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2012年6月

2012年6月22日 (金)

ねじれ国会による政治の密室化と「メディアとしての政治家」

 ここしばらくの消費税をめぐるゴタゴタは、正直見苦しくて当事者ではないものの申し訳ない気分になる。それ以上は論評に値しない。自民党は麻生政権下の所得税法改正案附則104条を守らなければならないということ。あと僕の身としては9月とも囁かれる解散に備えて気を引き締めるのみ。小沢さんがどうとか民主党がこうとかいうことには関心がないしうんざりしている。

 と同時に、延長されたとはいえ会期末に駆け込みで何本かの法律が国会を通過し成立した。そしてその中で、「密室で知らないうちに決まってしまった」といった話が後で聞こえてくる例がいくつかある。例えば違法コンテンツのダウンロードに罰則を科す著作権法の改正や、原子力規制委員会設置法案に「安全保障が目的」と「こっそり」書きこまれたといった話だ。内容については深く触れない(といいつつ、著作権法改正はニコ動とかから音楽ファイルを落としてiphoneで聞いたりしている僕としてもいまさら罰則とかいわれても困るよなという懸念を持つし、原子力の話はむしろ核拡散を防ぐ保障措置に関する項目で、新聞記事の方がバカバカしい誤報または悪意をもったデマ記事であることは指摘しておく)。ただ誤報にしろ正当なものにしろ、いずれにしても「こっそり」感が残ることは決して望ましいことではない。

 実はこの問題は「ねじれ国会」がその伏線にある。どこかの政党が安定して与党になっていれば、実はすべての法案はその政党の中の議論で内容が固まるので、そこに注目しておけばいろんな法案がどう動くのかが分かりやすいし、メディアの取材や要望活動などロビイングもしやすい。また国会では野党がオープンに質疑をするわけだから問題点も浮かびやすいし、賛否は動かし難いとはいえ修正や付帯決議等の対応に持ち込むことができる。

 一方ねじれ国会の場合、一つの政党では法案を成立させることができないため、与野党の合意が必要になる。具体的には、特定政策に詳しい議員で随時構成される「実務者協議」で与野党の合意が先に形成されてしまう。これは非公式な会議ではあるが、その後の党内手続きや国会審議が「もう合意しちゃったから」「専門の議員で議論したから」という理由で形式化しやすいし、実務者協議は公式な会議ではないから公開もされず重要法案でなければメディアも注目が薄い。結果として「密室・非公開で、世間が知らないうちに」ものが決まってしまうという結果になる。

 実はここには隙間があって、実務者協議は必ずしも秘密な会ではない。ただ存在が知られず注目もされないため、本人たちは「聞いてくれたら教えたのに」と思っていることも少なくない。しかし結果として「密室談合」になってしまうし、むしろそこで役所や専門家とかがこっそりいろんなことを紛れ込ませることもないわけではない。実は先日通過した「死因究明推進法」もまさにそんな経緯があった。それが予見されていたから石井みどり参議院議員にご協力をいただいて経過を教えてもらい、メールマガジンやブログを通じて都度公表していたのだ(「死因究明二法案衆議院通過にあたり」参照)。結果として参院内閣委員会の松原国家公安委員長の答弁や付帯決議で、僕の主張を盛り込んでいただくことができた。この結果には、ご協力いただいた皆様に感謝したい。

 今後もねじれ国会状態がいつまで続くかわからないし、その時にどのように政治がガバナンスを利かせるかはその都度解決しなければならない課題だ。その時、その場にいる政治家が公正・公平なプロセス・手続きを意識し、自ら国民に向かって情報公開していく姿勢が大事だし、インターネットがある現在そう難しくなく実現可能だ。当然ながら、デマゴーグになってはならずメディアとして客観的な姿勢と自立した意見の両立が求められるから、簡単なようで大変なことである。法案成立後に「僕がこれを実現しました!」という人はいくらでもいるが、それではダメなのだ。もちろん、情報の受け手も、政治家の出す情報の意味や客観性を解釈する能力が求められるだろう。

 しかし死因究明推進法のいきさつは、インターネットと人間関係を駆使したゲリラ的戦術が、僕が今議員バッジが無い状況でもそれなりに機能し有効だったという証明だ。今回の著作権法改正にあたって、そういう戦術がとられたような気がしないのはいささか残念である。

