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2022年9月14日 (水)

医薬品産業を通じた世界のヘルスケア分野の牽引に向けた提言

 令和4年9月9日、橋本がくが座長を務める、自民党創薬力の強化育成に関するPTの提言をとりまとめ、加藤勝信厚生労働大臣に提出しました。このPTの提言としては昨年5月に行った「医薬品産業エコシステムと医薬安全保障の確立 ~医薬品産業ビジョンへの提言~」に続く2回目となります。日本は世界でも限られた創薬力を持つ国の一つですが、他方で度重なる薬価制度見直しと薬価改定により医薬品市場の縮小があり、結果としてドラッグラグの拡大などの傾向が起こっており、患者の立場においても見過ごせない不利益が生じています。引き続きPTとしても議論を続け解決策を見出す続けます。

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(写真:加藤勝信厚生労働大臣に申し入れを行っている様子)



令和4年9月9日

医薬品産業を通じた世界のヘルスケア分野の牽引に向けた提言

自由民主党政務調査会
社会保障制度調査会
創薬力の強化育成に関するPT

 創薬力の強化は喫緊の課題であり、医薬品産業を支えるエコシステムを効果的かつ健全に機能させる必要がある。そのために、政府による総合的な戦略策定と大胆な優先付けを促す必要があり、昨年5月13日に本PTにおいて総合的な提言を行った。

 政府においては、本PTの提言も踏まえつつ、昨年9月に「医薬品産業ビジョン2021~医療と経済の発展を両立させ、安全安心な暮らしを実現する医薬品産業政策へ~」がとりまとめられ、現在、様々な政策の具体化に向けて、官民で実務的な議論が開始されている。また、厚生労働省においては、本年6月に医薬品産業振興や医療情報の利活用推進に係る体制の強化が行われた。

 本PTにおいては、我が国の創薬力を強化・育成するために必要な取組が着実に実行されることが重要であると考えており、引き続き、その実行に当たる厚生労働省の体制強化を図りつつ、医薬品産業ビジョン2021に掲げる事項の実現に向けて、官民でKPIを設定し、適切な進捗管理を行うことを政府に求める。また、昨年の提言では、医薬品政策の司令塔機能の抜本強化をはじめとして、様々な取組を提案しており、政府の取組の進展状況を注視しながら、これらの実行についても求めていく。

 併せて、我が国の創薬力を一層強化し、日本が世界のヘルスケアにまつわる様々な課題を解決する上での中心的役割を担っていくために、以下の事項についても政府に対して提言する。

 なお、急速な少子高齢化が進展する中、政府は社会保障費の自然増を一定範囲に抑制するため、度重なる薬価制度の改革を行ってきた。その結果として、日本の医薬品市場の魅力が損なわれ、グローバル市場の中で世界における日本市場の優先度が低下するとともに、後発医薬品を中心に安定供給に支障を生じるなど、国民に必要な医薬品を迅速かつ安定的に供給するという観点からは危機的な状況が生じている。もはや社会保障費の自然増抑制を薬価改定による財源に求めていくことは、限界を迎えていると考えられる。今後、こうした観点から、本PTでは、現下の世界経済情勢による物価高の状況といった足下の課題に対応するとともに、薬価制度の背景となる構造的な課題について、これまでの歴史的経緯を踏まえつつ、より骨太な検討を行っていく必要がある。

 政府においては、提言されている事項の実行に努めることを求めるとともに、併せて、後発品の供給問題や、欧米で上市されている新薬の日本での上市が進まないといった足下で生じている課題を踏まえ、政府において開催される有識者検討会においても、産業政策や薬価制度、流通など、分野横断的な観点から、本提言の趣旨を踏まえつつ、検討を進めることを求める。

