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2022年12月

2022年12月31日 (土)

令和四年末のご挨拶

 令和四年の年末を迎えました。今年も多くの皆さまのお力とお気持ちにより、平穏に年末を迎えることが出来ました。心から感謝申し上げます。今年もさまざまなことがありました。ここで振り返りを記したいと思います。ただし6月までの前半は「第208回国会閉会にあたり」に記しましたので、それ以降の出来事について述べます。

●参議院通常選挙とその後

 この夏には参議院選挙がありました。6月22日に公示され、7月10日が投票日でした。岡山県選挙区では小野田紀美候補の支援を行い、比例区では自民党の各候補や公明党の谷合正明候補の支援にあたりました。残念ながら当選できなかった候補者もおられましたが、概ねありがたい結果をいただきました。またその中で、自見はなこも二度目の当選をさせていただきました。候補者の夫として、全国比例区の選挙をはじめて手伝いましたが、同じ国政選挙でも、その大変さはまた衆議院小選挙区とは違うものだとつくづく感じました。特に、全国比例区で候補者名を投票していただくのはなかなか難しいものです。仮に衆参ダブル選挙などとなると、有権者の方々の混乱は相当なものとなるでしょう。

 またこの選挙の結果、自民党としては63議席を獲得し、与党としても一定のご支持をいただいたものと受け止めています。一方で選挙戦終盤に安倍晋三元総理が遭難され、その後の政権運営に暗い影を落とすこととなりました。昨年の発足以来岸田文雄政権は高い支持をいただいていましたが、これを契機に国葬の決定や旧統一教会の問題に焦点があたり、秋の臨時国会ではさまざまな苦境に直面することとなりました。たった数発の銃弾の影響の大きさは、誠に驚くべきものでした。功罪さまざまな見方はあるでしょうが、故安倍晋三元総理の存在感がそれだけ大きかったということでしょう。その際にも私なりに追悼の言葉を記しましたが、改めて、心からの追悼の想いを表します。

●地方創生に関する特別委員長として

 第210回臨時国会は10月3日に召集されました。この日の本会議において私は衆議院厚生労働委員長を辞任し、その後の衆議院地方創生に関する特別委員会において、同委員会の委員長に選任されました。初代委員長の鳩山邦夫先生をはじめ、特別委員長は閣僚経験者が就任する例が多く、私にとっては誠にありがたい人事だと思っています。これまで厚生労働分野の職務が多かったですが、地方創生もつまるところ人口減少対策がその本質であり、社会保障政策と同根のものと感じています。とはいえ、臨時国会では一回担当大臣に対する所信質疑を行いましたが、厚生労働委員会とはまた異なる省庁に対する質疑が多く、新鮮な気持ちで委員長を務めました。

 なお一部報道によると来年の通常国会から地方創生に関する特別委員会は所管事項の幅を増やされる検討が行われているようです。現時点では私のもとには確たる情報はありません。議院運営委員会等で議論されているものと思われますが、何らかの決定が行われればそれに従うことになろうと考えています。

●国民皆保険の限界

 自民党においては、「こども・若者」輝く未来創造本部事務総長、社会保障制度調査会事務局長、地方制度調査会事務局長、全世代型社会保障に関する特命委員会事務局長、創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム座長などを務めました。それぞれの会議での提言とは、それぞれ「医薬品産業を通じた世界のヘルスケア分野の牽引に向けた提言」、「薬価制度の抜本改革に関する提言・所見」、「こども関係予算の拡充に関する決議」、「全世代型社会保障に関する特命委員会取りまとめ」などに記していますので、そちらをご覧ください。

