ねじれ国会による政治の密室化と「メディアとしての政治家」
ここしばらくの消費税をめぐるゴタゴタは、正直見苦しくて当事者ではないものの申し訳ない気分になる。それ以上は論評に値しない。自民党は麻生政権下の所得税法改正案附則104条を守らなければならないということ。あと僕の身としては9月とも囁かれる解散に備えて気を引き締めるのみ。小沢さんがどうとか民主党がこうとかいうことには関心がないしうんざりしている。
と同時に、延長されたとはいえ会期末に駆け込みで何本かの法律が国会を通過し成立した。そしてその中で、「密室で知らないうちに決まってしまった」といった話が後で聞こえてくる例がいくつかある。例えば違法コンテンツのダウンロードに罰則を科す著作権法の改正や、原子力規制委員会設置法案に「安全保障が目的」と「こっそり」書きこまれたといった話だ。内容については深く触れない(といいつつ、著作権法改正はニコ動とかから音楽ファイルを落としてiphoneで聞いたりしている僕としてもいまさら罰則とかいわれても困るよなという懸念を持つし、原子力の話はむしろ核拡散を防ぐ保障措置に関する項目で、新聞記事の方がバカバカしい誤報または悪意をもったデマ記事であることは指摘しておく)。ただ誤報にしろ正当なものにしろ、いずれにしても「こっそり」感が残ることは決して望ましいことではない。
実はこの問題は「ねじれ国会」がその伏線にある。どこかの政党が安定して与党になっていれば、実はすべての法案はその政党の中の議論で内容が固まるので、そこに注目しておけばいろんな法案がどう動くのかが分かりやすいし、メディアの取材や要望活動などロビイングもしやすい。また国会では野党がオープンに質疑をするわけだから問題点も浮かびやすいし、賛否は動かし難いとはいえ修正や付帯決議等の対応に持ち込むことができる。
一方ねじれ国会の場合、一つの政党では法案を成立させることができないため、与野党の合意が必要になる。具体的には、特定政策に詳しい議員で随時構成される「実務者協議」で与野党の合意が先に形成されてしまう。これは非公式な会議ではあるが、その後の党内手続きや国会審議が「もう合意しちゃったから」「専門の議員で議論したから」という理由で形式化しやすいし、実務者協議は公式な会議ではないから公開もされず重要法案でなければメディアも注目が薄い。結果として「密室・非公開で、世間が知らないうちに」ものが決まってしまうという結果になる。
実はここには隙間があって、実務者協議は必ずしも秘密な会ではない。ただ存在が知られず注目もされないため、本人たちは「聞いてくれたら教えたのに」と思っていることも少なくない。しかし結果として「密室談合」になってしまうし、むしろそこで役所や専門家とかがこっそりいろんなことを紛れ込ませることもないわけではない。実は先日通過した「死因究明推進法」もまさにそんな経緯があった。それが予見されていたから石井みどり参議院議員にご協力をいただいて経過を教えてもらい、メールマガジンやブログを通じて都度公表していたのだ(「死因究明二法案衆議院通過にあたり」参照)。結果として参院内閣委員会の松原国家公安委員長の答弁や付帯決議で、僕の主張を盛り込んでいただくことができた。この結果には、ご協力いただいた皆様に感謝したい。
今後もねじれ国会状態がいつまで続くかわからないし、その時にどのように政治がガバナンスを利かせるかはその都度解決しなければならない課題だ。その時、その場にいる政治家が公正・公平なプロセス・手続きを意識し、自ら国民に向かって情報公開していく姿勢が大事だし、インターネットがある現在そう難しくなく実現可能だ。当然ながら、デマゴーグになってはならずメディアとして客観的な姿勢と自立した意見の両立が求められるから、簡単なようで大変なことである。法案成立後に「僕がこれを実現しました!」という人はいくらでもいるが、それではダメなのだ。もちろん、情報の受け手も、政治家の出す情報の意味や客観性を解釈する能力が求められるだろう。
しかし死因究明推進法のいきさつは、インターネットと人間関係を駆使したゲリラ的戦術が、僕が今議員バッジが無い状況でもそれなりに機能し有効だったという証明だ。今回の著作権法改正にあたって、そういう戦術がとられたような気がしないのはいささか残念である。
政治家はリーダーであるべきだ。が同時に今後は、政治家自身が適切なメディアでもあるべきだ。今は、どっちかというと自分のメディア映りばかり気にする人が多いのが誠に残念だし、それが今の永田町のゴタゴタに繋がり国民の不信を招いていると思えてしかたがない。
参考)
・著作権法改正、Yahoo!・Tポイント提携に感じたデジタルデータをめぐる重大な社会変革の足音 (クロサカタツヤ氏)
・ぼくらの七日間戦争(クロサカタツヤ氏)
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コメント
非常に不思議なんですが、何で消費税なんですかね。
あんな逆進性の高い、しかもビルトインスタビライザーにもならない税制は
ルールとして失敗だと強く思います。
今からでも廃止して累進課税と法人税を強化するほうがはるかに良策です。
なんでこんな当たり前のことが議論もされないのか不思議でしょうがない。
国会議員というのは初級のマクロ経済学もご存じないのか?
投稿: yoshi | 2012年6月25日 (月) 11時24分
最近ブログの更新がないようですが、政局は大事な局面を迎えているようですね。
暑い日が続きますが、身体にご注意を。選挙も近いかも知れませんが、御家族との関係も大切にされてください。自民党頑張って!!
投稿: 学 | 2012年8月 8日 (水) 18時51分