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2023年6月

2023年6月27日 (火)

第211回国会を振り返って

●はじめに

 令和5年1月23日に召集された第211回通常国会は、150日間の会期通りに6月21日に閉会されました。この国会では終盤に「すわ解散か」というタイミングもありましたが、終わってみればまあ概ね順調だったと言えるものとなりました。令和5年度予算は年度内に成立した上、法案としては、防衛財源確保法や送還忌諱問題等に対応するための入管法改正案、コロナ禍の反省を踏まえて感染症危機管理統括庁を創設する新型インフルエンザ等特措法改正案、日本版CDCを創設する国立健康危機管理機構法案、不同意性交罪の新設や性交同意年齢の引き上げなどを柱とした刑法改正案等の重要法案が審議され、成立しました。議員立法でもゲノム医療推進法や戦没者遺骨収集推進法の延長、認知症基本法などが成立しています。最終盤に内閣不信任案も提出されましたが、賛成は立憲民主党と共産党のみで、与党は当然ながら他の野党も反対に回る中、粛々と否決されました。

 橋本がくは、この国会から新設された衆議院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会の委員長に指名されその職務に努めました。また自民党においては「こども・若者」輝く未来創造本部事務総長、社会保障制度調査会事務局長、地方行政調査会事務局長、創薬力の強化育成に関するPT座長、こどもまんなか保健医療の実現に関するPT座長、死因究明推進に関するPT座長等の役目をお預かりし、それぞれに取り組みました。ここで、今国会における活動について振り返りを記します。なお毎年の振り返りは下記の通りです。振り返りシリーズもだんだん積み重なってきました。

<振り返りシリーズバックナンバー>
厚生労働大臣政務官退任にあたり(2015.10.8)
外交部会長を振り返って(2016.8.2)
厚生労働副大臣退任にあたり(2017.8.7)
厚生労働部会長を振り返って(2018.10.3)
この一年を振り返って(2019.9.7)
厚生労働副大臣退任にあたり(二年ぶり二回目)(2020.9.15)
第204回通常国会期間を振り返って(2021.6.16)
第208回国会閉会にあたり(2022.6.16)

 なお昨年秋以降年末までは、「令和四年末のご挨拶」に記していますので、そちらもご参照ください。

●衆議院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長として

 昨年秋の臨時国会において、衆議院地方創生に関する特別委員長を務めていましたが、この通常国会を控えた政党間協議において衆議院の特別委員会の再編成が合意され、科学技術に関する特別委員会および地方創生に関する特別委員会が廃止され、地方創生特別委員会が所管していた範囲にデジタル庁関係分野・こども家庭庁関係分野を加えた地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会が新設されることとなりました。そして通常国会招集日の1月23日の衆議院本会議において委員会の設置が議決された後、初回の委員会において互選により初代の委員長に就任しました。岸田内閣において地方創生はデジタル田園都市国家構想と改められた上、2021年に設置されたデジタル庁に関する施策、そして今年4月に設置されたこども家庭庁に関する施策を取り扱うこととなり、外交・安全保障以外の岸田内閣におけるホットイシューを集めたような委員会となりました。委員会の名称がいささか長いのが玉に瑕ですが、「地こデジ特委」という5歳児のNHKキャラクターを連想させるかわいい略称が永田町・霞が関周辺の人口に膾炙しつつあり、それはそれで良かったのかなと思っています。

 今国会では、政府提出法案4本(「国家戦略特区法等改正案」、「マイナンバー法等改正案」、「デジタル規制改革推進一括法案」、「地方分権一括法案(第13次)」 )、委員長提案法案2本(「子育て関連給付金差押禁止法案」、「低所得者世帯給付金差押禁止法案」)の審議および採決を行い、また通常の一般質疑に加え、政府の「こども・子育て政策の強化について(試案)」公表を受けたこども政策に関する小倉將信こども政策大臣に対する質疑の開催(4月11日)、マイナンバー制度やマイナンバーカードに関する諸問題の発生を受けた、河野太郎デジタル大臣および加藤勝信厚生労働大臣に対する衆議院厚生労働委員会との連合審査会の開催(6月2日)など、時期に応じた充実した審議を行いました。常任委員会並みの審議を特別委員会が行ったということで、今般の特別委員会改革は成功と評してよいものと思います。

