今日13時半から、異状死議連メンバーにて総理官邸にて河村建夫官房長官に面会し、先週まとめた提言書を手渡し「骨太の方針」への記載を要望した。官房長官は時津風部屋事件にも言及され「重要な提言をいただいた」と対応を約束してくださった。まだ要望活動は続くが、とりあえず事務局次長としての重任はひと段落。この活動が、「死因不明社会」日本の改善につながることを切に願う。

(写真:河村官房長官(右)に提言を説明する保岡興冶会長(中央)と冨岡勉事務局長(左))

(写真:官邸ロビーにて記者に囲まれノンストップで熱弁をふるう冨岡事務局長)
ここで、今後の検討のためこの提言に関する覚書を記しておく。
・選挙間近と言われ続けるのこの時期、2月に議連を立ち上げて5月に提言ができたのは、衆院法務委員会での提言や勉強会等の背景に乗ったものとはいえ、ひとえに冨岡事務局長の九州男児らしい気合と、それをがっちり受け止めた保岡会長の熱意が大きい。このことは銘記されるべきである。
・死因究明を担う人材が少なすぎるという現実を直視し、かつ法医学だけで死因究明ができるわけでもないということも認識し、それらをひっくるめた教育研究拠点(仮称:法医育成センター)の設立を提唱したことが最大のポイント。民主党の法案にしても、診療関連死の問題にしても、これまでの死因究明制度の提案は足腰がない机上の空論のような感がある。まずその基盤整備となる部分を行おうということ。
・死因究明を所管する省庁が寄せ集め無責任状態なことに鑑み、制度改革議論に入る前に、まず死因究明推進基本法(仮称)を議員立法で作り政府に検討推進体制づくりをさせることにしたことも、もう一つのポイント。今後の検討舞台は、基本法制定のための党政調の検討機関となろう。
・提言冒頭に死因統計について触れた。この記述により「異状死」以外の死因についても今後検討対象とすることができる。臨床現場でボランタリーに行われているAiや病理解剖も死因究明の一環として検討の対象にできるよう「含み」を持たせてあるということだ。公衆衛生や犯罪発見だけが目的だと、行政解剖と司法解剖しか話が及ばないのだ。しかしいずれ、来院時死亡例など境界領域も拾わねばならなくなるだろう。
・Aiについて。制度提言そのものを見送ったため、死因究明制度にAiを差し込むというような提言も行わなかった。しかし「Aiセンター」という言葉を書きこんであるので、今後の検討に際しうまく活用していただけるだろう。
・本議連の提言や、検討のきっかけの一つである法医学会の提言などを受け、この通常国会では衆議院や参議院の委員会質疑で死因究明について取り上げられる機会がやたら増えた。自分もこの検討のために二回質疑を行った。以下に掲げるので、興味の方はあわせてぜひ以下の議事録にもお目通し願いたい。
◎衆院法務委員会 平成21年04月28日 細川律夫(民主党)
・身元確認作業と警察歯科医
・法歯科学の現状
・歯牙鑑定の謝金
◎衆院決算行政監視委員会 第四分科会 平成21年04月21日 橋本岳(自民党)
・消費者行政と死因究明
・全国一元的な死因究明制度に関する都道府県からの要望
・死因究明の所管と現状
・死体検案書の位置づけ
・医師法21条の解釈の食い違い(指摘のみ)
・Ai実施理由の認識
◎衆院決算行政監視委員会 第一分科会 平成21年04月21日 秋葉賢也(自民党)
・司法解剖・行政解剖実施率の地域間ばらつき
・監察医制度の整備
・法医学教室の定員の充実
・国家公安委員長・文部科学大臣・厚生労働大臣の会合
◎衆院法務委員会 平成21年04月03日 橋本岳(自民党)
・裁判員制度と死因究明
・法医学教育の充実
・検視体制の充実
・Ai(死亡時画像診断)の積極導入
・監察医制度の全国展開
◎衆院文部科学委員会 平成21年3月18日 亀岡偉民(自民党)
・法医学の現状と今後の取組
◎参議院内閣委員会 平成21年03月24日 柳澤光美(民主党)
・死因究明医療センターの設置
・検視官の増員
(国会会議録検索システムを参照のこと )
◎衆議院法務委員会 平成21年03月11日 細川律夫(民主党)
・死因究明に対する見解
なおこのリストを作成するのに、「法医学者の悩み事」というブログを参考にした。感謝申し上げる。