令和五年末のご挨拶
令和五年の年末を迎えました。今年も多くの皆さまのご支援を賜り、年末を迎えることができたことに、まずもって篤く感謝申し上げます。今年後半の出来事について振り返ってみたいと思います。なお今年前半については、「第211回国会を振り返って」に記しておりますので、そちらも併せてご参照ください。
●政治資金の問題について
やはりまず取り上げなければならないことは、自民党内における派閥のパーティ券に関する政治資金収支報告書不記載の問題についてでしょう。この問題は昨年からしんぶん赤旗で取り上げられていましたが、各派閥の事務責任者等に対して刑事告発が行われ実際に捜査が着手されて以来、メディアにも大きくクローズアップされました。特に11月下旬から12月にかけて、臨時国会の中盤以降、具体的な派閥名や議員の名前が週刊誌や大手一般紙にも取り上げられるようになり、閣僚の交代に発展することとなりました。現時点でも引き続き検察による捜査が続いており、関係者の事情聴取や派閥や議員事務所等の強制捜査もありました。
まず、自民党の派閥や同僚等の不祥事により国会や国民の皆さまに、政治へのご不信をお与えしてしまっていることに、議員のひとりとして深くお詫び申し上げます。その上で、この件について思うことを記します。私の関係する政治団体と、所属する平成研究会(茂木派)の間での政治資金のやり取りについては、全て銀行振り込みで行われており、当然に政治資金収支報告書に記載しています。したがって今回の件でも、平成研究会については、多額パーティ券購入者の未記載等に関して告発は受けている旨の報道はあるものの、収支そのもの未記載という問題では現時点では名前は出ておりません。ただこれは決して自慢できる話ではなく、約20年前に日歯連事件により平成研究会の議員や会計責任者が刑事処分を受けた経緯を有し、その結果政治資金規正法が改正され、政治資金団体への寄付は千円以上の場合は銀行振込等で行うことが義務付けられ(第二十二条の六の二)、かつもともと政治団体の収支等は報告書に記載して選挙管理委員会等に提出しなければならず(第十二条)それらの条文に則りに運用された結果にすぎません。日歯連事件は、個人的にも父龍太郎が不出馬を決意する原因となった事件であり、改めて重く受け止めています。
報道によれば、一部の派閥ではこれらの条文に拠らず、現金により政治資金が手渡しされており、かつ報告書にも記載されていなかったという疑いにより捜査を受けているというのが今回の件の本質です。政治資金規正法は、「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、(…中略…)政治活動の公明と公正を確保」するのが目的(第一条)と定められていますので、記録が残らない現金での金銭の授受やその報告書の不記載は、まさに政治資金規正法に違反し、或いは趣旨を逸脱する行為と指弾を受けるべきものです。したがって、こうしたことを二度と起こさないように罰則の強化やシステム化を図ることが対策の第一歩となるべきでしょう。当たり前にできることを、当たり前にすべきです。
また、派閥の存在やその政治資金パーティのあり方についても議論は及ぶべきでしょう。平成元年に自民党は「政治改革大綱」をまとめています。この文書によって中選挙区制の抜本的な見直しが打ち出され、紆余曲折を経て現在の小選挙区制の導入などが実現されましたが、実はそれ以外にも様々な方針が打ち出されています。例えばこの中でも党幹部や閣僚は派閥を離脱すべきことが記してありますが、30年以上を経ていつの間にか等閑にされていたことは反省しなければなりません。改めてこの大綱が制定された際の危機感と志を思い出し、再び実現を目指す必要があるものと考えます。
当然ながら司法機関による捜査の行方を見守る必要はありますが、自民党として今回の件に関するけじめを打ち出さないことには、国民の不信を払拭することは不可能であり、国会でも政策の議論に立ち入ることはできないものと考えます。早急に議論を進めて参ります。
なお、派閥パーティ券の売り上げに応じて派閥から寄付があることを「キックバック」や「還流」と称してその有無が問題扱いされる議論や報道もありますが、このこと自体は法令に違反するものではなく、また派閥として得た政治資金を派閥所属議員の政治団体に寄付をすること自体は純粋に派閥のガバナンスの問題であり、収支報告書への記載等法令に則って行われていれば特段の問題ではないものと考えます。本当にキックバックが問題とされる公共工事の口利き等とは全く話が異なりますので、誤解を招きうる表現のように感じています。
●こども政策の進展とトリプル報酬改定の決着
岸田総理は年初に「異次元の少子化対策」の実現を訴えました。それまでのこども基本法の制定やこども家庭庁設置の流れに加え、年初のこの発言に端を発し、「こども未来戦略方針」を6月に閣議決定したところまでは「第211回国会を振り返って」に記した通りです。この方針により、児童手当の所得制限の撤廃および高校卒業までの延長、出産費用の保険適用化、育児休業給付率の引き上げなど、これまで議論はされていても実現ができていなかったさまざまなこども政策を実施することが決められています。ただその裏付けとなる具体的な財政フレームの構築は年末の予算編成時に先送りとなっておりました。年間3兆円半ばの新規歳出をどのように予算に組み込むか、方向性として社会保障制度の改革による財政圧縮と支援金制度の創設が示されていましたが、具体的な検討が年末までに必要でした。
