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2020年9月

2020年9月21日 (月)

デジタル庁への期待 -Whatの政治とHowの政治

 菅義偉内閣が16日に発足し、組閣が行われました。おそらくは7年以上におよぶ官房長官経験の中で選りすぐった大臣を任命したのではないかと思われる手堅い人事ですが、特にメディア的に注目を集めているのは、平井卓也IT担当大臣と、河野太郎行政改革担当大臣のように思われます。平井大臣はさっそくデジタル庁実現に向けて行動を開始していますし、河野大臣も縦割り110番を開設し、また夜中におよぶ大臣就任記者会見や、文部科学省の副大臣歓迎行事などに疑問を呈しておられます。

 振り返ってみると、菅総理自身が、大きなビジョンを掲げて日本を引っ張るというよりも、具体的かつ身近な目標を掲げて(携帯電話の料金を安くするとか、希望する自治体に納税できるようにするとか)着実に実現して成果を上げる仕事師タイプな方のように思われますし、厚生労働大臣の折に副大臣としてお支えした加藤勝信官房長官も、どちらかというと近いタイプかもしれません。そういう意味では、安倍政権時の再任の閣僚が多いですが、菅総理の色もきちんと出した内閣といえるでしょう。

 あるいは言い方を変えれば「何を実現するか(what)」よりも「どうやって実現するか(How)」をより強くテーマとした内閣といえるかもしれません。デジタル化にしても、縦割り行政根絶にしても、いずれも政策実現手段の問題にすぎません。しかし、安倍政権ではコロナ禍のもと「どうやって実現するか」の部分でかなり躓きました。3月頃に「全国民に布マスクを配布する」という政策を打ち出したことは悪くなかったかもしれないが、調達や配布に時間を要して6月になり時期を逸してしまった。持続化給付金は必要な政策だったが、その実現手段としての外注委託が問題とされた。全国民への10万円の給付についても、自治体により時期のバラつきが生じた。雇用調整助成金のオンライン申請は、プログラムミス等が発見され再開に時間を要した。全て、政策そのものではなく、実現手段に足を引っ張られてしまいました。実はこのHowの部分、別の言い方をすればロジスティクスやそれを支える情報インフラといった政策実現手段が、政策の成否にとってとても重要なのです。日本軍はロジスティクスと通信の軽視で敗北したとも言われます。残念ながら、国民性というものはなかなか変わらないのかもしれません。しかし変えなければなりません。

 平井卓也IT担当大臣とは、インターネット選挙運動解禁の公職選挙法改正の際に、ふくだ峰之元衆議院議員とともにチームとしてご一緒しました。この時には、自民党内および全会派による協議会内で立法に必要な議論を整理し最終的には国会で一本化して改正法案を成立させるという法制度構築的な活動と、同時に自民党ネットメディア局として参議院選挙におけるネットの活用について具体的にさまざまな対策を具体化する(アプリ「あべぴょん」開発もその一つですが、それだけではありません)活動を平行して行いました。政府においてデジタル化を議論する際には、この両面を同時に行う能力が必要となります。その際にありがたかったのは、いろいろ提案すると「それいいね、やろうよ!」と言ってくれるノリの良さです。「あべぴょん」というネーミングもそんな感じで決まったような気もしますが、これはとても大事なのです。大臣本人がコードを書く必要はありません。方向性を示し、コードを書けたり法律を書けたりする人をノビノビ仕事させてくだされば、物事は進んでいくのです。そういう意味で平井大臣の仕事ぶり、そしていずれ設置されるであろうデジタル庁に、大いに期待を寄せています。

 たとえば厚生労働の分野でも、まずはコロナ禍の中でいかに海外からの大勢の旅客の検疫および健康管理をスムーズかつ的確に行い東京オリンピック・パラリンピックの成功と感染制御を両立させるかという大課題があります。この克服のための情報インフラ整備は省庁横断的にかつ急ピッチで実現しなければなりません。またオンライン診療も拡大されマイナンバーカードによる保険資格確認ももう少しで実現するところまで来ましたが、一方で医師等の認証はデジタル化されていないという課題もあります。新型コロナウイルス感染症のワクチン接種も、やはり全国民を対象とする事業を急いで行うデジタル化必須の業務です。こうした諸懸案の克服に向け、引き続き私も力を尽くします。


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2020年9月15日 (火)

厚生労働副大臣退任にあたり(二年ぶり二回目)

●はじめに
 8月28日に安倍晋三総理が体調を理由に辞意を表明され、昨日9月14日に新たな自民党総裁として菅義偉官房長官が選ばれました。明日16日に安倍内閣が総辞職し、直ちに衆参両院で首班指名が行われ、組閣ののち菅内閣が誕生します。私は昨年9月13日に厚生労働副大臣に就任しましたが、安倍内閣総辞職に伴い、明日退任することとなります。

 厚生労働大臣政務官退任時以来、それぞれのタイミングで振り返りをしてブログを書いています。今回も記してみます。

<振り返りシリーズバックナンバー>
厚生労働大臣政務官退任にあたり(2015.10.8)
外交部会長を振り返って (2016.8.2)
厚生労働副大臣退任にあたり(2017.8.7)
厚生労働部会長を振り返って(2018.10.3)
この一年を振り返って(2019.9.7)