 特に今年後半は、日本が誇る「国民皆保険」の限界を感じることが多かったです。例えば先日、小児科のガンを専門とする医師の方の悩みについてのお話を耳にしました。欧米であればそのガンに対する薬が承認・販売されており救えるはずなのに、日本では未承認であり個人輸入も可能ですが大金がかかり家庭の事情で困難なため、子どもの患者さんに余命宣告をしなければならない例があるそうです。以前もドラッグラグという言葉がありましたが、今はドラッグロスと呼ばれています。単に審査に時間がかかるということではなく、そもそも日本では革新的な医薬品であってもどんどん薬価を下げられる仕組みなため、製薬会社が日本における治験や承認申請を後回しにしたり、そもそも行わなかったりという事象が発生しており、それが子どもたちの命の問題にまでなっているということです。日本の社会保障行政の中で、長年にわたり医薬品の価格を下げることで、他の分野の財源に回すことが慣例になっていましたが、2016年に行われた「薬価制度の抜本改革」(という名のさらなる薬価切り下げの加速となる制度改正)と、今年の物価やエネルギー価格上昇等のダブルパンチがあり、患者の命に関わる問題となっているのです(このあたりの詳細は、「薬価制度の抜本改革に関する提言・所見」の所見部分にデータと共に記述しています)。

 他方「かかりつけ医」についての議論も、もちろん医療へのアクセスをより改善することは検討されるべきとは思いますが、その背景にさらなるコスト削減を求めようとする意図が政府の一部に見えています。一見無駄なものについてコスト削減をすべきという議論はもちろん成り立ちますが、これが行き過ぎると、当然に質が下がり、特に緊急事態の対応能力が落ちることになります。そもそも医療とは、多くの人の健康に関する緊急対応を行うものなのであって、日常をちゃんと過ごせば何事もなく上手くいくからそれで大丈夫、という考え方とは相容れません。そのことが露呈したのが今回のコロナ禍であったと私は個人的に考えています。普段からいざという時の備えをしておく余裕がなければ、需要が急拡大した際に限界のある対応しかできないのは当然のことです。にもかかわらず、逆にコロナ禍を奇価としてさらなる効率化を唱える向きがあるのは、本当に筋が悪いことです。「かかりつけ医」についても、正論風を装ってその趣旨で論じられることがあることには、引き続き注意を要します。特に、コストの話をしない議論は疑ってかかる必要があります。

 もちろん、最終的には医療をはじめとする社会保障も、また今年話題になった安全保障も、税や保険料や自己負担で賄われており、それを支える経済力が社会にあってのことです。逆に言えば、経済力の範囲でしか社会保障も安全保障もできないのが現実であり、いずれも今年はその限界に直面していたことが明らかになったわけですが、そこにどのようにメリハリをつける(これはすなわち、どこかを見限るという辛い決定でもあります)のか、或いはご負担をさらにお願いすべきなのか、おそらくその両方がいずれ必要なのだろうと考えています。なお単に経済力の問題だけではなく、長寿化・少子化の影響が医療や介護の提供体制そのものにも及びつつあることも今年は感じる機会がありました。そうしたことも考慮しなければなりません。

 日本は世界に冠たる長寿国で、我が国経済は黙々とその中で医療や介護が必要となった方々を支え続けてきています。これは誇るべきことであり、社会の安定に絶大な寄与があると考えます。しかしその構造も限界に達しつつあるようにも感じられてしまう今日この頃でもあります。まずは少なくともその構造に自覚的になることが来年には求められるものと考えます。

●こども家庭庁の設置準備など

 通常国会にてこども家庭庁設置法案やこども基本法を成立させましたので、秋以降は基本的には政府の方で来年4月のこども家庭庁の設置に向けてその準備を行うフェーズでした。そのため「こども・若者」輝く未来創造本部は、予算編成にあたり決議および政府への要望を行った程度の活動に留まりました。しかし来年は「こども大綱」の策定や、「骨太の方針」におけるこども予算倍増の道筋明確化をはじめ、今後のこども政策の方向を決める大事な年になります。党においても、通常国会の開会にあわせ、有識者ヒアリングなどの勉強からスタートを切りたいと考えています。

 コロナ対策も4年目にさしかかり、政策的には来年は転換点を迎えることでしょう。ただ海外、特に中国の様子は要注意であり、これまでのゼロコロナ政策が奏功していた分、緩み始めた瞬間に、免疫保持者が少ないという点で今後は裏目に出てしまうこととなります。その中で春節の中国における観光シーズンが訪れます。もちろん関連産業にとっては心待ちの商機ですが、日本の医療が観光客で逼迫することも併せて想定しなければなりません。厚生労働省において分類変更の議論はされているようですが、どんな分類になっても病気が無くなるわけではないことには留意が必要です。高山義浩先生による「中国のゼロコロナ撤回と水際対策」をぜひご参照ください。