 一昨年秋より務めた衆議院厚生労働委員長、昨年の臨時国会における衆議院地方創生に関する特別委員長、そして今国会の地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長と、連続ほぼ丸二年にわたり委員長を務めましたが、ここまでとてもありがたいことに与野党の合意による委員会建てに終始し、委員長職権による委員会の開会や採決を未だに一度も経験せずにいることは、僥倖と言わざるを得ません。地方創生特別委員会の折よりご協力をいただいた坂本哲志・与党筆頭理事及び坂本祐之輔・野党筆頭理事をはじめとする理事・オブザーバーの皆さま、真摯に質疑を重ねてくださった委員の皆さま、対応いただいた岡田直樹地方創生担当相・河野太郎デジタル相・小倉將信こども相はじめとする政府の皆さま、そして運営のサポートをいただいた北村英隆さんをはじめとする委員部の皆さまや調査室の皆さま、二年間にわたり委員長車を担当していただいた和田憲明さんに、篤く御礼申し上げます。

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(写真:衆議院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会理事会メンバー。理事会開会前にお許しをいただいて撮影しました)

 委員長は衆議院の役員を構成する重要な職務であり、これを二年近くも務めることができたことは議員として誠に名誉であり、とてもありがたいことだと思っておりますが、一方で、質疑に立てない(厳密にはできないわけではないのですが、委員長としての公平性を保つため基本的には避けるべきこととされている)ため、いささかフラストレーションが溜まる面もないわけではありません。そろそろ委員席に戻らせていただいてもいいかなという気もします。なお常任委員会は衆議院厚生労働委員会に所属し、こちらは委員席から議論を拝聴していました。

 なお、政府はマイナンバー制度およびマイナンバーカード、マイナポータル等を通じて政府DXを進めていますが、さまざまなミス等が多数発覚しており物議をかもしています。もちろん誤りは無い方がよいのですから、デジタル庁に設置されたマイナンバー情報総点検本部においてしっかり確認をして再発防止策を講ずるべきです。ただ、だからといって例えばマイナンバー廃止しろとか中止しろとか紙の保険証でいいじゃないかというのも如何なものかとも感じます。ミスの原因をひとつひとつ確認すると、紙の保険証時代でも発生していたミスもありますし、書類にマイナンバーを記載してもらえなかったことにより手作業による紐づけ事務が発生してその誤りによるミスもありますし、純粋にプログラムのロジックのミスもあります。こうしたことを一つ一つ確認の上、着実に解決することが大切です。本件に関しては、与野党国対間の合意により7月に当委員会にて閉会中審査を行う見通しとなりました。引き続き委員長としての務めを誠実に果たしたいと考えます。

●異次元のこども政策を自民党側からみると

 今年年頭の岸田首相による記者会見で、異次元の少子化対策を行うことが表明されました。出生率が上がらないことに加え、出生数の減少も加速しており、これに2020年代中に歯止めをかけるのがラストチャンスと言われています。そのため政府においては小倉將信少子化担当相のもとで検討を行った上で3月末に「こども・子育て政策の強化について(試案) ~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」を公表し、これをもとに総理の下にこども未来戦略会議が設置され、6月13日に「『こども未来戦略方針』案~次元が異なる少子化対策の実現のための「こども未来戦略」の策定に向けて~」が公表されました。

 これらの検討の過程において、自民党「こども・若者」輝く未来創造本部で議論を重ね、3月27日に「『次元の異なる少子化対策』への挑戦に向けて(論点整理)」をとりまとめ、29日に小倉將信こども相に提出をしました。政府内の検討に加え、自民党の提言も踏まえて、政府の少子化対策は具体化されたわけです。私はこの本部の事務総長として、茂木敏充本部長・木原稔座長を支え、議論の進行や論点整理のとりまとめを行いました。また、こども・子育て政策をテーマとするNHKの「日曜討論」に自民党代表で出演させていただき、各党代表の方々と議論しました。これは私にとっては党の代表として地上波テレビに出演する初めての体験であり、とても勉強になりました。申し上げるべきことは言えたと思いましたが、愛想良くした方がいいかと思っていたら、視聴していた長女から「他の方の話を聞くときにニコニコしていると、あまり印象良くない」という指摘があり、今後は傾聴態度にも注意したいと思っています。難しいものです…。

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(写真:NHK「日曜討論」開始前の一コマ。隣は公明党の中野洋昌衆議院議員。撮影は国民民主党の伊藤たかえ参議院議員)

 今回の方針においては具体的な施策として、児童手当の所得制限の撤廃および高校卒業までの延長、出産・子育て応援交付金の制度化検討、出産育児一時金の増額実施と出産費用の保険適用の検討、地方自治体の負担軽減のためのこども医療費助成の国民健康保険の減額調整措置の廃止、高等教育費の負担軽減、「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設、男性育休取得率の引上げに向けた育児休業給付率の引き上げ、育児休業期間中の社会保険料の免除措置や周囲の社員への応援手当等に使える中小企業への助成強化、国民年金の1号被保険者の育児期間に係る保険料免除措置の創設の検討、こども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革などが挙げられています。