1.医薬品の安定供給確保

・ 医薬品は国民の健康・生命を危機から守る極めて重要な手段である。創薬力の強化を通じて、我が国も含めて世界のヘルスケアに貢献していくには、国内生産体制強化や人材育成等により医薬品を安定的に製造・供給できるような体制を整備すべきである。
・ 医薬品のサプライチェーンの分析をより一層進めるとともに、その状況や医薬品の必要性、代替性の有無などを踏まえた必要な支援を実施することで、サプライチェーンの強靱化を着実に進めるべきである。また、強靱化に向けたロードマップの策定などを通じて計画的に取組を進めるべきである。
・ 医薬品を安定的に製造・供給するには費用に見合った収益が必要となるため、不採算となる品目等への対応を含め、薬価の観点からも検討すべきである。
・ 併せて、漢方製剤や放射性医薬品など製薬企業だけでは安定供給確保に向けた取組を十分には行うことができないような医薬品については、経済安全保障上の観点を踏まえた支援や、他の分野と連携した支援も行っていくべきである。
・ 後発医薬品について、その製造管理体制の不十分さやサプライチェーンの問題が顕在化しているため、品質と安定供給の確保をこれまで以上に強化すべきである。

2.医薬品等の国際展開

・ 我が国の医薬品産業では、既に国際展開を積極的に行っている企業も存在するものの、アジア市場など今後の進展が見込まれるエリアへの進出はまだ途上である。我が国の創薬力を世界に届けるためにも、さらに国際展開を進められるような支援を行うべきである。
・ ベンチャー企業の活躍が重要となっている現在の創薬環境を踏まえると、今後、さらに我が国の医薬品が国際的に普及していくためには、現在十分ではないVC投資や海外市場へのアクセスの拡大、研究開発における大学との連携の推進等により、ベンチャー企業が活躍できる環境を整備すべきである。
具体的には、既に感染症分野で進むベンチャー支援の取組を感染症分野以外にも拡大して、十分な支援ができるよう財源確保を進めるとともに、再生・細胞医療・遺伝子治療等の新たな技術分野における新規市場開拓支援を行う。また、こうした企業が海外展開していくことをサポートするため、国際機関を通じた重点対象国への戦略的働きかけの強化、MEJによる現地政府や規制当局も巻き込んだ連携体制の構築、MEJの体制と伴走支援の強化、JETROによる欧米製薬メーカーとの連携支援など、更なる支援を行うべきである。
・ 実際に各国に展開するに当たっては、展開先の国の規制と我が国の規制が整合的かという観点も重要となることから、ICHをはじめとした国際規制調和の取組を引き続き進めていくべきである。

3.様々な分野の創薬力の強化

・ 近年、世界的にも、オーファンドラッグの開発が主流となっていること、薬剤耐性(AMR)に起因する死亡者数は今後、何も対策を取らない場合(耐性率が現在のペースで増加した場合)、2050年には1000万人の死亡が想定されている中でAMR対策が重要視されていること等を踏まえると、こうした分野の創薬力も強化することで、世界のヘルスケア分野の進展にさらに貢献をしていくべきである。
・ 創薬力の強化に向けては、臨床研究コーディネーター(CRC)等の育成など、治験の推進のための環境整備を行っていくべきである。また、全ゲノム解析を含め、特に検体検査の精度管理の重要性に留意しつつ、がんを含む全ゲノム解析、マルチ・オミックス解析の結果等を臨床情報とともに搭載する情報基盤とその利活用に係る環境の整備を推進すべきである。併せて、創薬における医療情報の利活用を進めつつ、国民の理解を得るため、個人情報保護法や次世代医療基盤法との関係も踏まえつつ、医療情報の保護と利活用に関する法制度の在り方を検討すべきである。さらに、医療DXの推進に当たっては、HPKIカードの普及促進を図るべきである。
・ 難病や希少疾病に対する創薬力の強化に向けては、採算性なども踏まえた国からの研究開発投資の拡充、製薬企業における患者目線に立った創薬の促進等、国・患者団体・製薬企業それぞれにおいて必要な取組を進めるべきである。
・ AMR対策につながる創薬力の強化に向けては、その性質から、適正使用が求められ通常の生産・流通では収益の予見性が低いことを踏まえて、これに対応した市場インセンティブや諸外国と連携した海外支援、研究者が国内で研究できる環境整備を進めるべきである。

(以上)

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