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2014年6月

2014年6月20日 (金)

第186回通常国会を振り返って

 さきほど衆議院本会議が終了し、事実上通常国会が閉会となりました。「好循環実現国会」として第2次安倍政権の2度目の通常国会であり、本予算の早期成立や消費税の増税、様々な重要法案の成立、そして安全保障法制度の見直し議論といった多くの成果を上げた国会だったと思いますし、最終日の石原環境大臣に対する不信任決議案の提出は残念でしたが、まさにその前日まで空転したり政局になることもなく、その分与野党ともに着実に審議を行い、150日の期間内で多数の法案を成立させることができた極めて充実した国会であったと思います。

 また私個人として振り返ってみても、やはり充実したものだったと思います。昨年秋から党総務部会長代理、衆議院総務委員会理事また党情報通信戦略調査会事務局長を拝命しています。この関係では地方自治法改正案、電波法改正案、行政不服審査法改正案また議員立法の行政書士法改正案等の法案審査を行い、成立させることができました。特に地方自治法改正案では、初当選以来9年目にして、また落選も経験した中で、はじめて本会議場の演壇に登壇し、党を代表して総理に質疑する機会を得たことは、個人的にも感慨深いものでした。折角の機会ですから言いたいことは言えたと思います。現場でも、高木陽介委員長、山口泰明与党筆頭理事、原口一博野党筆頭理事をはじめ各党の理事の方々との緊張感を持ちつつも協力的かつ前向きな協議の中で、充実した審議が進められたと思います。とりわけ今年はNHK関係の審議にはいささか気を遣いました。いろいろありましたので。

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 もう一つの所属委員会である衆院法務委員会でも、円滑な審議により今国会政府提出法案を全て議了できたことに加え、継続審議となっていた児童ポルノ規制法改正案について修正の上成立させることができました。実務者協議にあたられた各党理事に敬意と感謝を申し上げます。国会対策委員会副委員長としてこの委員会を担当しましたが、円満に経過してほっとしています。またもう一つの担当委員会、海賊・テロ対策特別委員会も円満に終始し、最後にイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」による拉致事件等に関する件として全会一致で非難決議を行いました。

 また一期生の頃から携わり、昨年から党難病対策PT事務局長として法案作成に関わっていた難病医療法案等についても今国会でほぼ全会一致で成立。これも衆院厚生労働委員会に出向き、自民党からの唯一の質疑者となる機会を得ました。また公明党との共同提案者として名を連ねていたアレルギー対策基本法案も今回成立させることができました。

 一方党内でも様々な活動をしています。まず道州制推進本部事務局次長として道州制推進基本法案の議論に取り組みました。今国会では残念ながら党内意見の集約に至らず、これは次期臨時国会での再チャレンジとなります。人口減少社会を見据えつつ引き続き丁寧に説明、議論を行う必要があるでしょう。また先に挙げた児童ポルノ規制法改正のみならず、リベンジポルノ対策や3Dプリンター銃対策など、特にネット上の違法有害情報による被害対策にはあれこれ頭を悩ませました。リベンジポルノ対策では最後にひと知恵絞ったので、それで今後の法制化に弾みがつき、不当な被害に苦しむ方々が減らせるよう願っています。またサイバーセキュリティ対策基本法案の提出もサポートしましたが、これも残念ながら今国会での成立は困難な模様です。

 また医療事故調査の関係では、党内において再発防止につながる制度となるべく論陣を張りました。法律は今国会で成立しましたが、今度の厚労省のガイドライン作成を注視しなければなりません。また議連の幹事長を務めている歯科技工士法の改正も同時に実現しました。子育て支援に関しては、子ども・子育て支援新システムの公定価格の議論が白熱しています。子どもたちの健全な発育に繋がるようにしなければなりません。その他、法曹養成制度、宇宙政策、結核対策、肝炎対策、認知症サポーター、ケアラー支援、LGBT勉強会などなど、議連等の活動で様々なテーマに関わりました。党国家戦略本部の「2030年の日本」プロジェクトでは様々な刺激を受けました。また昨年冬の、総理靖国参拝と重なりとても寒かった北京訪問から半年を経ずして、再び日中議連の一員として民主党辻元清美衆院議員、公明党伊佐進一衆議院議員とともに北京の地を踏むことができたのは、外交的にも有意義だったと思います。

