大連立への警鐘
不信任案否決後、震災復興の美名のもと大連立の議論がまたぞろ復活してきた。大連立については、以前、二つのエントリをここに記してきたが、いずれも現時点でも当てはまる議論だと思っているので、再びお示ししておく。
・面白うてやがて哀しき大連立(4月3日)
・いま、政治に願うこと。(4月14日)
気持ち悪いのが、新聞などのマスコミが「議論が活発化」とか煽っていること。また、「○○党は否定的」「野党間で温度差」といった表現で、大連立に否定的なことをネガティブに印象づけようとしていることだ。今日の新聞の見出しを皆さんご確認いただきたい。これって、明らかに誘導してるよね。
大連立が起これば、そりゃ見てる分には表面上ものごとがスムーズに進むように見えて快いかもしれない。国会でヤジを飛ばし合うようなことも減るかもしれない。
しかし、実際はテンデンバラバラなマニフェストを掲げた政党同士がまとまろうとするわけで、内部的には絶えず議論や調整、オーバーに表現すれば権力闘争が起こる。「野党は放置」ということができなくなるため、与党として大勢の人数と政党が絡み合って意思決定をしなきゃいけなくなり、むしろ一つ一つの意思決定にかかるオーバーヘッドは大きくなる。そして、そうした議論や闘争が、国会などの公開された場ではなく、夜の会食の場にて行われることが頻発し、意思決定がブラックボックス化される。昔「料亭政治」という言葉があったが、その復活だ。料亭は減っているしお金もかかるのでホテルの会議室とかかもしれないが。
総理大臣が、エイヤっと決めれば迅速に進むようになる?しかしそれは連立化においては不可能だ。政党間の連立は、政策協議によって合意に達する。総理はそれに反することはできなくなるし、反したら内閣不信任案が一発で可決され、解散が困難な現状では総辞職するしかなくなる。国会の力は強くなるが、表面上国会はスムーズに見え、意思決定プロセスは水面下に潜る。これが大連立下の政治プロセス。密室の談合で日本の将来が決まったら、皆さんは納得するのですか。
ものすごく具体的にたとえ話をすると、仙谷さんと森さんで夜話し合って消費税率上げが決まるとかそういう話。ホントにそれでいいの?いや、あくまでもたとえ話で、名前も仮名です(笑)
国会でヤジを飛ばしたり、採決で造反が出たり出なかったり、たまに強行採決でドタバタするのは、密室政治に比べれば実はとても健全なことだと僕は思う。誰が何をやっているのか一目瞭然だからだ。松木さんのようなドラマが垣間見えたりもする。「まつりごと」は「祭りごと」だという側面は厳然として存在する。個々の議員の立場を離れた政策議論によって理性的に政策が決まる、なんてのは人間社会である以上フィクションだ。そしてそのドタバタを「混乱」として否定的に捉えるのは誤りである。政治の歴史は、意思決定の透明化の方向に進んできた。結果として見苦しいものが見えてしまうことも少なくないが、それは進歩・発展の結果であり、かつ全ての議員が切実に自分の意思を追求した結果でもあり(公開下であれば、サボってたらバレるから)、僕は国民が甘受すべきことだと思う。
既存大マスコミは、ブラックボックスを取材して面白おかしく書けばスクープになる。すべて公開下で行われると、みんなが同じものを見るのでニュースが作りにくい。だからブラックボックス化を求めているのではないか。だってインターネットメディアとかって、そこまで追いかけないもんね。専業の記者を抱える大マスコミしかできないのだ。官僚もその方がうれしいかもね。こっそりといろんな仕掛けをできるから。その大マスコミの扇動に乗るのは、日本を誤った方向にも導きかねない。今だからこそ、敢えて警鐘を鳴らす。
| 固定リンク
「18.国会・政局」カテゴリの記事
- 令和6年度の解散総選挙にあたり(2024.10.09)
- 厚生労働省分割反対論(2018.08.08)
- 公職選挙法の一部を改正する法律案 賛成討論(2018.07.18)
- 厚生労働委員長 高鳥修一君解任決議案 反対討論(2018.05.24)
- 衆議院解散・総選挙にあたり(2017.09.28)
「24.東日本大震災」カテゴリの記事
- 責任感のある人が辞任し、無い人が残った。(2011.07.06)
- 100日以上経った津波被災地の今。(2011.07.04)
- 三日目・隊長のお言葉(2011.07.02)
- 穴場発見!(2011.07.01)
- 災害ボランティア一日目(2011.06.30)
コメント
岳さんのおっしゃる、その「正論」を、国会で論じていただきたかった…
Y木某は今朝の山陽新聞の「各党に聞く」で取り上げられていましたね。
朝から不快感を覚えながら読みました。
大層な言い方でしたが、中身は薄いと感じてしまいました。言葉が上滑りしているような違和感です。
岳さんの熱弁を聞きたい!
