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2019年9月

2019年9月21日 (土)

厚生労働副大臣再任のご挨拶

 安倍内閣の改造に伴い9月13日に行われた副大臣人事において、2年ぶりに再び厚生労働副大臣を務めることとなりました。やはり2度目の就任になる加藤勝信厚生労働大臣と緊密に連携を図りつつ、直面するさまざまな課題の解決に向け全力を尽くす所存です。

 今回の担務は「医療・福祉」です。少子化・高齢化、そして現役世代の減少という人口構造の変化を踏まえ、とくに今年から来年にかけて、厚生労働省は正念場を迎えます。70歳までの高齢者の就業機会の確保、年金財政検証を受けた年金制度の見直し、疾病や介護の予防の推進、地域共生社会づくり、子ども・子育て支援の強化といった課題に取り組まなければなりません。前回副大臣や党厚生労働部会長の時に取り組んだ「働き方改革」も浸透はまだ十分とはいえませんし、医師の働き方改革も引き続き検討が必要です。就職氷河期世代支援も具体化はこれからです。

 またこの内閣では、「全世代型社会保障検討会議」を設置し、今後の社会保障や労働面での政策を議論することになります。西村康捻全世代型社会保障改革担当大臣と加藤勝信厚生労働大臣が協力して、子どもたちからお年寄りまで安心できる令和の時代の新しい社会保障制度のあり方を検討することが課題です。こちらについても、これまで行ってきた自民党での議論を生かして加藤大臣を支えて参ります。

 こうした仕事ができるのも、国会に送っていただいている倉敷・早島の皆さまのおかげであり、改めて深く感謝申し上げます。昨年の豪雨災害の復旧・復興の推進をはじめとするさまざまな地域課題においても、岡山県第四選挙区選出の衆議院議員として引き続き取り組みます。

 今後とも倍旧のご指導・ご鞭撻を賜りますように、心からお願い申し上げます。

令和元年9月21日

厚生労働副大臣
衆議院議員 橋本 岳

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2019年9月12日 (木)

令和元年台風第15号による被害状況等について(厚生労働省による)

9月12日午前10時過ぎに厚生労働省より聞き取りした、おおむね11日深夜~12日朝の時点での情報です。

【水道について】
・千葉県、東京都(新島村、大島町)、静岡県(伊東市)の3都県10事業者で22,031戸が断水中(最大約12万9000戸が断水するも約10万戸が解消済み)。
・断水中の地域には応急給水を実施中。なお停電中のマンション等で、水道事業者が給水を再開しても、建物内のポンプの停止により断水が継続する場合がある。
・かずさ水道広域連合企業団(木更津市、君津市、富津市、袖ケ浦市)11,0360戸、および南房総市6,000戸は、13日までに断水解消予定。
・多古町1,800戸、鴨川市876戸、市原市226戸、大喜多町220戸、三芳水道企業団(館山市、南房総市)169戸は復電次第、順次給水再開予定。
・東京都新島村950戸、大島町450戸、静岡県伊東市20戸は、12日に断水解消予定。

【医療機関について】
・停電中の病院は25か所。必要に応じてエネ庁経由で電源車の支援を行う。断水中の病院13か所についても確認の上給水車等の支援を実施。
・停電エリアの在宅療養患者について、在宅支援診療所等を通じて国が安否確認を実施。連絡をとれていない24か所について、直接NHO、JCHO職員を派遣して確認中。
・在宅酸素療法患者について、保守点検事業者を通じた患者の安否確認を実施中。千葉県、神奈川県、茨城県3県計約9,480人中約9,040人については安全が確認済み。大手1社の患者について確認ができておらず、直接医政局職員を当該社を訪問させて確認中。
・透析医療機関について、停電エリア87施設のうち9施設が受け入れ困難な状況。周辺施設での受け入れ等により対応。

【社会福祉施設等について】
・千葉県内の高齢者施設について確認を行い、電源、水の確保を実施。連絡がつかない施設12か所について、千葉労働局から職員派遣により調査中。
・障害者施設、児童施設、救護施設についてはすべて連絡がつき、必要な施設については経産省、防衛省に情報提供して電源車、給水車等の支援を依頼。

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2019年9月 7日 (土)