 令和5年度には、平成30年豪雨災害における真備町の被害の再発防止のための高梁川小田川合流点の付替え工事が完成する見通しです。その対岸になる水江地区などの堤防強化も、水島港の航路浚渫などと合わせ令和4年度補正予算において措置されました。また国道2号線岡山―倉敷間の改良も着実に進捗しています。また早島駅建替えなど整備事業については中川早島町長からもご相談をいただき、連携をとって実現に動いています。こうした地域に重要なインフラ整備についても、国が行うべき事業について今年も着実に推進できるよう努めます。

●私ごとについて

 さて私ごとになりますが、昨年12月に自見はなこと入籍して丸一年が経ちました。おかげさまで、こどもたちとも一緒に、日々仲良く元気に過ごしています。ただコロナ禍のためなかなかイベントもできずにいたのですが、先日東京大神宮において神前式を挙げ、ごく近い方々のみのささやかな披露宴を行いました。幸い元気に過ごしている母久美子にも、また自見家のご両親にも、こうした姿を見せることができて本当によかったと思っています。

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(画像:両家の親とともに。私が手に持っているのは、龍太郎のテレホンカードです)

 こども達もそれぞれ元気にすごしています。次女は目指していた音楽大学への進学が決まりました。親としてはまずは一安心ですが、次男が来年受験なので、次はそちらが順調であることを祈っています。先日長女・長男も含めて皆一緒にお食事しました。それぞれに、元気で過ごしてくれているのは、ありがたいことです。

 今年は個人的には大きな転機がありました。今まで山歩きを趣味としてきたのですが、なかなか休みがなく山に出かける機会が作れない中、8月に東京湾でボートシーバス釣りに連れて行ってもらったことをきっかけに、海釣りにチャレンジしてみようと思い立ちました。釣り道具一式買い求め、秋以降、仕事が済んだ夜中に高梁川河口付近や玉島の岸壁あたりでルアーを投げています。魚はごく稀に釣れる程度(今年の釣果はシーバス3匹でした)ですが、あれこれ考えながらキャストして、ルアーがプリプリ泳いで戻ってくるのを時々楽しんでいます。どこかの海岸か釣具店で私を見かけるかもしれませんが、あまり驚かないでください(汗。

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(写真:魚を釣ってくれたルアー君たち。私の行くポイントや時間帯ではクリアカラーが強い模様)

 改めて、こうして年末を迎えることができて、私とこれまでご縁をいただいた皆さまのおかげと深く感謝申し上げます。来年はうさぎ年となりますが、ご支援をいただく皆さまへの感謝を胸に刻み、さらに飛躍できるよう努力する所存です。引き続きのご指導ご鞭撻のほどをお願い申し上げますとともに、皆さまにとりまして飛躍発展の年となりますことを心からお祈り申し上げます。

 どうぞ良い年をお迎えください。

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2022年12月28日 (水)

お知らせ

 令和4年12月27日発売の週刊新潮の誌面において、私と家族に関して公知の事実と異なる記述により名誉を毀損される部分がありました。この件については、現在、弁護士を通じて刑事告訴を視野に警察と相談しておりますので、お知らせいたします。

 これまでも、私事に関し私の本意や事実と離れた内容を含む報道はありましたが、国会議員という公職を預かるものとして、国民の知る権利や報道および言論の自由の重要性を重く受け止める立場から、謙抑的な対応に努めていました。しかしながら今回は、事実と異なる記述により私のみならず未成年者を含む家族まで傷つけうるものであるため、このような対応をとることとしたものです。

 報道各社には、今後とも取材により丁寧に確認した事実に基づく報道がされることを期待いたします。

 なお同誌に対しては、自見はなこからも記事の撤回と謝罪を求める通知書が発出されていることを申し添えます。

橋本岳

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2022年12月23日 (金)