 個人的には、これまでの少子化対策では、やはりどうしても「基本的には結婚・育児は親が手間とお金を負担するもの」という前提のもと、所得が高くない世帯や共働き世帯で子育てをするのは大変だから、そういう人を対象にした制度を強化するという発想があったように感じています。だから児童手当に所得制限があったし、保育園は専業主婦(または主夫)の世帯では基本的に利用できませんでした。また自治体がこどもの医療費の無償化をすると補助金を減額してきたのです。しかし社会情勢は、例えば私が小学生や中学生だった1980年代や90年代と今では大きく変化しています。そもそも高齢化が進み医療介護の負担が国民負担率として現在の生産年齢人口にはかかっているため手取りはなかなか増えないし、ほぼ大学全入時代となった中で約8割が私立大学に進学することとなるため各世帯にかかる教育費負担は重くのしかかります。仮に専業主婦(または主夫)が家庭にいたとしても、昔なら同居の祖父母や近所の人に子どもを預けて買い物その他の用事をすることは珍しくなかった(ちなみに、私も幼稚園に通う前には、母が外出する際は隣のお家に預けられていた経験があります)ですが、今は隣の家に子どもを預けるなどということはなかなか困難でしょう。

 今回の「こども未来戦略方針」ではそうした変化を直視し、すべてのこどもと子育て世帯がユニバーサルに支援を受けられるようにしようという発想から立脚していることが、いわば「異次元」なのだと考えます。もちろん、早々とそうした観点に立って問題提起していた方々からすると「いまさら」とか「遅すぎる」といった批判があることは理解をしますが、とはいえ経済界や自民党内でも所得制限撤廃に納得していないような声もないわけではないことを知る身としては、岸田政権がこども家庭庁の設置やこども基本法の制定といった最近のこども政策の歩みを着実に踏襲し、そうした声を押し切って前に進めていることは、立派なことだと感じています。

 一方で、こども政策にしても社会保障政策にしても、基本的には政府の歳出はすなわち支援が必要な国民への給付であることを等閑視し、見かけ上の国民負担増を単純に避けるような記述があることは、個人的には残念な思いもあります。社会保障分野の歳出削減は、サービスの削減か自己負担増でしかありません。新たな施策を実現するために正直に国民に負担を広く求めることを避けるあまり、結果として病気やケガの患者さんや介護保険の受給者に少子化対策の負担を求めることになり得る危うい構造は、仮に私の想定が正しいのであれば、如何なものかとも思うところもあります。

 また、金銭的な支援のみならず、妊娠・出産から乳幼児期の子育て支援の充実に関する施策も含まれていますが、出産の保険適用は産婦人科医療機関の経営についての懸念の声がありますし、乳幼児健診は自治体間の差があります。また厚生労働省・こども家庭庁の複数の局にまたがるものとなり、しかし各家庭にとってはこれらをストレスなく一気通貫してサービスを受給できる必要があります。そうした問題意識から、田村憲久社会保障制度調査会長に相談の上、同調査会に「こどもまんなか保健医療の実現に関するPT」を設置していただくこととし、私が座長に就任しました。産婦人科医会および小児科医会にヒアリングの上、6月14日に「『こども未来戦略方針』の具体化に関する提言」をとりまとめ、政府に提出しました。引き続き、そうした観点からも、よりこどもがすくすく育つ「こどもまんなか社会」を目指して取り組みます。

●社会保障制度調査会と創薬力の強化育成に関するPT

 また党においては、社会保障制度調査会および全世代型社会保障に関する特命委員会(ともに田村憲久元厚労相が会長・委員長)の事務局長、および創薬力の強化育成に関するPT座長を務めました。全世代型社会保障に関する特命委員会では、昨年12月15日に取りまとめを行っており、今年はこの提言に則って法改正が行われました。また社会保障制度調査会では、今年年末に控える診療報酬・介護報酬・障害サービス報酬のトリプル改定を念頭に、昨今の物価やエネルギー価格の高騰、賃上げ方針による人件費の上昇等を適切に各報酬等に反映させるべく、関係団体の要望を受け、政府に対して申し入れを行いました。

 創薬力の強化育成に関するPTでは、ドラックロス(日本に新薬の承認申請がされないこと)やジェネリック医薬品の供給混乱等の現状を受け、これに対して精力的に検討を行い、政府に対して医薬品開発から上市・流通までを一貫して見渡して適切な対応を行う司令塔機能を設置することや、薬価制度の見直しなどを柱とする提言を岸田首相に提出しました。今後政府において、司令塔機能の実現に向け具体的な検討が行われるものと考えています。