●新型コロナウイルス感染症対策における副大臣の役割

 この間の最大の出来事は、やはり新型コロナウイルス感染症の蔓延です。厚生労働省在職三回目でこれまでもさまざまなトラブル等に直面しましたが、世界レベルの危機に直面したのは今回が初めてです。大臣政務官在職時にエボラ出血熱疑い患者発生の対応経験はありましたが国内での感染や蔓延という事態には至りませんでした。普段から厚生労働省健康局結核感染症対策課は感染症の突然の発生に備える体制を持っていますが、このレベルになると全庁的対応が必要となります。そこで、新型コロナウイルス感染症対策推進本部が一月下旬に立ち上げられました。加藤勝信厚生労働大臣のご英断により、副大臣・大臣政務官も担務に関わらず全員が新型コロナウイルス感染症対策を担当すべきこととされたため、稲津久副大臣、小島敏文・自見はなこ大臣政務官とともに、皆で対応にあたることとなりました。こうした中でしたので、副大臣としても、意識して普段とは異なる活動をしました。どのようなことを意識していたか、以下に記しておきます。

1) 指示命令系統の一本化と円滑化
 危機にあって組織に必要なことは、指示命令系統が乱れないことです。「船頭多くして船山に上がる」のことわざ通り、いろいろな人が別々の指示を組織に出す状態は混乱のもとであり、避けなければなりません。またトップの指示が末端まで浸透するように留意も必要です。組織における伝言ゲームは事故のもとです。「副大臣は役人ではなく政治家なのだから、政治的意思決定をしてほしい」というコメントをいただいたことはありますが、厚生労働省において意思決定権者は唯一加藤厚生労働大臣なのであって、ナンバー2たる私以下の全ての職員は加藤大臣の意思決定を支え、あるいは決定されたことを実現するために動くべきものです。特に非常時においてはなおさら意識しなければなりません。

 そのため、大臣室で行われる新型コロナウイルス感染症対策関係の打ち合わせに極力毎回同席するとともに、対策本部の班長会議も予定がなければ毎回出席し、大臣指示が省内に浸透しているかどうか、進捗しているかどうかを確認することとしました。また、専門家の先生方による会議、すなわち厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの会議や、政府新型コロナウイルス感染症対策本部分科会などの会議、また全国知事会や医療関係団体との協議にも極力出席し、議論を聞きました。3月~5月頃が最も厚生労働省が忙しかった時期だと思いますが、例えばその頃の日程は早朝から予算委員会や厚生労働委員会の答弁の予習、昼間は委員会質疑対応、夕方から数時間にわたる大臣室での打ち合わせ、23時頃から対策本部班長会議、その後また打ち合わせや省内ラウンド(後述)といった日程になることが普通でした。もちろん対策本部の皆さんも昼夜を分かたぬ仕事ぶりでした。新型コロナウイルス感染症対策では厚生労働省から事務連絡が多数発出されていますが、ひとつひとつがそうした協議の積み重ねの上に作成されたものです。

 なお決してすべての会議に出席していたわけではありません。総理官邸での打ち合わせや省庁横断的な連絡会議、またWHOやILOといった国際機関、G7など他国とのミーティングは、加藤大臣や事務次官、医務技監などにお任せしていました。また国会対応も、大臣の代わりに予算委員会での答弁を稲津副大臣とともに担当していた時期は一時ありましたが、予算委員会や厚生労働委員会での答弁はおおむね大臣が対応し、他委員会での答弁は副大臣または大臣政務官という一般的な分担で対応しました。

2) 万一の際のバックアップ
 同時にそうした場合に考えなければならないのは、加藤大臣に急病等万一の事態があっても厚生労働省の動きを止めてはならないということです。当然ながらその際には別の方が大臣に任命されることとなりますが、支障なく引き継ぐために経緯等を新大臣にお伝えしなければなりません。場合によっては臨時に代理を務めなければならないかもしれません。前述の会議等の同席にあたっては、内心ではそういう想定も行っていました。幸いにしてそのような事態は発生することなく退任を迎えられそうなのでホッとしています。野球の試合中に控え選手がベンチ裏で素振りをするようなものですから出番がなければめでたいことですが、それも緊急時における副大臣の仕事だと考えます。なお大臣室での打ち合わせにおいて垣間見た、激務の最中における加藤大臣の明晰さ、カツンとした決断力、忍耐強さとタフさには深く感服しましたし、本当に勉強になりました。

3) 省内ラウンド
 省内の対策本部は、大部分の班が2Fの講堂に集まっていますが、一部別の会議室などにいる班もあります。また時期により班構成の変更もありましたし、人の入れ替わりも少なからずありました。そうした中で班長会議だけでは把握できない各班の課題や職員の方々の状況を把握するため、省内の各班を歩いて巡りました。これは病院勤務経験のある自見はなこ大臣政務官の発案で、しばしばセットで省内を歩き回りいろんな方に声をかけてはあれこれお話を伺っていました。これもその時々で大変勉強になりました。

