正月以降、ほぼ第204回通常国会の会期中のことについて記します。
●理事のお仕事
これまでも、厚生労働大臣政務官退任以降は、副大臣在任中を除き、衆議院の厚生労働委員会の理事を務めていました。加えて昨年秋から予算委員会の理事も兼任することとなりました。質疑や採決の場である委員会の運営について与野党各会派を代表して協議するのが理事会であり、理事はそのメンバーということになります。審議日程の調整、資料の確認、参考人の確認、その他質疑中に理事会協議事項とされた事項に関する協議などを役割分担して行うのが仕事となります。
予算委員会では、金田勝利委員長、後藤茂之与党筆頭理事の下、四席の理事を務めました。資料チェックの担当となりましたので、通常国会開会後令和二年度第三次補正予算および令和三年度本予算の審議が行われた1月下旬~2月下旬の約一か月間は、月曜日から金曜日まで毎朝、7時50分ごろには細田健一理事、藤原崇理事らと衆議院内控室に集まり、その日の質疑者が準備する資料やパネルについて、誤りの有無や形式が整っているか等の確認を行いました。たまにチェックに引っかかる資料があるので、その際は理事会において指摘し、訂正や差し替えまたは削除を依頼することとなります。また予算委員会においては、
・1月26日:令和2年度第3次補正予算総括質疑[議事録]
・2月4日:令和3年度本予算質疑[議事録]
・2月16日:令和3年度本予算参考人質疑[議事録]
・5月10日:集中審議[議事録]
の4回にわたり質疑に立ち、手指衛生等基本的な感染対策の徹底、病床のひっ迫やワクチン確保や接種推進の方策等、折々の新型コロナウイルス感染症対策について菅義偉総理をはじめ政府を質し、また専門家のご意見を伺いました。また2月25日、26日に行われた分科会質疑では、第五分科会(厚生労働省所管)の主査を務め、3月1日の委員会にて主査としての報告[議事録]を行いました。
厚生労働委員会においては、当初はとかしきなおみ委員長および菅原一秀与党筆頭理事の下、次席の理事を務めました。こちらでは委員長の代理を折々に務めることが主な役割であり、また4月23日には、健保法改正案の対総理質疑[議事録(未掲載)]を行いました。ところが同日朝突然に菅原筆頭が理事を辞任されることとなり、急遽、与党筆頭理事を務めることとなりました。与党筆頭理事は、それぞれの委員会で公明党も含めた与党の代表として、野党の代表である野党筆頭理事と折衝し合意点を見つけて委員会を運営し、法案審議を進めて結論を得るという重責を担うこととなります。そのため委員長や閣僚の経験者が就くことが通例で、どちらも経験せずいきなり筆頭理事に指名されたのは正直かなり驚きました。
筆頭理事のお仕事は、なかなか大変でした。委員会日程ひとつとってみても、委員会に付託された法案の審議状況に加え、開会日が重なる参議院本会議のセット具合や参議院厚生労働委員会の進捗、場合によっては他委員会の状況などを日々確認・勘案し、長妻昭野党筆頭理事からのご要望を伺いかつ自民党国会対策委員会の方針も踏まえながら、一回一回の委員会のセットを決めていくこととなります。一般的に多数会派が仕切るといわれる地方議会と異なり、国会はできるだけ全党のコンセンサスにより運営を行っていますので、連絡調整を正直ヘトヘトになるほど重ねることとなります。カウンターパートとなる長妻昭筆頭は、ご要望は全くブレない厳しい方ですが、幸いに円滑にコミュニケーションを重ねることができました。その結果、健保法改正案のみは充実した審議を重ねつつ採決について野党にご同意をいただけずやむを得ず与党が動議を提出して採決に踏み切らざるを得ませんでしたが、それ以外の審議については全てコンセンサスによる運営となり、今国会における政府提出法案4本(医療法等改正案、健康保険法等改正案、B型肝炎特措法改正案、育児介護休業法改正案)を丁寧な審議の上で通過させることができました。また一般質疑や参考人質疑も含めて合計120時間を超える充実したとても審議を行い(おそらく衆議院の全委員会中トップ)、コロナ禍やワクチン接種が国政の重要テーマとなる中において健康や医療、雇用等を所管する委員会としての使命は、十二分に果たしたものと考えます。