 なおこの分野については、政府の「こども未来戦略方針」において、こども政策充実の財源に関する文脈で「全世代社会保障を構築するとの観点から歳出削減の取り組みを徹底する」と記載されています。こども政策の財源は重要ですし、全世代型社会保障の構築も必要ですから、記された内容に異存はありません。ただ同時に、先ほども記した通り、社会保障分野においては歳出削減すなわち給付減または自己負担増なので、具体的にどのような歳出削減を行うか、どのように国民の納得が得られるものとするか、十分な注目が必要だと考えています。個人的には、NHKの番組で発言しましたが、全世代型社会保障の趣旨は、これまでの社会保障がどうしても高齢者重視となっていたことを改め、世代を問わず(もちろん高齢者も含めて)支援が必要な方に対し、できるだけ幅広い方の負担により給付を届けるようにバランスを改めることが趣旨のはずであり、給付の充実を考慮せずに単純に国民負担増のみを問題視するような目先の声に迷わされることなく、きちんと議論を重ねていくことが重要だと考えます。

●その他さまざま

 自民党地方行政調査会(佐藤信秋会長)事務局長も務めています。今年は、政府の地方制度調査会の議論をフォローする形で活動しました。政府の調査会は昨年末に、地方議会に多様な人材が参画できるために、議会の位置づけの明確化等を含む提言を政府に提出しました。今国会では、党内での議論も踏まえ、その内容を含む地方自治法改正案が提出され、成立しました。なお「こども未来戦略方針」こども政策の予算規模に関して3兆円半ばとされていますが、これは公費ベースと説明されています。社会保障の歳出削減等は国費ベースで考えられるためその半分ぐらいという説明がされることがありますが、一方で残り半分は地方財源であるため、地方交付税交付金の追加的な手当についても考える必要があります。たまたまではありますが、こども政策についても、社会保障制度について、地方行政制度についても、党内組織の事務局長を務めていて全部に関わる立場であり、すべてを予算案としてまとめあげる必要があるため、本当に今年の年末の予算編成は頭が痛い問題となるものと思われます。

 6月に、口唇口蓋裂議員連盟の初会合を開きました。もともと細野豪志衆議院議員が長年にわたり取り組んでいた問題ですが、児童福祉法における育成医療の制度と治療の実際とが嚙み合っていないことについてその解決策を検討するために、自民党・公明党の枠組みで立ち上げたものであり、ご推薦をいただいて議連の会長を務めることとなりました。当事者の方々のお話をしっかり伺い、解決策を考えていきたいと考えています。

 今国会では、性的指向・ジェンダーアイデンティティの理解増進に関する法律が成立しました。この法律そのものに関しては、既にこのブログに思うところは何件も書いていますし、一方でほとんど今国会では関与していませんので特に追記することもありません。ただこれを巡るさまざまな方々の言動に関し、「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいていることを忘れてはいけない」という最近の某アイドルアニメにも引用されたセリフ(元はニーチェ「善悪の彼岸」の言葉)が思い出され、自らへの戒めとしてずっと頭の中を巡っていることは記しておきます。

●倉敷市・早島町に関して

 昨年12月に改正公職選挙法が施行され、岡山県の衆議院小選挙区の定数が1減となり、選挙区の区割りが変更になりました。私は引き続き自民党の新岡山第4選挙区支部長に選任されました。岡山県第4選挙区は、これまでの地域に加えて真備町・船穂町が含まれることとなり、シンプルに倉敷市および早島町が選挙区ということとなりました。4月に県議会議員選挙があったため、その終了を待ってから、真備町や船穂町での街頭演説や挨拶まわりなどを始めています。お見かけくださったら、お気軽にお声がけいただければ幸いです。

 特に真備町は平成30年豪雨災害における水害被災からもうすぐ5年を迎えるところ、7月には仮設住宅入居者がいなくなる見通しであることが発表され、また高梁川・小田川合流点の付替え工事も今年度中の完成を目指して急ピッチで進められています。ただ生活の再興はなお続ける必要があることに加え、5月には歩行者・自転車用として使われていた川辺橋の橋脚が傾き通行不能となる災害にも見舞われてしまいました。この件については、国土交通省などを後押しして、早期に自転車・歩行者がより安全に通行できる状態を目指すべく支援します。