4) 現場対応の責任者
 横浜港におけるクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の支援にあたっては、現地対策責任者として3週間にわたり主に船内で対応にあたりました。現地対応が必要な場合、中央と出先でいかに意見交換を重ねてもどうしても温度差ができてしまいます。その際に私が現地にいることで、事務的に話が通じにくいことでも直接加藤大臣や各局長に判断を交えて意見具申を行い、大臣の的確な意思決定につなげてもらうことができたものと考えます。また8月中旬に沖縄県から看護師等派遣の要請があった際も、沖縄県庁において玉城知事や謝花副知事らとご相談しながら、全国知事会や防衛省といった支援側、沖縄県医師会や沖縄県看護協会さらには現地の医療機関など受援側を結び、スムーズな応援体制の構築の道筋をつける役割を果たせたと考えています。最高指揮官である大臣が本省を離れることは基本的にはできませんから、こうしたことも副大臣の仕事でしょう。

 また直接現地に赴いてはいませんが、長崎県でのクルーズ船対応や6月初旬の北九州市での感染拡大対応などにおいて現地と本省の間で行われた遠隔会議などにも極力出席し、状況の把握と適切な支援の実施に努めました。

5) ICT関係の統括
 ブログ「厚生労働省における新型コロナウイルス感染症対策に関するICTの活用」で記したように、新型コロナウイルス感染症の蔓延という危機への直面にあたり、厚生労働省は電話やファックスせいぜい電子メールといった情報ツールで臨んでおり、そのためさまざまなシステムを構築することとなりました。ただ、突貫工事で作ったシステムですから、現場への普及を進めるとともに改良も続ける必要があります。また法律や制度との整合も問われますし、変更にも対応しなければなりません。さらに各システム間で重複や縦割りに伴う無駄なども生じかねなかったため、そうした調整も行わなければなりません。これらはもともとICT人材に乏しい厚生労働省には非常に荷の重い仕事でした。そこで内閣官房IT室の力を借り、また6月からは神奈川県で医療危機対策統括官を務められていた畑中洋亮さんに健康局参与として厚生労働省の対策本部に入っていただき、厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部のCIO体制を整備して私が対策本部CIOとして各システムの作業進捗を管理し部署間やシステム間の連携を行う体制を設けました。今後も東京オリンピック・パラリンピックを控えた水際対策および入国者の支援、さらには新型コロナウイルスのワクチンの接種支援といった大規模ミッションが控える中、これらを支援するシステム整備も早急に具体化しなければなりません。引き続きこうした体制が継続することを期待します。

6) 情報発信
 新型コロナウイルス感染症およびその対策については、時々刻々と状況は変化しますしまた国民の権利の制限に関わることもあり、まずそれ以前に健康は最大の関心事ですから、政府からの情報発信は大事なものです。公式には、安倍総理による折々の記者会見や西村大臣・加藤大臣の定期的な記者会見、また専門家会議や分科会後の専門家の方々による記者ブリーフィング、事務方による個別事業に関する記者ブリーフィング、そしてWebサイトやtwitterなどによる情報発信などが、随時行われてきました。ただ、それだけではマスメディア経由となり必ずしも全体像が伝わりきらないこともあること、特に当初は厚生労働省の情報発信自身もタイムリーさに欠けることもあったこと、あるいは手指消毒徹底や三密回避、偏見差別対策などとにかくしつこく繰り返してできるだけ多くの方々にお伝えするべきことを繰り返しにくいことなど、工夫の余地もあるように思われました。

 そこで、私のブログやFacebookを通じて、折々に新型コロナウイルス感染症やその対策に関するさまざまな内容を記すことに取り組みました。そのため今年の2月以降8月くらいまでは、ほぼそれ以外の内容を記すことを控えました。ご参考までに、関係するブログのリストを以下に記しておきます。振り返って過去の記事を読むと今から思えばいろいろ感じることはありますが、その当時の認識として保存しておくべきことなのでしょう。

<新型コロナウイルス感染症対策全般>
新型コロナウイルス感染症の現状と見通しについて(2/6晩現在)(2020.2.7)
個人的メモ:新型コロナウイルス感染症対策の今後について(2020.7.10)
秋以降の新型コロナウイルス感染症対策について(2020.9.6)

<個別の取り組みや状況について>
新型コロナウイルス感染症に関するニューヨーク市、州の現状(2020.3.20)
厚生労働省における新型コロナウイルス感染症対策に関するICTの活用(2020.5.22)
新型コロナウイルス感染症のワクチンについて(2020.8.22)

<クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」関係>
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」について(2020.2.9)
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」について(その2)(2020.2.16)
ダイヤモンド・プリンセス号の対応を終えて(2020.3.15)
ダイヤモンド・プリンセス号現地活動の概要(2020.4.19)

  ダイヤモンド・プリンセス号対応については、自見大臣政務官と連名の英語論文をGlobal Health & Medicine誌に投稿しています。
Challenges of COVID-19 outbreak on the cruise ship Diamond Princess docked at Yokohama, Japan: a real-world story

なお、ブログやFacebookは個人的な活動として行っていますので、全て自分で記しています。またBSフジ「プライムニュース」において、厚生労働省の取り組み等についてお話する機会を何度も頂けたことは誠にありがたいことでした。一方、twitterに予断を与えうる投稿をして削除することとなったこともあり、危機時における情報発信の難しさも痛切に感じました。

 以上のようなことを考えながら、日々を過ごしていました。1月下旬以降はほぼ新型コロナウイルス感染症対策のみに勤務時間を費やす状況が続きました。9月14日時点において累積の陽性者数は75,217人、亡くなった方が1,439人です。亡くなられた皆さまのご冥福をお祈り申し上げますとともに、感染された方やそのご家族のみなさまに、心からのお見舞いを申し上げます。この状況について現時点でのこの結果を軽々に評価をすることはまだ困難です。台湾や韓国など、より死者数等の少ない国々もありますが、欧米のような爆発的な感染者増加を起こさないで済んでいるとも言えます。何はともあれ、まずはご協力をいただいた全ての皆さまに、心からの感謝を申し上げます。