全世代型社会保障に関する特命委員会 取りまとめ

 さる12月13日、橋本がくが事務局長を務める自民党全世代型社会保障に関する特命委員会において、それまでの議論のとりまとめを行いました。この「取りまとめ」は、自民党政調審議会にお諮りした上で、12月15日に田村憲久委員長とともに総理官邸において岸田文雄総理に面会し、党からの提言として申し入れを行いました。内容としては、こども・子育て、医療、介護など日本における社会保障制度の課題に対し、特命委員会にて議論を行った結果として当面とるべき施策を整理したものであり、政府による来年以降の社会保障制度にまつわる具体的な法改正等の根拠となるものです。ぜひご覧ください。

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 なおこの申し入れを受け、政府では12月16日に全世代型社会保障構築会議の報告書を取りまとめていますので、併せてご参照ください。



全世代型社会保障に関する特命委員会 取りまとめ

令和4年12月13日
自由民主党政務調査会
全世代型社会保障に関する特命委員会

1.検討の経緯

 本「全世代型社会保障に関する特命委員会」は、わが国において少子化・超高齢化が進展し、社会保障給付費が急増する中、未来を見据えて、わが国の社会保障制度を維持するとともに、「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」という従来の形から、「全ての世代が相互に支え合う仕組み」への転換を図るために、抜本的な議論を行い、政府に対して必要な改革を提言するために設けられたものである。

 本年9月、総理を本部長とする全世代型社会保障構築本部において、総理から、全世代型の社会保障制度を構築するための議論を加速化していくため、「子ども・子育て支援の充実」「医療・介護制度の改革」「働き方に中立的な社会保障制度等の構築」といった3つのテーマを中心に、年末に向けて議論を進めるよう指示があった。

 政府においては、この本部の下に設けられた全世代型社会保障構築会議において、これら3つのテーマを中心に議論が進められており、本年の年末までに報告を取りまとめる予定となっている。

 わが党においても、全5回、本特命委員会を開催し、政府から、全世代型社会保障構築会議の議論についてヒアリングを行うとともに、より根本的かつ中長期的な観点から、わが国のあるべき社会保障制度の姿とその実現のために必要となる制度の見直しの方向性について、議論を重ねてきた。

 これまでの議論に基づいて、政府の全世代型社会保障構築会議・同本部で取りまとめられる報告への反映を含め、政府が今後取り組むべき内容について整理した。


2.全世代型社会保障に関する基本的な考え方

 超高齢化とかつてない少子化が進む中で、全ての世代がお互いに支え合い、安心できる「全世代型社会保障」を実現するため、これまでわが党は政府と一体となって取り組んできた。

 わが国の後期高齢者の人口は、2025年までに全ての団塊の世代が後期高齢者となることから、現在、急増する時期にある。超高齢化に対応するため、来年通常国会に提出が予定されている医療・介護関連法案は、当面の対応として必要とは言えるものの、これだけでは、「全世代型社会保障」が実現されるとは言い難い。

 目下、最大の課題は人口の減少であり、少子化である。少子化対策は、これからの社会保障政策の「一丁目一番地」として取り組むべきものである。今、我々に求められているのは、少子化対策の抜本的な強化に思い切って舵を切り、具体的な政策体系を提示するとともに、そのための安定的な財源を確保することである。あわせて、当面は不可避と考えられる人口減少社会に対応した施策を講じていくことも必要である。特に、進展する高齢化に加え医療の高度化について医療保険としてどのように受け止めるかが大きな課題となっている。医療・介護を含む各制度を持続可能なものにして、世界に冠たる国民皆保険制度をはじめとした社会保障制度を次の世代に引き継いでいくことが、わが党の責務である。

 そのために、本特命委員会としても議論を続け、来年度の骨太方針に向けて、更なる改革の具体化に取り組んでいかなければならない。


3.各分野の具体的提言

(1)少子化対策

 コロナ禍の中で、婚姻件数が2年間で約10万組減少している。また、令和3年の出生数は81.2万人まで急減し、将来人口推計の推計値よりも7年程度少子化が前倒しで加速している。今後も高齢者の増加が続く中で、医療や介護をはじめわが国の社会保障制度を維持・発展させる観点からも、現役世代の減少は大きな課題である。こうした中で、少子化問題は、諸外国において国家戦略上の最重要課題として認識されており、わが国においても、少子化の克服を最優先の国家的課題として位置づけ、取り組みを進めなければならない。