 4月22日・23日には、倉敷アイビースクエアにてG7倉敷労働雇用大臣会合が開催され、その成果として「人への投資 G7倉敷労働雇用大臣宣言」が公表されました。誘致の段階から伊東香織倉敷市長らとともに厚生労働省などに働きかけておりましたので、無事に開催できてほっとしています。G7各国の方々に倉敷をPRする良い機会となりました。

 また水島港の整備促進、国道2号線の渋滞緩和、六間川・倉敷川の改修、早島駅の整備など、国が関与すべきインフラ整備についても、引き続き強力に進め、皆さまの暮らしと雇用を守ります。

●まとめ

 私ごとですが、妻はなこと4人のこども達も、それぞれ元気で仕事や学校などに励んでくれているのは、本当にありがたいことです。次女は音大に進学して声楽を学んでいますし、次男は中学校の吹奏楽部でトランペットを吹いています。ゴールデンウィークには、長男、次男、はなこと4人で尾瀬散策にでかけました。また母久美子も元気で過ごしてくれています。趣味として昨年から始めたシーバス釣りも、日程の隙間を見て、たまに夜中に岸壁に出かけています。まれに釣れると、うれしいものです。

 こうして仕事や家族に恵まれ、元気で過ごすことができているのも、ご縁がありご支援いただく皆さまのおかげであり、心から感謝申し上げます。もうしばらくして梅雨が明けると、夏祭りの季節。コロナ禍が過ぎて、今年はかなりの地域で再開されるものと思われます。多くの皆さまとお目にかかれることを、心から楽しみにしています。

 引き続き、ご指導ご鞭撻を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

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2023年6月15日 (木)

「こども未来戦略方針」の具体化に関する提言

 13日、政府において「こども未来戦略方針」が取りまとめられました。その中で「出産費用の保険適用の導入」や「乳幼児健診等の推進」といった出産・育児に関する施策の充実が多数含まれています。一方で、関係省庁はこども家庭庁、厚生労働省などにわかれ、どのように相互の連携を図り、出産前後の親の安心や産後の子の健康を守る一気通貫したサービスとするか議論が必要と考えました。そうした観点から、田村憲久・社会保障制度調査会長のご了解をいただき、調査会の下にさる6月6日にこどもまんなか保健医療の実現に関するPTを設置していただき、座長に就きました。

 同日の会合では、公益社団法人日本産婦人科医会および公益社団法人日本小児科医会よりヒアリングを行い、さまざまなご意見を承りましたが、そのことも踏まえ、政府においても連携して諸施策の具体化に当たること、また関係する団体等の意見をよく伺って具体化の検討を行うべき必要を感じたため、14日のPT会合で提言を取りまとめて政府に申し入れを行いました。下記にその内容を記します。

 なお通常国会の会期末が近いため、とりあえずはこれでひと段落となりますが、秋以降、具体的な施策を取り上げたり関係団体のヒアリングを行うなど、より安心して出産育児ができる環境づくりに向けて検討を進めます。

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(写真:第1回こどもまんなか保健医療PTの様子)


[PDF版]「こども未来戦略方針」の具体化に関する提言


令和5年6月14日

「こども未来戦略方針」の具体化に関する提言

自由民主党政務調査会
社会保障制度調査会
こどもまんなか保健医療の実現に関するプロジェクトチーム

 政府において取りまとめられた「こども未来戦略方針」においては、妊娠期から出産、乳幼児期、そして就学に至るまでの間の保健および医療に関し、

  • 出産・子育て応援交付金の制度化等の検討
  • 妊娠期からの伴走型相談支援の着実な実施
  • 出産育児一時金の大幅な引き上げ、低所得の妊婦に対する初回産科受診料の費用助成の実施
  • 出産費用(正常分娩)の保険適用の導入の検討
  • こども医療費助成の減額調整措置の廃止
  • 産後ケア事業の利用者負担軽減措置の実施および提供体制の確保
  • 乳幼児健診等の推進
  • 障害児、医療的ケア児の支援体制等の強化  等の方針が定められた。これらは、出産前後の親の安心や産後の子の健全な発育をサポートするために、いずれも重要な施策である。

 一方で、当プロジェクトチームにおいて(公社)日本産婦人科医会および(公社)日本小児科医会からヒアリングを行ったところ、特に出産費用の保険適用に向けては強い懸念が示されたこと、こどもの身体・心・社会(環境)のすべての面での育ちを一体として保障するための乳幼児健診の機会の充実等、さまざまな課題が残されていること等の現状が明らかにされた。