●地域医療構想と新型コロナウイルス感染症対策
 ブログ「令和元年末のご挨拶」で記した通り、昨年は地域医療構想の関係で地方自治体代表の皆さまといろいろご相談を申し上げる機会が多くありました。とりわけ鳥取県の平井伸治知事とは何度もお目にかかっていましたが、今回の新型コロナウイルス感染症対策においても全国知事会の担当となられたため幾度も緊密に意見交換し、都道府県レベルでの対策の実態などをご教示いただきました。全国知事会としても会長の飯泉嘉門徳島県知事、黒岩祐治神奈川県知事、西脇隆俊京都府知事とは幾度もネット会議でお話を伺いました。

 今回の新型コロナウイルス感染症対策では、新型インフルエンザ特措法の施策体系からしても、各都道府県知事の責任と権限が強いものであり、実際に都道府県独自の取り組みや緊急事態宣言、各知事の発言などがこれほど注目された機会もなかったと思います。また実際に、医療提供体制の整備などは都道府県が主体となって行っていただいたため、上記のように厚生労働省としても緊密な連携を行いました。

 昨年は、地域医療構想・医師偏在是正対策・医師の働き方改革で「三位一体の改革」と称して取り組んでいましたが、専門医制度や地域枠のあり方なども含め、引き続き地域医療の提供体制については議論が続いています。新型コロナウイルス感染症対策が仮にひと段落したとしても、今後も各都道府県知事や全国知事会の存在は、厚生労働省にとって一層重視しなければならないものとなったのではないかと考えます。

●ハンセン病元患者・家族への偏見差別対策と新型コロナウイルス感染症対策
 もう一点、やはり「令和元年末のご挨拶」において記していた内容で、ハンセン病元患者およびご家族に対する偏見差別の解消の問題があります。こちらについて今年も引き続き協議などが行われる予定でしたが、残念ながら中断しており進展をさせることができませんでした。

 一方で新型コロナウイルス感染症の関係でも、感染者やクラスターが発生した施設、さらには対応にあたる医療機関やその従事者にいたるまで、不当な偏見差別にさらされることとなりました。目に見えない未知ウイルスへの恐怖という感情は誰にでもあるものですが、だからといって思いがけず感染してしまった方やましてや対策に従事している方そしてその家族までいたずらに忌諱しても、社会にとっても本人にとっても辛い中に鞭を打たれるような感覚になるだけで、何も良いことはありません。こうしたことがまた繰り返されてしまった状況は、本当に残念としか言いようがありません。私たちは改めて、ハンセン病の歴史から正視しなおす必要があるものと考えます。私自身も今後どのような立場にあっても、引き続き何らかの形で取り組みたいと考えています。

●その他
 そもそも昨年9月の厚生労働副大臣就任は、台風で千葉県等に大きな被害が出た直後でした。続けてさらに別の台風にも襲われ、長野県や埼玉県、福島県、宮城県などで洪水も発生しました。今年も7月に熊本県や鹿児島県で豪雨災害が発生し、先日も大型台風の通過がありました。災害被害からの復旧復興を行わなければなりませんが、さらにコロナ禍の中ということで災害ボランティア等の活動が制約されるという新たな状況も発生しました。平成30年豪雨災害以来取り組んでいる避難所の環境改善について、昨年の災害でも福島県伊達市などの避難所に出張しダンボールベッドなどが導入されている様子を拝見しました。また先日、災害ボランティアセンターに関する自治体の人件費等について国費が支出される方針になったと聞いています。引き続き平成30年7月豪雨の際の教訓を具体化しなければなりません。

 国際的には、昨年10月にマニラで行われたWHO西太平洋地域委員会会合 、岡山市で行われたG20保健大臣会合(レセプション・視察)、11月にビエンチャンで行われたASEAN+3社会福祉大臣会合 、今年2月にバンコクで行われたPMAC2020/UHCフォーラム2020 に出張しました。それぞれの会にて、各国の保健衛生や医療福祉の状況を学びまた日本の状況をお伝えすることに努めました。なお2月中旬以降はこうした国際会議はすべてオンラインとなり、加藤大臣が対応されています。これまで国会対応等で大臣がなかなか出張できず、副大臣対応となることが多かったので、日本のプレゼンスを高める意味では良かったかもしれません。

 なお私ごとになりますが、家族についても触れます。進学の関係で、今年の4月から倉敷にいた次女次男を上京させ、社会人になった長女とともに衆議院宿舎で同居しています(大学生の長男は都内で一人暮らし)。2月から3月にかけて、ちょうどダイヤモンド・プリンセス号の対応をしていたり健康観察期間として宿泊施設で過ごしていたりしたため、準備には知人友人や事務所スタッフの助力や長女長男の働きによるしかなく、いろいろご迷惑をおかけしました。しかし結果として4月以降の緊急事態宣言下の時期を宿舎にて子どもたちと一緒に過ごすことができたのは、父親としての私にとっても子供たちにとっても、タイミングがよかったなと思っています。倉敷で子どもたちがお世話になった方々に深くお礼を申し上げるとともに、ありがたいことに皆で仲良く元気にそれぞれ会社や学校に通って過ごしていることをご報告申し上げる次第です。

