一般用医薬品販売に関する規制へのご質問について
前のエントリに綿貫様からコメント欄にてご質問をいただきました。ありがとうございました。普段あんまりコメント欄に返信できずにいるのですが(申し訳ありません、、、全部目は通しています。感謝申し上げます)、誤解があるようですのでそれを解くためにもお返事差し上げます。
まず、僕のエントリをきちんと読んでいただきたいですが、僕は「ネット販売だけを規制すべき」とは一言も言ったこともありませんし、そのような立場ではありません。店舗販売の方にも言うべきことはあると思っていますし、このブログでも一般用医薬品販売全般に通じる議論をしています。今一度お目通しを願います。ご提案については、お客の利便性のために営業時間をどうするかはお店の営業努力の問題であり、国が保障することではありません。ご理解賜りますように。
ただ敢えて申し上げれば、店舗販売では医薬品の陳列配置などについて既にさまざまな規制があり、一般医薬品を販売する店舗は当たり前に守っているのです。ところがネットでの販売では、例えば「半径七メートル以内に陳列」といった物理的な規制はそのままは実現できません。そこをどのようにネット的に実装するかが問われているのです。
実装できないからネットではその規制は省くということにすると、店舗販売の方からすれば逆に不公平なことであり法の執行の公正を欠きます。一方、実装が難しいためにネットでの販売そのものを禁止したところ、1月の最高裁判決に繋がりました。だからネットでのLRAの法理に基づく規制の在り方、具体的な実装方法が主に検討の俎上に上がっているのだと理解しています。
16日の検討会で厚労省が出した資料「第1類医薬品が医療用として販売されていた時の副作用発生状況について」によると、例えば現在「ロキソニンS」として販売されている解熱鎮痛剤について、同じ成分が医療用として使用されていた際には約9年間で1,345例の副作用報告(うち死亡例62例)があり、医療用承認申請時に行われた臨床試験では1,700例のうちなんらかの副作用発現例は163例(発現率9.6%…この数字は結構びっくりしました)。医療用の製造販売後調査では6年間で副作用発言例は232例(発現率2.0%)です。
一方、一般用の副作用発生状況は2年間で8例の副作用報告(うち死亡例1例)にすぎません。何人がロキソニンを買って飲んだかは資料がなく発現率は計算できません。
同じ成分で概ね用法も同じですから、実際の副作用の確率が変化するとは考えにくいです。ということは、医療用の場合は医師や薬剤師の管理下で副作用の発見が早く、医薬品の因果関係が考慮されるが、一般用の場合は重篤化しないとわからなかったり、医薬品の副作用とわからないまま治療してしまい報告されないといった、状況把握の問題があるということです。
したがって一般用医薬品の販売方法について、特にリスクが高いと考えられるものについて、適切に管理すべく厚労省が規制することは、十五分ぐらいに合理的なことであると証拠を基に申し上げます。その上で、店舗での各種規制と同等のネット規制のあり方はどうあるべきか、が議論されるべきことと考えています。さらに正直言って副作用発現率9.6%はちょっとびっくりで、かつ医療用の場合と一般用の場合で実態把握の差がこんなにも出ることも非常にびっくりで、ネットでも店舗でもハイリスクのものについては本人確認とかの実態把握強化の方策を考えた方がいい数字かもしれないとも思っています。
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コメント
韓国とのスワップの期限が近づいてきて、早く切れればいいのにと願っておりましたが、延長の動きがあるというのを耳にいたしました。
もともと日本には必要の無いものですし、韓国からも「必要無し」との声が聞こえてきます。たとえ頼まれたとしても、引き受ける義理はもう無いと思います。
先頃からの日本に対する、また天皇陛下に対する、度重なる非礼の数々だけでも憤りを感じておりましたが、事もあろうに靖国神社の池に向かって、自慢げに放尿する動画を観るに至って、この国との如何なる関係も築くのは無意味であると感じています。