 当プロジェクトチームにおいては、親と子の出産と育ちを一気通貫してサポートし、より安心できるものとするという視点から、こうした課題の解消に向けて引き続き取り組むものであるが、政府においては関連する施策が多数に及び、担当も厚生労働省およびこども家庭庁の各局課にわたることとなるため、縦割りを排した検討体制をとることが望まれる。そこで下記の提言を行うこととするので、政府においてもこれを重く受け止め、実現されたい。

  1. 妊娠期から出産、乳幼児期を通じ就学までの間、それぞれの親と子を一気通貫に支援する観点から、関係部局が有機的に連携するための協力体制を構築し、諸施策の具体化にあたること。
  2. 施策の検討にあたっては、こども基本法および成育基本法の趣旨を十分に踏まえつつ、出産の保険適用など上述した点を含め関連する団体や地方公共団体等の意見や懸念を丁寧に受け止め、これを解消するように努めながら行うこと。
以上

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2023年6月14日 (水)

LGBT理解増進法案と地方自治体について

 昨日6月13日、「性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」(第211回国会衆法第13号、ただし提出時名称)(提出時法律案修正案)が、衆議院本会議において修正の上可決され、参議院に送付されました。

 本法案については、たびたび本ブログで私の思うところを記載しています(下記参考参照)。その上で、行橋市議会の小坪しんや先生が、ブログにおいて「【LGBT理解増進法】確実に起きる、地方行政の混乱(トイレ・入湯・教育)についての警鐘。国会による「地方自治軽視」に対する地方議員として異議。」) という記事で地方行政に関する懸念を表明され、「すべての国会議員の責任」についても触れておられますので、まさに一国会議員の立場において、私の思うところを記します。なお、当記事は(当ブログの他の記事もそうですが)、政府や自由民主党、もちろん衆議院等、私が所属したり関係したりする組織を代表するものではありませんので、ご留意願います。ただし、参考記事をご覧いただければわかるとおり、過去には自民党内のこの法案の立案過程の議論に参加しておりましたので、国会議員の中では多少詳しく経緯を承知している方だとは思います。

(参考:同法案に関連する当ブログにおける過去の記事一覧)
自民党性的指向・性自認に関する特命委員会「議論のとりまとめ」等について(2016.5.4)
自民党における性的指向・性自認の多様性に関する議論の経緯と法案の内容について(2021.6.1)
LGBT理解増進法案と銭湯について(2023.3.3)
LGBT理解増進法案をめぐる私見(2023.5.16)

 なお同法案では修正の結果、「性同一性」という言葉は「ジェンダーアイデンティティ」という言葉に全て置き換えられました。一方で、衆議院内閣委員会における6月9日の質疑において、繰り返し、いずれの言葉もGender Identityの訳語であり意味は異ならないという提案者の答弁があることから、どの言葉を用いても制限されないものと考えています。とりあえずこの記事においては法案文の引用も多いのでジェンダーアイデンティティという言葉を用いることとしますが、性同一性ないし性自認、Gender Identityのいずれと解していただいても、差し支えありません。

●大前提として…

 さて本論に入る前に、既に何度も記しているのですが、この法案の目的について確認しておきます。第一条において「この法律は(中略)、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進」について、基本理念や国等の役割を明らかにすること云々と書いてあります。この意味は、性別を区分する要素であるところの、性的指向やジェンダーアイデンティティに関し、それが多様であり得るという「知識」の理解の増進を目指すものであり、未だにしつこくメディアが記すような「LGBTなど性的少数者への理解を深める法案」ではありません。この表現は【誤り】です。法案が政府等に要請しようとしているのは、ゲイやレズビアンの方々もおられるし、身体的な性別と自らのアイデンティティとしての性別が異なる方々も社会にはおられる、という知識を普及させることなのです。

(参考報道例)
【速報】LGBT法案 衆院本会議で与党修正案を自公、維新、国民など賛成多数で可決(テレ朝ニュース)

 一方で、本法案は、ゲイやレズビアンの方、トランスジェンダーの方の意見や内心を理解しそれに従え、ということは誰にも求めていません。したがって、本法案への反対意見において「当事者の言うことを聞かなければならないような法案だから反対」という趣旨のものを散見しますが、誤解に基づく意見であるため正当な反論ではありません。

 なお、もちろんどなたにとっても、個々の当事者の方々と友人になったりして人間関係を築き理解を深めていくことは、一般論として人生をより豊かにすることではないかと個人的には思いますが、それこそ法律で規定するべきことではありません。

 また、差別に関しては第三条において基本理念として「性的指向及びジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならないものであるという認識の下に」と記されていますが、これは日本国憲法第十四条の規定を性的指向やジェンダーアイデンティティに関して確認したものに過ぎず、具体的にどういう行動が「差別」にあたるのかということも、日本国憲法同様、特段の規定もありません。したがって、この条文は具体的な対策を政府や地方自治体に求めているものではありません。