●謝辞

 今回のコロナ禍において、厚生労働省は全力で対応にあたりました。その結果を評価するにはまだ早いですし、少なくとも全てが上手くいったわけでもないとも思いますが、それでも持てる力を結集し一丸となって対応にあたっていたことは紛れもない事実です。こうした中で、加藤勝信厚生労働大臣を筆頭に、稲津久厚生労働副大臣、小島敏文厚生労働大臣政務官、自見はなこ厚生労働大臣政務官それぞれが持ち味を生かして対応に当たられました。この難局にあたりご一緒できたこと、さまざまご指導いただいたことに、深く感謝申し上げます。

 また、厚生労働省職員の方々(出向先などから臨時復帰された方々、他省からの派遣の方々も含めて)には、本当に昼夜を分かたぬ激務を通し、新型コロナウイルス感染症対策推進本部の内外を問わず今回の対応にあたっていただいたことに、心から敬意と感謝を申し上げます。映画「シン・ゴジラ」の巨災対のようにドラマティックな展開を遂げるわけでもないし、ひと握りのヒーローヒロインが何かをきっかけに解決策をひらめくような美しいものでもありません。現実はとても泥臭く電話かけや書類作成をひたすらし続けていたようだったかもしれません。しかしその一つ一つの仕事の積み重ねこそが、この日本を新種のウイルス蔓延から防ぎ続けているのだと私は信じています。幹部から若手まで、それぞれの場面でそれぞれの個性を発揮して、各方面の対策を同時並行的に進めるさまは、さながら群像活劇を見るが如きものでした。すべての方々の名前を記して活躍を残したいところですが、紙幅の都合上お二人の名前を代表として挙げます。水谷忠由さんは毎日の大臣室打ち合わせおよび班長会議を粘り強く仕切り、ありとあらゆる案件をバランス良く捌き続けられました。寺谷俊康さんは対策本部地域支援班の一員として、北九州市、新宿区、そして沖縄県庁と感染が深刻化している自治体に率先して派遣され、各地での受援体制構築に汗をかいていただきました。お二人をはじめすべての方に拍手喝采を送ります。もちろん、内閣官房コロナ室やIT室、防衛省、総務省など、さまざまな形で他省庁の方々にもお力をいただきました。篤く御礼申し上げます。
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 今回の対応で、感染症対策の専門家の先生方のお話を直接伺う機会をたくさんいただいたことは、本当に勉強になりました。ダイヤモンド・プリンセス号内の現場にて、また厚生労働省アドバイザリーボードや新型コロナウイルス感染症対策分科会など会議の場にて、素人の私にもわかりやすくしかし重要な議論を伺うことができたことは、今後の大きな糧になるものと思います。DMATの先生方にも、それぞれの現場で熱意をもってお力をいただき本当に心強く感じました。ありがとうございました。日本医師会をはじめとする医療関係団体の皆さまにも、さまざまな場面で相談させていただき、お世話になりました。もちろん民間企業の皆さまにもお世話になりました。特に今回は、水害対応からダイヤモンド・プリンセス号でのスマホ配布、さらには大規模調査まで、LINEさんには大きくお力をいただきました。

 そうしたあれこれができたのも、副大臣室のスタッフの皆さんあってのことです。大坪審議官から「占部さんはクールぶってるよね」と指摘され「”ぶってる”ってなんですか!」と目をむいていたクールに見えて本当は熱い男・占部秘書官を筆頭に、石川主任秘書、小澤さん、運転手の山賀さんの温かいお支えあって、なんとか副大臣としての任期を全うすることができました。深く感謝申し上げます。
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 またもちろん、こうした仕事をすることができるのも、地元倉敷・早島の皆さまが私を国会に送っていただいているおかげです。とくに今回は半年近くも地元に戻ることができず、大変ご心配をおかけしてしまい誠に申し訳ありませんでした。そして変わらずご支援をいただいていることに、心から御礼申し上げます。ありがとうございました。

 二回目の副大臣として厚生労働省に戻った際には、このような一年を過ごすとは全く予想だにしていませんでした。しかし国の危機に際してチーム厚生労働省の一員として対応の一端を担う経験をでき、人生においても間違いなく忘れ難い任期となりました。この先どのような立場をいただくかわかりませんが、いただいた経験とご縁を大事にして引き続き努力して参ります。
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2020年9月 8日 (火)

2020年自由民主党総裁選の対応について

 8月28日の安倍晋三総理大臣の辞意表面により、本日、自由民主党総裁選挙が告示されました。9月14日に両院議員総会で選出される予定です。この総裁選にあたり、橋本がくは、自由民主党所属衆議院議員としての自分の一票を「菅義偉」候補に投票することに決めました。この一票は、私を国会に送り出していただいた倉敷・早島の有権者の皆さまに託されたものと考えますので、ここにご報告申し上げます。

 今回の総裁選は、任期を残り一年とする中での選挙戦であり、日本のみならず世界が直面している新型コロナウイルス感染症対策を、次の総理大臣にも確実に継続して行っていただく必要があります。その点で、官房長官として政権の中枢で安倍総理を支えてこられた菅義偉候補が、最もスムーズに陣頭指揮を執っていただけるものと確信します。出陣式の決意表明にて「欧米のような爆発的な感染拡大は許さない」と力強く仰ったのは印象的でした。