 政治家はリーダーであるべきだ。が同時に今後は、政治家自身が適切なメディアでもあるべきだ。今は、どっちかというと自分のメディア映りばかり気にする人が多いのが誠に残念だし、それが今の永田町のゴタゴタに繋がり国民の不信を招いていると思えてしかたがない。

参考)
著作権法改正、Yahoo!・Tポイント提携に感じたデジタルデータをめぐる重大な社会変革の足音 (クロサカタツヤ氏)
ぼくらの七日間戦争(クロサカタツヤ氏)

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2012年6月19日 (火)

自民党全議員・選挙区支部長懇談会の内容

 昨日朝行われた自民党全議員・選挙区支部長懇談会の主な議論内容についてざっくりご報告する。説明も質疑応答の答弁もまとめているのでご承知おきいただきたい。今回の議論は特に社会保障部分に集中した。肝心の税の方の議論もすべきだったようにも思われる。また解散戦略や党内手続き等についての質疑もあったが、報道等に譲り割愛する。

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<社会保障制度改革推進法案骨子の自民党的ポイント>
三党合意の全文や推進法案骨子そのものはこちらをご覧ください。

「所得税法改正案附則第104条の規定の趣旨を踏まえ」と明記。
 →消費税増税が小泉内閣下で決められた基礎年金国庫負担割合の引き上げ等に充てるために行うこと、消費税の増税において社会保障財源に充てることや景気等の状況を踏まえるということ。

●「税金や社会保障納付する者の立場に立って、負担の増大を抑制しつつ」云々と明記。
 →給付面ばかりではなく負担も考慮するべきこと。

●「年金、医療及び介護においては、社会保険制度を基本とし」と明記。
 →民主党マニフェストにある税方式による年金制度を否定。

●「今後の高齢者医療制度については、状況等を踏まえ、必要に応じて、社会保障制度改革国民会議において議論し、結論を得る」と明記。
 →改革の必要性から議論するということ。

●社会保障制度改革国民会議について「閣議決定された社会保障・税の一体改革大綱その他の既往の方針のみにかかわらず幅広い観点に立って」と明記。
 →民主党マニフェストに沿って閣議決定された内容を、社会保障国民会議で変更できる旨を明記。

●生活保護制度の見直しについて、自民党の主張により記載。

<補足説明>
・毎年1兆円ずつ自然増する社会保障費用のため、社会保障費そのもののカットも行いつつ、同時に公共事業はもちろん地方交付税、防衛予算すらもカットし続けている。それが今の日本の状況を招いた。もう全ての部分で限界が来ている。
・2006年の年金制度改革により、国庫負担割合の1/2の引き上げを行った。その後、ねじれ国会となりその財源の議論ができずにいる(当時の民主党が大反対しましたからね…)。これもどうにかしないといけない。そのために麻生内閣の折に所得税法附則をつけたのは自民党である。
・一年間の時限付きである社会保障国民会議の結論がでなければ増税できない。また所得税法附則に「景気回復過程の状況、国際経済の状況等を見極め」とされており、これを踏まえ増税実施の決定においては景気にも配慮される。
・前回の消費税上げの際は、個人消費は減っていない(駆け込み需要とその反動はあった)。その際の税額の落ち込みの理由は設備投資と公共投資の落ち込みであり、その主な原因はBIS規制の導入等による貸し渋り貸しはがしの発生によるもの。「消費税増税により個人消費が落ち込み税収が減った」という議論は誤り。またその際は消費税増税だけでなく、所得税減税の打ち切りや医療保険料の引き上げ等も同時に行われた。国民負担増は消費税上げのみによるものではない。
・民主党の唱える年金制度を実現しようとすると消費税は30%にもなる。不可能。彼らもわかってて言っている。
・社会保障国民会議の議論をしていることによって、解散総選挙ができないということはない。

<谷垣総裁補足>
・「決められない政治」を打破するために合意に至った。
・ただし民主党マニフェストによるバラ撒きを撤回させる、という線は守った。譲歩して出血大サービスをしたわけではない。
・民主党はどこに頭があるかわからない政党。大連立などできるわけがない。

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『日本を変える!明日への選択』橋本がく×河野太郎 熱論会!ご案内

 今週の土曜日、下記の通り演説会を開催します。入場すべて無料、どなたでもご参加いただけます。ゲストに論客・河野太郎衆議院議員をお迎えし、消費税の合意ができた中肝心のそのお金の使い道である社会保障制度、特に年金制度などを通して日本の未来を考えます。ふるってご参加ください!