また今国会では、衆議院厚生労働委員会から4本の議員立法(ILO105号条約関係法整備法案、特定アスベスト被害労働者等給付金法案、中小事業主労災共済法案、医療的ケア児支援法案)を成立させることができました。議員立法は基本的には全党の賛成により委員長提案とするものですが、場合によっては事前に提出して質疑を行う場合や、委員会に動議を提出して議案にする場合などもあります。それぞれの法案への各党の賛否や質疑希望の有無により適切な方法を決め、提出者や各党理事と連携してそれぞれの議事を組み立てました。また中小事業者労災共済法案は、動議提出者の役も担っていたため、他党の部会に説明に行ったり、委員会決議を調整したり、衆参の厚生労働委員会で答弁にも立ちました。国会終盤の3週間ほどは、委員会運営だけで目の回るような時を過ごし、委員会が無事に開会するとやっとホッとする日々でした。質疑中に揉めることもあるので気は抜けませんが。
日本の国会は委員会中心主義といわれます。与党筆頭理事として、ピンチヒッターとはいえその運営の一端を担う立場となり、目立つことはないですが勉強になる日々を5月6月と過ごすことができました。何かあるとまず相談に乗っていただいた頼れる存在・石川真一キャップ始め衆議院委員部のみなさま、一時グレかけた際に温かく慰留してくれた自民党国対の担当三代寛朗さん、クワガタ大好き野村知司・厚生労働省大臣官房総務課長、委員長席後ろの壁際から常に心配そうに委員会を眺める姿がやたら印象的な清野晃平・厚生労働省国会連絡室長はじめ厚生労働省のみなさまなどのお支えあって、委員会はスムーズに運営されます。また国光あやの委員および津村啓介委員の質疑におけるご指摘があり、できるだけ早く委員会をセットするようには努めましたが、きっと厚生労働省本省でも膨大な数の答弁書作成に毎回多数の方々に夜遅くまで働いていただいていたことでしょう。本当に頭が下がる思いです。とかしきなおみ委員長、長妻昭野党筆頭理事をはじめ厚生労働委員会理事・委員の皆さま、自民党国対の担当田畑裕明副委員長、委員会に出席し答弁に立たれる田村憲久厚労相はじめ政務三役各位および厚労省はじめ各省幹部の皆さま、さらには尾身茂地域医療機能推進機構理事長や脇田隆字感染症研究所長にも、長時間の審議と頻回の質疑にご協力いただきました。深く感謝申し上げます。日本の民主主義は、こうした方々のご努力によって支えられていることは、ぜひお伝えしたいことです。
●政策面での取り組み -コロナ/医薬品/こども/性的指向・性自認―
今国会の会期中、自民党における政策面での活動は、主に新型コロナ対策や医薬品創薬力向上、そしてこども庁の関係および性的指向・性自認の多様性に関する法案審議がメインとなりました。
新型コロナ対策については、主にコロナワクチン接種後のフォローアップについて、情報・システム戦略PTとして1月28日に提言を行ったり[提言書PDF]、政府とともに検討したりしました。ただ、既存システムとの兼ね合いや時間・人材・法制度の面でそれなりに困難に直面しつつ、取り組んでいるというのが正直なところです。また、ワクチン接種については、その確保および供給について、倉敷市伊東市長や早島町中川町長とも連絡を取りながら確認にあたり、また先述の予算委員会での質疑でも取り上げて河野太郎大臣から答弁をいただきました。接種体制はそれぞれの自治体での対応となりますが、倉敷市でも健康福祉プラザおよび川崎学園、早島町でもゆるびの舎にて集団接種が開始され、スピードアップが図られています。詳しくは倉敷市Webサイト、早島町Webサイトをそれぞれご覧ください。
また、コロナ対策に関し、ワクチン開発や医薬品の承認プロセス等が注目を集めています。しかし医薬品開発等は一朝一夕にできるものではなく、そもそもの研究開発から製品化、そして承認や薬価設定のプロセス等を一貫したエコシステムとして捉える必要があり、また医薬品について安全保障の観点も必要と思われるところ、そもそもこれまでの医薬品行政にはそのような視点に欠けていました。そこでさまざまな関係者の方々にヒアリングを行い、提言をとりまとめました。詳細はブログ「医薬品産業エコシステムと医薬安全保障の確立 ~医薬品産業ビジョンへの提言~」をご覧ください。この提言内容は、今後政府が決定する成長戦略等に反映される見通しであり、今後の行政に活かされるものと考えています。