この一年間を振り返って

●はじめに

 ここしばらく毎年人事前の時期には、一年間のまとめをブログに書き続けています。これまでに書いたものは下記の通りです。

厚生労働大臣政務官退任にあたり(2015.10.8)
外交部会長を振り返って (2016.8.2)
厚生労働副大臣退任にあたり(2017.8.7)
厚生労働部会長を振り返って(2018.10.3)

 今年は責任者的な役職はありませんが、その分政策面において座長や事務局などを担うことが多く、多方面にわたる仕事に取り組むことができました。昨年中のことについては「平成30年末のご挨拶」)に記していますが、今年に入ってからのことについて、順不同となりますがここで整理しておきます。

●団体総局次長として

 党の役職表に出てくる役職としては、組織運動本部団体総局次長を務めました。この役職は、井上信二団体総局長の下、各種団体(例えば日本医師会とか日本経済団体連合会とかです)と自民党との窓口役となるものであり、政策のヒアリングや懇談会などに出席してご要望を伺い各部会等に伝えるのが主な役目となります。具体的な成果をあげるような種類の仕事ではありませんが、さまざまな団体の方々と意見交換する機会に恵まれ、勉強になりました。

●旧優生保護法救済法の成立

 昨年からずっと気にかけていた案件が、旧優生保護法救済法案でした。旧優生保護法は平成8年に母体保護法に改正され関連条文そのものは削除されましたが、旧優生保護法下で障害等を理由に本人の意によらず不妊手術を強制されていた方々に対して何らの補償もなく、昨年に訴訟が提起され注目を集めました。もともとこの法律は議員立法であり国会が主体的に対応することが必要であったため、議員間でも機運が高まり超党派議員連盟および与党WTが結成され、僕もメンバーの一員として議論に参加しました。昨年中に大筋は固まっていましたが、今年に入って一時金の金額や内容、文言(委員長発言を含む)等がまとまり、4月24日に法律が成立しました。また同日、内閣総理大臣談話および厚生労働大臣談話が発表され「政府としても、旧優生保護法を執行していた立場から、真摯に反省し、心から深くお詫び申し上げます。」という趣旨が表明されました。ご関係の方々からは、なお満足のいかない点などが表明されていることは受け止めます。ただ、これまで全く顧慮されていなかった問題に対し、与野党を超えて多くの方々の調整やエネルギーが費やされており、その中で裁判での判決を待たずに党派を超えて国会として主体的に結論を導くことができたことは本当によかったですし、優生思想の払拭のためにも画期的かつ歴史的なことと考えます。

 なお、本法律は既に施行されており、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた方等に一時金が支給されますが、手続きが必要です。もし心当たりの方がおられましたら、厚生労働省の「旧優生保護法による優生手術等を受けた方へ」ページ等をご参照ください。

 その後、ハンセン病家族訴訟に関し国敗訴の判決が出、安倍総理の決断により国は控訴せず救済法をつくる方針が示されました。現在、原告団らと厚生労働省が協議を行っていますが、いずれ議員立法が行われるものと思います。こちらに関しても議員懇談会のメンバーとして救済実現に汗をかきたいと思っています。

●死因究明推進基本法の成立

 議員立法ではもうひとつ、死因究明推進基本法も先の通常国会で成立しました。「死因究明推進基本法が成立しました!」に記しましたので詳細は譲りますが、10年越しの懸案に一区切りをつけることができました。先の参議院選挙で惜しまれつつ勇退された石井みどり前参議院議員の粘り強い調整力と、各会派の皆さまのご協力の賜物であり、改めて感謝申し上げます。ただ、死因究明に関する恒久法ができたとはいえ、具体的な施策を講じるのはこれからです。引き続き「死因不明社会」の汚名を改善するために努力します。

●生涯現役社会の推進に向けた提言

 さて、自民党においては、雇用問題調査会(松野博一調査会長)において事務局長および生涯現役社会推進プロジェクトチームの座長を務めました。このPTでは人生100年時代における雇用面での改革を検討するため、企業や経団連・連合からヒアリングなどを行い、議員間の活発な討議も踏まえて提言を整理しました。この提言の内容は、すでに政府に受け止められ骨太の方針などに反映されており、今後の法改正に生かされます。「生涯現役社会の推進に向けた提言」をご覧ください。

