菅政権と『八甲田山死の彷徨』
民主党代表選がスタートした。まあ明日までの騒ぎでしかなく、どなたか今よりマシな人を選んでほしいと思うのみだ。むしろ選挙権を持つ民主党の国会議員諸氏が、誰になぜ投票したのかについて注目した方が面白いかもしれない。
去りゆく菅総理について、昨27日の朝日新聞岡山版に僕のインタビューが掲載された。今の日本の現状を、「重い荷物を背負って登山中、霧の中で迷ってる」状態に譬え、その案内人(リーダー)としての菅総理を「中途半端に右往左往して事態をさらに悪化させた」と評価した。
実はこの譬え、先日『八甲田山死の彷徨』(新田次郎、新潮文庫)を読んでいて思いついたものだ。これは日露戦争前、青森5連隊の雪中行軍隊が吹雪で道を失い、最終的に199名の犠牲者を出してほぼ全滅した事件を描いた小説である。その中で、行軍隊が吹雪の中で右往左往する様子が、思いつきでアレコレ言いだす菅内閣の様子に思えて仕方がなかったのだ。本来の指揮官である神田大尉を差し置いて、同行していた上官の大隊長・山田少佐が「前進!」と言いだす様子は、海江田経産相の頭越しに原発やエネルギー問題に関して指図する菅首相とダブって仕方がなかった。
またこの事件では、同時に行動していた弘前31連隊の雪中行軍隊はほぼ無事に八甲田山を踏破している。準備や指揮系統などさまざまな要素はあるが、最終的にはリーダーによって結果は変わるという好例だ。「非常時で誰がやっても同じだった」という言い訳は通用しない。
正直、菅政権が「脱原発」「社会保障と税の一体化」など目新しいスローガンを示したとしても、実現される担保があるわけでもない。むしろ被災地には瓦礫の山と仮設住宅で生活に悩む被災地の方々が大勢残るばかりであり、また「この先日本はどうなるの?」と不安を感じる国民が残されているわけで、そうしたことを顧みず「やれるだけのことはやった」と笑顔で辞任の記者会見に臨んだ菅総理には、怒りすら覚えるのだ。どうぞさっさとお遍路さんに出かけてください。
そして新聞でも指摘したが、日本が「吹雪で道を見失っている」原因の主たるものは、登山における地図および行動計画たるマニフェストがデタラメだったことだ。そのことは、誰が総理になっても変わることはない。菅総理の辞任が確定して、反省することも無く手のひらを返すように動き出した民主党諸氏の活動は誠に微笑ましい(もちろんイヤミである)。早期に各党がマニフェストを作り直し、国民に信を問うことが必要なのである。
いよいよ夏祭りシーズンも終了。昼間は暑いが、秋の日はつるべ落としで、街頭演説をしていても日が暮れることが早くなった。くれぐれもお体にご留意を。
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