報道にて「こども庁の創設」という見出しで取り上げられる機会がありましたが、このテーマを取り扱っているのが自民党「こども・若者」輝く未来創造本部です。もともとは、山田太郎・自見はなこ両参議院議員が事務局として運営している「Children Firstの子ども行政のあり方勉強会」が菅義偉総理に提言を行い、それを踏まえ総理直轄の検討組織をつくるよう総理から指示があって本部が設置された経緯があり、その事務局長を橋本が担うこととなりました。議論の末6月にまとめた提言等はブログ「自民党:「こどもまんなか」改革の実現に向けた緊急決議」をご覧ください。なお、組織論については報道や霞が関の動きはやたら賑やかでしたが、今回踏み込むことは控えています。順番として、まずそもそもの基本的な考え方の整理をすることが必要と考えたからです。イメージとしては、今回の決議は絵を描くための「こどもまんなか」という方向を向いた真っ白なキャンパスを用意し構想イメージを膨らませたということであり、そこに今後具体的なデッサンをし、色を塗って絵を描いていくステップを踏むのだろうと個人的には思っています。これも骨太の方針等に記載される見通しであり、政府においても検討がスタートします。
性的指向・性自認の多様性に関する問題に関し、その理解増進法案について平成28年から足掛け5年にわたり取り組んできました。東京オリンピック・パラリンピックの機会を前に、政府も野党の皆さまもご協力いただいて成立を目指す機運が高まりましたが、誠に申し訳ないことに力不足のため自民党内の了承を得ることができませんでした。経緯はブログ「自民党における性的指向・性自認の多様性に関する議論の経緯と法案の内容について」に記した通りです。反省点もありますので、機会をいただければ引き続きチャレンジを続ける所存です。ただ、平成28年当初から組織決定を経た方針を持ち、内容についてQ&Aを練り上げ、政府への申し入れとそのフォローアップも行い、そうした数年にわたる積み重ねの上での提案をしている身としては、いささか消耗感や徒労感を覚えざるを得ない結論では、あります。もちろん、当事者の方々が今なお直面している状況を考えれば、そんなこと言っていられません。がんばります。
●地元や身の回りのことなど
今年に入ってから、東京都においては2回、岡山県においても1回、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の対象地域となりました。その間は、県境をまたいだ移動は控えるべきとされており、岡山への往復を極力控えました。そのため正月明けと、緊急事態宣言が解除された数週間の週末のみしかほぼ倉敷・早島に戻ることができず、ご支援いただく皆さまには、すっかりご無沙汰となってしまったことを、心からお詫び申し上げます。そのかわり、YouTube「ga9チャン」を始めました。まだコンテンツはあまり多くないですが、今後も地道に続けていきたいと考えています。
平成25年から3期6年間にわたり自由民主党岡山県支部連合会の会長を務めていましたが、長期にわたったことからこの度退任することとし、6月13日からは石井正弘参議院議員に会長職をお譲りしました。長年にわたりご支援を頂いた皆様に篤く感謝申し上げますとともに、引き続き石井県連会長をお支えして党勢の拡大に力を尽くします。また、4月28日に自民党本部より党員拡大の表彰(27位)をいただきました。日ごろからご協力いただいている自民党員の皆様のおかげであり、篤く御礼申しあげます。
東京で過ごさざるを得なかった分、現在議員宿舎で一緒に暮らしている3人の子どもたち(と、一人暮らししている長男も時々)と時間を過ごすことができたのは、貴重な経験でした。昨年からひとり親家庭ですが、おかげさまで長女は安定して勤めを続け、長男は自分の選んだ道を志し、次女も目標に向けて取り組み続けています。今年中学校に進学した次男は学級委員になったそうで、東京の学校に馴染めるかすこし心配していた親を後目に本人なりにのびのび過ごしているようです。また、おかげさまで母も元気に過ごしています。誠にありがたいことです。