●性的指向・性同一性(性自認)に関するQ&Aの更新

 また、性的指向・性自認に関する特命委員会(古屋圭司委員長)事務局長として、「性的指向・性同一性(性自認)に関するQ&A(令和元年版)」の更新、および付録資料「『性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すための政府への要望』(平成28年5月)に対する政府の対応状況」の整理を行いました。本特命員会としては「性的指向・性自認に関する理解の増進に関する法律案」の国会提出を目指していましたが、政府および党内の調整に手間取ってしまい、残念ながら最終的に断念せざるを得ませんでした。

 しかし自民党は与党ですから、政府に対して要望を行い、既存の法律における施策を改善して実行に移すことは可能です。すでに平成28年に33項目に上る要望を行っています。また、理解増進をするための内容についてもたたき台をQ&Aの形で示していました。そこで、それぞれ現時点で最新のものに更新し、公表しました。ご参考にしていただければ、幸いです。

●大規模災害からのより迅速・円滑な応急・復旧対策に関する提言

 昨年は、自分も対応にあたった平成30年豪雨災害や北海道胆振東部地震、大阪北部地震や度重なる台風などの災害被害が相次ぎました。このことを踏まえ、災害対策特別委員会(今村雅弘委員長)の下、諸課題対応に関する小委員会(中山泰秀小委員長)を設置し、ヒアリングや議論を重ねて6月に提言をまとめました。「大規模災害からのより迅速・円滑な応急・復旧対策に関する提言」に掲載していますので、ぜひご覧ください。今年も佐賀県や岡山県新見市など、台風や局所的な集中豪雨などによる被害が相次いでいます。提言を迅速に実施に移すことを、政府に期待します。

●そのほか

 総務部会地方議員の課題に関するプロジェクトチーム(坂本哲志座長)では、事務局長として議事整理を行いました。近日中に論点整理を総務部会に報告する運びとなります。

 沖縄振興調査会(小渕優子会長)では、三度にわたり沖縄県に出張し、子どもや若年母親の居場所づくり事業をはじめ様々な施策の状況を学びました。沖縄の問題は、沖縄県の方だけでなく日本全体の問題と捉えるべきだと考えます。

 国会においては、衆議院厚生労働委員会の理事と、衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会の理事を務め委員会の円滑な運営にあたりました。特に厚生労働委員会では、冨岡勉委員長を補佐して代理をしばしば務めた他、質疑も1月に毎月勤労統計問題に関する質疑、3月に「医師による異状死体の届出の徹底について(通知)」に関する質疑、5月に児童虐待防止のための児童福祉法改正案に関する質疑と、3回にわたり行いました。今年の通常国会では、与野党筆頭の緊密な連携のもときわめて平穏な委員会運営が行われました。

 8月には日中次世代交流委員会(議員連盟)の第7次訪中団に副団長として参加し、中国の北京および福建省を訪問しました。詳細は「日中次世代交流委員会第七次訪中団レポート」をご覧ください。

 金融庁の報告書をきっかけに、公的年金に関して様々な議論が起こりました。それに関し、BSテレビへの出演や月刊誌『文藝春秋』における対談記事掲載など、メディアにも取り上げていただきました。思うところは「金融庁報告書を巡るあれこれ、または政治家はもっと「福祉」を積極的に語ろう」に記した通りです。

 6月に、自民党岡山県支部連合会会長の3期目を務めることとなりました。幸いなことに4月の岡山県議会議員選挙はじめ統一地方選挙、7月の参議院選挙岡山県選挙区などにおいてありがたい結果を頂戴し、ほっとしています。各候補をご支援いただいた皆様に、改めて厚く御礼申し上げます。

●さいごに

 これまで振り返ってきた通り、おかげさまで今年も充実した成果を残すことができた一年でした。ご指導、ご支援いただいた多くの皆様、そして国会に送っていただいた倉敷市・早島町の皆さまのおかげと、深く感謝申し上げます。実は今年8月末で、自らの力不足により落選してからちょうど10年になります。その時の心境や状況から考えれば、今はありがたいとしか言いようがありません。もちろん困難もありますが、何はともあれ元気で過ごしていることがなによりです。今後とも引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

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2019年9月 1日 (日)