 そして今国会で最も心血を注いだのは死因究明制度でした。前半は死因究明基本計画検討会の最終報告書のとりまとめにあたり提言を行い、これが纏まった春以降は議員立法「死因究明推進基本法案」の起案から党内手続きから各党協議から国会提出まで、目が回るような忙しさでした。保岡興治議連会長にご指導を頂きながら、津島淳事務局次長にサポートしてもらいつつ、ゼロからスタートした割によく頑張ったと正直自分でも思います。国会最終盤となり他法案との兼ね合い等から残念ながら委員長提案とすることができず成立させることができませんでしたが、衆議院内閣委員会にて審議入りしたまま継続審議となりましたので、次期臨時国会での早期成立を目指します。最近、子どもの行方不明や虐待死のニュースも多く、そうした事件を防ぐ対策にも繋げられるように展開させられればと思っています。このようなことで、東京では目の回るような充実した日々を過ごすことができました。地元の皆さまの暖かいお励ましと、先輩や同僚の議員各位、のみならずサポート頂いた官僚や衆院法制局、党職員、そして事務所スタッフのご理解とアシストに支えられて頑張ることができました。

 国会開会中は、だいたい月曜から毎日国会対策委員会の正副委員長打ち合わせがあるために結局平日はほとんど東京に張り付きとなりました。そのためになかなか倉敷・早島に戻ることができず、地元の皆さまには正直申し訳ない思いがあります。その中でも「橋本がく 前進の集い2014」には多数の皆さまにご参集いただき、貴重なご支援を賜りました。また各地域でのミニ集会でも、暖かく、また時には厳しくご意見・ご指導を頂き、街頭に立ってもご声援を頂き、感謝の思いで一杯です。

 初登壇の対総理質疑の際、「最後に、議場におられる議員諸兄姉に一言申し上げます。掲げる政策や立場は異なりますが、すべての皆さんに愛する地元や故郷(ふるさと)があるはずです。冒頭申し上げた通り、今後の日本は、人口の激減というこれまでの政策の前提や常識が通じない世界に突入します。
地方制度を考えるにあたっても、現在の形に囚われてはなりません。過去の流れにも囚われてはなりません。未来に暮らす子どもたちや孫たちに、よりよい故郷(ふるさと)とよりよい日本を残せるよう、来るべき将来を真摯に見通し、前向きかつ柔軟、そして大胆なご議論を賜りたい。」
と呼びかけました。これは、自分がかくありたいと願っていることを述べたことです。通常国会は閉会しますが、これからも故郷への感謝を胸に努力を続けますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

橋本 岳 拝

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2014年6月18日 (水)

死因究明等推進法案が審議入りしました。

 かねて異状死死因究明制度の確立を目指す議員連盟事務局長、および自由民主党政務調査会死因究明体制の推進に関するプロジェクトチーム座長として取り組んできた死因究明等推進法案が、昨日5会派(自民・公明・みんな・結い・生活)共同提案として衆議院に提出され、本日衆議院内閣委員会にて趣旨説明を行いました。4月に法案提出の方針を決めてから駆け足でここまで漕ぎつけ、いくつか山や谷を越えてやっとここまで来たかと思うと感慨深いものがあります。ただし今国会もう閉会間近なため、次期臨時国会での成立を目指すということになります。

 この法案の関連資料等をまとめたページを作りましたので、ぜひご覧いただければ幸いです。なお、5年間の時限立法となった理由は、今国会中に内閣府の肥大化について問題提起があり、自民党行革本部や内閣において対策が検討される時期と本法検討時期が重なったため、その議論に配慮した結果です。ただ、延長や他省庁への移管も含めた検討規定を入れていますので、5年経ったら何もなくなるという状態は避けるように工夫しました。

 まだ賛同頂けていない会派がありますので、国会閉会中にも協議を行い臨時国会では全会一致で成立させることができるように取り組んでいきます。また同時に、今月中に閣議決定される見通しのいわゆる「骨太の方針」でも関連施策の推進を記載してもらえるよう調整中であり、来年度予算の獲得に向けても引き続き努力する所存です。引き続いてのご指導ご鞭撻をお願いします。

