一事不再議の罠
「党首討論」のエントリで、degeさんより「二次補正が出せない理由、民主党が約束を破ったときにどうなるか」アピールすべきというコメントをいただいた。ありがとうございます。折角のリクエストなので、ここで解説する。
題して『一事不再議の罠』。
今、臨時国会開会中。12月25日までの延長が決まった。で、この時点で提出できる部分だけ切り取って、生活対策のための二次補正予算案を提出した、とする。実際には、例えば定額給付金は特別会計を取り崩すため法律の改正が必要で、そのための関連法案も政府は同時に提出する。
まず、補正予算案、関連法案ともに衆議院で審議される。これは一週間くらいで審議され、例えば9日あたりに衆院を通過するだろう。ここまではさして問題なし。
さて参議院。第一党は民主党、議長、議運委員長、各委員会理事等の多数が輩出されているので、参議院はほぼ民主党がコントロールする。そこで、何かしら理由をつけて引き伸ばしに遭ったらどうなるか。補正予算案は、憲法によって衆議院通過後30日間立てば自然成立するので、臨時国会を再度延長すれば1月9日には成立する。ところが関連法案の方は60日経過しないと衆議院の「みなし採決」ができまないので、2月8日以降に衆議院で「みなし採決」→「2/3再議決」で成立という計算になる。
ところが、国会法第二条に「常会は、毎年一月中に召集するのを常例とする」と書いてあるので、一度臨時国会を一月中に閉じ、通常国会を召集しなければならない。そうすると、少なくとも関連法案はどうしても参議院で継続審議または廃案の扱いになる。
廃案の場合は、通常国会で新たに出しなおして審議をすればよい。しかし継続審議とされた場合、通常国会にて参議院先議となる。そこで否決されてしまうと、同じ法案を衆議院に再度提出・可決の上参議院に送付しても、「一事不再議の原則」(議論の蒸し返しを防ぐため、否決した議案を同じ国会では二度以上審議しないこと)により、通常国会中では審議できない。
従って関連法案は来年の通常国会でも成立せず、「生活対策」は年度内はおろか来年秋以降にしか実現できない、というシナリオがあり得るのである。
このシナリオは、二次補正が今国会に提出されれば、全て参議院第一党である民主党の意志により実現できる。小沢代表は「補正予算が提出されたら審議・採決に協力する」と述べているが、関連法案については触れていないし、そもそも昨年夏の参議院選挙以降、国会運営に関して民主党は何度約束を反故にしたかわからない。昨日鳩山幹事長は、二党間協議には応じない意向を表明したそうだから、協力しないと言っているのに等しい。
こういう読みが背景としてあり、その上で総理が縷々述べたように今年度歳入の減額補正や金融強化法の関係等、年末に発生する補正ニーズにも対応する必要があり、かつ中小企業支援のための信用保証枠や融資枠も一次補正分で年明けまで十分対応可能であるため、麻生総理は二次補正を年明け提出と決めたのだと思う。
なお、この「一時不再議の罠」は、昨年の臨時国会でも補給支援特措法に関して囁かれたものだ。決してありえない話では、ない。「ねじれ国会」とは、かくも技術的に神経をすり減らすものなのだ。
(写真:本文とは関係ないが、自民党税調小委員会の様子。沈滞する国会と裏腹に、熱のこもった議論が続く)
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