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2017年9月 3日 (日)

中国訪問記 ― 北朝鮮ミサイル問題、一帯一路、貧困対策

 さる8月27日~31日の日程で、遠山清彦衆議院議員を団長とする超党派の日中次世代交流委員会第五次訪中団の副団長として中国の重慶、西安、北京の各都市を訪問し、視察や面談等を行いました。主要なポイントについて記しておきます。

(9月3日夕方、北朝鮮の核実験を受けて一部追記しました。)

<北朝鮮ミサイル問題>

 全くの偶然なのですが、中国滞在中の8月30日に、北朝鮮が弾道ミサイルを発射し北海道上空を通過しました。この問題を受け、翌31日の北京での要人会見では、特にこの問題について中国側に日本の姿勢を伝え、意見交換をすることとなりました。特に、夕方に会談した孔鉉佑・中国外交部部長助理は朝鮮半島問題担当でもあり、前日に日程がセットされたことから、このタイミングでの直接の面談には先方にもそれなりの意図があったものと思われます。 以下にこの会談のポイントを橋本の記憶とメモに頼って記します。

Thoyama_kou_meeting

 遠山団長からは冒頭、北朝鮮のミサイル発射は日本や中国のみならず北東アジア地域の平和と安定を揺るがす暴挙であり言語道断であること、問題解決のための「対話と圧力」の方針のうち圧力を強めるべきタイミングであると日本が考えていることを伝え、、中国にもそれに協力してほしいと強く要請しました。


 孔氏からは、国連安保理決議違反の北朝鮮の行動には中国は反対の立場であることを明確に述べられた上で、圧力を保つことは大事であるものの、それだけでは解決しないのではないかと述べられた上で、エスカレートを防ぐため対話も模索すべきとし、米韓は軍の演習を一年凍結し、北朝鮮は核開発とミサイル発射を凍結し、その期間内に対話で問題解決する努力をするという中国の提案(いわゆる「ダブル・フリーズ」)について考慮されたいとのお話がありました。

 それに対し遠山団長は、北朝鮮問題に対して平和的外交的解決を望む立場は日本も同様であるとした上で、仮にモラトリアムを設けても北朝鮮がその約束を守る保障はなく、仮に裏切った場合、選択肢がむしろ軍事的オプションしかなくなってしまうという懸念について触れ、実際にミサイルが上空を通過した日本人の危機意識について共有していただきたいと反論しました。

 以上のように、双方がそれぞれの立場に立って提案や要望を率直に述べあう形で議論は終始しましたが、とにかく北朝鮮のミサイル発射翌日に日中間で率直にお互いの意見交換ができたことは、極めてタイムリーであったと考えます。遠山団長の要請は、宋濤・中国共産党対外連絡部(中連部)部長との会談、陳元・政治協商会議副主席との会談でも行われました。

 その後参加団員間でも意見交換をしましたが、私の個人的印象として、中国は北朝鮮の核問題の方を重きに捉えている(もちろんミサイル問題とは不可分ですが)ことで少し日本と問題の捉え方が違っていること、また仮に北朝鮮を対話のテーブルに乗せたとしても、中国としてもそこから先のシナリオを描き切れていないかもしれないことなどを感じました。もちろん私たちにも拉致問題等も含めさまざまな北朝鮮に関する問題に対して、即時有効な解決策を有しているわけでもなく、悩ましいテーマであることも事実です。引き続き関係諸国間でコミュニケーションを図りながら協力して毅然とした態度を保ちつつ、解決策を探り続けるべきでしょう。

(以下追記)
 9月3日昼、北朝鮮が水爆実験と称する核実験を行いました。事前に水爆の小型化に成功したと宣伝しておいてのタイミングですから、そうした能力の誇示ととらえてよいと思います。当然ながら、累次の国連決議に反する言語道断の暴挙であり、決して許容されるものではありません。安易にこれに屈してはなりませんが、一方で軍事的エスカレーションという悪夢的シナリオも望ましいものではありません。政治的・経済的な制裁による「圧力」強化に向け、関係各国の一致結束が問われる状況と言えるでしょう。

 孔氏は会談の際、「中国国境から90Kmしか離れていない場所で核実験されるのは不愉快であり、中国も強い危機感を持っている」とおっしゃりました。その核実験が強行された今になってもまだ中国が「対話」を念頭においたアプローチを保ち続けるのか、また北朝鮮とおそらくコンタクトを持っているであろうアメリカもどのように受け止めるのか、十分な関心を持って注視しなければなりません。
 