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2014年6月 9日 (月)

児童ポルノ法に関する発言を巡るいろいろなこと

 さる6月4日、衆議院法務委員会にて「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案」(いわゆる「児童ポルノ法」の改正案)の委員長提案の動議に関して発言を行いました。その内容はBLOGOSにおいて主要部を掲載して頂いています。これに関していささかの反響を頂き恐縮しています。いくつか思うところを補足したいと思います。たかだか20分の質疑を行うだけでも、言葉として口にはしなくてもこのくらいのことは考慮しているということを感じていただければうれしいです。

 まず、児童に対する虐待は多くの場合刑法上の傷害罪や強制わいせつ罪、強姦罪などにあたります。さらに児童虐待防止法があり、保護者による暴行、わいせつ行為、育児放棄、暴言、絶食、配偶者間暴力等心理的外傷を与える暴力まで、禁止されています(ただし児童虐待防止法は虐待に対する行政の対応を定めたものであり、虐待そのものに対する刑罰はありません)。一義的にはこれらの法律によって規制され防止されるべきものです。

 その上で「児童ポルノ法」が存在する意味は、その商品的価値により児童虐待が誘発されることを防ぐためだと僕は思います。だから「買春の実行、周旋、勧誘」および「ポルノの所持、提供、製造」が罰則つきで禁止されているのであり、虐待そのものではなくその誘因となる周囲に対して罰則つきの規制対象を拡大することが本法のポイントなのです(もちろん、児童買春の実行や児童ポルノの製造は、同時に刑法犯となる場合も多いと思います)。「児童ポルノ法では虐待は防げない」みたいな議論を見かけますが、刑法等と組み合わせて考えて頂くべきことですし、「暴力的虐待」の画像等は「性的虐待」の画像と比較してネット等での流通量がそもそも少なく、画像の所持や製造等を規制しても虐待を減らす効果が期待できません。当然ながら明らかな刑法犯として取り締りの対象となる行為の動かぬ証拠となる画像を流通させる人もあまりいません。そのために本法の対象となっていないものと思います。

 その上で「マンガ、アニメ、CG等の児童ポルノに類するもの(以下マンガ等)」をどう扱うかで大きな議論があります。まず一点確認したいのは、昨年提出され今回の改正案に際して撤回された改正案(自公維案)もマンガ等を規制するものではなかった、という点です。質疑の際に読み上げた通り「政府はマンガ等と児童虐待の関係性を調査する」という検討規定に過ぎませんでした。ですから「不当に表現の自由を規制するものだ!表現者を萎縮させるものだ!」という真正面からの主張に対しては「いやいや、何の規制もしていません。関係があるかないかわからないためただ調査するだけですから、ご指摘は全く当たりません」という肩透かし的反論が成り立ちます。正直、論壇からの反論は過剰に大袈裟に過ぎ、かえって効果の薄い議論が多いと思っていました。マンガ等に関する法改正に反対された方々も自分の胸に手を当てて考えて頂きたいと思います。考えの違う人に対する反論は、自分の言いたいことを大声で言えばよいというものではなく、相手の心に届くものでなければなりません。さもなくばただの味方向けのパフォーマンスに見えます。

 ですから僕は、調査することの妥当性について議論をすることにし、対照との比較調査の困難さや因果関係と相関関係の鑑別の困難さ、そして「政府が調査する」こと自体のインパクトを問題にすることにしました。一応学生時代から社会調査法の授業を受け、多少の実施経験もある身としては、発言したような問題はすぐ頭に浮かびました。また世論誘導のための調査や実施そのもののインパクトを狙った邪道な調査の存在は常々苦々しく思っており、日本国憲法に次ぐ高い地位を持つ社会規範である法律でそんな邪道なものを規定するなんてもっての外!という思いもありました。個人的にはこの思いがこの項目に反対した最大の理由かもしれません(こんな感覚は調査屋経験のある立法屋なんていう珍しい人しか共感されないだろうなあ…)。