 さらにトイレや風呂等の区分についての問題や、同性婚やパートナーシップ制度、具体的な差別解消策等に関して政策的な議論はありますが、本法案はそうした議論の共通の土台を築くための知識の普及を図ることを意図したものであり、いずれの具体的なテーマに関する議論についても、この法案はそれらの是非等について日本国憲法以上に踏み込むものではありませんし、政府や地方自治体に対応を促すものでもありません。このこともぜひご認識をいただきたいと思います。

 なお「不当な差別」という表現に関し、「では正当な差別があるのか」というツッコミがたまにありますが、これは差別の不当さをより強調した表現に過ぎません。個人的には「馬から落馬」的な、日本語としてあまりスマートではない表現とは思いますが、しかしそのような表現があったとしても、羊や象、ラクダ、牛などから落馬することは実態として存在しないのと同様に、「不当な差別」という表記が法律にあったとしても、正当な差別も存在しません。

●法案が地方自治体に求めていること

 その前提において、第五条において、地方自治体に課している努力義務は、やはり「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策」の策定及び実施なのです。また具体的な施策例として、第十条において「知識の着実な普及、相談体制の整備その他の必要な施策」とされており、まさに「知識の普及」が主眼であることを大前提にした書きぶりとなっており、それ以上のものではありません。

 6月9日の衆議院内閣委員会における本法案に関する質疑では、差別解消条例など既存の条例との関係が質されていました。提案者は、地方自治法第十四条を念頭に答弁を繰り返しています。地方自治法第十四条は、地方自治体の条例制定権について定めたものであり、「地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる」とされています。この理解増進法案は、あくまでも地方自治体に対しては理解増進に関する努力義務しか課していません。したがって、法令違反になり得るのは、その自治体において性的指向・ジェンダーアイデンティティの多様性についての理解増進を「行わない」という条例をわざわざ作った場合くらいしか想定できず、しかも努力義務ですから、それすら違反とまで言い切れるかどうか、わかりません。

 また本法案は、同性婚やパートナーシップ制度、トイレや風呂等の区分、あるいは具体的な差別解消等について踏み込むものではないと先に記しました。その立場からすると、既存の自治体がこうした問題について既に条例や規則等を作っていたとしても、この法案が成立することによって変更を必要とするものでもありません。触れていないことに関しては、違反も何もありませんので。

●その上で、小坪先生のご懸念について

 ただ逆に申し上げれば、本法案は特に施設管理者としての地方自治体や事業主に対しては何ら具体的な影響も方針も与えるものではないものであり、しかし現場の施設において、例えばトランスジェンダーを自称する人が現れた際にどうするかといった課題に直面されているとすると、「どうしたらいいのかわからない!無責任!」というお話になることは十分理解できます。この点について現時点での思うところを記します。

 まずこうした話になると、公衆浴場・公衆トイレ・更衣室等といろいろなことについて一度に話が語られますが、実はこの中で、公衆浴場だけは法的位置づけがあるため対応は明白です。というのは、公衆浴場法という法律があり、厚生労働省が衛生等管理要領を設けており、おおむね七歳以上の男女を混浴させないことが規定され、答弁によって「この要領で言う男女とは、風紀の観点から混浴禁止を定めている趣旨から、身体的な特徴の性を持って判断する」「公衆浴場の営業者は、身体は男性、心は女性という方が女湯に入らないようにする必要がある」(令和5年3月29日衆議院内閣委員会堀場幸子委員質疑への厚生労働省佐々木政府参考人答弁)と述べています。重ねて記しますが、本法案はこうした内容に影響を与えるものではなく、政府方針は維持されることとなります。したがって、公共施設内等に浴場を有する地方自治体は、業として行う訳ではないため公衆浴場法の直接の対象ではありませんが、引き続きこの要領等に準じた形で管理をしていただくべきものと考えます。

 公衆トイレについては、法的な位置づけがなく、よって所管省庁も特にありません。また、実際問題として、街中の公共施設では概ね男女の区分を設けてありますが、例えば山岳における山小屋的なトイレでは、男女共用のトイレも今なお存在したりもします。また街中においても、見張り番や管理人が常駐する公衆トイレばかりでもありません。実務的にそうした点も考慮して検討されるべきであろうと思われます。一方で、トランスジェンダーの方も、手術を受けて性同一性障害特例法に基づく戸籍上の性の変更まで完了されている方から、「内心そう思っているがカミングアウトしていない」方まで幅があり、一概に対応を決めつけてしまうこと自体も困難です。これは、更衣室についても同様です。