 少子化の背景には、経済的な不安定さ、男女の仕事と子育ての両立の難しさ、子育て中の孤立感や負担感など、結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が複雑に絡み合っている。第二次安倍政権以降、わが党としては、消費税率引上げなどの財源を活用して、待機児童の解消や、幼児教育・保育の無償化、高等教育の負担軽減、不妊治療の保険適用など、様々な取り組みを行ってきたが、少子化のトレンドを反転させるまでには至っていない。

 現下の出生数急減などの危機的状況を踏まえれば、抜本的・総合的な少子化対策を改めて構築し、強力に推進していく必要がある。その中で、特に、現行制度で支援が比較的手薄な0~2歳児への支援に速やかに着手すべきである。
そのため、まずは、令和4年度第二次補正予算で措置した経済的支援と伴走型相談支援の一体的実施について、あらゆる方策により、今後の安定的な財源を確保しつつ、継続的かつ着実に実施していくべきである。これにより、来年4月に発足するこども家庭庁の下、全ての妊産婦や子育て世帯に対して、寄り添いながら相談に応じることのできる体制を全ての地域で構築しながら、特に低年齢児を育てる世帯への経済的な支援の充実を図るべきである。また、出産育児一時金については、大幅な増額及び見える化が必要であり、それにより、子育て世帯が真にメリットを感じることができるようにすべきである。

 更に、仕事と子育ての両立支援も少子化対策にとって喫緊の課題である。労働力人口が減少するわが国においては、仕事か子育てかのどちらかしか選択できない状況に陥ることのないよう、制度面においても対応が必要である。このため、希望する方が時短勤務を選択しやすくするための給付の創設や、雇用のセーフティネットや育児休業給付の対象外となっている短時間労働者への支援、その他の育児休業給付の対象外となっている者への育児期間中の給付の創設などの施策を早急に具体化させるべきである。

 こうした支援策の具体化により、大幅に子育て支援施策を充実させることとあわせて、国民各層の理解を得ながら、安定財源について、社会全体での費用負担の在り方を含め幅広く検討を進めなければならない。安定的な財源の確保にあたっては、企業を含め社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で、広く負担していく新たな枠組みについても検討すべきである。

 主に0~2歳児に焦点を当てた切れ目のない包括的支援を早期に構築した後に、児童手当の拡充などについて恒久的な財源とあわせて検討を行うべきである。

 また、希望する全ての若者が安心して結婚・出産・子育てという選択に踏み出すためには、経済的支援だけでなく、個々人が将来の展望を持てる安定した雇用を確保することが不可欠である。こうした観点から、まずは、継続的な賃上げ、可処分所得の増加、消費の向上という好循環の実現が重要であり、更に、少子化や婚姻数の減少の根本的要因ともいえる正規・非正規の格差の是正をはじめ、雇用の在り方の見直しに取り組んでいくべきである。あわせて、医療的ケア児を含む障害児に対する支援に積極的に取り組むべきである。

(2)医療

 わが国の世界に冠たる国民皆保険を今後も堅持していくべきである。その中で、医療費の増加に伴い、これまでも国民全体で負担すべき費用が年々上昇している。高齢者にも保険料を通じてご負担を頂いてきたところであるが、同時に現役世代が支払う高齢者を支えるための支援金もそれ以上に上昇してきた。さらに、団塊の世代が後期高齢者となることから、今後3年間、わが国の後期高齢者の人口の急増が見込まれている。これに伴い、医療保険においては、急増する高齢者の医療費を支えられるよう、中間層にも配慮しつつ、高齢者か現役世代かを問わず、負担能力に応じて、全ての世代で支えあう仕組みの構築が急務である。

 こうした観点から、出産育児一時金の増額とともに、それを医療保険の加入者全体で支え合う仕組みの導入に取り組む必要がある。
また、制度導入以降、現役世代の負担が大きく増加している後期高齢者医療制度への支援金の仕組みを、後期高齢者の保険料と現役世代1人当たりの支援金の伸び率が同じになるよう見直し、現役世代の保険料負担上昇を抑制する。併せて、後期高齢者の保険料負担を見直し、賦課限度額や所得に係る保険料率の引き上げを行うべきである。