 自由民主党では、菅候補への投票を決めた秋田県連を除く46の都道府県連で、党員・党友による予備選挙を行います。岡山県連では既に投票用紙の郵送を行っております。13日午前中必着となりますので、党員・党友の皆さまには速やかに「菅義偉」とご記入いただき、投函していただきますようお願い申し上げます。

 なお今回立候補された石破茂候補・岸田文雄候補ともに、いずれも国を担う覚悟のある尊敬できる先輩方です。総裁選が終了したのちには、自民党一丸となって新型コロナウイルス感染症対策と経済の両立をはじめ、直面する諸課題に一丸となって取り組むよう全力を尽くします。

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2020年9月 6日 (日)

秋以降の新型コロナウイルス感染症対策について

 8月28日、安倍総理が健康上の問題により辞意を表明されました。かねて検査のため病院に通う姿が報道されており心配しておりました。これまで長年にわたり持病と付き合いながら総理の重責を担ってこられたことに、心から敬意を表します。

 同じ日に新型コロナウイルス感染症対策本部において、「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取り組み」が決定されました。安倍総理の記者会見でも触れられていましたが、今後の政府の取組みの方針となる重要なものであり、後継の総理が誰になろうとも踏襲されるべきものです。

 この後に公表された内容も含め、これまでの対策から転換をする部分もあります。改めて自分なりに整理してここに記しておきます。基本的に公表資料によって記述しますが、私見も含まれており、政府や所属組織団体等を代表するものではありません。文責は橋本がく個人に帰属します。

1.新型コロナウイルス感染症に関する基本的な認識

 感染事例の蓄積から、いわゆる3密環境や大声を出す環境での感染が多いこと、感染者のうち8割の者は他の人に感染をさせていないこと、といった認識は引き続き維持されています。そのため、やはりクラスターの制御が感染拡大防止のカギです。各業種における感染拡大予防ガイドラインの遵守や、3密の回避、マスク着用、フィジカル・ディスタンスの徹底、手指消毒や換気の徹底、さらには接触確認アプリの活用などにより、社会全体での感染リスクがかなり下がることが期待されます。

 感染者のうち8割は軽症または無症状のまま治癒しますが、2割で肺炎症状が増悪し、人工呼吸器管理などが必要になるのは5%程度といわれています。65歳以上の高齢者や慢性呼吸器疾患、糖尿病、肥満などを有する者で重症化のリスクが高くなります。唾液を用いた検査手法の確立等により検査に要する日数は2月~4月ごろより短縮されました。また医療現場も徐々に経験を積んでおり、治療においてもレムデシビル、デキサメタゾンといった医薬品の標準的な活用、人工呼吸器装着時における腹臥位の励行なども行われるようになりました。

 こうした基本的な認識は、これまでと大きく変わるものではなく、現時点ではウイルスや病気そのものが年初の発生時から大きく変化したとは考えていません。ただ個人的には、春先と比較して夏以降は保育園や小学校といった子どもの感染例が増えたような印象はあります。また夏以降の感染拡大について、感染者数の多さの割に重症者数や死亡者数がまだ春先ほどには増えていないことは、積極的な検査により早めに感染者を発見できるようになった結果であろうと思います。

2.感染症法における運用の見直し

 現在、新型コロナウイルス感染症は指定感染症として、普通の二類感染症以上の権限行使ができることとなっています。感染症法は予期していなかった自宅やホテルでの療養を行っているなど、事務連絡による運用で現実にフィットさせている部分などもあります。そうした面について整理するべく、9月2日に開催された厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの第7回会合において、「指定感染症としての措置・運用のあり方に関するWG」が設置されました(資料)。速やかに結論を得て、必要な対応を行うことが期待されます。

 なお、新型コロナウイルス感染症を、保健所や医療機関の負荷軽減のために季節性インフルエンザ並びの五類感染症にすべし、という議論もあるようです。仮にそうすると、措置入院や就業制限もできなくなり、医師の報告義務もなくなり、検査はすべて費用負担が発生し、入院にも費用負担が発生するという普通の病気扱いとなります。行政的には蔓延を放置することとなり、未だワクチンもない中で、おそらくは相当な数の高齢者や基礎疾患がある方が入院・重症化することになるのではないかと個人的には思うのですが、いかがでしょうか。

 また感染症法や新型インフルエンザ特措法そのものの改正の議論も、自民党などで行われています。政府においてもいずれ検証の上対応が必要なものと考えます。ただ、当面は目前の対策で厚生労働省のマンパワーが手一杯な中、法改正には相当に緻密な検討や作業が必要なため悩ましいところです。

3.秋冬の季節性インフルエンザ流行期に向けた検査および医療提供体制について

 秋以降、季節性インフルエンザの流行と新型コロナウイルス感染症が同時に感染拡大する状況が想定されることとなります。この両者は臨床的に鑑別することは困難なことから、現在の体制のままで臨むと相当な混乱が起こることが予想されます。そこで、これまでの「帰国者・接触者相談センター」から「帰国者・接触者外来」へという受診の流れを改め、かかりつけ医など最寄りの診療所などに電話等で相談して、より多くの地域の医療機関(仮称「検査・診療医療機関」)や外来・検査センター等で検査を行える体制を、10月中をめどに整えるよう各都道府県に対して事務連絡「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」を9月4日に発出しました。今後各自治体において具体化されるものと思われます。