『日本を変える!明日への選択』 橋本岳×河野太郎 熱論会

○玉島会場

日時:平成24年6月23日(土) 10:00開会
場所:玉島市民交流センター (倉敷市玉島阿賀崎1-10-1)

○児島会場(街頭演説会)

日時:平成24年6月23日(土)11:40~12:10
場所:天満屋ハピータウン児島店前(倉敷市児島駅前2丁目35付近路上)

○倉敷・水島会場

日時:平成24年6月23日(土)17:00~
場所:ヘルスピア倉敷(倉敷市連島町西之浦4141)

※当日の天候や交通機関の都合等の事情により中止・予定変更となる場合があります。ご了承ください。

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2012年6月 4日 (月)

『61人が語る 政治家 橋本龍太郎』

 時の経つのは早いもので、今夏で父龍太郎の七回忌となる。そのタイミングで、父の仕事を知る皆様のご厚意により、このたび『61人が書き残す 政治家 橋本龍太郎』が文芸春秋企画出版部より上梓された。まずはこの書籍の刊行にご尽力いただいた皆様に篤く御礼申し上げたい。

 スモン病訴訟和解、国鉄分割民営化、湾岸戦争戦費拠出、日米自動車交渉、そして普天間基地返還交渉や日露クラスノヤルスク合意、中央省庁再編、京都会議といった日本や世界の枠組みに関わる大仕事から、対馬丸事件、身体障害者補助犬法、ネパールの小児病院支援、寄生虫対策、そして邑久長島大橋といった個別ながら切実な課題までを網羅しており、ミッキー・カンター通商代表やエリツィン大統領との迫真のやりとりなど政策プロセスの舞台裏まで見られる内容だ。あまり父の仕事に触れる機会がなかった、そして同じ仕事をするようになって一年足らずで父を失うことになった僕にとっても知らない話が満載であり、大変興味深くあっという間に読了できた。これだけ父の仕事を書きながら、選挙区内地域に触れることが全く無いというのも、他の政治家の本ではありえないのではなかろうか。父らしいとも思うし、その父を国会に送り続けてきた旧岡山県第二選挙区の有権者の皆さまの見識を示すものでもあろう。政治家という木が、仕事という果実を豊かに実らすためには、選挙区という畑が大事なのだ。だから父を支援していただいた皆さまに、深く感謝をしなければならない。

 そして、もちろん時代背景もあっただろうが、このころの政治が「信頼」と「ロマン」にあふれていたことを、とてもうらやましく感じざるを得ない。「子ども一人26,000円/月の現金給付」とか「最低保証年金7万円」とかいう昨今の「政策」(と呼ぶ価値もない気もするスローガン)の、どこにロマンや夢や希望があるのだろう!そしてそのスローガンの現状を見れば、信頼もへったくれも最早ありはしないし、もちろんそれを裏打ちする努力も見えはしない。今日の内閣改造にしても、森本防衛相ご本人は間違いなく専門家なのだが、民間から専門家を入閣させざるを得なかったことに対し、民主党の議員各位は己が不勉強を恥じるべきではなかろうか。そして五か月前「最強の布陣」と語った野田総理はその言葉をどう振り返るのか!

 昔は良かったと嘆いてもはじまらない。及ばずながら、勉強家で一生懸命な父の背中を垣間見て育った自負はある。ぜひとも日本の政治を今一度立て直し、ロマンと信頼をとり戻したい!と誓いを新たにした。皆さまにもご一読をお勧めしたい。

※倉敷の橋本がく事務所でもご購入いただけます(1,995円)。ご興味の方はお問いあわせください(086-422-8410)。

『61人が書き残す 政治家 橋本龍太郎』
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