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2013年3月18日 (月)

議員立法の法案化に向けたこれまでの議論の整理

平成25年3月18日

議員立法の法案化に向けたこれまでの議論の整理

医薬品のインターネット販売を考える議員連盟
会長  尾辻 秀久

本議員連盟では、本年に入ってから五回にわたりヒアリングと議論を行ってきた。その議論を以下のように整理し、これを踏まえて議員立法の法案化に向けた取り組みを今後開始するものとする。

●一般用医薬品の販売についての原則
・セルフメディケーションの推進という観点から、薬剤師等から提供された適切な情報に基づき、自己の判断において購入・使用する一般用医薬品について、応急的な対応や日常的な保健などの面で果たすべき役割は大きい。
・一方で、医薬品には必ずリスクが伴う。比較的リスクが少ない一般用医薬品でも毎年250件前後の副作用報告があり、死亡に至る例も毎年5件前後の報告がある。一般用医薬品による大規模な薬害も過去発生した一方、個人差やその日の体調により副作用が異なる面もある。またセルフメディケーションよりもまず早急に受診を行うべき局面も存在する。このような特質を持つ一般用医薬品について、安全性よりも利便性を優先する考え方は認めることはできない
専門家からの情報に基づいて患者が購入をするのが医薬品販売の原則であり、平成17年12月の厚生労働省医薬品販売制度改正検討部会の報告書でも対面販売を一般用医薬品販売にあたっての原則とすべきとされている。
・以上に加え、偽薬の防止という観点からも、一般用医薬品の販売においては「専門家の管理」「実店舗の存在」「対面での販売」の3原則は堅持すべきである。

●最高裁判決の受け止め
・本問題に係る最高裁判決(平成25年1月11日)は、厚労省が平成21年に定めた薬事法施行規則において第一類医薬品及び第二類医薬品の郵便販売を一律に禁止したことは、新薬事法の趣旨に適合せず委任の範囲を逸脱した違法のものとして無効とされたものである。
・法改正のもととなった厚生労働省検討会報告書が対面販売を原則とすべきと明記していることを最高裁判決でも触れていることを考慮すれば、この判決は薬事法改正の理念を否定したものではなく、薬事法と薬事法施行規則の間の立法技術的な齟齬を問題とされたものと受け止められる。むしろ、インターネット販売を含む郵便販売等についての対応を薬事法に明記すべきことを指摘されたのであり、立法府にあるものとして司法府の指摘を厳粛に受け止め、その要請に応える必要を感じるものである。

●インターネット販売と対面販売の比較

・近年、スマートホンの普及などによりインターネットは一層着実に生活に根付いている。一般の物品サービス等の購入に利便性が高いことは論をまたない。また、技術の進歩および普及により、テキストや静止画ベースの情報のやり取りのみならず、動画・音声による双方向的なコミュニケーションも可能になってきている。また、郵便販売の場合利用者の住所氏名が確保されている必要があり、購入履歴の保存も容易であるといったメリットも存在している。離島在住者や外出困難者による一般用医薬品の郵便販売のニーズも存在する。
・しかし一般用医薬品の販売に関しては、対面販売が持っている(1)購入者の相談に応じ、また購入者の体調を専門家が五感で判断した上で適切な医薬品を選択し、場合によっては受診勧奨も行うことができる対応の柔軟性、(2)その場で相談でき、その場で適切な医薬品を入手することができる即時性、(3)偽薬のおそれがなく、有効期限などについて実物を直接確認した上で専門家から購入できる安心感、の3点の特徴において、インターネットを含む郵便販売より対面販売の方が優れている。
・一般用医薬品のより安全なインターネット販売に向けて自主的にガイドライン等を設けて既に販売している団体・業者も存在している。しかしそのガイドラインの内容で安全性の確保が十分であるかどうかの検討が客観的になされているとは言い難く、かつ自主的ガイドラインであるために守られる保障もないのが現状である。このような現状をそのまま放置することは許されない

●規制改革会議の見解について
・2月25日付資料「6月までに取り組む規制改革の項目について」において、「経済成長の観点から早急に取り組むべき」最優先案件について一般医薬品のインターネット等販売を掲げているが、一般医薬品のインターネット販売が日本全体の経済成長にどのように繋がるのかが全く不分明である。続く3月8日付「一般用医薬品のインターネット等販売規制に関する規制改革会議の見解」において「インターネット等ですべての一般用医薬品の販売を可能にすること」等を求めているが、そもそも規制改革会議は一般用医薬品のインターネット販売が経済成長に与える影響を試算して公表し、かつ経済成長を消費者の安全よりも重視すべきと判断した根拠を述べた上で、必要な要望を行うべきである。

●今後厚労省が取り組むべき点
・厚生労働省には、規制改革会議の見解によらず、引き続き国民の安全性にたって「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」での議論を慎重に行うとともに、副作用報告ルートの一層の告知と多様化、一般用医薬品販売店舗の適切な監査の実施などを求めたい。

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