●私たちが選んだことと、選ばなかったことと。
昨年11月から12月にかけて行われた予防接種法改正案の審議の際、委員会質疑においてはワクチンの安全性について議論が重ねられ懸念が示されていました。その結果、「接種するかしないかは国民自らの意思に委ねられるものであることを周知すること」、「新型コロナウイルスワクチンを接種していない者に対して、差別、いじめ、職場や学校等における不利益取扱い等は決して許されるものではないことを広報等により周知徹底するなど必要な対応を行うこと」(以上衆議院における付帯決議)、「国内外の治験結果等を踏まえ、慎重に行うこと」(参議院における付帯決議)といった決議が国会両院厚生労働委員会で行われました[資料]。なお付帯決議は、基本的には与野党ともに賛成して行われるものですので、野党がとか与党がとかいうべきものではありません。ともに賛成したのです。
その結果、メーカーには国内でもワクチンの治験を行うことが求められ、治験の結論が出るには一定の時間がかかりますので日本での承認がアメリカ等と比較して遅くなりました。メーカーとしては世界中から引き合いがありますから、公平性を担保するためには承認順に順序をつけて出荷するしかありません。そのため、日本でのワクチン接種開始はアメリカ等に比較して遅くなりました(なお例えばイスラエルは早期に接種が開始されましたが、承認はアメリカの承認を踏まえ同じタイミングで行ったと聞いています)。
また衆議院厚生労働委員会では、認知症の高齢の方など本人の意志表明が困難な方については家族同意などで接種を進めるべきではないかという議論がありましたが、ワクチン接種は身体侵襲を伴う行為でありかつ「国民自らの意志に委ねられるもの」と縛られたことが足かせとなり政府としては前向きな答弁はできませんでした。政府が接種しない自由を保障する以上、仮に意思表明がそもそも困難であっても、本人の意志によらない強制が不可能であるのは当然の論理的帰結です(仮に本人の意志によらない強制が必要とされるならば、意志表明の可不可を問わず、無差別に強制しなければなりません。そうでなければ意思表明が不可能な方に対する不当な差別になります)。
私たちは、ワクチンに対して安全性を懸念して慎重な対応をする道を選んだのです。その結果として、早い国と比較して接種の開始が遅れたり、ワクチンパスポート的なものなどいくつかの対策が難しくなったりしていますが、それも含めて選んだ道です。「慎重」と「迅速」、あるいは「任意」と「強制」が両立できるほど、世の中は都合よくできていません。またこの決定が科学的に正しかったかどうかは、後日検証されるべきですし、議員バッジを付けている身としてその責任も負わなければなりません。今は緊急事態だから、平時と同じような意思決定をしていてはいけないという議論もたまに聞きますが、緊急事態だから法律を超えて何をしても許されるのであれば、それは法治国家ではありません。平時から次の緊急時を想定して備えておくことが必要なのです。治に居て乱を忘れず、です。
とはいえ、現場における多くの方々のご努力により、着実に接種が進んでいます。誠にありがたいことです。ワクチン接種が進めば、着実に新型コロナウイルス感染症の蔓延は抑えられることになるものと考えます。ただ、まだその効果が目に見えるようになるには今少し時間はかかるものと思います。ですので、以前のブログと同じことを改めて記します。
マメに手をよく洗ってお過ごしください。外出時はマスクを着用してください。人とお話するときもマスクを着用し、また換気にも十分ご留意ください。大人数や長時間、しかも普段会わない方々との会食や宴会は、出席または開催について十二分にご検討ください。体調にはご注意いただき、もし何か気づいたら微熱など些細なことでも念のため活動は控え、身近な医療機関への電話をご検討ください。医療機関や介護施設など様々な現場に立っておられる方、心ならずも感染してしまった方々に、ひととき思いをお寄せください。心からのお願いです。