 また発熱等の症状により受診をした際、季節性インフルエンザと新型コロナウイルスの検査を両方迅速に行えるようにしなければなりません。そこで季節性インフルエンザの検査件数を踏まえて1日20万件程度の新型コロナウイルス抗原簡易キットによる検査を行えるようメーカーに対し増産や精査の前倒しを働きかけるとともに、引き続きPCR検査や抗原定量検査の機器の整備も引き続き進めます。

 なお季節性インフルエンザのワクチンについては、成人量で6,356万回分のワクチン今冬に供給される見通しです。可能な限り増産しており、昨年の使用量を12%上回ります。重症化予防の効果があるとされることから65歳以上の高齢者には予防接種法上の定期接種となっています。また日本感染症学会は、医療関係者、高齢者、ハイリスク群(妊婦等)に強く接種が推奨しており、また小児へのワクチン接種も強く推奨しています。こうした方々を含めスムーズに接種していただけるよう、製造から出荷までの期間短縮などに努めています(参考資料:「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備」)。

 医療機関や関係団体からは、医療機関の経営が困難であるという声をたくさんいただいています。「地域の医療提供体制を維持・確保するための取り組み・支援を進める」という記載は「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取り組み」にあり関係省庁と折衝中ですが、残念ながら未だ成案を得ておりません。今後に向けた体制整備を進める上でも、安心して取り組んでいただけるように速やかに具体化すべく取り組みます。また、病床や宿泊療養施設の確保についても10月分以降の予算の確保を行い、体制整備を進めます。

4.感染拡大防止のための検査対象の拡大

 行政検査の対象について、体制の整備に伴って徐々に拡大させています。8月からは、多数の感染者やクラスターが発生している地域においては、医療機関、高齢者施設等に勤務する方、入院・入所者全員を対象に、一斉・定期的な検査の実施を可能としました。また、特定の地域や集団、組織等において、関連性が明らかでない患者が少なくとも複数発生しているなど、検査前確率が高いと考えられ、かつ、濃厚接触を生じやすいなど、クラスター連鎖が生じやすいと考えられる状況にあると認められる場合における、当該地域や集団、組織等に属する者も行政検査の対象になります。とてもわかりにくいですが、要するに特定の飲食店エリアなどに勤める方を対象に集中的に検査を行った例等が行政検査に該当しうることを示したものです。なお、行政検査の場合に自治体に1/2の負担があることが問題視される場合がありますが、国の負担金が予算上手当される場合には地方創生臨時交付金も同額手当されることとされており、実質的に自治体負担が生じない扱いとなっています。

 それに加え、市区町村において、一定の高齢者や基礎疾患を有する者について本人の希望により検査を行う場合に国が支援する仕組みを設けることとともに、自費の検査についても行政検査に支障が生じない範囲で行える環境を整備することも示されました。今後具体化されるでしょう。

4.医薬品およびワクチンについて

 レムデシビル、デキサメタゾンといった治療薬について必要な患者への供給の確保を図るとともに、臨床研究や治験などについて手続き簡素化や優先的な審査などを引き続き行います。また積み重ねられた治療に関する知見を整理した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」は9月4日に第3版が公表されました。

 新型コロナウイルス感染症のワクチンについては「新型コロナウイルス感染症のワクチンについて」で概ね記した通りですのでご参照ください。また8月31日にGaviワクチンアライアンスに対し、COVAXファシリティへの参加の意思の表明を行いました。これはGaviワクチンアライアンス、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)及びWHOが中心となり、新型コロナウイルス感染症のワクチンを共同購入する国際的な仕組みであり、日本にとってはワクチン確保ルートをもう一つ確保することを意味します。こうした取り組みを通じ、必要な量のワクチン確保をさらに進めます(参考:9月1日加藤厚生労働大臣記者会見)。

5.来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて

 「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取り組み」では、国際的な人の往来を部分的・段階的に再開することとし、成田・羽田・関西空港において1万人をこえる検査能力を確保すること、ビジネス目的の出国者が検査証明を取得するためにネットで予約できる仕組みを構築することが記されています。

 ただこの点については、来年に東京オリンピック・パラリンピックを控える日本としては抜本的に体制を強化する必要があるものと考えています。あくまでも私案ですが、多くの国々から観光客などを安心してお迎えできるためには、例えば下記のような準備を整える必要があるものと思います。多省庁にまたがるテーマとなるため難渋していますが、今後の検討と実現に期待します。


  • 多国間の入国管理・検疫の枠組み(検査精度の国際的な管理と相互認証を含む)
  • 検疫と連動した、入国者が国内での健康観察を行うための情報基盤
  • 発熱等があった際、安心して自国語で連絡できる電話・アプリによるサポートセンターによる、保健所・医療機関対応まで含めた寄り添い支援
  • 査証における民間旅行保険加入や一定期間の健康観察への同意の要件化、公費医療のうち一部は民間保険による支払いを優先する制度、医療機関の請求事務サポート…など

6.雇用・経済的な支援策の延長

 厚生労働省で行っている新型コロナ関連の雇用や生活に関する支援策の一部については、9月末で終了することとなっていましたが、8月28日に12月末までの延長が決定しました。具体的には、