一方で、社会保障支出の大きな柱となる診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス報酬の3報酬が来年度同時に改定となる年であり、この決着も年末の予算編成時となっていました。こちらはこちらで、電気代や物価、人件費の上昇により特に大きな医療機関や施設では相当経営が苦しくなっており、殊に介護職ははじめて従事者数が減となってしまう危機的な状況がありました。したがってこちらもその状況に見合った報酬改定を行わなければなりません。岸田総理は、社会保険料を支払う世代の負担増を控えることと、医療介護関係職も含む労働者の賃金アップとを両方政策として掲げておられましたが、これをどう両立させるか。私も、会合や要望活動、厚生労働省や財務省の担当者との意見交換を重ねましたが、おそらく多くの関係者がさまざまな行動をされていたものと思います。
最終的には武見厚生労働大臣と鈴木財務大臣が岸田総理に裁定を求め、その結果が12月20日に両大臣の大臣折衝事項として公表されています。結果としては、診療報酬本体は+0.88%・薬価等は-1.0%、介護報酬は+1.59%、障害福祉サービス報酬は+1.12%という改定となり、数字のみではどの関係者も大満足ではないがまあ納得という、良く言えば三方一両損的な改定となったように感じています。
ただ今回の改定のポイントはその数字的結果ではなく、その中に込められた幾つかの施策ではないかと考えます。例えば、三報酬とも従業者賃上げの重視は顕著であり岸田政権の方針を具体化するぞという意思は明確です。また経済情勢を踏まえ三十年ぶりに入院時の食事基準額も引き上げられました。昨今の物価・賃金の上昇を考えれば順当かつ必要な対応です。
一方で、生活習慣病を中心とした管理料等について適正化を図ることで-0.25%がついており、かねてから財務省より効果が疑問視されてきた報酬についてメスが入れられました。今後こうした方向性もより加速するでしょう。個人的には、かかりつけ医やオンライン診療、往診などのあり方等も含む将来の外来医療のあり方のビジョンをむしろ医療界から主体的に示すような対応が必要なものと感じています。
また薬価については、かねて自民党創薬力の強化育成に関するPTで主張していた通り、革新的新薬の薬価維持や不採算品再算定の対応等のメリハリ付けが明記されました。また、長期収載品の保険給付について選定療養の仕組みも導入する改革が実行されることとなりました。敢えて厳しい言い方をすれば、保険給付の範囲を狭め自己負担を増やす改革であり、ひと昔前の自民党では絶対に認められることのない政策だったかもしれませんが、今回対象幅の議論はありましたが導入絶対反対の立場の議員がいなかったのは、議員に「全世代型社会保障の実現」という意識が浸透した成果かもしれません。
「こども未来戦略」において、「社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築する」とされており、この両立はどうなるかと心配をしていましたが、結果として賃上げに確実に資する追加的社会保険負担および全世代型社会保障改革の結果生じる追加的社会保険負担についてはその例外とするという、私の眼から見るとウルトラCのような知恵が案出され、なんとか収めることとなりました。これらの支出は、一方的に若者世代の負担となるものではないという意味では、確かに例外扱いは順当と言えるでしょう。
今回の報酬改定に向けて、財務省は機動的調査といういわば人海戦術で医療機関の経営実態を洗い出す対応を行いました。結果からすれば、厚生労働省が行う医療経営実態調査とあまり差がなく、むしろ医療経営実態調査の正確性が確認される結果となったのは、双方にとって良かったかもしれません。
自民党の社会保障制度調査会事務局長と「こども・若者」輝く未来創造本部幹事長を兼務する身としては、防衛予算の増額もある中でどのように社会保障予算とこども予算を両立させるかかなり心配していましたが、多くの方々のご努力の結果として然るべきところに落ち着いたものと考えています。ご関係の皆さまのご努力に深く敬意を表します。
●衆議院厚生労働委員会与党筆頭理事として
衆議院では、この臨時国会から厚生労働員会理事、予算委員会委員、地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会委員を務めました。特に厚生労働委員会では与党筆頭理事となり、野党筆頭理事である小川淳也議員と丁寧に協議と合意を重ね、充実した審議の上、大麻取締法等改正案を成立させることができました。与党筆頭理事は二回目(一回目については「第204回通常国会期間を振り返って」ご参照)になりますが、とりあえず無事にひと国会を乗り越えることができたことに安堵しています。なお委員長職を2年務めていたためその間質疑に立つことは控えていましたが、11月8日に10分間の時間をいただき、武見敬三厚生労働大臣に対して医薬品行政に関して質問を行いました。やっぱり質疑は国会議員の本懐と言うべきことです。予算委員会や地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会では、委員として着席して質疑を見守るにとどまりました。ただ、他党の議員のものも含め、他の議員の質問およびその答弁を聞いていることは大変勉強になりました。
