遊漁船救命いかだ等設置義務化に関するヒアリングメモ
国土交通省ヒアリングメモ(2023.12.7)
先方:国土交通省海事局担当者
メモ作成:橋本岳
●今回の経緯について
- ハードウエアとしての船舶(旅客船・遊漁船ともに)の安全について規制する法律は、船舶安全法(国土交通省所管)。業としての旅客船業を所管しているのは海上運送法(国土交通省所管)、遊漁船を所管しているのは遊漁船業の適正化に関する法律(水産庁所管)。
- 知床沖遊覧船事故を契機に、令和4年に知床遊覧船事故対策委員会が開催された。国土交通省が事務局、水産庁もオブザーバー参加。委員会の議論により、遭難時に水中で待機する際の凍死リスクが課題とされ、旅客船・遊漁船等を対象に安全対策を強化することとされ、その結果に基づき、令和5年の通常国会にて海上運送法等の一部を改正する法律の改正が行われた。適用日は遊漁船を除く旅客船は令和6年4月1日、旅客船以外の事業船及び遊漁船は令和7年4月1日。
- 国土交通省は、旅客船を対象とした設備導入補助金の募集を令和4年補正予算に計上の上、令和5年4月に開始(この補助金は遊漁船を対象としていない)。一方で水産庁は、遊漁船を対象とした「遊漁船安全設備導入支援事業」を令和6年度当初予算に要求中(令和5年12月下旬に閣議決定見通し)。タイムラグがあるのは、適用日に差があることによる。
- 10月中旬に国土交通省補助金の応募を促すために、案内の郵送や電話での連絡を漁協等に行った。それ以降に問い合わせが増えており、この案内をきっかけに法改正等に気づいた方が多かったのではないかと考えている。
- 遊漁船を対象とした支援については、来年度、水産庁の補助金において募集・実施されるものと考えている。
●救命いかだ等の義務化について
- 旅客船および遊漁船のうち、航行する水域の最低水温が10度未満の海域ではすべての船舶、最低水域が10度~15度の海域では限定沿海以遠を航行する船舶、15度~20度の海域では限定沿海以遠を航行する一部の船舶(エリア分けは資料p.12)。最低水温が20度を切らないエリア(概ね屋久島以南)は救命いかだ等の搭載義務はかからない。
- 瀬戸内海の平水かつ輻輳海域、東京湾平水なども、搭載義務はかからない。
- 20度未満となる期間を運行しない場合は、搭載義務はかからない。
- 伴走船を伴う場合も搭載義務はかからない(橋本より、現実的ではない旨指摘)。
- 水温が15度以上であれば、全通水密甲板を有する船舶、母港から5海里以内のみ航行する船舶、救助船を配備している船舶(企業内や事業者組合等で運行している場合を含む)も、搭載義務はかからない。
- 海域における水温や一定水温を下回る期間などは、メッシュごとに30年平均値で設定されたものに拠る(p14,p15など)。
●コメント
- 遭難等により落水した際の生命の安全を考慮して何らかの規制を考えたという経緯は理解。また、水温や港との距離等によりさまざまに例外を考えていることも了解。
- ただ、多くの遊漁船は小型であり、救命いかだは高価な上、船上でそれなりのスペースを占めるため、事業への影響は大きい。水温による例外や沿海や平水等の例外もあるものの、魚がいるところに行くのが遊漁船であり、どれだけの事業者がこの例外にあたることができるかは必ずしも明らかではない。
- そもそも国土交通省と水産庁での施行時期および対応の違いなど一般の方には分かりにくい要因もある上、補助金の告知により初めて知った方が多い、例外等の認識もあまり広がっていないと思われる状況からすると、検討会実施中から今に至るまで、少なくとも関連事業者とのコミュニケーションは不足していたのではないか。これは今からでも行うべきことではないか。
以上