「日韓関係重視の為にもスワップ延長を」と活動する議員が、自民党内部にも存在するとも聞きます。
真に日韓関係を構築する為には、まず基礎から、つまり偽りやごまかしの無い事実に基づいた土台から作らねば、崩壊するための構築に他なりません。韓国に事実を直視する謙虚さと勇気が無い以上、日本ばかりが不利益や屈辱を浴びせられることが目に見えている関係を、これ以上我慢は出来ません。
進歩や成長の無い者と共に歩むわけには参りません。
韓国には、日本が戦後官民上げて、国際的な信用を得るために長い努力をしたように、真摯な努力を要求すべきです。数年単位のそれが信頼を勝ち取ることが出来た頃に、初めて交流を深める相手になれるでしょう。かの国が、そこまでの手間はかけたくないと言うのなら、日本の友にはなれないでしょう。
「人生を渡り切るための安全な羅針盤はただ一つ、正しいことをするということだけだ」という言葉をご存知でしょうか。
嵐に揉まれている時にこそ、安全な羅針盤に従って、真っ直ぐに舵を取って進んでください。目先の都合で右往左往して国民を遭難させないで下さい。
投稿: ちょこ太 | 2013年6月 5日 (水) 17時04分
出来ない理由ばかり並べないで、どうすれば出来るかに知恵を絞るべきではありませんか。
店舗が規制が多くて不公平というのであれば、店舗の規制も外せば公平です。そのうえで安全を担保する方法を模索すべきでしょう。
不自由主義者は自民党を出て共産党にでも行くべきです。
投稿: 辻本修英 | 2013年6月 8日 (土) 12時34分
民主主義を否定するような三木谷社長やそれを批判しない自民党に喝を入れたとネットで知りました。
言うべきことを言う、今の姿勢を大事に頑張ってください。
投稿: 下澤 淳 | 2013年6月13日 (木) 20時49分
全く正論ですね マクロ経済的にもデフレ時の規制緩和はさらにデフレを悪化させるのに・・ましてや医薬品は命に関わるんですね 素晴らしい提言ありがとうございました!
投稿: Mine | 2013年6月13日 (木) 22時22分
はじめまして、橋本先生。
橋本先生が自民党の会議で、成長戦略の一つである市販薬インターネット販売の安易な解禁反対 とご意見されたと聞いてご支援に参りました。
まずは先生の仰るように、副作用が生じた際に誰が責任を持つのか、またネット販売開始されて本当に国民の利益になるのかが疑問です。今回の件、産業競争力会議の三木谷会長がゴネたため成長戦略に盛り込まれたようですが、自己責任を普段から声高に主張している三木谷会長の事ですから、ネット販売を解禁するにあたって「予期せぬ副作用が起きれば、すべて販売元(楽天やアマゾンなど)が責任を負い、使用者から賠償要求があればその全額を支払う義務がある」という文言を加えることに異存はないのでしょう。
第二に、より重要な問題です。そして政権がTPP交渉参加を安易に決定したのもそうですが、国民生活に対して大きな影響を与えるにもかかわらず、たかが民主主義によって選ばれていない者の集まりである連中が筋書きした法案を、民主主義によって選ばれた国民の代表たる国会議員間で碌に議論しようともせずに通そうとしている という点です。 日本はいつから彼ら「特権階級」の人間が勝手に政策を決めて良い専制国家になったのでしょうか。民主主義国だと思っていたのは 私の思い違いだったのでしょうか。
橋本先生に対しては「医師会や薬剤師の利権を守りたいだけだ。」などと誹謗中傷が来ているかも知れませんが、「楽天の利権誘導をしたいだけ」の輩に対して何ら物怖じする必要はありません。政治とはそもそも「利権や癒着」によって動くものだからです。問題はそれが民主的な手続きに則っているかどうか でしょう。
基本的に私は安倍政権を支持していますが、このようなおかしなことに関しては「是々非々」で批判していこうと考えています。 橋本先生におかれましても、民主的に選ばれた国会議員の一人として、身内と言えどおかしい動きに対しては異を唱えてくださいますよう、よろしくお願いいたします。
投稿: 薬のネット販売反対 | 2013年6月14日 (金) 05時24分