日中次世代交流委員会第七次訪中団レポート

【はじめに】
 8月18日(日)から22日(水)までの日程で、日中次世代交流委員会第7次訪中団の一員として中国(北京、福州、厦門)を訪問しました。概要をここに記します。
 日中次世代交流委員会とは、公明党の遠山清彦衆議院議員を会長とする超党派中堅・若手議員による議員連盟です。日中関係を最も重要な二国間関係と位置づけ、結成以来、関係の良し悪しに関係なく毎年欠かさず訪問すること、また訪中の際には必ず北京以外の地方都市も訪問することを旨としており、この委員会としては7回目の訪中団となっています。僕自身はこの委員会のメンバーとしては3回目の訪中団参加となるものでした。
 今回の訪中団の参加メンバーは、以下の通りです。

団長:遠山清彦 衆議院議員
副団長:小熊慎司 衆議院議員・橋本岳 衆議院議員
事務局長:濱地雅一 衆議院議員
事務局次長:伊藤俊輔 衆議院議員
メンバー:井野俊郎 衆議院議員、國場幸之助 衆議院議員、田嶋要 衆議院議員、小西洋之 参議院議員、竹谷とし子 参議院議員、伊藤孝江 参議院議員

 米中の貿易戦争が厳しく、また日韓関係も不安定な状況というタイミングですが、日中関係は昨年の安倍総理訪中、今年6月の大阪G20への習近平総書記の来日、そして来春に再び国賓として習近平総書記が日本を訪問することが原則的に合意されているという流れがあり、日本と中国の二国間関係はきわめて良好な状況です。ただし、米中貿易戦争も日本経済への影を落としつつあり、また中国国内では香港の問題を抱えているところ、この二点が主に議論のテーマになりました。また後半の福建省訪問では、空海や隠元など、中国と日本との仏教をはじめとする交流の歴史的拠点を学ぶ機会となりました。

【8月19日(月)】

●社会科学院日本研究所 楊所長らとの意見交換
 北京に到着して、早速、中国社会科学院日本研究所にて楊伯江所長始め研究員の方々と意見交換。
 まずこちらの質問に答える形で、米中摩擦に関する中国側の姿勢が示されました。曰く、中国側は望んでいないが米国に仕掛けられており責任は米国にある、互いの経済が拡大したため摩擦が生じるのは宿命的なこと、周囲の国々に影響を及ぼしていることに中国は自覚的である、交渉と対話を堅持して、譲るところは譲るが、中国の主権に関することは譲らない。とにかく対話して、世界の平和、地域の平和を守るように続けたい、等の見解が楊所長らからありました。
 また先方からは、日本の女性関係政策、環境政策、日本の憲法改正における自民党・公明党の態度の違いについて、価値創造社会、消費税引き上げの影響、第三国協力、橋本内閣六大改革の評価、日韓の諸問題などについて質問があり、各議員が回答しました。
これらのやりとりは、先方のレポート(中国語)もありますのでご覧ください。
日本研究所科研交流简报(2019年第23期)日本众参两院跨党派年轻议员代表团到访我所

●駐中国日本大使 横井大使ブリーフィングおよび夕食会
 夕方、在中国日本大使館を訪れ、横井大使に「最近の中国情勢と日中関係」に関するブリーフィングを受けました。中国にとっては今年は建国70周年の節目の年であり、他方で対米関係、経済政策、香港情勢等の問題に直面していること、経済では米中経済摩擦等の要因により緩やかな減速傾向にあること、外交的には対米関係が中国外交の最大の課題であること、日中関係は大幅に改善しており、完全に正常な発展の軌道に乗っていること、来年春の習近平国家主席の国賓としての訪日に向け、日中関係を「競争から協調」の新たな段階に押し上げるべきといった趣旨でした。
 ブリーフィング後、大使主催の夕食会にお招きをいただき、食事をしながらひきつづき様々な意見交換を行いました。