 健康保険組合については、保険料率に幅がある状況である。被用者保険者間の格差是正の観点から、健康保険組合間の保険料負担を公平にするため、現在、加入者数に応じた調整を一律に実施している前期高齢者の医療費負担について、加入者数に応じた調整に加え、報酬水準に応じた調整の導入に取り組む必要がある。ただし、報酬調整の導入は、あくまでも部分的なものとし、その範囲については、1/3程度に止めるべきである。今回の報酬調整の導入により、協会けんぽは一時的に負担増となっているが、構造的には負担減につながるものと考えられる。
高齢者医療制度の見直しに伴い、後期高齢者の保険料については、激変緩和の観点から配慮が必要と考えられる。具体的には、


  • 出産育児一時金を全世代で支え合う仕組みについては、令和6年度、7年度においては、出産育児一時金総額の半分について、支え合う仕組みとし、令和8年度から全額を対象とする。
  • 後期高齢者の賦課限度額の引上げ(対象者1%程度)にあたっては、令和6年度に73万円、令和7年度に80万円と段階的に引き上げる。
  • 後期高齢者の所得割の引上げにあたっては、収入上位約3割となる年収211万円までの方々について、令和6年度は制度改革の影響による引上げが生じないように、経過措置を実施すべきである。

 また、後期高齢者の保険料負担割合の見直しと前期高齢者納付金の報酬調整の導入にあたっては、報酬水準の低い健康保険組合は負担軽減となるが、さらに、公費負担減を、企業が賃上げ努力を行った企業のことにより納付金が増加する健康保険組合や高齢者医療の支援負担が重い健康保険組合などへの支援に充てて、現役世代、特に健康保険組合が全体として負担軽減となるような見直しとすべきである。あわせて、保険者機能が発揮される取り組みも検討するとともに、医療費適正化や健康寿命延伸に向けて取り組むべきである。

 今後、更なる高齢者の増加と生産年齢人口の急減が見込まれる中で、地域によって大きく異なる人口構造の変化に対応し、地域包括ケアの中で、地域のそれぞれの医療機関が地域の実情に応じ、その機能に応じたや専門性に応じて連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮することで、国民が必要とする医療を受けることができるよう、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う必要がある。その際、かかりつけ医機能を有する医療機関を選択することはあくまでも患者の選択であり、義務ではないこと、さらに、わが国医療のフリーアクセスを守り、必要なときに迅速には必要な医療を受けられる原則は変わらないことを前提とすべきである。また、まずは高齢化に医療現場のエビデンスを踏まえて対応することを主眼に置くが、こどもや中高年について、かかりつけ医機能の向上に向けて医師の能力をより高めていくことも引き続き議論が必要である。

 なお、新型コロナ感染症が拡大した当初における医療機関の発熱患者への対応をもって、かかりつけ医機能の制度整備が必要とする趣旨の指摘が政府作成資料で見受けられるが、感染症有事においては今般成立した改正感染症法に基づき予め都道府県との間で協定を締結した医療機関がその内容に沿って対応することとなっており、平時におけるかかりつけ医の問題は全く別の問題であることを政府においては認識すべきである。

 これらの他こうした議論を反映して、全世代型社会保障構築会議の議論をまとめ、それらに基づいて、引き続き法案提出に向けて取り組んでいくべきである。

(3)介護

 介護保険制度は、過去20年あまりで費用が約4倍に拡大している。今後、2025年には団塊の世代が全員75歳以上となり、更に要介護者が約半数を占める85歳以上人口の急増も見込まれる。こうした中で、令和6年度からの次期計画期間においても、持続可能な運営が実現するように、来年の骨太方針2023に向けて議論を進めるべきである。

 また、更なる高齢化に合わせて、サービス提供体制の充実も求められる。高齢者ができる限り住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、地域包括ケアシステムの深化・推進を図ることが必要であり、とりわけ、中重度の要介護者になっても住み慣れた地域で単身・独居や高齢者のみの世帯の増加、介護ニーズが急増する都市部の状況等を踏まえ、それぞれの地域社会の実情にあわせた柔軟なサービスの提供が求められる。その中で、中重度の要介護者を含め在宅でも必要な介護サービスを利用しながら生活し続けられるようにすることが重要であり、複合的な在宅サービス等の普及や医療・介護の連携の推進を一層図るべきである。

