日本国際貿易促進協会 訪中レポート
6月、日本国際貿易促進協会(国貿促)の会長代行として、中国の北京を訪問してきました。記録のため、レポートを記しておきます。
経緯と概要
国貿促は、会長を団長とする、会員で構成される訪中団を、毎年中国に派遣しています。これまで河野洋平・元衆議院議長が20年にわたり国貿促の会長を務めておられ、私も数年前から会長代行としてお手伝いをしておりました。これは先代の会長を橋本龍太郎が務めていたご縁によるものです。
今年の訪中団の派遣については、日中関係の悪化を受けて日程調整が難航していましたが、河野会長が中国側に粘り強く働きかけた結果、6月22日に北京市で開催される第4回中国国際サプライチェーン促進博覧会の開幕式にご招待をいただく形で訪問することとなりました。そこで会員にお知らせして訪中団を組織するとともに、要人面会等の日程調整を行っていました。
ところが、病気により残念ながら6月8日に河野洋平会長が逝去されました。そのため要人面会もキャンセルとなり、訪中団の派遣は延期することとしました。ただ、河野会長が病床にあっても、なお訪中への強い希望をもっておられたことや、弔意のメッセージが中国各方面からも寄せられたことを踏まえ、第四回中国国際サプライチェーン促進博覧会開幕式へのご招待について私が河野会長の代理として出席し、かつ弔意への感謝をお伝えするため、少人数での訪問をすることとしたものです。
なお国会会期中の海外渡航となるため、訪中前に衆議院地域・こども・デジタル特別委員会の理事を交替していただき、国会審議に支障が生じないよう対応しました。
- 日時:令和8年6月21日(日)~24日(水)
- 場所:中華人民共和国北京市
- メンバー:日本国際貿易促進協会 橋本会長代行、秦副会長、泉川理事長、ほか一名
主なスケジュール
21日18時~ 日本大使館にてブリーフィング
日本大使館にて、金杉大使、山田公使、垣見公使、志賀参事官と当面の日中関係に関するブリーフィングを受けつつ夕食をいただきました。日中両政府間の要人往来や面会が難しい状況にある一方で、民間は特に不買運動等は起こっておらず平静であること、コンサートが中止されるなどソフト面で支障はあったが一方で日系企業の外食やアパレル等は好調であることなどのお話を伺いました。
22日10時~ 第四回中国国際サプライチェーン促進博覧会開幕式出席
中国国際展示場にて行われた第四回中国国際サプライチェーン促進博覧会の開幕式に出席しました。式は丁薛祥国務院副総理が来賓あいさつを行う立派なものでしたが、同時通訳には日本語チャンネルがありませんでした。去年は用意されていたとのことですので、そのあたりに扱いの変化を感じます。
開幕式前には、 中国国際貿易促進委員会 任鴻斌会長と立ち話ができました。河野会長に対する弔意への謝意を述べ、再度の訪中団派遣への協力を要請しました。任会長からは歓迎する旨お話がありました。
また式前後に博覧会会場も歩いてみました。中国内外の企業や各地の開発区等による展示が多く、踊る二足ロボットなど目を引くものもありました。
(↓リズミカルにステップを踏み踊る二足ロボットの動画です)
22日15時~ 華春瑩・中国外交部副部長と面談
中国外交部(日本における外務省)を訪問し、華春瑩・外交部副部長(日本における外務副大臣に相当)と約1時間にわたり面談しました。
先方からは、河野会長が中国国民からも尊敬を集めていたこと、王毅・外交部長も河野会長と面会する準備をしていたことなどのお話があった上で、ご自身の記憶も交え河野会長への哀悼の意が示され、河野会長の遺志を継ぎ、両国の関係が正常に発展する道に戻るよう努めたい旨のお話がありました。当方からは会長へのさまざまな弔意に対する感謝を申し上げ、ご遺族にお伝えすることと、延期になった訪中団について再度派遣したいことを申し上げました。
続いて、高市総理の予算委員会での発言に対する中国側の一貫した立場が説明されました。その上で、中日両国関係の安定は、世界やアジアから期待されていること、中国政府は、日本政府などと友好的な国民や経済界とは区別して対応すること、経済界が中日関係の改善に積極的な役割を果たすことを期待する由お話になりました。
当方からは、副部長からのお話は日本側に伝えること、日本が軍事的な国を目指していると受け止められているとすればそれは全くあたらないこと、お互いに言いたいことがあれば会って対話することが重要であること、それゆえ今回の面談を感謝していることをお話ししました。