  • 雇用調整助成金の新型コロナウイルス感染症特例措置
  • 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
  • 小学校休業等対応助成金・支援金
  • 新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金
  • 働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)
  • 小学校の臨時休校に伴う病院内保育所等の対応に係る財政支援事業

が延長されています。

 また、緊急小口資金等の特例貸付、働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)については、期限延長を行う方向で引き続き検討中です。

7.その他

 加藤厚生労働大臣よりご指示があり、8月15日夕方から急遽沖縄県に出張し、翌16日に玉城デニー知事とお目にかかりました。当時沖縄県では感染拡大が続き医療提供体制がひっ迫していたため看護師等派遣の要請が沖縄県から政府および全国知事会にあり、その対応の一環として菅官房長官に指名を受け派遣されたものです。現地の状況を踏まえ政府(防衛省・厚生労働省)および全国知事会、関係団体が協力し、医療機関を支援するための看護師や保健所を支援するための保健師を、全国から募り沖縄県に派遣しました。ご協力いただいた皆さまに、深く感謝申し上げます。過去二回の感染拡大の新型コロナウイルス感染症の経験から考えるに、必ずしも全国一律に蔓延するのではないようです。したがって、非蔓延地域から蔓延地域に不足人材の派遣を行うスキームは今後も有効に機能し得るものと思います。

 ITの活用も引き続き必要です。「厚生労働省における新型コロナウイルス感染症対策に関するICTの活用」で記した各システム・アプリは、正直に記せば突貫工事で構築したものばかりですので、必ずしもいきなり使い勝手の良い申し分のないシステムではないことは、十分に理解しています。使いながら引き続き改良を重ねていく必要があります。HER-SYSについては、国立感染症研究所の鈴木感染症疫学センター長を座長とする「感染者情報の活用のあり方に関するWG」において現場の保健所や地方衛生研究所のご意見も伺いながら、改修を進めます。また同時に、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種やオリンピック・パラリンピック開催など、多くの人が関わる大規模な行政事務を的確に遂行するためには大支援システムの構築は必須であり、そうした新たなシステムの企画・開発も引き続き必要です。厚生労働省は否応なくDX(デジタル・トランスフォーメーション)の波の中にたたきこまれています。引き続き、さまざまな方の力をお借りして、努力しなければなりません。

 残念ながら、新型コロナウイルス感染症の感染者やクラスター発生施設、そして治療の最前線に立つ医療従事者の方々等に対する不当な偏見・差別・プライバシーの暴露などが、未だ根強く存在するようです。例えばインフルエンザで学級閉鎖になっても、誰もインフルエンザ感染者を悪く言う人はいません。新型コロナウイルス感染症についても、同様の受け止めになることが望ましいですし、必ずできるはずです。ただ、単に禁止をすればよいという単純な話だとは思いません。正しい知識の普及や、人の立場に立ってみることや、一部自治体で行われているようなネットでの不当な発言を等を保存する取り組みなど、多面的なアプローチが必要と思われます。8月20日に、新型コロナウイルス感染症対策分科会に「偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループ」が設置されました。今後の議論や取り組みに期待を寄せています。

おわりに

 4月5月の感染拡大期では、政府として緊急事態宣言を全国に発出する事態となり経済にも大きな影響を及ぼしました。一方、7月8月の感染拡大期では、知事による限定的な営業自粛等の発出などで拡大を止めることができました。これは様々な要因があるでしょうが、手指衛生の徹底や三密回避等の行動様式が国民に一定程度定着し、業種別ガイドラインの整備および実践が進んだことが大きいのではないかと個人的には思っています。

 もちろんまだ気を緩めてはならず、全国の一日あたり感染者数が一桁や二桁になる程度にまで抑え込み続ける必要はあると思われます。また、仮にそこまで抑えることができたとしても、クラスターが散発的に発生することは続くでしょうし、6月ごろの北九州市のように都市単位での感染拡大も起こるでしょう。そしてまた数か月後には、対策の取りづらいところを突いて全国的な感染拡大が三たび始まることも想定しておく必要はあるものと思います。

 しかし少なくとも、日本は再び全国的な緊急事態宣言を発することなく二度目の全国的な感染拡大を抑えることに成功しつつあるとは評価しうるわけで、対策は間違いなく進歩しているのです。そうやって感染対策と経済との両立を図り、社会の精神的な疲労や経済的ダメージを最小化し癒しつつ(そのために文化芸術やエンターテイメントも大事なのです!)粘り強く時間を稼ぎ、対策や治療法・医薬品のさらなる改良、ワクチン接種等によりこの病気を十分に抑えられるようになることを目指すのが、日本のとるべき戦略であると考えています。

 これから自民党総裁選挙が行われ誰が総理大臣になろうとも、また橋本がくも今後どのような立場になろうとも、置かれた立場で全力を尽くします。

 末尾に、毎回記すお願いを今回も記します。どうぞ、こまめに石鹸による手洗いを行い、密閉場所・密集空間・密接発声を避け、換気の良いところでお過ごしください。接触確認アプリCOCOAのインストールもお願いします。また、医療機関など現場に従事される方々のご労苦にもぜひ思いを致し、また感染された方やクラスターが発生した施設等には温かい治療や支援が受けられるようご配慮ください。心からお願い申し上げます。


Amabie

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