 今後さらに増加する認知症の方やその家族を含めた包括的な支援を図るため、相談支援や関係者との連絡調整を担う地域包括支援センターの体制整備が必要である。

 さらに、今後、生産年齢人口の急減が見込まれる中で、将来にわたって安定的な介護サービスの提供体制を確保するため、介護現場の生産性の向上を推進するとともに、介護職員の働く環境改善に総合的に取り組むべきである。

(4)その他

 その他の課題についても、全世代型社会保障構築会議の議論と並行して、本特命委員会においても議論を進めていく。


4.おわりに

 新型コロナの中でも、高齢化は一段と進み、少子化は更に危機的状況となっている。これは国家にとっての「静かな有事」であり、国の安全保障と並んで政権として最優先で取り組むべき課題である。本特命委員会は、引き続き、この長年の課題に答えを出し、将来に希望と安心を与えるべく、議論の先頭に立っていく。

(以上)

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2022年12月14日 (水)

こども関係予算の拡充に関する決議

 さる11月8日に、橋本がくが事務総長を務めている自由民主党「こども・若者」輝く未来実現会議(木原稔座長)において、「こども関係予算の拡充に関する決議」をとりまとめ、政調審議会にてご了承を得た上で、11月小倉将信・こども政策担当大臣に申し入れを行いました。また12月14日に、岸田文雄総理大臣にも同様の申し入れを行いました。

 11月時点ではまだすこし漠然としていましたが、現在は予算編成も徐々に大詰めが近づき、今年度補正予算で来年前半の手当てがされた出産子育て応援交付金の後半部分や、さまざまなこども子育て関係補助等の対象拡大(所得制限の緩和)などの実現に焦点をあて、役所と調整をおこなっています。「こどもまんなか」社会の実現に向け、引き続き努力します。

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(図:小倉將信こども政策担当大臣・岸田文雄総理大臣申し入れ)



令和4年11月8日

こども関係予算の拡充に関する決議

自由民主党「こども・若者」輝く未来創造本部
「こども・若者」輝く未来実現会議

 令和5年4月のこども家庭庁設立を控え、令和5年度のこども関連予算は、単に既存関連予算を集約するだけに留まってはならない。こども基本法の目的として掲げられている「全てのこどもが、将来にわたって幸福な生活が送ることができる社会の実現」を目指すこども家庭庁として、期待される船出にふさわしい内容とする必要がある。

 また現在、将来的な「こども予算の倍増」を掲げる岸田政権として、来年度の骨太の方針において財源も含めたその道筋を示すべく、全世代型社会保障構築会議において検討が進められているところである。令和5年度当初予算において、より充実した額を積み、より前倒しして必要な事業を実施することは、議論を積極的に後押ししまた国民にそのメリットを示すことに繋がるため、極めて重要である。

 仮に、こども関連予算の規模が既存関連予算の範囲に収まるようなことがあれば、「仏作って魂入れず」という非難にさらされることは免れ得ず、期待を込めてこども家庭庁の出発を見守る国民の失望や落胆を買うこととなる。そうした事態は避けなければならない。
以上を踏まえ、令和5年度本予算の編成にあたり、下記の課題を踏まえつつ、政府においてこども関係予算の拡充に向けて全力を尽くすよう求める。

  1. 1.こどもの居場所づくり支援、地域におけるいじめ防止対策の推進等、こども家庭庁新設に係る事項要求事項の充実
  2. 2.結婚支援、妊娠・出産に伴う経済的負担の軽減、未就園児を含む就学前のこどもの育ちを支援する取組等、結婚・妊娠・出産・子育て期にわたる切れ目ない支援の充実
  3. 3.こどもの貧困、ひとり親家庭、障害児、若年妊婦、ヤングケアラー、社会的養護経験者等、多様できめ細かい支援ニーズへの対応
  4. 4.保育の質の向上など「0.3兆円超メニュー」への対応
以上

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