その後は、中国国際サプライチェーン促進博覧会の感想などについてお話して、会談終了となりました。
23日10時~ 林紅紅・中国国際貿易促進委員会副会長と面談
中国国際貿易促進委員会は、国貿促の中国側のカウンターパートにあたる組織であり、また中国国際サプライチェーン促進博覧会の主催者でもあります。この日は任会長はご都合がつかなかったようで、林副会長との面談となりました。
会談では、先方から改めて河野洋平会長に対する弔意が示され、当方からこれに謝意をお伝えした上で、延期した訪問団について協力の依頼、今回は実現しなかった中国商務部(日本における経済産業省)への訪問実現の要請などを行いました。また中国が国際的なサプライチェーン維持に尽力していること、特にロボットやAIなどに注力していることなどの紹介がありました。
23日13時~ 中日友好医院視察
中日友好医院は、日本のODAにより建設され、1984年に開院した病院です。現在は2,306床を有し、国家呼吸医学センターおよび国家中西医結合医療(中国医学と西洋医学を組み合わせた医療)センターの機能を担っています。東大病院や順天堂大学病院ほか日本の多数の病院と連携して診療や医学教育にあたっています。中曽根康弘元総理や鈴木善幸元総理が訪問された際に植樹された木や中国風のお庭などを見学したのち、崔勇・副院長らから病院の概要などを伺いました。
23日15時~ 袁敏道・中日友好協会副会長と面談
中日友好協会の袁敏道副会長は、長年にわたり日本との外交に関与して来られ、私も旧知の仲の方です。河野会長への弔意が示され、それに対する感謝を申し上げたうえで、中日関係改善に向けた国貿促に期待している旨お話がありました。
24日7時30分~ 中国日本商会の方々と朝食会
中国で活動している日本企業の方々の組織である中国日本商会の本間会長はじめ幹部のみなさまからお話を伺いました。中国における日本企業の取り組みや、AIに関する取り組み、中国企業の海外進出と中国政府の後押し、中国の若者の間で、衛生や安全面、商品の清潔さを重視する傾向が強まっていること、中国で高齢者介護に関する保険制度の試行・整備が進められていることなどを伺いました。
なおホルムズ海峡の問題は中国ではさして報道もされず、また石炭由来化学製品などの存在もあり、あまり問題となっていないとのことでした。また欧米諸国と比べ日本は対中貿易赤字は比較的小さく、他の国の商会の方々からうらやましがられることがあるというお話もありました。
感想
私にとっては令和6年夏に国貿促代表団の一員として訪中して以来2年ぶりの中国でした。ただ昨年11月以降に限れば、中国政府の高官と日本の政治家の初の面談となったため、公表後複数のメディア等にも取り上げられることとなりました。本来は河野洋平会長が訪問されるはずであり、おそらくは中国も河野会長に対してメッセージを発したかったところ、はからずも河野会長の急逝により私相手になったものと思われます。華副部長のお話も「中国国内では、高市総理の発言がこのように受け取められている」といった遠回しな表現を用い、またキーフレーズのような直接的な表現を避けた懸念の表明であり、気遣いを感じるものでした。日中両国の関係改善に向けた期待について発言があり、また国貿促の次回訪問団の派遣について重視する旨の発言もあり、民間や経済団体等による今後の交流再開について期待ができるものでした。
とはいえ、現在の日本政府に対する厳しい姿勢そのものに変化はなく、また滞在中にレアアース関連製品の国外持ち出しをめぐり日本企業の社員が中国当局に拘束された旨の報道があったり、またその後にも中国の原子力潜水艦が太平洋の公海に向けて模擬弾頭を搭載した戦略ミサイルを発射したりするなど、穏便とはとてもいえない動きがあるのも事実です。とりわけ1月に中国が導入したレアアース関連の輸出規制は、対象や運用の透明性に乏しく、政治的・恣意的に運用される懸念が強いものであり、そのまま受け入れることは困難です。
こうした両国間の課題の改善を目指すためにも、政府間に限らず、経済界や民間団体など複数のチャンネルを通じて対話を重ねることが重要です。河野洋平会長が遺された日中交流への思いを受け継ぎ、主張すべきことは率直に主張しつつ、対話と交流の扉を閉ざさないための役割を、引き続き国貿促として果たしていきたいと思います。
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