県知事選は喜ぶべき結果ではない
岡山県知事選挙は、僕も支援した伊原木隆太候補の当選という結果で幕を閉じた。知事に就任するこれからが本番なわけであるから、ご支援頂いた方々への感謝を忘れず、能力・経験を生かして岡山県の教育の建て直しや産業の活性化に邁進していただきたいと願っている。また同日に行われた衆院鹿児島3区の補欠選挙でも自民党公認の宮路和明候補が当選し、与党から議席を奪還することができた。とりあえず結果だけみるといずれも僕の立場からすれば喜ぶべき結果であった。ご協力いただいた皆様には心からの感謝を申し上げたい。
ただ、本当に喜んでよいのか。倉敷市を例にとって数字を検討してみよう。今回の岡山県知事選では倉敷市では伊原木候補は74,632票の得票であった。2年前の参議院選挙で当時の山田みか候補は74,240票を得票している。すなわち、保守系陣営としては実は2年前の参院選とほぼ同じ得票しかできていないのだ(もちろんそれだけ山田みか候補が善戦したという言い方もできる)。勝敗が異なる理由は、参院選では江田五月候補が110,202票を獲得したのに対し、今回の一井暁子候補が32,619票しか獲得できなかったことだ。その違いは概ねそのまま投票率の違いになっており、同じ倉敷市で参院選は54.67%だったものが知事選では31.69%と20%以上も異なっている(なおこの倉敷市の投票率は岡山県下でも最低値だ)。ちなみにその前のH19年参院選では、片山虎之助候補は86,004票も獲得したにも関わらず、姫井由美子候補が103,119票を獲得したために敗北している。
要するに今回の知事選は、伊原木候補は懸命の活動の結果保守系としてそれなりに票を獲得したものの、「いつもより票を伸ばした」「支持をいつもより多く集めた」訳ではない。むしろ以前革新系に投票していた人が投票に行かなかったために、過去勝利した選挙のわずか3割程度しか一井候補が得票できなかった大敵失の結果であり、保守系として喜んで嬉しがるような勝利ではない、ということである。
投票率低下(≒一井候補の得票数が伸びなかったこと)の原因は、無党派を標榜した一井候補の戦術が裏目に出たとも考えられるが、そもそも国政の混乱により政治への期待が薄まったこと、特に与党・民主党への不信が強く出たとも言えるだろう。しかしまだ自民党も期待を高めたと結論づけることもできないのだ。鹿児島3区補欠選挙での宮路候補の苦戦も、やはり同じように戒めをもって捉えるべきであろう(とはいえ天下の与党の輿石幹事長が敗戦を「善戦した」と総括するのは、もはや微笑ましい話である)。
いかにして失われた政治への信頼を回復するか。今日の所信表明演説にて野田総理がいかに「明日への責任」を口にしても、過去の問責決議や「近いうち」の約束を踏み倒して棚に上げている間は空疎な文句にしか聞こえず、彼らに期待するだけ無駄だ。かといって石原新党や橋下維新の会が、過去に日本新党や民主党が起こしたようなブームが起こすような気も正直しない。むしろ一井候補の結果を見ると、今の無党派層は新しげなイメージづくりや度重なるワンフレーズ、レッテル張りなどによる期待の膨張と裏切りに疲れて、あるいは党派対立により動かない政治に飽き飽きして、そもそも政治に何かを期待することをやめてしまっているようにすら思われる。だとするとブームなど起きようもない。
やはり自民党としても、また僕自身としても、奇をてらうことなく、骨太に地道に筋道を通してコツコツと活動を続け、誠実に想いを訴えていくことが、結局は遠いようで近道なのではないか。「今度こそ!」の想いを胸に、来るべき時に備えたい。
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コメント
こんにちは。小野です。
私も県知事選挙の投票に行きました。不本意な投票でしたが。。。
民主党や連合が、伊原木氏を応援する理由は分からなくもありませんが、民主党支持者がそれについていきたくない理由が、伝え聞くところではいろいろとあるのではと思います。その中には、民主党支持者に限らずともあるように思います。それも低い投票率や得票数に関係しているように思います。今回の結果は心配になることが多いです。
投稿: 小野 | 2012年11月 9日 (金) 14時49分