自民党道州制推進本部 欧州出張報告書

                    衆議院議員 橋本岳

1.訪問団構成

・遠藤武彦 衆議院議員 自民党道州制推進本部 第二委員会委員長
・岩城光英 参議院議員 自民党道州制推進本部 事務総長代理
・橋本 岳 衆議院議員 自民党道州制推進本部 幹事・事務局次長
・久世公尭 前参議院議員 自民党道州制推進本部 顧問
・自民党政調会職員一名随行

2.日程

出張期間:2008年12月1日(月)~12月5日(金)
出張場所:フランス、ベルギー

◆12月1日(月)=======
- 11:55 成田空港発 (NH205)
- 16:55 シャルル・ド=ゴール空港着 ホテルへ
- 19:30 駐仏飯村大使夕食会(大使公邸にて)

◆12月2日(火)=======
- 06:45 ホテル発
- 07:24 パリ東駅発 (TGV9571)
- 09:45 ストラスブール中央駅着 在スト日本総領事館へ
- 10時頃 川田総領事よりフランスの地方制度に関するブリーフィング
- 11:30 アルザス州議会議長 ゼレハ氏と会談(アルザス州庁舎にて)081202_3
- 12:30 昼食、ノートルダム大聖堂見学

0812023_2
- 15:00 アルザス州知事兼バ=ラン県知事 ルビエール氏と会談(知事公邸にて)

081202_4
- 16:00 バ=ラン県議会副議長 ベルトラン氏と会談(バ=ラン県庁舎にて)

0812024_2
- 19:30 駐ストラスブール川田総領事 夕食会(総領事公邸にて)

◆12月3日(水)=======
- 07:15 ホテル発
- 08:35 ストラスブール空港発(SN3654)
- 09:30 ブリュッセル空港着 在ブリュッセルEU日本代表部へ
- 10:00 EU日本代表部小田野大使よりEU地域評議会についてブリーフィング
- 11:30 EU地域評議会議長 ヴァン・デン・ブラント氏と会談(EU地域評議会にて)

081203_2
- 13:00 昼食、グラン=プラス周辺見学、車にてアントワープに移動
- 16:00 アントワープ州知事 ベルクス氏と会談(アントワープ州庁舎)
- 19:30 駐ベルギー林大使夕食会(大使公邸にて)

◆12月4日(木)以下橋本のみ=======
- 08:30 ホテル発
- 10:40 ブリュッセル空港発(LH4573)
- 11:40 フランクフルト空港着
- 13:40 フランクフルト空港発(LH710) 機中泊

◆12月5日(金)=======
- 08:40 成田空港着

3.所感

●地方制度の独自性

 今回訪れたフランス、ベルギーとも、日本とはまた異なる地方制度を有している。特にベルギーの場合、歴史的理由により連邦政府の下に「地域」と呼ばれる地域政府と「文化共同体」と呼ばれる政府が並存し、それぞれ主に経済的事項と文化・教育事項を所管する。その元に州、コミューン(基礎自治体)が存在している。またフランスの場合、国政府、州政府、県政府、コミューンとなっており、さらにコミューンの大多数は広域行政組織に加入している。もちろん両国ともEUに加盟しており、国の上位にさらにEU政府がある。また両国とも地方制度改革の議論が行われているところであり、今後さらに移り変わってゆく可能性もある。
 このような中で、日本の道州制を考える上で単純に真似をすべきモデルとして両国制度を捉えるわけにはいかない。我が国固有の理由とビジョンを持って、道州制を進めるべきである。一方で、道州制という新たな地方制度を検討する上で、さまざまな選択肢を想定する上で、他国の制度や現状を知識として知っておくことは有益なことであろう。

●コミューンの多様性
 フランス、ベルギーともコミューンと呼ばれる基礎自治体が、最も身近な自治体である。メール(市長)および議会を持つが、フランスの場合、3万6000を数える。87%が人口2,000人以下で、500人以下のコミューンも珍しくない。ベルギーの場合は、合併は進んでいるがそれでも小規模のものも残っている。地域の独自性・独立性が尊重されており、以下の広域行政の仕組みにより必要な行政サービスを実施している。
 日本の道州制を考えるにあたっても、そもそも基礎自治体に「行政の受け皿」としての一定以上のサイズを一律に期待するべきなのか、地域の独自性・自主性を重視すべきか、改めて検討が必要であろう。

●補完性の原則とプロジェクトベースの業務
 一方、自治体関係者のヒアリングでは、言葉の端々に「最も適切な主体が仕事を行う」「できるだけ住民に近い主体が事業を行うべき」という意識が強く見られた。いわゆる「補完性の原理」である。同時に、異レベルの自治体や国、および同レベルの近隣の自治体同士(広域行政組織)、またNPOとの連携により、契約を結び出資し てプロジェクトを実施することも見られる。このことにより、小規模コミューンでも広域性が必要な行政業務(消防、ごみ処理等)が行え、また国と地方自治体の活動の一貫性が保証される。またEU地域評議会においても、このようなプロジェクトに対して基金から補助をすることを業務としている。
 このことは、地方税や起債の自由が広く認められ、国からの個別補助金が5%程度しかない地方歳入構造(フランスの場合)に裏打ちされている。むしろ地方から国にプロジェクトを提案する(TGVのストラスブールへの延伸等)こともあり、また議員の兼職とも相俟って、自立的かつ柔軟に連携的な業務体制がある。
 このことは、道州制の実現にあたっても、さらなる分権と自律のためには、単に組織の改変にとどまらず、補助金の交付金化等の財政的な裏づけや、柔軟な行政執行のための意識改革等が必要なものと考えられる。

●自治体への国のチェック機関
 一方、フランス・ベルギー両国の地方制度に存在し、日本の地方制度に存在しないものが、フランスのプレフェ(知事または地方長官)である。プレフェは内務省の役人であり、各州および各県に国の代表として配置されている。ベルギーでも内務省のコンサルタント(審議官)が州に常駐している。いずれも自治体執行部の意思決定に関する法的な事後チェック等を行っている。
 フランスの場合、多数党が形成されやすい地方選挙制度(比例代表制で、過半数を制した政党にプレミアムがつく)および議長(=多数党の議員)が執行権を持つため、議会と首長の対立という事態が起こることはなく、その補足制度としてプレフェ存在するということも考えられるのではないか。
 日本の場合、このような存在は明示的には存在せず、設置しようとしても抵抗感も予測される。一方で、このような存在を配置することで、国が責任を持つべき業務(例えば憲法上に規定された社会保障等)を道州に実施させるにあたり、チェック機能を国が果たすことで責任を分担するということも考えられるだろう。

以上