<一帯一路>

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 重慶は人口3,390万人の大都市であり、中国内陸部唯一の国直轄市とされています。指定以来毎年2桁の経済成長率を続けており、自動車やコンピュータ、プリンタ、コピー機などの大生産拠点(世界のノートPCの1/3は重慶で生産されている由)となっています。この製品のヨーロッパへの輸送路および物流拠点として喩新欧鉄道や両江新区等が整備されています。それらの拠点を視察しました。

 鉄道は重慶からドイツまで総延長11,000kmで所要は13日間だそうですが、それでも沿岸部まで運んで海路を経由するより20日は短くなったとのこと。

 正直、上海や香港など中国沿岸部は発展している認識が広いと思いますが、内陸都市である重慶がそのような存在であるという認識は行って見るまで持っていませんでした。まさに百聞は一見に如かずとはこのことです。まるで新宿かマンハッタンかのような近代的高層ビル群は、かなり事前の想像を上回っておりとても驚きました。

 なお、重慶には日本の総領事館は設置されているものの、日本人は約350人しか在住しておらず、重慶における日本の存在感は残念ながら薄いと言わざるを得ません。まだ沿岸部より地価等は安く、これからの企業の進出先等として十分検討に値するものと思います。

 西安においても、同様に欧州向け鉄道貨物ターミナル等を視察しました。貨物用コンテナは沢山見ましたが、列車そのものは「出発してしまいました」とのことで見ることが出来ず、鉄分のあるものとしてはいささか残念でした。

<貧困対策>

 重慶では市の担当者から中国における貧困対策についてもヒアリングを行いました。一日約一ドル(一昨年約二ドルになりました)以下で生活する人を絶対的な貧困生活者と国際的に定義されていますが、中国でも同水準の生活者を貧困者と定義し、2020年までに貧困者ゼロを目標として2014年からトップダウンで貧困対策を進めています。

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 重慶市では2014年には165.9万人いた貧困人口が、対策によって現在は30.3万人まで減らすことができたとのこと。市長をトップとする責任体制を組み、インフラ整備(道路やため池、農地改良)から就労支援、奨学金など教育支援や職業訓練、医療の提供、貧困対策ローン等の金融支援、ネット取引による産業づくりやグリーンツーリズム、条件不利地域からの移住、そして稼得能力のない者地域に対する最低生活保障まで、行政のみならず国有企業等も協力させる全社会的体制でとても幅広い対策メニューを揃え、約20万人がソーシャルワーカー的な仕事にあたり各世帯を訪問し、それぞれにに適した対策を組む(対象者は貧困から脱した者を含めて約170万人だそうですから、ものすごい密度です)という、極めてきめ細かい対応をとっているとのことでした。監査や評価の仕組みまで説明がありました。

 もちろん日中の経済状況の違いや「貧困」に対する政策目標の違い(日本で問題になるのは「相対的貧困」です)があるので、同列に並べて比較すべきではありませんが、それにしても貧困対策にかける習近平国家主席以下中国政府の意気込みをひしひしと感じる説明に、先日まで厚生労働副大臣として日本における生活困窮者自立支援や生活保護制度を担当していた者の一人として、軽い衝撃を受けたのもまた事実です。

 中国はまだこれから少子化・長寿化の影響が著しくなる段階ですので、単に2020年に貧困ゼロにしてもその先も息の長い取り組みが必要になるものと思われますし、トップダウンの政策ゆえにどこまで息切れせずに継続できるかは未知数の部分もあるかもしれません。ただ、このような社会政策も進めているということは、とても勉強になるものでした。

<まとめ>

 今回の訪中団は、自民党、民進党、公明党の各党から若手有志10人が集まった団でしたが、遠山清彦団長、小熊慎司副団長、伊佐進一事務局長以下メンバーに恵まれ、移動中や食事の際などに普段はなかなかできない党派を超えた意見交換(そしてしばしば小熊副団長による手品の披露)が活発に行われ、それも有意義なものでした。

 また古都・西安では、視察の合間に南城門など歴史的な史跡見学の機会も頂き、吉備真備や空海といった歴史上の人物が憧れ苦難の末訪問した同じ場所に、1,000年の時を超えて立つロマンを味わうこともできたのは個人的にもうれしいことでした。

 日本と中国は、政治体制も異なりますし、歴史的な経緯もあり、まず地理的にも接していますから、摩擦や見解の相違、控えめに表現してあまり愉快ではない事も少なからず存在するのも事実です。しかしだからといって引っ越しするわけにも行かず、付き合っていかなければならない間柄でもあることも直視すべき現実です。こうした訪問交流が、直接懸案の解決につながるとは限りませんが、それでも両国の未来にとって意味のあることだと僕は信じています。

 今回の訪中団の実現にご労苦を賜った中国・日本両国のご関係の皆さまと、衆議院議員として国会に送り出しこうした機会を恵んでいただいた地元倉敷・早島の皆さまに、深く感謝を申し上げます。


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