【8月20日(火)】

●商務部国際貿易経済合作研究所 兪副院長らと意見交換
 ここでも、米中摩擦が主なテーマとなりました。先方からは、中国側は自由貿易、市場開放を続けているが米側が保護主義的な政策を掲げて国際秩序への挑戦を行っている、中国経済もこの一年影響を受けたが経済構造を調整して対応してきたこと、今後も多国間貿易秩序やWTO改革の意思は変わらず、お互いを尊重しながら二国間の対話を続けることが大事、といった見解が示されました。遠山団長からも、保護主義や自国第一主義の主張への懸念や多国間自由貿易体制維持について日本が強い意志を持っていることを伝え、日米貿易摩擦をチャンスとして克服してきた経緯を紹介しました。
 質疑応答の中では、知的財産の移転やサーバの国内設置規制について「センシティブな問題」という表現があったり、人民元の為替に関する解決には否定的であったりというやりとりもありました。一方、RCEPの推進はもとよりCPTPPへの中国の参加に積極的なコメントも聞けました。

●宋濤・中国共産党中連部長との会見
 訪問団の受け入れ元である中連部の責任者である宋濤部長からは、歓迎の言葉や、習近平総書記の来年春の訪日予定を踏まえ、さらに両国関係を発展させたい旨の表明がありました。また今回の視察先である福建省について、古くから日本との交流の歴史が深いこと、与党交流会議における協力モデル地域とされており今後具体化をしてきたい旨のお話がありました。その後、中連部内で王亜軍・副部長との昼食会があり、その場でも活発な意見交換がありました。

●黄坤明・中央宣伝部長との会見
 中央政治局委員でもある黄坤明・中央宣伝部長からは、米中経済摩擦に関しては、経済構造の問題という認識が示され、自由貿易や多国間主義の重要性や民間・文化交流推進の必要性が指摘されました。またご自身が杭州に勤務していた時代に、日本企業の保護に尽力した旨のお話がありました。
 また遠山団長から香港でのデモ等に関して早期の平和的な解決への期待を述べたところ、黄部長からは情勢沈静化への自信が示されました。この点については、報道もされています。直後に河野太郎・外相や山口那津男・公明党代表もそれぞれに中国側に意見を伝えていますが、本件に関して日本の各方面から注目されていることを示す意味はあったのではないかと思っています。
香港情勢、沈静化に自信=中国高官(時事通信)

●薛剣・外交部アジア司参事官との会見
 薛剣参事官は、現在は北京の外交部(中国における外務省)に戻られていますが、最近まで在日本中国大使館に公使参事官として赴任しておられ、日本語も達者な方です。国会議員との交流も熱心で、要人会見というよりも「久闊を叙する」ような、和やかな会話でした。安全保障や文化面などの日中交流深化への意欲が示されました。

 その後、在中国日本大使館において遠山団長が記者ブリーフィングを行い、北京空港にて急いで食事をとり空路福州に向かいました。

【8月20日(火)】

●黄檗山万福寺訪問
 朝、福州のホテルからマイクロバスで一時間ほど。隣の福清市にある黄檗山万福寺を訪問しました。清の時代、このお寺の住職であった隠元禅師が日本にわたり開いたのが、京都の宇治にある同名のお寺です(その時に伝えた豆が「インゲン豆」なのだそうです)。そういう意味で、中国と日本との文化的交流の拠点の一つとなった場所です。ただ、実際にはお寺は一度荒れてしまい、実業家の寄付により11月の完成目指して現在再建工事中で、唐時代の様式の大伽藍ではありましたが建物やご本尊は真新しく、境内は工事中でショベルカーがあったりして、歴史的風情を感じるにはいささか残念だった気もします(そういう気分になるためには、宇治に行った方がよいかも…)。

●福州京東方光電技術有限公司(BOE社)見学
 続いて、最新液晶や有機ELディスプレイの生産を行っている企業の工場を見学しました。巨大な敷地の工場でしたが、ラインを見学することはできずショールームを視察でさまざまな製品を眺めました。翌日の日経新聞に、この会社の名前が「次期iPhoneに採用される方向」という記事が出ているのを見つけ、思わず納得。タイムリーな視察でした。
アップルが中国製有機ELの採用を検討、JDIへの影響は(日経ビジネス)


●福建高壹工機有限公司見学
 福州市に戻り、電動工具メーカーの工場を見学。こちらは1985年に日本の日立工機グループの合弁会社として設立されたものが、2017年に工機ホールディングス株式会社に社名を変更して今に至っている企業です。こちらは工場の製造ラインを見せていただきました。人件費も徐々に上がってきており、また米中摩擦の影響でアメリカから関税が課せられる対象にもなってしまい、ご苦労があるというお話も伺いました。

