焼畑農業的政治の時代
民主党議員の言動や、民主党の政治を見ていると、「焼畑農業」を想起する。目前の収穫を上げるため、政策テーマやマニフェストを乱発し、それが立ち行かなくなると次のテーマを持ち出す。政策への期待を次から次へ炎上させて煽るのは得意だが、個々の結果をみるとそれなりの成果を上げつつも期待を裏切ることをあまり厭わず、最終的には有権者との信頼関係を使い捨てにする。しかしその時には次のテーマに移動しているのだ。民主党議員の地域での発言を聞いていても、その場その場の発言が多く、そういう感覚を強く持つ。橋下市長率いる大阪維新の会も似たような傾向がある。最低保障年金はどこに行ったのか?子ども手当も事実上撤回だ。ガソリン税暫定税率の引き下げは?高速道路の無償化は?ムダを削ったら財源が出てくるんじゃなかったっけ?たばこ税の引き上げもあったよね?年金記録問題は一年で解決するとか言ってなかったっけ?そして、よもや前回衆院選の際、民主党政権に政権交代したらその政権が消費税増税を「政治生命をかけて」唱えるなんて、誰が想像できただろうか?
そういう目で翻ってみると、自民党政治は「水田農業」的だったとも思う。結党以来50周年経ち、できたこともできなかったこともある。アメリカの傘の下とはいえ、戦争は起こさず巻き込まれることもなく平和を守った。高度成長を支え鉄道や高速道路のインフラを整備した。東日本大震災による福島第一原発事故が起こるまで、大規模なエネルギー危機を招くことなくやってこれた。アメリカが真似をしたくなる国民皆保険制度を招き、長寿世界一になった。これらはいろんな方の犠牲を払いつつも、自民党政権下で日本が享受したことだ。ただ、何よりも水田農業的なのは、結党以来「憲法改正」を掲げ続け、実現しなくてもとにかくまだ掲げ続けていることだ。できていないことに対しての非難は甘んじて受けるが、とにかく粘り強くやり抜く姿勢は決して崩さない。それは、地場に根付く政党として、「期待」や「信頼」を最低限のレベルであっても守ることを第一に考えているからだ。定住して村の人々と協力してみんなで田植えや稲刈りをする社会では、人々の信頼と協力を失うことは生きていけないことに等しい。焼畑的・移住型・ノマド的生活をするのならば、その時その時調子よく過ごすことが大事で、長期的な信頼関係は重視しないし、平気で人間関係を切る。
もちろん、単純に焼畑農業が原始的で水田農業が高度だ、と結論づけたい訳ではない。現実の日本の水田農業が国際価格に見合わぬコスト高に苦しみ後継者不足に悩むように、自民党政治も見直しが必要だ。憲法改正は必要だと思うが、それだけでは選挙に勝てないのと同様である。しかし焼畑農業のデメリットも少なからずある。最大のデメリットは、持続不可能なことに加え、最終的には国土の荒廃をもたらすことだ。政治家が平気でウソをつき信頼を失うことを恐れなくなったら、社会と人心の荒廃をもたらしはしないか。いつか誰かが救世主のように何かを改革してくれるというむなしい希望を国民に広げることにならないか。
政権交代選挙の際、民主党は自民党より明らかに輝いていた。今、民主党よりも大阪維新の会が魅力的に見えている。そもそも自民党が輝いていたのは、小泉総理の郵政解散の折だ。これも対立候補に刺客を送る、後を考えない焼畑的戦略だった。いみじくも小泉総理が「政治家も使い捨ての時代だ」と語った現場に僕も居合わせた。その予言は的中し続けている。選挙の選択基準は、過去から継続する「信頼」よりもその時その時の「魅力」が勝るようになった。しかし、それで日本はよいのか?子どもや孫たちに、今よりもよい日本を渡すことができるのか?個人的には、信頼と魅力を兼ね備える、使い捨てされない存在感を持つ政治家にならなければならないと思うと同時に、有権者の皆様にも一度冷静に考えていただきたいと切に願う。
| 固定リンク
「23.雑感」カテゴリの記事
- 週刊新潮より海外派遣に関し取材依頼があり回答しました(2023.08.21)
- マイナンバーおよびマイナンバーカードなどを巡る私家版Q&A(2023.08.10)
- フィンランド・スウェーデン視察記(2023.07.17)
- 第211回国会を振り返って(2023.06.27)
- 令和5年正月および第211回通常国会召集にあたり(2023.01.23)
コメント
よく真剣に考えて、 実行しよう。自分の立場と 相手の立場と その他の人の立場を考えるというのは 至難の技だ。
投稿: 今城 明夫 | 2012年5月18日 (金) 19時00分
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
投稿: マナー | 2012年5月22日 (火) 17時19分