熱い心から出る思いを、努めて冷静に言葉を選びながら話す姿は、お父様を思わせます。
投稿: ちょこ太 | 2011年6月 7日 (火) 11時48分
基本となる主義、主張の異なる者同士が徒党を組もうとすること自体に違和感を感じます。先の大震災は、今後この国の価値観そのものを大きく変えると思います。既存の社会構造に沿ったやり方で復興できるとはとても思えません。雇用ひとつとってみても、近い将来に大きな問題になると思います。そもそも、雇用の流動性を有しない日本的雇用システムの中では、一度下層に落ちた人にはチャンスを与えません。リーマンの時も多くの非正規社員が家も仕事も無くしましたが、企業の不正や雇用システムの問題点が追及されることも無く、一部の自堕落な人達の行動をあげつらえての自己責任論が蔓延しました。恐らく、今回被災された方の多くも似たような状況になるのではないかと思っています。一億総中流と言われた時代とは比較にならないほど社会情勢は変わっているにも関わらず、未だにシステムは当時のままでは歪みが出るのも同然です。選ぶと選ばざる得ないは全く違います。月給15万の社員と25万の非正規…1月後の10万より目先の5千円を選択せざるを得ないのが末端の生活です。雇用の流動化はもともと派遣の自由化とセットであったと思います。方翼だけが機能した為に身分制度化してしまった雇用構造を正常に戻せるのは、元々それを主張していた自民党だと思っています。努力が報われる正常なシステムに戻して下さい。努力が報われる正常な土壌無くして頑張れる程人間は強くも無ければ崇高でもありません。まだまだ話したいことはありますが、長くなりましたのでこの辺で。頑張って下さい。
投稿: とも | 2011年6月 7日 (火) 13時16分
正論です!
投稿: hinomoto | 2011年6月 7日 (火) 20時21分
岳さん!やっぱり岳さんは凄いですわ!
下々の素人の自分が本能的に、直感的に感じた何かを、丁寧に具体的に表現して下さってホントに分かりやすく正論を語って下さる。(嬉!)
ブラックボックスのいかがわしさを皆が感じたからこそ起こった政権交代です。その挙句がブラックボックスを握りたがる民主党内のコドモの喧嘩が勃発した訳で。どんなに稚拙でもオープンな方が善いです。議員の稚拙さは選んだ国民の稚拙さだし。(
ヤジも結構なんですが、昔と違ってセンス有るヤジよりも喧しい罵詈雑言が殆どだから、レベルの低さを感じちゃうのですよ。
ユーモアとアイロニーのヤジを言えない議員は黙っていた方が得策なんだけど、最近は「腹話術の人形」ばっかりだし~。笑)
やはり、岳さんは議員であっていただきたいです。過激なアジテーションの後に言い訳を雄弁に語り開き直って逆ギレするのが政治家の仕事じゃないはずです。
信じられる政治を取り戻していただきたいと、切実に願います。その資格を充分に満たしておられるのが岳さんだと確信しています。
投稿: 龍義 | 2011年6月 8日 (水) 00時55分