●創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム座長として
自民党創薬力の強化育成に関するプロジェクトチームでは、この臨時国会期間では関係者のヒアリングを行うにとどまりましたが、累次にわたる提言を政府が受け止め、今回の診療報酬改定においてイノベーションの更なる評価が打ち出されたことはありがたいことです。また、創薬に関する政府全体の司令塔を構築すべきという以前からの提言を具体化するため、座長として大野敬太郎事務局長とともに水面下で政府と打ち合わせを続けていましたが、その結果として鴨下一郎元衆議院議員の内閣官房参与への就任があり、そのご指導のもと12月27日には、村井英樹官房副長官を座長とする「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」の開催に漕ぎつけることができました。来年の骨太の方針に向けて会合を重ねるとのことですが、実りある結論が出され実現することを期待しています。
●倉敷・早島について
昨年末の公職選挙法改正による選挙区の見直しと、自民党における支部長の再選任により、私は引き続き岡山県第四選挙区をお預りすることとなりました。拡大した真備町・船穂町にも秋祭りなどの機会には極力伺うようにしており、温かく受け入れていただいていることに深く感謝申し上げます。7月に平成30年豪雨災害における洪水から5周年を迎えましたが、その対策として実施されていた小田川・高梁川合流点の付け替え工事について、10月29日に通水式が挙行され年度内の完工に向けてラストスパートとなっています。同時に、高梁川下流の堤防強化工事も順次施行されており、洪水災害に対してより安心していただけるようになります。災害により深い傷を負った真備町に寄り添い、本来10年かかる予定の工事を5年で実施する突貫工事に尽力された国土交通省高梁川・小田川緊急治水対策河川事務所濱田靖彦所長をはじめご関係の皆さまに、心から感謝を申し上げます。
また、慢性的な渋滞に悩まされている国道二号線岡山・倉敷間の改良、船舶の大型化に対応するための水島港の航路浚渫、六間川の改修など、引き続きそれぞれの地域で必要とされている事業の推進に取り組みます。
今年は春に岡山県議会議員選挙、夏には早島町長選挙がありました。来年は春に倉敷市長選挙および市議会議員補欠選挙、秋に岡山県知事選挙が予定されています。いずれの選挙も未だに構図は決まっていませんが、それぞれに適切な判断をしたいと考えています。
●私事について
個人的には今年後半の最大のサプライズは、妻・自見はなこの内閣府特命担当大臣就任でした。担当の大阪関西万博の建設費用増等とタイミングが重なり国会で苦労をしましたが、地方創生や沖縄北方対策、食品ロス削減等消費者庁の担当も含め前向きに頑張っていますので、私同様に応援してやっていただければ幸いです。おかげさまで母・久美子やこどもたちも含めて家族皆元気で過ごしており、誠にありがたいことです。
昨年「令和四年末のご挨拶」にて、シーバスを狙ったルアー釣りを始めたことを記しましたが、現在でも続いています。あれこれ試行錯誤をしつつごくたまに釣れる程度という腕の方にはあまり変化はありませんが、夏にチヌキューブを使ったチヌ釣りを経験したことをきっかけに、少しずつ他魚種へのターゲットの拡大を目論んでいます。釣具屋さんにもだんだん顔を覚えられてきた気がします…。なお、現在遊漁船への救命いかだ搭載義務化を巡り、国土交通省と関係者の間で議論が行われています(詳細はこちらの記事「船釣り関係者に激震「救命いかだ搭載義務化問題」とは? 遊漁船に不安と負担を強いる本末転倒な改正省令案」(月刊つり人ブログ)をご覧ください)が、どうにか解決に向けて知恵が出せないかと考えています。
●謝辞
今年も本当にさまざまなことがありました。特に自民党としては地検特捜部の捜査を受けている議員等が少なからず存在しており、穏やかな年末とはとても記せる状況ではありません。ただその中でも、どうにか年末を迎えられているのは、倉敷・早島をはじめとする本当に多くの皆さまのご支援があってのことと、深い感謝の想いでいっぱいです。まずはできるだけ早くこの事件に一定のけじめをつけ、落ち着いて政策の議論を行えるよう政治への信頼を回復することが急務です。令和六年におきましても、引き続き変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう、心からお願い申し上げます。
どうぞ皆さま、よいお年をお迎えください。