 またトイレに話を戻すと、私自身が先日、コンビニの女性用トイレからどう見ても外見上は男性の方が出てくるのを目撃したこともあり、でももしかしたら急に腹痛に襲われてしかし男性用トイレがふさがっていてやむにやまれぬ行動だったかも知れず、こうした場合をそもそもムゲに制限してしまうような対応も、自分が急にお腹が痛くなった時のこと(人は時として急にお腹が痛くなるのです)まで考慮すると極めて悩ましいものがあり、要するに女性用トイレの管理のあり方は、ジェンダーアイデンティティの問題にとどまるものではなく、かつそもそも一定の利用者の自律性や運用の柔軟さも求められるものともいえるでしょう。

●鍵になるのは…

 そうした中で本法案において鍵になるのは、第八条に定める政府の「基本計画」と、第九条の「学術研究」、そして追加された第十二条に定める「指針」であろうと考えます。もちろん、いずれも他条文と同様に「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策」の基本計画やそのために必要な学術研究、またこの法案に定める措置の運用に必要な指針、ということになりますが、現場で必要なことなのであれば、関係する内容について研究を行い、基本計画に含めることは十分考え得ることです。

 本来、性的指向及びジェンダーアイデンティティについての理解増進を図るにあたり、或いは具体的にどのような内容の理解を求めていくかについては、提案者が具体的に提示をしてい必要があるものと考えます。自民党ではQ&Aを数年前から用意しています。これはあくまでも一政党の中で検討されたものに過ぎませんし、今課題となっている公衆トイレ等について直接的な回答があるわけでもありませんが、自民党としてはこういう内容をイメージしているというものです。もし理解増進のお役に立てるのであれば、自民党の各級議員がこのQ&Aをベースに講演活動をして歩くことも可能でしょう。そして本法案が成立すれば、今後は政府において、学術研究の実施、基本方針や指針の策定を行うこととなりますが、自民党はこの内容をベースとしつつ、足らざる点をさらに議論して補っていくこととされるのではないかと考えます(なお個人的には、他の政党はどのような内容を念頭に「理解増進法案」を提出されたのか興味深いものと思っていますが、私の知る限りでは特段示されたものはありません。いささか無責任ではないかという気もします)。

 いずれにせよ今後仮に本法案が成立した際、それを受けて地方自治体において具体的なアクションを検討するにあたっては、まずは政府において今後学術研究や、基本方針および指針の策定が行われることを踏まえ、その策定を待ってからご検討いただいてもよいのではないかと考えます。むしろどのような内容を基本方針や指針に含めるべきか、地方自治体の立場から政府にご提言いただいてもよいかと思いますし、個別の自治体や地方六団体等から、それらの検討の場に地方自治体代表を含めるべき旨の申し入れを政府に行われても良いでしょう。もちろん地方自治法第十四条や第十五条に基づく条例制定権や規則制定権は自治体にありますし、地方の実情に応じた対応を妨げるものではありませんが、あまり各自治体よりに対応がテンデンバラバラというのも、住民にとって困ることにもなるものとも思います。そうした事態を防ぐためには、まず政府の基本計画や指針等について地方自治体その他の関係団体も参加して検討を行い、その上で定められた基本計画や指針に則って、各自治体の条例や規則、マニュアル等を整備するような手順で進められると、スムーズでしょう。

●補遺

 なお、小坪先生のブログでは、骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2023)原案との整合について触れられていますが、本法案は地方自治体の計画策定については規定しておらず、該当しません。確かに国の法律で、地方自治体に計画策定を求めるものが多すぎるため現在その整理を行っているのは事実です。例えば、昨年制定されたこども基本法では、都道府県および市町村にこども計画を定めるよう努力義務を課していますが、その際別の法律(「子ども・若者育成支援推進法」「子どもの貧困対策の推進に関する法律」等)に定める計画と一体にしてよいこととしており、事務の合理化を図っています。また政府においても見直しが行われており、そうした文脈の中でこの骨太の方針の規定があるものとご理解いただければ幸いです。また委員会審議のあり方については、私自身が他委員会の委員長を務めているものとして口を出すことは厳に慎むべきものと考えます。また、財源については地方自治体に具体的に何か義務付けが行われれば別途措置されるべきこととは思いますが、現段階で具体的に何か施設改修を求めるものでもない以上、法案に触れていないことをもって必ずしも不適切であるとは思いません。ただし当然ながら、今後必要に応じて議論されるべきこととも考えます。

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