●鄭新聡・福建省委員会常務委員らと会見
 夕方、福建省の幹部の方々と会見を行いました。挨拶の交換ののち、福建省と日本との文化的交流の歴史などについてお話がありました。その後の夕食会では、小熊慎司副団長が得意のトーク等を生かして中国の福島県等への輸入規制の解除についてアピールし、鄭常務委員から「協力する」という言質を引き出す外交成果もありました。個人的には会見や夕食会の際に供されるお茶がよくある緑茶ではなく美味しい烏龍茶だったのは、さすが福建省と感心しました。

【8月21日(水)】

●福州開元寺訪問
 朝、福州の開元寺というお寺を訪問しました。遣唐使船に乗って唐の都長安を目指した空海が嵐のために福州に漂着し、長安に向かう前に滞在したお寺です。街中にある現在も信仰を集めているお寺で、多くの方がお線香をあげてお参りしていました。

●厦門奥佳華知能健康設備有限公司見学
 高速鉄道で福州から厦門まで移動し、厦門奥佳華知能健康設備有限公司(OGAWAグループ)を訪問。電気マッサージ椅子を製造しており、60以上の国や地域に輸出している企業です。センサーやAIを駆使してその人の体調に応じたマッサージができるとの由。少し試してみましたが、すこぶる快適でした。

●陳秋雄・厦門市委員会副書記らと会見
 夕方、厦門市の幹部の方々と会見しました。挨拶の交換ののち、厦門市の産業や経済、観光などについて紹介がありました。また夕食会では、僕から、水島港と厦門港はコンテナ船の定期航路があり、経済的なつながりをより深めたい旨お話しました。なお、厦門市は街も綺麗で多くの観光客を集めていることもとても納得できる場所でした。また、天秤かごをぶら下げて果物を売る行商さんも、QRコードで決済していたのは流石のキャッシュレス社会と納得しました。

【8月22日(木)】

●コロンス島訪問
 世界文化遺産に登録されているコロンス島を訪ねました。アヘン戦争後に各国の租界となり、列強の領事館を建設していた歴史があり、それらの時代の建造物が現在も保存されて美しい観光地となっています。旧日本領事館もありました。全く個人的には、その時代のピアノが展示されているピアノ博物館にて「わー、ベーゼンドルファーだー!あ、スタンウェイだー!こっちはベヒシュタインだー!」と勝手に盛り上がっていました。

【まとめ】
 前半の北京滞在中は、要人や研究者の方との会見が相次ぎ、現在の東アジアを取り巻く諸情勢についての貴重な意見交換を集中的に行うことができました。二年前に同じ団で訪中した時には、北朝鮮の核実験やミサイル発射等が大きな問題となっており、議論の主要テーマとなっていました(過去のブログ「中国訪問記―北朝鮮ミサイル問題、一帯一路、貧困対策」「先の中国訪問における孔鉉佑氏の発言について」参照)。一方で今年は、北朝鮮はほとんど話題にならず、米中の経済摩擦が主要テーマでした。状況の変遷ぶりには改めて驚くばかりです。中国側からは強気な発言が相次ぎましたが、他方では日本との関係改善が大きく意識されており、その背景には危機感のようなものもあるのだろうと思っています。事前に水島コンビナートの各企業を訪問した際、米中摩擦の結果中国への輸出にマイナスに影響する見通しについて何社かからお話を伺っています。そうした中で、率直な意見交換の機会を持てたことは貴重なことだったと思っています。

 後半の福建省では、うってかわって日本との歴史的・文化的な交流の深さや、中国のモノづくりの現場や技術などを見学する機会となりました。帆船の時代に、難破などの苦難を乗り越えながら海を渡り教えを伝えた歴史上の偉人に思いを致し、また近代において中国が開国し近代化するプロセスの一旦を目の当たりにすることも有意義なことでした。

 こうした機会を頂けた中連部を始めとした中国側の皆さま、サポートして下さった外務省や在北京大使館、在広州総領事館の皆さま、そして遠山清彦団長、小熊慎司副団長をはじめとする日中次世代交流委員会訪問団メンバーの皆さまに感謝を申し上げます。

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(写真:黄坤明氏と訪中団メンバー)

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