 なお「検証されていない仮説に基づく立法・仮説はすべきでない」といささか大見得を切りましたが、本当はこれは「原則として」という言葉があるべきです。「検証されない」ことを理由に規制が遅れ、その結果として被害が拡大してしまった、後で原因が判明して公害や薬害と呼ばれるに至った事象を、私たちは過去にたくさん経験しています。伝染病の拡大など一刻を争う事態もあり得ますから、場合によっては検証されなくても迅速な規制が功を奏することもあるでしょう。一方で、法律等による規制は何の根拠もない恣意的なものであってはならないのも当然なことであり、どちらが優先されるかは因果関係の推論の確かさや被害拡大の急激さや深刻さ等を勘案してケースバイケースで検討されるべきことだと思います。その上で私は今回の場合は、マンガ等の規制と児童虐待との因果関係はいまいち明らかではないため、原則によるべきという立場に立ったわけです。

 逆に言えば「マンガ等と児童虐待は無関係である」という立証も誰も行っていませんので、土屋正忠議員の主張にまったく理がないとは言い切れません。実のところ衆議院総務委員会では土屋議員と僕は隣の席で、いつもお喋りしてる当選同期の仲良しです。歳は親子くらい違いますし、特に地方自治の経験は国会議員随一ですからいろいろ教えて頂いています。その上で、それぞれの意見を堂々主張できる個性の強さと、皆の意見を聞いた上で最終的に決まったことには従う謙虚さを併せ持つ人が多いことが、自民党という政党の良いところだと個人的には思っています。ああいう主張を堂々述べた上で改正には賛成したのですから、僕は土屋正忠議員は立派な方だと思います。ただし個人的には正直、「海外からこのような指摘を受けたから」「専門家からこのような提言があったから」という理由での立法は僕は嫌いです。参考意見としてはあり得ますが、我が国の国民を縛る法律なのですから、主にはやはり国内の事象による立法事実に基づき、国会にてその中身が検証され、立法されるべきだと思います。

 なお児童ポルノに類するマンガ等について、発言中にも触れていますが、今回の法改正で検討項目を外したからといって、放置することを勧めるつもりは毛頭ありません。法律に書くべきではないとは申しましたが、マンガ等と児童虐待の実行にどのような関係があるのかないのか、誰か研究者が社会科学的に妥当な方法で調査研究を行うことは支持しますし、結論は参考にすべきです。また公序良俗の維持といった別の観点で、販売規制等を行うことは考えられるかもしれませんし、表現についても、表現者自身が社会に与える影響を考慮してほしいなと思うこともあります。

 最大の問題はインターネットです。書籍等であれば成人コーナーを設ける等適切に入手方法を制限することができますが、ネットにそのようなハードルを設けることは困難です。自民党内の議論でも、児童ポルノに限らずリベンジポルノ問題や3Dプリンターでの拳銃作成など、最近はネットでの違法ないし有害情報の流通をどうにかできないかという指摘が必ずあり、大体僕は弁護側に回りますが、集中砲火を浴び続けるのはなかなかシンドイものがあります。ここは、本当に、利用者一人一人の自覚を強く促します。さもなくば不本意な規制を考えざるを得なくなりかねません。例えばインターネットを使うのに免許証が必要な社会というものを僕はあまり想像したくありませんが、人身事故被害があまりにも多ければ、いつかそんな話にならないとも限りませんよ。このままでは。

 そんなここんなを踏まえ、今回の質疑となりました。なお今回の改正法の衆院通過(および昨年に提出された自公維案の撤回)にあたっては、多くの方がの理解とご協力がありました。特に最大の功労者は、意欲を持って実務者協議を重ね合意形成し各党の党内を取りまとめた衆議院法務委員会の理事(オブザーバー含む)各位だと思います。すなわち吉野正芳、土屋正忠、ふくだ峰之、盛山正仁、大塚拓(以上自民党)、遠山清彦(公明党)、階猛(民主党)、西田譲(日本維新の会)、椎名毅(結の党)の各衆議院議員です。まだ参議院での審議が残りますが、仮に成立した場合、最大の賛辞は上記各氏に捧げられるべきだと思います。ぜひ賞賛してあげてください。これはとても大事なことですよ!

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